おばちゃんに卒論と『ファミリーカメラ』を渡す

200324 / Tue / 10:30–11:30 / 雨

木村 : こんにちは〜
おばちゃん : お、久しぶり、どうしたの
木村 : これ(卒論と『ファミリーカメラ』を見せる)をついに渡しに来ました〜
おばちゃん : あら…。すごい…!これ誰撮ったの?
ブックカバーに興味津々の様子。
木村 : それは大﨑くんじゃないですかね
おばちゃん : なにこれ、面白いこれ。大﨑くん、元気?
卒論や本よりも大﨑くんが気になるおばちゃん。
木村 : 元気じゃないですかね、僕も会っていないのでわからないですけど。
おばちゃん : 川村さんからカメラ預かってるのよ、壊れたカメラ。忙しいのかしら。
本をパラパラめくる。
おばちゃん : あぁ、この写真(著者紹介画像)、いい写真だね。
木村 : それは友人に撮ってもらいました。
おばちゃん : ね
木村 : 見せましたもんね
おばちゃん : うん、見た。この写真よかった。
出来上がった本を見て驚く。
おばちゃん : え、なにこれ、すごいじゃん、こんな!付録も付いてる。こんな立派なの…。どうしよう、おばちゃん、これなんか、くれるの?
木村 : もちろんです
おばちゃん : 棺に入れてもらお(笑)
木村 : あ、ぜひ。じゃあ、棺用ともう1個残すようで、2冊持って来ます(笑)
おばちゃん : いや〜、これが人生かもしれない、私の。
木村、微笑む。
おばちゃん : ほら、最近いるじゃない、自分で書く人。書けないから、木村くんにやってもらったみたい。いや〜、ありがと〜。
木村 : お時間ある時に読んでください、ぜひ。
おばちゃん : これなに?
木村 : こっちが論文です。いわゆる卒論です。
おばちゃん : こんな立派なの?え〜〜〜。いや、でもよかった、卒業できて。おばちゃんのせいで卒業できなかったら(笑)
木村 : それはない(笑)
おばちゃん : なんか、責任感じるから(笑)
卒論をパラパラとめくる。
おばちゃん : うわぁ〜、どうしよう。すごい、大変だったね。
木村 : うん、まあまあ。
おばちゃん : よくやったね。こんなにファミリーカメラを…。
ここで卒論の挿絵が気になったようだ。ファミリーカメラ店内のイスに乗せてある座布団が曲がっているのが気になった様子。
おばちゃん : これ、こんなんでいいの?(笑)
木村 : いや、これがいいんですよ
おばちゃん : え〜〜。これを出したわけ?
木村 : そうですね
おばちゃん : 私、初めて見た、卒論って
木村 : 今、データで出すんで
おばちゃん : あ、これ(店内の掲示物)古いやつだ
木村 : そうですそうです、これ、僕の服装が春とかなんで
おばちゃん : 「フィールドワーク中の様子」、なにこれ、ここに置いてたやつ(GoPro)?
木村 : そうですそうです
おばちゃん : あれ、ストップで、こうやって写真できちゃうの?
木村 : できちゃいます
卒論の挿絵におばちゃんがいることに気づく。
おばちゃん : やだ〜
木村 : これは大﨑くんから提供してもらいました
おばちゃん : 持ってたの、大崎くん?
木村 : はい
おばちゃん : やだ〜、写真写っちゃ。あ、これ、いいね!この写真(ファミリーカメラの外観)効いてるね!いや、これ(ファミリーカメラの看板)やってもらってよかったよ、大崎くんに。
木村 : 本当ですね
おばちゃん : ね!これ(ブックカバー)、大崎くんがこういう風にしたわけ?
木村 : 写真を加工して、このデザインにしたそうです
おばちゃん : 面白いね、これ
木村 : これ、なかなか
おばちゃん : 貴重だよ、これ!これ、どこかに「大﨑」って入ってないの?
木村 : 入ってます
おばちゃん : (クレジットを見て)かっこいいぃ〜!
やはりブックカバーは大﨑くんに依頼して正解だったと思う。もはやそれがおばちゃんへの一番の恩返しになったかもしれない。
おばちゃん : ありがとう
木村 : お世話になりました。1年間以上、お世話になりました。
おばちゃん : いえいえいえ、イケメンが入ってきたもんで。
木村 : ふふ
おばちゃん : これ読ませてもらっていいの?こんな立派なあれなんだ。すごいね。
話がまた大﨑くんに戻る。
おばちゃん : これ(ブックカバー)で大﨑くんを想うんだ
木村 : そうですね(笑)
おばちゃん : なんか全然連絡来ないけど(笑)
木村 : なかなかこんなデザイン、一般人しないですよね
おばちゃん : 面白いね、私最初何かと思っちゃった(笑)。私、これ(店先に飾っているフィルムケースの装飾)盆踊りかと思っちゃった(笑)
木村 : これね
おばちゃん : あ、でもこの方(つくった方)だって喜ぶよ
木村 : あー、確かに
おばちゃん : あの人、いい方だから。

