あなたの人生を取り戻す、タスク管理『Getting Things Done』入門
みなさんこんにちは。あけましておめでとうございます。
チャットボット開発のスタートアップでエンジニアをやっている福本です。
2019年の仕事始めから1週間ですね。
早くも仕事が溜まり出している方もいらっしゃるのではないでしょうか。
忙しいみなさんにとって、タスクやToDoの管理はとても重要なことです。僕が過去にお会いした方、皆さん色んなやり方でタスク管理に取り組んでいました。
しかし、タスク管理についてひとつ確実に言えることは「あなたはタスク管理について考えるべきではない」ということです。
その理由は2つあります。
まずひとつ目は「あなたが本当にやりたいことはタスク管理ではない」ということ、そしてふたつ目は「車輪の再発明をしない」ということです。
タスク管理は世界中の人々が頭を悩ませている問題ですから、それについて常に考え抜いている頭のいい人が必ずいます。あなたは、そういった人の知恵を借りることをまずは考えるべきです。
そこで今回は、デビッド・アレン氏が提唱する最も有名なタスク管理メソッドである『Getting Things Done(以下GTD)』を紹介していきたいと思います。
また、普通にGTDの話をしてもつまらないので、タスク管理を通じて「人生を豊かにすること」についても少し話をします。
人々はなぜタスクを管理するのか
GTDの説明に入る前に、「人はなぜタスク管理をするのか」という、当たり前の前提を理解していない人が多いので、まずはそこを説明します。
これについては、アレン氏の著書『ストレスフリーの整理術』を読めば一発で理解できます。以下引用。
昔の仕事は単純明快だった。畑は耕し、機械や箱は組み立て、牛は乳をしぼればよかった。何をすべきかは誰が見てもわかたし、その仕事が達成されたかどうかもひと目で判断できた。しかし、今はどうだろう。あなたが抱えているプロジェクトの多くにははっきりとした「終わり」がない。
つまり「産業構造の変化により知的労働が増えた結果、仕事は複雑になり、管理しづらいものになった」というのがアレン氏の主張です。
その管理しづらい仕事の管理について、GTDの説明とともに次の章以降で述べていくこととします。
GTDについて
上記が、GTDにおけるタスク管理の処理のフローであり、GTDのすべてです。
といっても、これだけ急に見せられても意味がわからないと思うので、説明していきます。GTDは以下の5つのステップが基礎です。
< 収集 >
このフェーズでは、”Inbox”と呼ばれる収集ツール(ノートでもメモアプリでもなんでも可)に、あなたの「気になること」を片っ端から全部ぶち込んでください。
全部です。その具体性や粒度や種類などは一切問わないので、あなたの脳内をうろつくじゃまものを洗いざらい吐き出してください。
最初に”収集”を行うと、普通に何時間もかかります。
なぜそこまで徹底的に収集するかというと、「気になっていること」を脳に保存しておくこと自体がムダだからです。気になっていることに対し「やる・やらない」という判断を脳内で何度も繰り返すと、脳の疲れに繋がります。
収集を適切に行うことで脳をリフレッシュし、自分の行うことに集中する事ができるのです。
< 処理 >
続いての”処理”フェーズでは、先ほど収集した「気になること」に向き合い、「これは何なのか?」という質問を投げかけてください。
具体的に答えられたら、次に「それについて行動する必要があるか?」という質問を同じく投げかけましょう。
ノーの場合は、「気になること」について、以下の3つのパターンで行動してください。
- 何も行動をする必要がないもの【削除する】
- いつか行動する可能性があるもの【いつか/多分やるリストへ】
- あとで必要になるかも知れない情報【資料化しフォルダへ保存】
さて、イエスの場合は行動を起こさなくなくてはなりません。
ここからさらに、次の2つについて判断してください。
- どのような結果を求めているか?(=プロジェクト)
- 次に取るべき具体的な行動は何か?
