[x-Music Lab,Last,2022,Fall]womb / theatron water

Miki Kanda
x-Music Lab
Published in
Feb 4, 2023

*この記事は、慶應義塾大学x-Music Labの最終レポートを兼ねた内容です。

慶應義塾大学総合政策学部5年生の神田美紀です。学生最後の学期の2022年秋学期、藤井進也研究室x-Music Labで私は、ORFでの作品展示2作品と、ICSAFでの作品展示を行なったので、その製作物について記します。

目次

  • ICSAF:womb
  • ORF:womb
  • ORF:theatron water
  • さいごに

ICSAF:womb

テクノロジーと音楽に関する研究や制作の成果を発表する場として開催

↓作品リンク

https://youtu.be/C4ZSRdvoCfs

concept

生物が誕生する時、胎内で聴取していた音風景がわたしたちの音楽の原点であるならば — — 。本研究作品は、人間が母体の中で経験する子宮内部の音に着目し、そこで聴こえていたであろう音を要素に作曲を行うことで、音楽の原点を辿り、人間が身体的・精神的な超越へと昇華させる生命のリズムを探究する。

作品の着想として、持続と変化を循環的に反復することで身体に作用するテクノミュージックと、子宮内部で聴取していたであろう内界/外界からの音経験に音響的共通点が見られるのではないかという仮説がある。胎内環境では、自分自身の心臓や母体の心臓、血流、呼吸、筋収縮などを発する内界音と子宮外から聴こえてくる生活音や環境音などの外界音があり、それら複数の音が重なりあった音風景が私たちの生命誕生時の原体験である。この世に誕生する際に経験する母体の中での音響世界が、世界で初めて知覚する音経験であるとするならば、それは生物が最初に触れ合う音楽の原点であるとも解釈できる。

本作品では、人間が出生前に胎内で触れ合っていたであろう「子宮の中で響き渡る音」を再現した音楽制作に試みる。具体的方法としては、聴診器を活用して体内音を録音し、さらに子宮を再現した環境下で外界音を録音し、それを融合させることで、子宮の中で繰り広げられている生命のリズム=音楽を探求する。

録音手法

体内音

  • 聴診器とマイクを合体
  • 心臓(通常時・荒い呼吸・深呼吸)、肺、内臓(口の粘膜音)

外界音

  • 透明袋に水を入れその中にマイクを入れ、スピーカーで環境音を流しその音を録音(袋は手でブラブラ揺らす=身体動作の再現)
  • 街の音・騒音、キッチンの音

参考:胎内音の子宮を胃で見立てて外界の音がどのように聞こえるかどんな特徴があるかなど調べる実験にて、風船に水を入れ、風船の外側と風船内のマイクロホンでSPL(the sound pressure level)を測定したところ、胃の中と同じような特性が観察した。→この手法は体内で聞こえる外界の音に近い状態を再現できると想定(Yamanouchi,I., Fukuhara,H., Shimura,Y. The Transmission of Ambient Noise and Self- generated Sound in the Human Body. Acta PaediatrJpn 1990; 32: 615–624)

ORF @SFC

SFCの研究大発表会が、2022年11月20日(日)9:00~17:00–11月21日(月)9:00~17:00に開催され、藤井研の展示にて2作品展示。

ORF:womb

ICSAFでの発表の前の作品形態で録音方法、音源制作は共に同様。初めのORFでの作品形態は映像がなく、音源のみの作品であった。音源を聴く際にはアイマスクとヘッドフォンを着用し没入感を演出。胎児姿勢である体育座りで聴取してもらう体験により、胎内状態での再現性を持たせた。

ヘッドフォン・アイマスク着用、体育座りでの聴取形態
ヘッドフォンではなくスピーカーでの聴取形態

↓当日聞いてもらった音源のリンク

作品説明時の様子
Special Thanks to Riki Saito

ORF:theatron water

↓作品リンク

  • 概要

リバーヴと自然の摂理を応用した、テアトロン固有音響によるドローンミュージックパフォーマンス。本作品は、大雨などの災害が起きた際に外部に水が流れ出ないよう念のため作られた遊水地『テアトロン』を舞台に、テアトロンの特性を応用した音響による遊水池を立ち上げるパフォーマンス兼インスタレーション作品を行い、従来にない音楽表現を追求する。

