日本酒プロ呑兵衛 × 酒器愛好家
渡邊眞也さん。ワイン好きから日本酒の世界に入り、日本酒の虜になる。利酒師の上位資格“酒匠”の数少ない取得者のうちの一人。日本の伝統的な酒器に魅せられてはや幾年。サラリーマンの傍ら、日本酒の酒蔵、酒器の窯元それぞれにセミナーを依頼されるほど。渡邊さんがそこまで魅了された魅力とは?


『ワインも、日本酒も、酒器も、どこまで勉強しても尽きない。』 — それぞれの職人同士をつなげられるのは、自身が職人じゃない、この人なのかもしれない。。。
“ドイツワインに魅了され”
今井:日本酒だけでなく、ワインや酒器にも精通されている渡邊さん。最初のお酒のきっかけは何だったんですか?
渡邊:お酒はワインがスタートだったかな。なぜかhanakoの銀座特集を読んでいて、その中にドイツワインの専門店が紹介されていた。「ドイツワインなら甘いし飲みやすいんじゃないか?」と思って、すぐ行った。
そしたら、その店のマダム、専務なんだけど。親戚の子が俺と同じ大学を出たということで、2時間くらい話をし「まあまあ飲みなさいよ」と、どんどん試飲させてくれて。そこから入ったのがワイン。本格的な“お酒”に入るきっかけだった。その時は単純に、「甘くて酸っぱくておいしいな」って思った。
2014年5月25日新橋に新装オープン。ファインワインシリーズ「ドイツ」(ガイアブックス)監修、「世界の名酒辞典」(講談社)ドイツワイン部門執筆の江戸西音のドイツワインショップです。自ら生産者を訪れ、試飲・厳選した優良ワインを皆様にご紹…www.winax.co.jp
(銀座ワイナックスHP)
“ワインから生まれた、日本酒との出会い”
渡邊:そうこうしていて、24歳くらいのころ。銀座ワイナックスの試飲即売会に参加したのね。ちゃんと味を見定めて買おうとしている人は、ちゃんと(口に含んでから)出してるんだけど、俺は全部飲んでしまっていた。「渡邊くん、全部飲んだらワイン2本分くらいになっちゃうよ」って言われたんだけど、「2本くらいなら平気っすよ!」って。飲んでた(笑)。
30種類のうち20種類を超えた時点でいい気分になってきて、ふと隣に笑顔の人懐っこそうなおじさんがいて、話が盛り上がって「今度うちでワイン会あるんだけど、来ない?」と誘われ、「あ、行きます」と即答し、連絡先を交換した。
酔った勢いで行きますって言ったはいいものの、「そんなワインくわしい人の集まりに行くなんて、、俺ワイン詳しくない。。。」どうしようかなって思った。これは困ったと思い、彼に「ワイン詳しくないので、日本酒でもいいですか」って電話し、日本酒に詳しい友人に手伝ってもらって買った日本酒を持っていった。そうしたら、「日本酒ってこんなに癖がなくて、綺麗で飲みやすいんだ」って自分がはまった。
今井:自分がはまっちゃったんですか?笑
渡邊:そう、自分一人で半分くらい飲んでしまった。ワイン持ち寄り会なのに日本酒を持っていったら、自分が日本酒に目覚めちゃった。チョイスもよかったんだよね。“酔鯨の大吟醸吊るし斗ビンどり”。ワイン会でのみんなの反応も良かったよ。
(酔鯨酒造株式会社HP)
渡邊:そのワイン会には定期的に参加するようになって、ワインや日本酒を持っていった。そのワイン会で出す奥さんの料理が和食だったから、「日本酒のほうが合うんじゃないですか?」って言ったら、「じゃあ日本酒会もやるか」となって。
俺の友達10人くらいあつめて、そこで日本酒会をやった。そのうち、周りの友達がだんだん日本酒に詳しくなっていった。そうすると「幹事としての俺の立場、やばくね?幹事なのに詳しくない。」ってなってきた。。。
よし、勉強しよう、と思って通い始めたのがインフィニット酒スクール。これが32歳くらい。日本酒だけじゃなくて、いろいろ広げたくなったときに広げられるなと思ったのがあのスクールだった。今も月一で通ってるしね。
“日本酒友達を探す”
今井:“酔鯨の吊るし斗瓶どり”でピン!と日本酒にハマった後、どのように深めていったんですか?
渡邊:酔鯨を選んでくれた友達といろいろ飲み歩いて、地元の名店で知り合った人たちに「ちょっといいとこ連れて行ってやるよ」と飲食店に連れて行ってもらったり、日本酒のイベントに行く間に酒友達をつくったりしたかな。
身近な知り合いに、酒好きはほとんどいなかった。だから、酒のイベントも一人で行っていた。でもずっと一人でいるわけにはいかないので、「よし、だれか捕まえるか。」と毎回そう決めて参加していた。全員と仲良くなろうとすると俺も忘れてしまうので、ひとりに狙いを定めて「この人と仲良くなろう!」と決めて参加していた。
今井:そのころのお友達とはいまだにお付き合いありますか?
渡邊:そうだね、いまだに一緒に飲みに行ったりもしてるな。そういう意味では、日本酒の入り口はとてもよかったかな。
“日本酒と酒器との出会い”
今井:日本酒に魅力を感じてから、こんなにもハマっちゃった理由って何だったんでしょう?
