『メルカリ アッテ』に学ぶチームで行うサービス立ち上げの方法
メルカリのグループ会社、『atte(アッテ)』を運営する株式会社ソウゾウさんのイベント、『atte fes』に行ってきました。今回はブロガー枠で参加させてもらったので、レポートします。
まずは代表の松本龍祐氏のカンパイでスタート!

3つのプレゼンがあったのですが、僕の感想はこの3つです。
1.スターを吸収していくメルカリというチームの強さ
2.サービス立ち上げにおけるチームの自己確信の大切さ
3.事業思考をもっているチームの仕事のしやすさ
どれもチームの話が共通点だったので、プロデューサー、ディレクター、デザイナーから3つの視点でサービス立ち上げを見る、という構成でまとめてみました。どうぞ!
1.プロデューサーから見たサービス立ち上げ
ここで学ぶこと:立ち上げ〜チームづくり、コンセプトの決め方、新規事業のポイント
まず、昨年は起業家の松本さんがなぜメルカリに入ったんだろう、と思ったんですが、メンバーを見ると僕も一緒に仕事してみたい、という人ばかり。こんな質問から始まりました。
Q:ソウゾウ立ちあげのきっかけは?
A:メルカリ代表の山田進太郎さんから、「松ちゃんなんか新しいサービス作ってよ」と言われたこと。(進太郎さん↓)

Q:なぜメルカリにはいったの?
A:下記3つの理由。
- メルカリがめっちゃ伸びてた。10年に1度の会社で、世界を本気で取りに行くクレイジーさを持っている
- 一緒に仕事してみたい人が、どんどんメルカリに入っていくから。自分一人よりも大きなことができる。
- ゼロイチをつくるプロデューサーとして、自分がハマった。
これがエントランス。

Q:立ちあげまでの1ヶ月でどうatteにたどり着いたか
A:こんなプロセス。
メルカリで新規事業やるなら、C2Cだろう
メルカリはモノだから、サービスC2Cかな
マッチングが難しそうだから、ジャンル特化しようかな。。
でも、「全方位」というアプローチもありえそう。
サービスのマッチングは、地域の制限が生まれる。
これは、クラシファイド型のサービスになるのかな?
特化型のサービスをいろいろ調べて
・タスクラビットとか、特化型サービスC2Cは大きくなってない。クラウドソーシング的なアプローチはメルカリっぽくない。
・一方、クラシファイドは海外で売上大きい。クレイグスリスト(売上400億円)や58(売上200億円)など。
Q:UIはどんなふうに決めた?
A:スマホ的なサービスをつくるということで下記3つを意識!
- タイムライン
- GPSを活かす
- 即時性を大事にする
→チャット感覚なアプリ、シンプルなUIでいこう。
※ここまで1.5ヶ月くらい。

Q:なぜメルカリの中でやらずに、新しい会社にした?
A:やっぱりハコって大事。
『新しいぶどう酒は新しい皮袋に』 from「マタイによる福音書」第9章17節
サービスをつくるだけなら、会社を新規に立ちあげる必要はないけど、3つのメリットがあった。
1.スピード
小さいチームだとコミュニケーションコストが小さくてすむ。
引き継ぎとかがないので、ノイズがカットできる
不必要な接点を減らすことができる。
2.新しいチャレンジ
言語はメルカリではphpだが、ソウゾウではGoにしたり。
開発環境も、メルカリではredmineのチケット制だが、ソウゾウではbacklogにしたり。仕様書より先にprottでインターフェイスつくったり。
3.採用しやすい
採用は、目立ってなんぼ。
PHPのメルカリ&Goのソウゾウで住み分けられる。
なにより立ちあげってワクワクしますよね。うん、納得。
Q:新規事業における社内リソースってどう確保してるの?
A:基本は自前で確保する。自分で採用するくらいじゃないと。採用はノーリミットでいけるような裁量権を得ることができたのでよかった。
Q:メルカリとの立ち位置は?
A:週一回の山田-松本ラインのMTGでほぼ決めてる+CS、マーケなど「助けてもらう」ときは頻繁にしてる。
Q:既存事業とのカニバリは気にする?
A:気にしてない。他社がやるくらいなら、自社でやる。
Q:今後は?
A:プラットフォームとして新しいサービスを展開する可能性あり。
メルカリはモノ、atteは人、コト
メルカリとアッテでID、評価、ポイントの共通化。自社+投資先にて、今後、新しいサービスをどんどん増やしていく。
きっと、オンライン上での評価を溜めることが、プラットフォームとして非常に大事になるんだろうと思う(by ossam)
ここからは、会場からの質問。
Q:日本人は直接会ってモノを交換、とかニガテじゃないの?
A:たとえば、「メルカリIDでの評価が300ついてるなら安心」とかがあれば、ハードルが下がるのじゃないか。
Q:atteでどんな世界をつくりたいの?
A:メルカリは、モノがなめらかに循環する社会をつくりつつある。アッテでは、例えば、料理教室にわざわざいかなくても、近所に教えてくれる人が見つかる。そういったことがスムーズにできるような社会をつくりたい。
ディレクターから見たサービス立ち上げ
ここで学ぶこと:想いの強さ、方向付け
続きまして、ディレクターの田辺めぐみさん登場。シルエットが素敵な方です。(写真が暗くてすみませんw 実物も素敵でした)

