なぜGoogleはいまさら中国にオフィスを開くのか

Why Google is opening office in China? AI Talent?

Kan Nishida
未来の仕事
5 min readMay 14, 2018

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去年の末頃になりますが、Googleが中国の北京にAIのリサーチセンターを立ち上げるという発表がありました。Googleといえば、その昔中国のインターネットに対する検閲への抗議として中国から撤退していますが、戻ってくるようです。これからのAIの世界での中国の重要性を無視できないということでしょう。

その中国ですが、以前にも紹介したMcKinseyの”Artificial intelligence: The next digital frontier?”というレポートによると世界の6つのAIハブのうちの2つを抱えています。

こちらはたまたまそうなっというのではなく、国家の意思です。AIは中国にとって長期的に、さらに戦略的に重要な柱の一つとして位置づけられているので、この分野には莫大な投資が行われいます。

今年の夏に中国の国家成長に関する計画が提示されましたがAIに関しても強気な目標を立てています。まずは2020年までにAI分野でトップクラスの国と同等のレベルに追いつく、2025年までにAIの技術に関して大きなブレイクスルーを生み出す、2030年までにAIが中国の経済の基盤となるとのことです。

以前ここでも紹介した、AI業界のスーパースターで、もとGoogle BrainやBaiduなどでチーフ・サイエンティストをやっていたAndrew Ngによると、中国政府のこうしたビジョンが与える影響というのは非常に大きく、今までの歴史からするとそれは到達されるであろうとのことです。

そして、たまたま先週、そのAndrew Ngが彼の新しいスタートアップであるLanding.aiの発表を行っていました。

こちらはAIを様々な業界に導入していく支援をするコンサルティングの会社のようですが、まずは製造業からということで、Foxconnを戦略的パートナーに迎えAIの本格的な導入を支援していくようです。中国政府のビジョンを、こういうかたちで民間、しかもスタートアップが中心となって実現していく姿勢は素晴らしいですね。

ちなみに、中国の示すビジョンとその投資もすごい規模ですが、AIにとっての石油とも言うべきデータの規模も中国をAIの世界で優位に立たせる理由です。市民のプライバシーというものが保証されず、政府がうんといえばどんなデータでも誰からでも取ることができるわけです。例えば、機械学習を使った顔認識の技術を使って市民を監視するといったことは既に行われています。このことと、単純に人口が多いことから来る大量のデータが入手可能だという事実は、他の国には太刀打ちできません。

ところで、最後にGoogleにまた話を戻しますが、グーグル・クラウドのチーフ・サイエンティストのFei-Fei Liが今回のアナウンスメントの中でも強調していたことですが、”GoogleはAIファーストの会社”ということをGoogleのエグゼクティブ・クラスの人たちから最近よく聞きます。数年前はモバイル・ファーストという言葉がシリコンバレーの多くの会社で言われていましたが、現在はそのAI版だということです。実際、Google、Facebook、Apple、Amazonなどといった企業はAIをインターネット、ソーシャル、モバイルに続く破壊的なシフトであると捉えています。最近のシリコンバレーの会社はイノベーターのジレンマにはまって新しい変革の波に乗り遅れたIBM、Microsoftといった巨人の失敗から学んでいるので、現在とてつもない規模での勝ち組といえど、こうした変革に適応できるように生まれ変わることができないと新しく出て来る会社に淘汰されていくことを自覚しています。こうしてAIファーストというメッセージが出てくるわけです。

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Kan Nishida
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CEO / Founder at Exploratory(https://exploratory.io/). Having fun analyzing interesting data and learning something new everyday.