YugabyteDBでAirwallexが得た成功: フィンテックソリューションの強化

Arisa Izuno
The Distributed SQL Blog
Jun 20, 2024

急速に変化するフィンテック業界において、Airwallexは多通貨ビジネスアカウント、FX決済処理、API統合サービスを提供する主要なプレーヤーとして台頭しています。業界規制を遵守する企業として、Airwallexは180か国以上で40以上の通貨をサポートし、シームレスなトランザクションを促進しています。

AirwallexのHarry Huang氏は、分散型SQLデータベースであるYugabyteDBによって、彼らの業務を最適化し、そのバックエンドインフラを劇的に変革した道のりをDSS Asia 2024で紹介しました。

変革の必要性

Airwallexは、特定のメンテナンスウィンドウを持たない24時間365日の業務を行っています。そのため、絶え間ないグローバルな業務を支えるために、堅牢なデータベースソリューションが必要でした。以前は、他のデータベースソリューションで大きな課題に直面していました。たとえば、Cassandraのクエリパターンは物理データレイアウトに厳密に結びついており、ビジネス要件の変化に伴うアプリケーションの進化が困難でした。また、Cloud SQL for PostgreSQLでは、スケジュールされたメンテナンスウィンドウが必要で、フェイルオーバープロセスがダウンタイムを引き起こす可能性があり、24時間365日のビジネスを支援する上で大きな課題となっていました。さらに、運用メンテナンスコストのオーバーヘッドと単一障害点の存在は、Airwallexの規模には不向きでした。

YugabyteDBへの移行

Airwallexは、耐障害性が高く低レイテンシー、かつメンテナンスフリーのソリューションが必要であったため、YugabyteDBの採用を決定しました。YugabyteDBのPostgres互換性は、Airwallexにとって非常に重要であり、広範なPostgresベースのコードベースを持つ同社にとって、移行プロセスが大幅に簡素化されました。この互換性により、既存のコードに最小限の変更でスムーズな移行が可能となりました。

YugabyteDBの際立った特徴の一つは、リードレプリカを通じて高可用性と低レイテンシーを提供できることです。このセットアップにより、データは常にアクセス可能で、システムの一部がダウンしても運用が継続できます。Airwallexにとって、これはパフォーマンスの向上と運用オーバーヘッドの削減を意味し、グローバルなサービスモデルに適合するソリューションでした。

SmartDriver: クラスター管理の強化

AirwallexのYugabyteDB導入において、重要なコンポーネントの一つがSmartDriverです。このツールはクラスターやトポロジーを認識し、高可用性と低レイテンシーを実現します。たとえば、Airwallexのプライマリークラスターはシンガポールにホストされ、リードレプリカは香港、オランダ、米国に配置されています。これらの地域にデプロイされたアプリケーションは、最初にローカルクラスターから読み取り、必要に応じてプライマリークラスターにフォールバックします。これにより、パフォーマンスが最適化され、レイテンシーが低減されます。

Source: DSS Asia 2024

ベストプラクティスと学んだ教訓

YugabyteDBの採用には、クエリチューニング戦略の適応が必要でした。従来のPostgreSQLとは異なり、データとインデックスが集中管理されるのではなく、YugabyteDBではノード全体に分散されます。これにより、特にインデックスのために、ハッシュやレンジでシャーディングキーを慎重に設計する必要がありました。また、分散データベース環境では結合の複雑さとコストが高くなるため、複雑な結合を設計する際には注意が必要です。

低レイテンシーを維持するために、Airwallexはデータベース接続を効率的に管理するコネクションプールを実装しました。これは、YugabyteDBでの接続初期化がPostgreSQLに比べて遅いためであり、通常500ミリ秒から1秒かかります。さらに、リードレプリカを使用する際には、プリペアドステートメント・キャッシュを利用してレイテンシーの増加を最小限に抑えました。

Source: DSS Asia 2024

行レベルのジオパーティショニング

将来的に、AirwallexはYugabyteDBの行レベルのジオパーティショニング機能に期待を寄せています。この機能により、法的要件を満たしながら、異なるデータセンターに特定の行のデータを保存することが可能になります。この機能は、規制遵守を犠牲にすることなく、グローバルなインフラストラクチャを拡張するというAirwallexのビジョンに合致しています。

Source: DSS Asia 2024

結論

AirwallexでのYugabyteDBの適用は、需要の高いフィンテック環境における分散型SQLデータベースの採用がもたらす変革的な影響を示しています。従来のデータベースからYugabyteDBへの移行は、運用上の課題を解決しただけでなく、将来の成長に向けた体制を整えました。YugabyteDBの高度な機能と戦略的な展開プラクティスを活用することで、Airwallexはグローバルなクライアントに対してシームレスで信頼性の高いサービスを提供し続け、フィンテック革新のベンチマークとなるでしょう。

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