思い出したように言う。
おばちゃん : ねえ、チャンプ(チャンプカメラ)が潰れるんだって
木村 : え、どこですか
おばちゃん : 王禅寺
木村 : 王禅寺だけ?
おばちゃん : 今のところね
木村 : へー、まあ王禅寺人入ってなかったですもんね
おばちゃん : もう無理だよ、写真屋、こんな状況で。チャンプが辞めるって聞いて、もう日本で写真屋残るのはウチだけかなって、そう自負してるんだけど(笑)
木村 : まあでも残りそう
おばちゃん : こういう感じでやってればね
また思い出したように言う。
おばちゃん : これまた取ったの、フィルムをね。そしたら昨日売れちゃった。昨日入れて昨日売れちゃった
木村 : えー、はや
おばちゃん : ウチ、今調布のところに出してるんだけど、多いのよ。だからいつも「ファミリーさん多いですね」って。他やめちゃったって。もう元がやめちゃったらおしまいだよ、ウチ。
木村 : うん…。また春になって、写真の季節になったら、増えるんじゃないですか?
おばちゃん : だって、今出ないもん、こういう状況(新型コロナの影響による外出自粛)で
木村 : あ、そっか
おばちゃん : 港北の方にも出してるでしょ?そこは卒業式と入学式で一年分のあれ(売り上げ)やってるの。全部キャンセルだって。どうするのって聞いたら、「いやー、わかんないですよ。潰れるかもしれない」って。
ここで偶然、おばちゃんが好きなお客さんが来られた。以前からおばちゃんに話だけは聞かされていたJAの方だった。
木村 : あれ、お客さんかな
おばちゃん : あ、この方、私好きなの
?? : こんちは〜
おばちゃん : 孫同然の子なの
?? : お若いですね
おばちゃん : 木村くんで、慶應で卒業されて、ウチのお店をね、卒論に使ってくれたの
?? : おー、へー
おばちゃん : ひのとくんさ、ウチ、もうこんな立派なお店になったから、お話出来ないかもしれない
ひのとさん : 僕もまたいじゃった
おばちゃん : 敷居高いでしょ
ひのとさん : 転びそうになっちゃった。あ、お元気そう
おばちゃん : JAの方でねー、そこですっごいいい人なの。出世も早くてね。もう組合長だよね
ひのとさん : もうじきですね〜
おばちゃん : もうじきね
ひのとさん : まずないっすね(笑)
おばちゃん : すごいいい人で、もう他に行かれたのに、こうやって来てくれるの、ありがたいでしょ
木村 : 言ってましたね
おばちゃん : そうだよ、言ってたよ。会わせたかったよ
ひのとさん : いや、でもすごいですね
おばちゃん : こんなさ、偶然に入って来たのウチのお店に
ひのとさん : 偶然なんですね
おばちゃん : なんてイケメンの子が入ってきたんだろうって思ったの。でもかっこいいけど、全部私が崩すの(笑)
ひのとさん : あはは
木村 : 間違いない
おばちゃん : そこ(床屋)行った?
ひのとさん : 今日は歯医者さんですね
おばちゃん : 全部遠くへ行っても柿生に来てくれるんだよ
ひのとさん : よくしていただいたんで
おばちゃん : とんでもないよ。唯一いい人。悪い人いるんだよ、井口。
ひのとさん : あはは、井口(笑)
おばちゃん : 井口って人がね、結婚したら報告に来るって言ってたんだけど、報告に来てないんだよ。だからもう井口って言ってんの
ひのとさん : もう名前忘れたってね。この前も敦子さんが名前何だっけ、わからないよって言ったんですけどね(笑)