プロジェクトは今後「解決していないこと」として、最終的に求める結果が出るまで残り続けますが詳細は割愛し、「次に取るべき行動」について進めます。
ここが”処理”フェーズのキモで、すべての行動を「目に見える具体的なひとつの行動」に落としてください。
<例:上司とのミーティング>
- 会議室の予約
- 上司へ会議体の連絡
- 議事録の作成
さらにさらに、それぞれの行動は「いつ」「誰が」やるかによって以下の3つに分類されます。
- 今すぐやる:2分以内で取れる行動は、ただちに実行
- 任せる:2分以上かかり、自分でやるべきでないことは誰かに任せる
- あとでやる:2分以上かかり、自分がやるべきことなら「次に取るべき行動」リストに追加
少し長くなりましたが、ここまでで気になることを処理できたら、それらの管理のために整理していきます。
< 整理 >
”整理”フェーズでは、先ほど”処理”した「気になること」を、以下のカテゴリーに振り分けていきます。
詳細は書籍やドキュメントに譲って、重要なのは”処理”のおかげで、多くのカテゴリーが「リスト化」されていることです。
適切な状態で「気になること」がリスト化されていることによって、後述する”レビュー”や”実行”をよりシンプルに行うことができます。
< レビュー >
さて、GTDをうまく機能させるために、リストを定期的に見直す必要があります。これを”レビュー”と呼びます。
具体的には、カレンダーリストを見て「日時に変更はないか」を確認したり、次に取るべき行動リストを確認し、ベストな行動かどうかをチェックします。
この見直しを怠ると「このリストって正しいんだっけ?」という状況に陥ってしまい、また脳内に「気になること」が溜まってしまいます。
< 実行 >
いよいよこの”実行”フェーズで、「次に取るべき行動リスト」を片っ端からこなしていきます。
GTDではいくつかのやり方で行動リストに手を付ける順番をつけるモデルが複数存在します。興味のある人は調べてみて、自分にあったやり方を取り入れてみることをおすすめします。
- 4つの基準で現在の行動を選ぶモデル
- 1日の仕事を3つのカテゴリーで評価するモデル
- 6つのレベルで仕事をレビューするモデル
ここで感じてほしいのは、今までのフェーズのおかげで、脳がクリアな状態で自信を持って行動に取り掛かれていることです。
この状態を作り出すことで、集中したベストな状態で仕事に取り掛かれますし、割り込みを受け入れる余裕が生まれます。
余裕を持った上での割り込みは、ストレスではなく新たな力を発揮するチャンスに変わるはずです。
GTDで生まれる「いいこと」まとめ
さて、GTDについてあらかた説明し終わったところで、僕がGTDを行う上で感じた威力を軽くまとめてお伝えできればと思います。
- ”収集”でプロジェクトの未来を想像するので、計画を立てやすくなった
- 頭の片隅に「気になること」を置かずに済むので、目の前のことに集中できるようになった
- 実行に余裕ができたことで、割り込みや依頼にも柔軟に対応でき、サブプロジェクトへの取り組みを積極的に行えるようになった
- やることリストが物理的な行動単位なので、粒度が自然に揃い管理しやすくなった
細かいことはたくさんありますが、ざっとこんなところでしょうか。
ちなみにツールですが、僕は『Omnifocus 3』を使っています。
『Omnifocus』はGTDの生みの親デビッド・アレン氏が直接監修したソフトウェアで、現状最もGTDに向いているツールであると言えるでしょう。
iOS版など複数のデバイスでの管理も可能ですが、いかんせん高いです。まずはトライアルからGTDをはじめてみて、効果を実感した辺りから移行することをおすすめします。
GTDでやらない方がいいこと
< タスクやプロジェクトのネスト管理 >
ちょっと頭のいい人がやりがちですが、入れ子構造にしてタスクやプロジェクトを管理するのはあまりよくありません。
タスクやプロジェクトは必ずしも『MECE』にならないからです。
そのため、分類自体を考えるのに時間がかかってしまいます。
< 仕事とプライベートでツールを分ける >
議論の余地はありますが、僕は仕事とプライベートでGTDのためのツールを分けるべきではないと考えています。
まず、Inboxやタスクのリストが一本化されていないと管理がめんどくさくなるので、やらなくなる人が多いです。
また、『ワークアズライフ』が提唱される現代社会で、仕事とプライベートで使うものや考え方を分けるのはナンセンスだと思います。
< 過度な優先順位付け >
自分がやるべきことに集中するため、物事に優先順位をつけるのは大切ですが、過度に行うのはよくありません。
「ソートの計算量」が巨大になってしまうからです。
例えば、優先順位を決定するために「隣り合う2つを比較し入れ替える」を繰り返す『バブルソート』の計算量は N(N-1)/2 です。タスクが100個、一度の比較に3秒かかる場合、すべてを終えるのに4時間以上かかってしまします。
(西尾泰和氏の著書『エンジニアの知的生産術』より引用)
さいごに
昨今、『AI時代』や『人生100年時代』の到来が喧伝されています。
その是非はさておき、「機械による自動化が進む」「人間の寿命が伸びる」ということは紛れもない事実でしょう。
そんな中で重要なのは、「自分が本当にやりたいことを見つけ、それに熱中すること」です。
なぜなら、「人間の意志は機械で代替されない」「何もしない人に人間の寿命は長すぎる」からです。
人生は何事をもなさぬにはあまりに長いが何事かをなすにはあまりに短い - 中島 敦『山月記』
だからこそ今、自分が本当にやりたいことをやり遂げるために、タスクを効率よく捌き、好きなことに集中することが求められているいます。
タスク管理とは仕事のためではなく、人生そのものを良くするためのものなのです。