渡邊:利酒師をとったタイミングで、ふしきののオーナーである宮下さんがdancyuで7~8ページの酒器特集をやっていた。当時まだサラリーマンだった彼が酒器のスペシャリストとして特集していたんだ。
利酒師をとるタイミングで、「よし、おれもひとついいものを買っておこう」と思って。そこからはもう、坂道を転がるようにゴロゴロとはまっていった。宮下さんの酒器のセミナーに参加してみると、ただの酒好きではない、酒器好きと知り合うことができた。その人たちにいろんな店を紹介してもらって、その店の店員さんと仲良くなったりした。
今井:日本酒にはまったのちに、酒器にはまって、もう抜けられなくなっちゃったんですね。
渡邊:もともと、好きなことや気になったことを本を読んだりして突き詰めることがすきだった。そこに、いくら勉強しても突き詰められない日本酒と酒器の世界に魅了されてしまった。
“酒と酒器のプロフェッショナルが学びに行く名店”
今井:印象に残っているお酒の場ってありますか?
渡邊:飲み方にもよるので、あまり酒単体でどうこうっていうのはないけど、前回“ふしきの”に行ったときに、BY違いのお酒を店でブレンドして出していて。もう、店の技術だよね。ただ、買ってきた酒を冷やして出すのではなく、味を見極めてブレンドするという。そこまでやれたら、料理によってブレンド比率を変えることで、いろんな料理に対応できる。
今井:飲食店の醍醐味かもしれないですね。
渡邊:そうだね、最終的にサービスして提供するというところでしかできないことだからね。ワインバーとかではそういうことしないよね。ワインで年度違いや畑違いをブレンドして出すってのはないからね。怒られるから(笑)。ワイナリー自身がブレンドはするだろうけど。
やっぱりオススメなお店は、この月よみ庵の一号店の“ふしきの”。ここはぜひ、お酒を造っている人、売っている人にはぜひ来てほしい店。
(神楽坂 ふしきのHP)
“酒蔵見学の真意とは”
今井:渡邊さんは酒蔵訪問もされていますが、過去に何蔵くらい見学されてるんですか?
渡邊:あまりたくさんは行ってないよ。何蔵も行くっていうよりは、毎年同じ蔵に行くかな。いろんな蔵をたくさん見ても、規模も設備も違うし、酵母もちがうから、何がどうなって酒質に影響しているのかわからない。だったらずっと、同じ蔵を定点観測的に毎年行くと、「ここを変えたから、こう酒質に反映されたんだ」とわかりやすい。最近、黒龍が半端ない。ここ2,3年の酒質の向上がすごい。あのレベルにあるものが、まだ向上していくのかと。
今井:それは定点観測しているからの感想ですね。
渡邊:最近はアル添をしているかしていないかの違いが判らない。吟醸、大吟醸ではなく、本醸造でなぜわからないのかと。
黒龍酒造株式会社の公式webサイト。福井県の地酒「黒龍」「九頭龍」を醸す、文化元年(1804年)創業の蔵元。創業以来200余年、手造りの日本酒造りを伝承している。早くから大吟醸酒の市販化に取り組み、吟醸蔵として高い評価を得ている。www.kokuryu.co.jp
(黒龍酒造株式会社HP)
“日本酒好きの利酒師と、ワイン専門家のソムリエ”
今井:渡邊さんは、酒器と日本酒にとても精通されていて、ワインも詳しい。今後、どうしていきたい、というビジョンはあるんですか?
渡邊:化学的な裏付けをしていきたいかな。日本ソムリエ協会は、今後がっつり日本酒に力を入れてくる。田崎さんが会長になり、「自国の酒を知らずして、ソムリエを名乗るのか」ということで。そうなってくると、サービスにも精通している人たちが入ってくる。そこにどう対抗していくのかとなったときに、誰にでも通じる「ロジック」というものを理解しておかないとだめだろうと思っている。
なんだかんだ、ソムリエさんはすごい。資格を取られた方は継続して、よく勉強している。利酒師という資格は知識量という点では、なかなか。。。
俺は、知りたいという人に、きちんと説明できるような人でありたい。それが酒蔵や酒器を作ってる陶芸家さんであっても、日本酒についての質問に答えられるような自分でありたい。日本酒も、酒器も、ワインも。勉強してもしても、まだまだ底が見えない。こんなに楽しいもの、抜けられないよね。
(終)
今回、日本酒片手にお話を伺ったのはこちら。神楽坂の“月よみ庵”。先に紹介した“ふしきの”の姉妹店にあたる。素材の質はもちろんの事、遊び心ある料理アレンジに定評がある。 御料理に酒番が全国の日本酒を提案。 食材の滋味深さを広げる事の出来る底力のある地酒の選定を心がける。 ゲストの嗜好を踏まえた上で、銘柄、温度を変えてゆく。 店名は「満ち欠けする月を愛でる様に季節を愛で、旬を食して頂きたい」との思いから。
月の運行に基づいて作られた旧暦の季節感を大切にし、季節ごとの料理と日本酒をお楽しみいただけるお店です。営業時間:18時-23時(最終入店21時)アクセス:東京メトロ飯田橋駅 B3出口より徒歩2分、JR飯田橋駅 西口より徒歩3分www.tsukiyomian.jp
(月よみ庵HP)



