[x-Music Lab 22秋] 非伝統的音楽教育・パフォーマンスの開拓に向けた水遊びのデザイン

Nimisha Anand
x-Music Lab
Published in
Feb 2, 2023

総合政策学部3年アナンニミシャ

研究動機

今までのX-musicでの活動においた「音楽」への向き合い方は大きく変化した。「音」に耳を傾け、実験音楽から自然の生得的な音楽性まで、「音楽」の幅が広がった。その一方で、今まで学校で受けてきた音楽教育の経路依存性にも気が付き、そこから離脱する難しさも思い知った。ここから、幅広い音への気づきに目を向かせる、(子供に止まらない)英才教育の探求を始めようとしたのがこのテーマの初動の動機だった。今学期は同じく X music Labに所属する小向諒との共同制作として、水あそびを用いた音楽教育の開拓を目指した研究・音楽装置制作を行った。

元々日本で「音楽」という言葉が定着したのは江戸時代であり、それ以前の音楽はよりアブストラクトなものであり、「神との結びつき」=「自然との調和」に重きをおいていた。日本に限らない、音楽教育で忘れられがちの世界音楽史のアニミズム的なルーツからインスピレーションを得て、今回の装置では自然の音・サウンドスケープを「音楽」としてみなす文化に再帰することを目指した。

研究活動の流れ:

今回は実際に「音楽のおもちゃ」を作り、そのプロセスから得た気づきをもとに音楽と遊びの関係性を考察し、一般教育にあたる「音楽」の再定義を目指した。

初期段階のスケッチ・プロトタイプ:

プロトタイプとスケッチを重ね、フィードバックをもとに、二つの方向の発展性を考えた。普段から見做さない水の音を「ノイズ」と捉えた上でこの二つの着目点を考えた:

1.「ノイズ」を音楽として受容する能力を上げる。

初動の動機に近い、教育面を重視した上での、水遊びを音楽演奏として提示することで、少しでも「音楽」という新しい観点で、音の持つ本来の特質と向き合わせる方向。

2. 既存の音楽をその「ノイズ」の領域に持っていく

既存の音楽的要素に、「ノイズ」の音楽性を織り込むという考え方。

習作の作曲:

「作って考える」を重視した研究方針の中での中間課題として、この二つの着目点を用いて、水の音だけを使った習作の制作を行った。

demos

(water collage : にみしゃwater toy:小向)

Final Prototype

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装置の説明:

1:重力を使って上から下に水を落とす →高低差を作れる形を目指した。

  • 木の支柱・金属の網

2:水の即興性やリズムを利用

→水が落ちる方向などは定め過ぎずに自由さを残した。

→変数を多くして不確定性のあるリズムが生成される形を目指した

3:装置の制約とplayability(演奏・遊びとしての成り立ち)のバランス

制約:

水の出し方:

  • ペットボトルにポンプする
  • ポンプを使って水を循環させる
  • モジュール(バケツ、ボウル、コップなど)に溜まった水をそのまま違うところに流す
  • 水の量や落下スピード。モジュールの形。

→ 操作可能な要素 = リズム、ピッチ、音色の変化:

  • ポンプの利用
  • 水と音を循環させ、より長い尺の音出しを可能にする
  • 速度や強さによって圧力と水の量を操作する = 音にも反映する
  • モジュールの位置・角度
  • ラック式・モジュールを自由に動かせる(素材選び)
  • 落下先と道筋を自由に変えられる
  • モジュールの上下重ね
  • ポリリズム、一つのループで多様な音色での演奏を可能とする

まとめ:

装置として、(生音)の「音」をまず意識するところから始まり、だんだん音楽性に耳を傾ける教育道具としての発展性と、ものづくりの音楽性の探求につながるという方向性。そして、既存の音楽に即した「音楽性」を持つ要素に、水あそびならではの不規則性を絡めた音楽表現としての発展もあり、音楽制作のアナログ化と、制作におけるモジュールやループという概念デフォルメという二つの着目点でより改善していきたいと考えた。まだ Work In Progressではあるが、この実験を通して、日常から水の innate musicality(生得的音楽性)に耳を傾けることが増えたのは間違いない。

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