ToshihiroKaseda/加世田敏宏
Zenport Book Club
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5 min readSep 16, 2018

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ZBC#106 [報酬としてのチーム] NETFLIXの最強人事戦略

本日は、2018年9月15日に開催されたZenport Book Club#106からNETFLIXの最強人事戦略をご紹介します。

創業時から業態を幾度も変え、イノベーションのジレンマを回避してきた巨人 Netflix。その創業時から携わり最高人事責任者を務めた著者が、Netflixの人事戦略について語ったのが本書です。

彼女が語る人事戦略は、耳障りの良い言葉に彩られた「人事の常識」にことごとくNoを突きつけます。

彼女がNetflixを通してたどり着いた人事の真理、人間の真理とは何なのでしょうか?

要旨を見ていきましょう。

Summary

  • Netflixの人事方針は次の言葉に集約される。それは「従業員を大人として扱い最大限の自由を与える、そのかわり最高のパフォーマンスを発揮する責任を求める」というものだ。
  • 経営者に社員のモチベーション管理、キャリアパスをサポートする義務はない。経営者が負うべき義務は 、顧客を喜ばせる優れた製品を時間内に提供すること、そのために必要な優れたチームメンバーを揃えることだけだ。
  • 社員は既に成長したい、挑戦したいと思っている。そんな社員に会社が与えるべきものは挑戦するに値する課題、事業や経営に関わる全ての情報、優秀なメンバーだけが集まるチームである。間違っても豪華なオフィスやサッカーボード、無料のピザではない。
  • 経営者は常に6ヶ月先を考え、そのときに必要なメンバーを揃えなくてはいけない。既存のメンバーを活かすことにとらわれず、外部の人材も考慮に入れ、是々非々で常に最適なメンバーを揃える必要がある。既存のメンバーとの繋がりに起因するノスタルジアは危険な兆候である。会社はチームであって家族ではないのだから。
  • 社員への報酬は常にその社員が今後会社にもたらしうる価値に応じて決めるべきだ。市場情勢は関係ない。
  • 人事考課制度は無駄だ。またこれを給与と連動させることも間違っている。社員に対してのフィードバックはその場でリアルタイムで行えばいい。また給与は先程述べたように、今後生み出しうる価値で決めるべきだ。
  • 上記のような組織を作るには、社員が皆正直に意見を言い合える文化を作る必要がある。ネガティブなメッセージも相手に直接正直に伝える必要がある。

Discussion

  • 経営者は常に矛盾を抱えている。社員に対しては常日頃は信頼と情を持って接するが(馴れ合う必要は無いが、普通にコミュニケーションをとると自然とそうならざるを得ない)、ステージが変わる度に船から下ろす人を決める必要もある。即ち同じ人間の中に慈悲とマキャベリを同居させる必要がある。これは言うほど簡単では無い。経営者はサイコパスが多いという話を耳にするが、私はこの点が理由だと思う。サイコパスの人しか続かないか、サイコパスにならないと続けられないのだ。
  • 組織論は動的平衡と静的平衡の視点で考えられる。Netflixの「その場で必要な最高のメンバーを集める」という姿勢は、言ってみれば動的平衡の極地だ。私もこの主張には反対しないが、別のアプローチも存在しうると思う。例えば限られたメンバーを活かし育てるという戦略はその一つだろう。そのようなチームはプロスポーツにも見られるし、世界を席巻するK-POPアイドルもその一つだ。言ってみれば彼らは静的平衡の極地だろう。つまるところ、どちらがいいのか、もしくはその中庸がいいのかは顧客とそのニーズに応じて変わる。Netflixがそうやっているからと言って、そのまま真似をする前に、顧客とニーズに合うチームビルディングの仕方を考えた方がいいだろう。

Conclusion

本日はNetflixの急成長を支える人事制度を説いた「NETFLIXの最強人事戦略をご紹介しました次回はZBC#107から遺伝子―親密なる人類史をご紹介します。

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