DSS Asia 2024 日本トラックまとめ

Arisa Izuno
The Distributed SQL Blog
Jun 14, 2024

2024年4月24日、YugabyteDBの年次イベントであるDSS Asiaがオンライン開催され、アジアを中心に約1500名の皆様にご登録・ご参加いただきました。このブログ記事では、日本のお客様/パートナー様向けに日本語セッションをまとめた、ジャパントラックの概要をお知らせします。

全てのセッションについて、録画配信が行われております。詳細をご覧になりたい方は、こちらからご視聴ください。

YugabyteDB最新動向

最初のセッションでは、YugabyteDB Japan カントリーマネージャの松尾からYugabyteDBの概要と事例、エンジニアリードの市村から製品アップデートをご紹介しました。

最新の国内事例では、国内大手通信キャリアのIoTサービス基盤にYugabyteDB Anywhereが採用された事例を紹介。この通信キャリアは、複数のサービス基盤を社内共通コンテナ基盤に統合し、150万デバイスを収容する拡張性と高可用性を実現するためにYugabyteDBを選択しました。また、Authlete社はOpenID Connect準拠のWeb APIを提供するサービスにYugabyteDB Managedを利用することで、ゼロダウンタイムでのメンテナンスを実現しました​​。

製品アップデートでは、PostgreSQLバージョン15対応、pgvectorのインデックス機能追加、コストベースのオプティマイザのリリース予定などが説明されました。また、マネージドサービスへの需要増加に応えるため、お客様環境でのデータベース運用をYugabyteDBが提供する、コマネージドサービスの提供が計画されています。これにより、自社のクラウドVPC内でYugabyteDBを利用しながら、セキュリティとパフォーマンスを確保できるようになります。​

YugabyteDBの適用に向けた取組みと隠れた魅力

2つ目のセッションでは、NTTデータグループの笠原様から、事例と注目機能についてご紹介いただきました。

NTTデータグループでは、YugabyteDBなどの分散データベースの調査やPOCに取り組んできました。事例として、時空間情報を扱う共通基盤の実証実験を紹介し、データのスケーラビリティと拡張機能がYugabyteDBの強みであると述べました。さらに、オンプレミスの大規模システムをクラウドに移行する検討も紹介されました。このシステムでは高い可用性と性能要件を満たすためにYugabyteDBが適用できる可能性を探っています。

後半では、あまり知られていない魅力的な機能を紹介いただきました。

  1. ルールベースオプティマイザ:
  • クエリ実行計画を統計情報に頼らずルールベースで最適化。
  • 実行計画が安定し、エンタープライズ領域での予期せぬ性能劣化を防止。統計情報の変化に依存しないため、安定したクエリ性能を維持。

2. リードコミット:

  • トランザクションの分離レベルであるリードコミットをサポート。
  • 既存のアプリケーション開発ノウハウを活用しやすい。トランザクション設計の変更を最小限に抑え、ミッションクリティカルなアプリケーションでも安定した動作を実現。

3. Packed Row:

  • データをストレージに格納する際のフォーマット選択が可能。
  • ワークロードに応じてデータフォーマットを選択できるため、パフォーマンスチューニングが容易。特に、更新が少ない参照メインのワークロードでは高い性能を発揮。

4. PostgreSQLの拡張機能の活用:

  • PostgreSQLとの高い互換性により、多くの拡張機能が利用可能。
  • 時空間情報を扱うPostGISや、ジェネレーティブAI関連のvectorデータなど、様々な拡張機能を活用できるため、柔軟なデータベース運用が可能。

5. その他開発中の機能

  • 組み込みコネクションプール
  • Bitmap Scan
  • Active Session History

これらの機能実装について、より柔軟性やお客様の個別要件に応えられるような実装についてご提案と期待をお話いただきました。

Achieving Zero Downtime with Little Effort

3つ目のセッションでは、AuthleteのFalck様から、AuthleteのサービスのバックエンドデータベースとしてYugabyteDBを用い、ゼロダウンタイムのメンテナンスを実現した過程を紹介いただきました。Authleteは2015年に東京で設立され、OAuth および OpenID Connect を実装するためのWeb APIを金融、ヘルスケア、メディアなどのサービスプロバイダーに提供しています。

