大崎くんインタビュー

190707/ Sun / 14:00–15:30 / くもり時々雨 / サンカフェ

大崎くんと出会ったのは、2017年の春だった。当時僕は大学2年生で、彼は高校3年生だった。僕も彼もそれほどファミリーカメラ歴が 長くない頃に出会っている。

僕は大学1年生の学期末にファミリーカメラにひょんなことから初めて訪れた。だんだんと用事がないにも関わらず、おばちゃんと話したいがために遊びにいくようにちょうどなった頃だったように思う。その頃、おばちゃんから「木村くんに会わせたい人がいる」と言われていた。同じ年頃で、その年にしては珍しくフィルム写真に対してかなり詳しかったからだと思う。それで、いつも通りファミリーカメラに行くと、たまたま大崎くんがいて、2人とも「おぉ!」となった。大崎くんもどうやら「会わせたい人がいる」と聞かされていたらしく、お互い「例の…」となった。
その時から早くも2年が経った。僕は卒プロに取り組んでいる大学4年生だし、彼は大学新1年生で、それぞれ状況はかなり変わっている。

この日、大崎くんはわざわざ柿生に来てくれた。彼はファミリーカメラの常連だが、柿生の住人ではない。僕が大崎くんの地元に会いに行くよう伝えたが、おばちゃんに会いたいということで結局折れてしまった。そのためわざわざバスで乗り換え1回、30分弱かけて来てくれた。

待ち合わせ場所はサンカフェ。柿生で貴重なカフェだ。ちょうど店の前でばったりでくわした。お互い飲み物を頼み、インタビューを開始した。テスト前だというのに付き合っていただいて感謝の気持ちでいっぱいだ。まず、僕の研究の概要の説明。以前から大崎くんは僕がファミリーカメラで卒プロに取り組んでいることを知っていたので、とりわけ躓いたりすることなく、すんなり受け入れてくれた。その後、カメラにて動画を撮影すること、公開することの了承を得た。一問一答形式にはしないで、おばちゃんについて雑談をするというスタイルをとることも注意点として説明した。

僕は初めに、おばちゃんとの出会いを聞いた。実はこれまで聞いたことがなく、知らない話だった。「大崎くんは気付いた時からいるんだけど、いつ…」と言ったら、彼は準備していたらしい。「聞かれるなぁと思って僕も調べたんですけど…」さすがだ。「何月何日というのはわからなくて、おそらくなんですけど2017年の3月くらいの気がするんですよ」。「帰り道に寄ったの?」と僕。「当時、昭和レトロにすごい興味があって。古い建物や看板の写真を自分で足を運んで集めようと思って。それでそこ(柿生の通り)を通ったら、富士フィルムのあれ(ファミリーカメラの看板)が目に留まって」大崎くんらしい。話は続く。「そういう古いお店を見つけると、いつも質問するんですけど、『このお店どのくらいやられてるんですか』って質問必ずするんですけど」そこからの付き合いだ。ちなみに大崎くん調べによると、ファミリーカメラの50年は長いらしい。通学路にあって、通うようになったらしい。
さて、僕がかねてから気になっていたことがもう1つ。なんで大崎くんってファミリーカメラで現像したりするのだろう、ということだ。というのも、彼はファミリーカメラまで遠いし、家の近くに有名店が多くあるにも関わらず、わざわざおばちゃんのところにお願いするのだ。「大手に出すよりかは、自分こういうところに写真出してるんだぜみたいなのがあった方がカッコよかったのかなぁって」と笑って答えてくれた。一方で、今でもファミリーカメラで多くのものを買っているので、僕はまだ疑問。「近くでも買えるのにファミリーカメラで買っているのには理由があるの?」「いや、でも、それ、近くのそういうお店行ってる時も買ってるんですよ笑」。とりわけ、絶対ファミリーカメラで買うという意識はないようだ。それでも、僕はまだ疑問。「でも通学路じゃなくなってからも買ってたよね?」それに対して大崎くん「あぁ、確かに」。少し考えて、「休みの日に行ってたんですけど、何より、僕がおばちゃんと話するのが好きだったので笑」と最終的にその回答に落ち着いた。

ここから個人的に面白い話が聞けた。おもむろに「僕は、高校がすっごい嫌いで、一回リセットしないと絵に集中できないと思ってたんで。それもありますね」。これを聞いて、大崎くんには言わなかったが、内心「こういう人多そうだなぁ〜」と思っていた。他のお客さんなんかを見ていても、一度ファミリーカメラに来ては、気分転換をしてまた別の場所へ行く。そういう使い方をしている人もいる。しかも大崎くんの場合、「ある種のルーティーンみたいになってました笑」とのこと。
個人的な写真の話に脱線。軌道修正して、写真業界の話に戻した。話題は「なんでファミリーカメラは売り上げが落ちないのか」。この話を振ったところ、大崎くんが「それ、僕も昔から思ってて」と。「まず、おばちゃんの話上手さ」これはやっぱりマストのようだ。「玄関の役割もありますよね」一方で、「おばちゃんもあまり売る気はない」という僕の意見には同意のようだった。
さて、玄関の話から、話題は看板の話へ。2017年の初め、実は一悶着あって看板を外している。そのタイミングで大崎くんはファミリーカメラに通い始めているので、なんと出会って3ヶ月で、看板作りをおばちゃんからお願いされていた。スピーディーだ。普通に考えて、出会って2,3ヶ月のお客さんに対して看板をデザインお願いすることってないはず。おばちゃんらしいと本当に思う。でも看板つくりから大崎くんとの仲は深まっているし、現に長く付き合いは続いている。また、看板は好評だ。やっぱりおばちゃんはすごい。

最後にお決まり(になる)の質問をした。
「大崎くんにとっておばちゃんとは」
「青春だなぁ、と」
予想だにしない回答だった。
「中一からあの学校に通っていファミカメに行き始めたころから一番楽しかったのかなぁ、なんか充実してたなぁって感じで」
「友だちもいっぱいいたのにね」
「そうなんですよね。部活もバンバンやってたんですけど…」
ちょっと言葉に詰まる。
「それこそ看板デザインしたりとか、やっと自分の将来につながりはじめたっていうのがおっきいんですかね」
また考える様子。
「だから、おばちゃんは、なんか、それを静かに見守ってきてくれた、というか笑」
おばちゃんと大崎くんだからこその関係ではあるが、貴重なファミリーカメラの役割の一面を見ることができた。

個人的な話や相談もしつつではあるが、1時間ほど話すことができた。
インタビューの後、おばちゃんにサプライズで大崎くんを会わせようと考えていたので、15時半を過ぎたところで2人を引き合わせた。「まさか会えると思っていなかったから」とおばちゃんは喜んでいた。大崎くんもおばちゃんに会えて嬉しそうだった。「木村くんはキューピッドだね」とおばちゃんの冗談。なによりです。

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