X-musicの新入生が終わって

那須亮介
x-Music Lab
Published in
Jul 27, 2022

那須亮介

今学期は私は新入生として、ワークショップと最終発表を通して学んだことについて記していく。
最初のワークショップでは、SFC内の音を聞くという行為をした。
しかし、ただ一人で聞くのではなく、同じ新入生達と一緒に聞いて、其の感想を共有する。こちらの方がむしろ意味があったと思う。
まず一つ気づいたことは、同じ空間にいても、聞こえる音が違うということだ。座ってる位置によって違い、SFC内には様々な音がなっているので何に興味を持っているかも違う。だからまず、感想をお互いに伝える時、その相違点に驚き、興味深かった。そして生徒達はなぜ其の音を選んだかを話し合う。
そう第二にこの言語化というプロセスが興味深いものだった。我々はどのようにワークショップを進めていくかをあらかじめある程度決められ、我々もそれに従った。このワークショップの結果は後々発表されなければいけない、つまり明晰な言語化を前提としたフィールドレコーディングである。それ故、言葉にしやすい音を無作為に選んでいた感は否めず、そこは注意する点であった。
フィールドレコーディングの本は、近年よく出版されるようになっており其の勉強も深めていきたいなと考えている。

https://www.amazon.co.jp/%E3%83%95%E3%82%A3%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%83%89%E3%83%BB%E3%83%AC%E3%82%B3%E3%83%BC%E3%83%87%E3%82%A3%E3%83%B3%E3%82%B0%E3%81%AE%E7%8F%BE%E5%A0%B4%E3%81%8B%E3%82%89-%E6%B4%A5%E7%94%B0%E8%B2%B4%E5%8F%B8/dp/4910065083/ref%3Dd_pd_vtp_sccl_2_5/357-2869472-6741261?pd_rd_w=zZocY&content-id=amzn1.sym.cbb45385-7b99-44b7-a528-bff5ddaa153d&pf_rd_p=cbb45385-7b99-44b7-a528-bff5ddaa153d&pf_rd_r=MFBBR2011ZE55WBDV2PQ&pd_rd_wg=BOaHm&pd_rd_r=1701c3e7-d724-46c4-a724-f59617746c25&pd_rd_i=4910065083&psc=1

PDF

https://s3.us-west-2.amazonaws.com/secure.notion-static.com/9ecf696c-308e-4006-9304-76bb0a1a78cd/WS01_xmusic_%E5%88%9D%E7%A8%BF.pdf?X-Amz-Algorithm=AWS4-HMAC-SHA256&X-Amz-Content-Sha256=UNSIGNED-PAYLOAD&X-Amz-Credential=AKIAT73L2G45EIPT3X45%2F20220727%2Fus-west-2%2Fs3%2Faws4_request&X-Amz-Date=20220727T184625Z&X-Amz-Expires=86400&X-Amz-Signature=2a5e6b4c5d0323f287347982e9bea4fcf0652fcb52f5f0ce913cd543ed33a60e&X-Amz-SignedHeaders=host&response-content-disposition=filename%20%3D%22WS01%2520xmusic%2520%25E5%2588%259D%25E7%25A8%25BF.pdf%22&x-id=GetObject

ワークショップ2では、「自分の中の音楽の境界を知る」ことがテーマになっていた。
私は、ここで音楽の境界を極端まで何かを推し進めて、そこからうまれた過剰さを録音するのは悪手だと思った。まず、おおよその人間の考えそうなことだし、エクストリームで何か新しいことをやろうとすればそれ相応のテクニックや戦略が必要だと思ったからだ。
私はむしろ逆をとることにした。音楽のしかも一番ポピュラーなカラオケで歌われるような曲から、音楽の境界を見出したいと思った。
私は、一人でカラオケボックスに向かい、薄い壁越しから聞こえるヒット曲を歌うカップルや男友達の集会の様子に耳を傾けた。そしてそれを録音した。ここでは、あくまでクリアで、同一の空間にいるからコミュニケーションとして成り立つ「カラオケに流れるヒットチャート」の構造を換骨奪胎して、残った謎の非音楽的な部分だけが私の録音レコーダーに録音された。以下がそのデータ、つまり非音楽的な部分だけが残ったデータをリサイクルして作った音源である。
https://soundcloud.com/0vjlvz4zafry/lcdxuwbarpcp?ref=clipboard&p=i&c=1&si=882C0F4822074C63A0DE796A3EF064D1&utm_source=clipboard&utm_medium=text&utm_campaign=social_sharing

ワークショップ3では境界にある音楽を見つける。
私は音楽の必要な要素に、何か共有できるものがいけないと思っている。
ダンスミュージックだったら四つうちのキックとか、シティポップだったら乾いた音のカッティングとか、皆、それを目標として人間は音楽を楽しむ。それでは、産まれてからずっと我々が共有してきた音とはなんなのだろうか。私は一つ以下のような音を提言する。
https://www.youtube.com/watch?v=RlQbT-5d9jU
これはシューマン共鳴と呼ばれるものである。地表と電離層の間での共振周波数は7.5Hzとなる。つまり、我々人間はこのシューマン共鳴を生まれてからずっと聞き続けてきたということができる。仮に、何か共有できるものが音楽の定義とするのならば、これはそのもっともシンプルで原始的な音楽であると仮定できる

ワークショップ4では、Xな演奏をするということであった。私は、この演奏会で、タブレットや使わなくなったスマホ、スマホ、PC、他人のPCの5代を使った演奏を行なった。
まず、計5トラックを使った音源を作成する。七尾旅人のサーカスナイトであり、そこそこ有名だと思う。
しかし、それらのトラックをそれぞれのタブレットやスマホ、PCに送る。そして、それらを研究室のメンバーに渡して、「あなたは4小節目」「あなたは12小節目」と割り振っていき、そこから急に演奏は始める。
ここで注目したのは人間の「焦り」の感情である。急にこんなことを言われたとしても、それに対応できることはできない。だから、人は急に訳のわからないことをする。6小節目で4小節目の楽曲が流れる。そうして演奏はぐちゃぐちゃになっていく。僕はこのぐちゃぐちゃな音源が気に入っているし、他の人ともまた別のアプローチで曲が作れたのではないのかと思う。

そして最終演奏も、ルールを設けた。ルールと人為的なバグで僕は新しい音楽の道標になるのではないかと思っている。
僕はE-bowというサステインが磁石の力で伸び続けるというアタッチメントを使って演奏をする。
これらは一般的に他の使い方は難しく、ロック・ドローン音楽などにつかわれやすい。
https://www.youtube.com/watch?v=uEyZfwUveQc
我々はこの誓約から逃げる。
ドローン的な音楽を逃げるための演奏を僕は担当した。
二人は、じゃんけんをして其の後ルールに従い、ギターのアンプのプラグインを10秒以内に答えないといけない。これを制限時間まで繰り返す。
其の全く予測できないエフェクトの変化に対して、こちらはE-bowをつかいなるべくサステインの強い音を出さないようにする。という行為を通してX-music的行為が可能だと考えた。

まとめ

映画批評家の蓮實重彦は「知性とは、何よりまず、知性そのものの限界を見極める力に他なりません」と述べた。
このX-musicでは未知なる音楽をやることを標榜する。其のために逆説的に、自分たちができることの範囲を決めなければいけない。
そして其の知性が作り出した難問を我々は音楽の力で解放してく。気合といってもいいかも知れない。
知性と知性の境目で綱渡りをして、ありとあらゆるものの目を引く。
この二律背反を背負って駆け抜けていき、次の学期も頑張りたい。強度が高いものが作りたい。

--

--