再会の旅路⑵

Mayu Kuji
にじだより
Published in
6 min readMay 31, 2019

プロジェクトを育てる
私は卒業プロジェクトを言い訳に、会いたい人たちに会いに行くことを決めた。

この卒業プロジェクトを考え始めた当初から懸念としてあったのは、私が会いたい人に会いに行く“だけ”のプロジェクトで終わってしまうこと。私的な動機を、どのように研究・調査へと昇華させてゆくかが悩みどころだった。このことを研究室の先生に相談すると、「経過を観察すること」「研究の成果を周りに“発信する”ことを考える」と、アドバイスをいただいた。

そこで、このプロジェクトについて記録と観察を行うため、2019年4月1日、LINEやMesseger、メール等を利用し、連絡先がわかっている40人に連絡を取った。年賀状のやりとりをしていたおかげで住所を知っていた中学時代の担任の先生には、手紙を投函した。「久しぶりに会えないかな?」とメッセージを送った人もいれば、「大学の卒業プロジェクトで会いたい人を巡っていて」と会う目的をわざわざ説明した人もいる。

5月20日までに返信をもらった人は40人中37人。2週間以上返信がなく、再度連絡をしてみようと考えていた人からも、ひょんなタイミングでメッセージが返ってきたこともあった。

返信をもらった人の中には、住所が変わっていたり、旅行をしていたりという理由で会うのが難しいかもしれない、と返答があった人もいる。それぞれ予定や都合があって、すべての人と昔と同じように、というわけにはいかない。だからこそ、会えることになった人には一人ひとり感謝の気持ちを伝え、再会を果たしていきたいと思う。

そして、会いに行く
現在、「早めがいい」「いつでもいいよ」とお返事をいただいた人から、順番に声をかけ、日程を調整して会いに行っている。

4月12日〜18日まで、カナダの大学に留学中の石丸萌にロサンゼルスまで会いに行った。萌とは、卒プロが本格的に動き出す前から「会おう」と話していたので、再会⓪と位置付けている。

萌は、中高時代に所属していた器械体操部の同期。10年の付き合いの中で、今回が一番長く会っていなかった期間だったが、久々の再会ということに抵抗は感じなかった。

行った先では、ウォークオブフェイムやメルローズ・アベニューなどの主要な観光地を巡りながら、散歩をしたり、ピクニックをしたりして時間を過ごした。会話の中で、部活をしていた当時のことや、彼女の“今”の生活について知っていく。質問を並べてそれに答えてもらうという堅苦しい形式ではなく、彼女が語ってくれる言葉たちから、彼女の“過去”と“今”を読み解く。

帰国後、彼女との再会の様子を記した。

長蛇の列をなした入国審査や税関審査を通過してから、iPhoneをWi-Fiに接続する。LINEのアプリを開いても、萌からは連絡が入っていない。萌を乗せた飛行機はまだ到着していないようだ。
「予定より早く到着したよ」とだけ、連絡を入れる。

連絡が入るまで、到着ロビーで待ち構える。アメリカの空港特有のにおいを懐かしんでいると、次第に周りに目を向ける余裕が出てきた。自分のそれとは比べものにならないほどの大きさのキャリーバッグを抱える渡航者を見て、自分も海を渡ってきたのだと、高揚感を隠せない。家族連れの日本人観光客、迎えに来ている人、ツアーガイドなど、迎える人と訪れる人とが入り混じる到着ロビーで、自分が出てきたゲートを見つめ、萌が現れるのを今か今かと待ちわびていた。

もうすぐ、会えるんだ。

しばらくして、萌から「着いた!」とLINEが入った。「今どこらへん?」とやりとりを交わしながら位置情報を示し、慣れない空港でお互いを探す。

「まゆう」

聞き馴染んだ声がして振り返ると、萌が私を見つけて駆け寄ってきてくれているところだった。8時間のフライトの疲れが吹っ飛び、再会に思わず笑みがこぼれる。

彼女と再会を果たし、会うまでのやりとりはもちろん、国境や時差などさまざまな要因を乗り越えて、再会までたどりつけていることに気づかされた。

また、滞在中に訪れたグリフィス天文台では、彼女がボストンキャリアフォーラムで出会った友人と偶然再会する場面もあった。再会が、再会を呼び寄せることもあるのかもしれない。萌との再会は、これから訪れる新たな再会への期待を膨らませてくれるものとなってくれた。

自分がたどった道筋に基づくフロー
今は、連絡先を知っている人にメッセージを送り、「会える」「会いたい」とお返事をいただいた人に会いに行っている段階だ。

私が挙げた74人の中には、連絡先を知らない人ももちろんいる。この研究では、連絡先を知らない人に対して、どのような経路をたどってアクセスしたかということについても記録していく。以下の図は、完成途中ではあるが、4月1日から現在まで自分がたどってきた道筋を示す

このフローは完成すれば、「会いたい人がいるけれども連絡手段がない」という人に向けて、みちしるべとなってくれるかもしれない。

これから
連絡をして「ぜひ」と言ってくれた人と再会していくことはもちろん、並行して連絡が返ってきていない人、連絡先を知らない人へのアプローチも進めていく。返事がない人には、再度連絡をし、連絡先を知らない人については知人をたどってみたり、通っていた幼稚園や学校を訪ねてみたり。案外、自分の足を使って動いてみることが、いちばんの近道かもしれない。

会いたいとピックアップした74人のうち、何人の人と会うことができるのか。そして、再会を果たした人たちとどのような会話を紡いでいくのか。引き続き、再会をしながら、会った瞬間の様子や会って交わしたやりとりについて記録を試みていく。

これは、慶應義塾大学 加藤文俊研究室学部4年生の「卒業プロジェクト」の成果報告です(2019年6月1日時点)。 最終成果は、2020年2月に開かれる「フィールドワーク展XVI」に展示されます。

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