Authleteの主な課題は、Google CloudのCloudSQLでの四半期ごとのメンテナンスによる短時間のダウンタイムと、それに伴う顧客対応の負担です。また、オンプレミス顧客の高性能要求やクラウドSQLのスケーリングに伴うダウンタイムも課題でした。これを解決するために、AuthleteはYugabyteDBの導入を検討しました。

YugabyteDBの評価では、API統合テストやコンフォーマンステストを実施し、わずかな設定変更で全てのテストを通過しました。また性能テストでは満足のいく結果が得られ、マイナーな互換性の問題や再試行処理、CICDシステムとの統合もYugabyteチームのサポートでスムーズに解決しました。

これらの結果を受けて、Authleteはパイロットプロジェクトを実施し、実際の顧客環境での評価を行いました。現在、YugabyteDBは高可用性や高性能を求めるオンプレミス顧客向けの公式サポートのデータベースオプションとなり、Software-as-a-Service 顧客向けにも一般提供を開始する予定です。将来的には、マルチリージョン展開やアクティブ-アクティブ構成も検討されています。

YugabtyeDBパートナーによるパネルディスカッション

4つ目のセッションでは、日本のパートナー企業がYugabyteDBの活用についてパネルディスカッションを行いました。SRA OSSのペン様、タグバンガーズの小川様、ウルシステムズの山河様から、昨年の活動の振り返りや、課題と抱負についてお話いただきました。

高可用性とスケーラビリティ

SRA OSSのペン様は、YugabyteDBが持つ高可用性とスケーラビリティ、特に地理分散の強みについてお客様からの期待が大きいと昨年の活動から感じています。YugabyteDBの、PostgreSQLとの高い互換性と柔軟なスケールアウト/スケールインは、多くの企業にとって移行の容易さとコスト削減に繋がります。昨年、YugabyteDBのユースケースや全体的な機能について調査検証した結果を踏まえて、今年は地理分散などの具体的なユースケースについてさらに掘り下げ、引き続き分散データベースの最新情報を提供し続けることへの意欲を語っていただきました。

ヘルスケアや金融業界での活用

タグバンガーズの小川様は、ヘルスケア業界および金融業界での具体的なユースケースを紹介し、FDWやRLSといったPostgreSQLの拡張機能を活用してデータの分離性について柔軟に設計ができる点や、スケールアウトと強いACID保証、一貫性が両立できることが高く評価されていることを紹介しました。また、Kubernetes環境でのYugabyteDBの運用が容易である点に触れ、クラウドネイティブアプリケーションとの相性の良さがYugabyteDBを採用する大きな理由になるため、耐久性が高くコスト効率の良いアプリケーション開発を支援する重要な要素としてYugabyteDBの活用提案を続けていくことをお話しいただきました。

ユースケースに基づいたPoC

ウルシステムズの山河様は、内製化を目指すお客様が増えたことで、ミッションクリティカルなシステムにも新しい技術を取り入れていく機運が高まっていると語ります。データベースは周辺システムとの連携や、既存の運用体制にも大きく影響されるため、PoC(概念実証)では事前に検証項目を明確に定めアジリティを持って進めることの重要性を指摘しました。従来のデータベースとは異なる点や、システムのリソースを柔軟に活用することが企業にとって大きなメリットになることを理解した上で、ビジネスのスケールに合わせてYugabyteDBを効果的に利用できるよう支援することを目指していることを共有いただきました。

分散SQLのためのデータモデリング

日本トラック最後のセッションは、Solution Engineerの伊津野から、分散SQLにあったデータモデルに変更することの重要性について紹介しました。

分散SQLデータベースであるYugabyteDBでは、データが複数のノードに分散して配置されるため、どのようにデータを分割して並べておくかを設計することが、予期しない性能劣化を防ぐために重要です。複雑なスキーマや大量データがある場合は、マイグレーションの検証を行って、シャーディング方法やインデックスの設計、タブレットのサイジングを行う必要があります。またアプリケーションの変更が可能であれば、データモデルを非正規してよりシンプルなデータモデルにすることで、分散環境で効率よくクエリを実行する鍵になることを説明しました。

まとめ

DSS Asia 2024のセッションの、録画配信が行われております。お客様やパートナー様の声を直接お聞きいただき、YugabyteDBや分散SQLについてより深く知っていただければと思います。ぜひこちらからご視聴ください。

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