これまでは、自分がターゲットになれるサービスをやってきたとのことですが、こちらもQA形式で。
Q:プロデューサーとディレクターでどうコンセプトを共有しているか
A:当初は、Pの松本さんが「クラシファイドでいこう」といったが、Dの田辺さんはピンとこなかったw
でも、2013年に山田さんがこんなこと言ってた。
・フリマアプリいける
・スマホに特化、デザインダサく
・USもいけるぜよ
でも、当時もピンときていなかった。
その差を知りたかった。メルカリも、昔は「住所とか教えたくない」とかあったが、乗り越えてきたから。
Q:コンセプトが決まっていくイメージはどんな流れ?
A:当初のキーワードは「地域、チャット感、募集、メルカリ」。これを、「位置起点、チャット感、誰でも募集、メルカリID」とし、ここらのパズルがハマっていく感覚。
Q:サービス利用者のペルソナはつくった?
A:ターゲットは絞ってない。あえて言うなら「マスのユーザー」
※ペルソナは、特定の一人をイメージすることで、利用シーンを明確化する作業。今回は、「メルカリの一般的なユーザー」をベースに考えた。
Q:スケジュールはどんな感じ?
A:リリースまで4ヶ月くらい。
10月キックオフ
11月prottでペーパーモック作成、開発環境、言語を決定
→ここでユーザーインタビュー
1月初回サブミット
2月招待制リリース
3月リリース
- 初期メンバーはP、D、iOS、API、デザイナー + インターン2名
- 12月〜 iOS3名、android3名、WEB3名とかに拡充
Q:立ちあげ時に気をつけたポイント
A:この3つ。
- 1つの机でコミュニケーションとる。
- Prottで実機確認しながら。つくる
- チーム内で共通言語をつくる。
例:「チャット感大事」があったので、ファーストビューに詳細を出したいけど、チャット感大事にするために下に配置。
「ターゲットは自分」的な思想が新規のサービス立ち上げでは強力な武器になりそうだな、と感じました。もちろんリサーチも組み合わせつつ、だけど(by ossam)
Q:初期の投稿増加施策はなにかしたかな?
A:絶対量は「手渡しアイテム」が多いだろう、ということでそこをファーストビューにしている。初期はメルカリからユーザーを流してもらった。
デザイナーから見たサービス立ち上げ
ここで学ぶこと:こんなデザイナーがチームにいたら超ウレシイ
締めは、井上ガイさん。本名とのことで、チョーカッコイイです。一緒にプロジェクトしてみたい。

Q:新規事業におけるデザイナーの役割とは?
A:ビジネス、クリエイティブ、テクノロジーの3つ。
クリエイティブとテクノロジーは仲良いが、ビジネス視点を持っているデザイナーは少ない。
この視点、少しでも興味持っててくれるとすごく助かりまする(by ossam)
Q:プロデューサー的なデザイナーとは?
A:今は、ユーザー体験がサービスのヒットの肝である。だから、デザイナーがこの視点を持っていることが大事。アプリを触って、ワクワク、ゾクゾクするか。ここまで見れるか。
Q:新規サービスの立ちあげ方
A:これまでの新規サービスのつくりかたは「企画→開発→ローンチ、スケール」だった。しかし、企画から開発のギャップが大きく、コンセプトが、ユーザー体験として落とし込めていないケースでの失敗が多かった。
大事なのは、早い段階からUXを検討すること。
Q:どうやったらプロデューサー視点を持てる?
A:地道に下記をやる。
- とにかくほかのサービスを調べる。
ヒットの要因、要素を抽出する(売上、ビジネスモデルまで)
- サービス領域の規模、成長度を知る
- 企画をどんどん周りにぶつけて話をする
- ヒットするサービスに関わって、感覚をつかむ★ここ大事
- ロールモデルから学ぶ
Q:サービスのヒットさせるための、デザイナーならではのこだわりは?
A:この3つ。
1.つくりたいものをつくらない。本当はこんなのつくりたい、ってあるけど、やらない。サービスのターゲット、ヒットする要因を見極めてそこに寄せる。
2.さらすことを恐れない
デザイナーは、途中のものを見せるのは勇気がいる。でも、60%くらいの状態でどんどん見せる。そこでフィードバックもらう。
3.つくってこわそう。
いくらでも変える気持ちでつくる。
Q:ペルソナをつくらない中で、どうデザインのコンセプトをつくっていったのか?
A:はっきりとペルソナは決めていないが、ざっくりとした共通認識があった。→「メルカリを一番コアに使っているユーザー」というのがあった。色使いはメルカリを意識した。メルカリの横にあっても違和感がないもの。「パッと見でちがう、でも似てる」くらいのテイスト。
番外編:キャラをつくるといいよ!
対ユーザーに。アイコンとかロゴじゃなくて、キャラクターが話しかけると、嫌な気がしない。
対チームにも。slackでチーム内でつかったり。グッズつくったりするとサービスを立ち上げた感が共有できる。
というわけで、2時間だけど盛りだくさんの会でした!僕は諸事情により飲めなかったんだけど、クラフトビールもアッテ、ごはんもアッテ、楽しい会でした!

チームから感じる、立ち上がったばかりのフレッシュさと、これから伸ばしていくぞ、という空気が何より楽しそうでした。ではまた!