おばちゃん : 次から次へと渉外の方が変わるのね。でもその中でもものすごーく、いい人。この心配りがね。直子さんがいつも言うの、後ろの方に車止まっていても絶対探してくれるの
ひのとさん : 外回りやっていたので、バイクに乗っていたので
おばちゃん : バイクに乗っていたって、今の曽根くんなんて、私のここ通って行くんだよ
話はまたコロナに。
ひのとさん : また多摩区でも出たって
おばちゃん : でもその方いい方なんだって。自分で電話して、それから出ないで、今川崎の市立病院に入院されてるんだけど、患者さんのお手本だって
木村 : なんでそんな情報知ってるの(笑)
ひのとさん : よくご存知ですね
おばちゃん : もう何でも聞いて。すぐねネットで調べるから。この前、ヒマラヤに行ったお客さんが居たんだけど、ヒマラヤってどこだかわからなかったの。それでフィルム出す時は適当に相槌だけして、帰られたらすぐネットで調べて(笑)。次受け取りに来た時はもう全部ヒマラヤの話ができる(笑)
電話がかかってきた。
ひのとさん : もうここ(ファミリーカメラ)にこられて長いんですか?
木村 : 3年くらいですね
おばちゃんが話に戻る。
おばちゃん : 私ね、この人(大﨑くん)が好きなの(笑)
木村 : 結局な(笑)
ひのとさん : 撮影された方ですか?
おばちゃん : これ(ブックカバー)をつくってくれたの。その人も違う風に入ってきてくれたの
ひのとさん : 別々なんですか
おばちゃん : うん。そしたらここで、偶然
ひのとさん : えー。もしかしたら以前伺ったかもしれないです
おばちゃん : そうだよね
ひのとさん : それの本物
おばちゃん : ほら、ちゃんと覚えてるの。本物です
ひのとさん : はい、会えた(笑)
おばちゃん : 私、木村くんにもひのとくんの話していると思う
木村 : 本当はインタビュー対象に入れたかったけど、出来なかったですね
おばちゃん : ひのとくんにもインタビューして欲しかった
ひのとさん : これ全部インタビューしてるんですか
木村 : おばちゃんが僕について語る余談も付録にはあったりしますけど
おばちゃん : おばちゃんって呼んでくれるんだよ?おばあちゃんじゃないの
ひのとさん : “あ”が付くだけで全然違いますからね
おばちゃん : ね(笑)。本当に、こんな立派な
ひのとさん : すごいですよね、3年もね
おばちゃん : あ、ちょうどさ、ひのとくんの奥さんが2階で写真撮ったでしょ?赤ちゃんがお腹にいるときの。あのとき、成人式の日に撮らなかった?
ひのとさん : 確か…
おばちゃん : そうだよね、だから同じフィルム使ってるんだよ。木村くんも成人式で写真撮った日なの
木村・ひのとさん : へ〜〜〜
おばちゃん : だからそれも偶然だよ
木村 : あぁ、確かにそうだ
ひのとさん : あぁ、嬉しいですね。話がつながると。敦子さんの話から木村くんへの話がつながると
おばちゃん : だから、ウチこういう人来てくれるからお店を辞められないの
ひのとさん : 来たくなる、あれですもんね

ひのとさんは時間来たとのことで、このあと間もなく帰られた。
その後すぐしみじみとおばちゃんは言った。

出会いが全部、財産なの。

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