  • 内容

テアトロンに置かれた遊水池に貯まる水風景を抽象化した彫刻によって作品を展開していく。彫刻に使用するマテリアルは”氷”で、氷を打楽器のように『叩く→溶ける→蒸発する→気体となって消失する』までが作品の流れである。また、彫刻を中心としたテアトロンの広場に4chのスピーカーを設置し、遊水池に水が溜まっているような立体音響空間を立ち上げる。スピーカーからはライブで行われている彫刻作品を叩き続けるパフォーマンス音をマイクで収音し、事前に収録(コンビリューションリバーブ)していたテアトロンのリバーブ(残響)を合わせる。また、彫刻が叩くフェーズから自然の摂理によって氷が変化していく際は、テアトロン周辺のサウンドスケープの周波数分布に合うドローンへとマスキングするように展開されていく。

  • 会場設置物 ”氷”について

かつて存在していたテアトロンの水をできるだけ抽象化し、音の残響が響きそうなマテリアルとして”氷”を選択

・前提:『テアトロン』『コンボリューションリバーブ』

『テアトロン』

→用途はといえば、もし大雨などの災害が起きた場合もSFCから外部に水が流れ出ないよう、念のため作られた遊水地( https://sfcclip.net/2003/03/3816/

→「何ですか?」と聞かれてもこまります。実は何でもないのです。正式には遊水池といいます。SFCの建設許可の条件として、何十年に一度の大水になっても、キャンパスから外部に水が流れないように工事をする、というものがあります。ですから、キャンパス内にはこうした遊水池が全部で4つあります。あとの三つは生協前の池と、グラウンド、その下の駐車場です。要するにグランドは干上がった池なのです。この前の三つが満杯になると、地下に巨大なタンクがあり、そこに放流されます。ぼくや体育の先生方の希望は、グラウンドを芝生にして、その回りにアンツーカーのトラックを配備する、というものでしたが、「池の底に芝生はいらない」との理由で却下されました。駐車場に水がたまるのも、そういうことです。ちなみに、タロウ坂の遊水池を井関前学部長は「テアトロン」と命名しました。階段のところで野外劇が行われ、芝生の斜面で見物する、というアイディアですが、私が知る限り、実現したのはたしか2年目か3年目にロック研究会がコンサートをやった一度だけだと思います。マコーニック先生は、鴨池とあわせて「ガリバーの足跡」という壮大な名前をつけましたが、残念ながらどちらの名前も学生からは無視されているようです(http://web.sfc.wide.ad.jp/~late4/sfc10/qanda.htm

『コンボリューション リバーブ(Convolution reverb)

サウンド デザイナーが任意の物理的な場所 (洞窟、教会、オフィス、玄関ホールなど) の インパルス応答 (IR) をキャプチャして、その場所で再生されているかのようにオーディオをリアルタイムに処理できる優れたテクノロジー。

さいごに:x-Musicでの思い出の写真を貼り付ける、みんなすき

水没した
エレクトリカルパレードしながら研究室と行き来した
あそんでない、リバーブとるため
水没した
そーいう時もある、てか、タイムテーブル意味ないねん、まじで
夜中のキャンパス。なんか剥がれてるけど大丈夫そ?
これでORFすごしてた、SFCだからいーよね、そーいえば今兎年になった
実はこれの間宗教作っちゃったかと思った、自分の体内音一度に大勢に聞かせるの気持ち良い
りきちゅんが優秀な件、わけわかめ
コキ使いまくって仲良しになりました、つまりこの人ドえむ
かいだし、寒いけどあいす、寒いからあいす
ちいさくてかわいい、作ってくれてありがと
研究室だいすきありがと忘れない
「ドライブ♡」じゃないねん
ICSAF運営のゆるさがx-Musicすぎた
鴨池だいすき

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