生物学 第2版 — 第12章 メンデルの実験と遺伝 —
Japanese translation of “Biology 2e”
OpenStax のサイトで公開されている教科書“ Biology 2e”の翻訳です。こちらのページから各章へ移動できます。
12 | メンデルの実験と遺伝
この章の概要
12.1:メンデルの実験と確率の法則
12.2:特徴と形質
12.3:遺伝の法則
はじめに
遺伝学とは、遺伝についての研究です。ヨハン・グレゴール・メンデルは、染色体または遺伝子が同定されるずっと前で、減数分裂がよく理解されていなかった時代に遺伝学のための枠組みを構築しました。メンデルは単純な生物学的系を選択し、大きなサンプルサイズを使用して系統的、定量的分析を行いました。メンデルの仕事のおかげで、遺伝の基本原則が明らかにされました。私たちは現在、染色体上に保持されている遺伝子が、複製、発現、または突然変異する能力を有する遺伝の基本的な機能単位であることを知っています。今日、メンデルによって提示された公理は、古典的遺伝学またはメンデル遺伝学の基礎を形成しています。メンデル遺伝学によれば、すべての遺伝子が親から子孫に伝わるわけではありませんが、メンデルの実験は遺伝について考えるための優れた出発点として役立ちます。
12.1 | メンデルの実験と確率の法則
この節が終わるまでに、あなたは次のことができるようになります:
•メンデルの実験的研究の成功の科学的な理由を記述する
•顕性および潜性対立遺伝子を含む一遺伝子交雑の予想される結果を記述する
•和の法則と積の規則を適用して確率を計算する
ヨハン・グレゴール・メンデル(1822–1884年)(図12.2)は生涯にわたる学習者、教師、科学者、そして信仰の人でした。彼は若者の時に、今のチェコ共和国にあるブルノの聖トマスのアウグスチノ修道会に加わりました。修道院によって支えられ、彼は高校と大学レベルで物理学、植物学と自然科学の教科を教えました。1856年に、彼はミツバチと植物の遺伝のパターンを含む十年あまりに及ぶ探求を始め、最終的に彼の主たるモデル系(他の系に適用されるような特定の生物学的現象を研究するために使用される、便利な特徴を持つ系)としてエンドウマメ植物に落ち着きました。1865年に、メンデルは地元の自然史協会に約30000のエンドウマメ植物に関する彼の実験の結果を発表しました。彼は、形質が、他の形質とは無関係に、そして顕性および潜性のパターンで、両親から子孫に伝達されることを示しました。1866年に、彼はブルノ自然史協会の会誌で彼の論文「植物雑種に関する実験」[1]を発表しました。
[1] Johann Gregor Mendel, Versuche über Pflanzenhybriden Verhandlungen des naturforschenden Vereines in Brünn, Bd. IV für das Jahr, 1865 Abhandlungen, 3–47. [for English translation see http://www.mendelweb.org/Mendel.plain.html (http://openstax.org/l/mendel_experiments) ]
メンデルの研究は科学界にはほとんど気付かれませんでした。当時の科学界では、遺伝の過程は親の形質の混合を含み、それは子供に中間的な肉体的外観を生み出すと誤って信じられていました。遺伝の混合理論は、元の親の形質が混合によって子供の中で失われるか吸収されると主張していました。しかし、私たちは今ではそうではないことを知っています。この仮説的プロセスは、私たちが現在、連続変異として知っていることのために正しいように見えました。連続変異は、人間の身長のような特徴を決定するための多くの遺伝子の作用から生じます。子供は彼らの両親の形質の「混合物」であるように見えます。
連続的な特徴の代わりに、メンデルははっきりと区別できる分類(具体的には紫の花と白の花)として遺伝される形質を扱いました。これは不連続変異と呼ばれます。メンデルがこれらの種類の形質を選択したことで、彼はその形質が子孫の中で混ざり合わず、吸収もされなかったこと、そしてむしろその形質は独特さを維持し、受け継がれるものであることを実験的に見ることができました。1868年に、メンデルは修道院の修道院長になり、司祭としての務めと引き換えに彼の科学的な追求をあきらめました。彼の一生の間には、彼の並外れた科学的貢献は認められていませんでした。実際のところ、彼の研究が遺伝の染色体による基礎を発見する間際にいた科学者たちによって再発見され、再現され、そして活性化されたのは1900年になってからでした。
メンデルのモデル系
メンデルの独創的な研究は、遺伝を研究するためにエンドウマメ(Pisum sativum)を使用することによって達成されました。この種は自然では自家受粉、つまり花粉が個々の花の中で卵子に遭遇します。花弁は受粉が終わるまで他の植物からの受粉を妨げるようにしっかりと密封したままでいます。その結果、非常に近交系の、すなわち「何世代にもわたって同じ特徴を示す」エンドウマメ植物となります。これらは常に親とよく似た子孫を産む植物です。近交系のエンドウマメを用いて実験することにより、メンデルは、植物が近交系でない場合に起こり得る、子孫における予想外の形質の出現を回避しました。またエンドウマメは、1つの季節のうちに成熟するまで成長します。それはつまり、比較的短期間で数世代を評価できることを意味します。最後に、エンドウマメは同時に大量に栽培することができ、メンデルが彼の結果は単なる偶然によってもたらされたのではないと結論付けることを可能にしてくれます。
メンデル交雑
メンデルは、異なる形質を持っている2つの近交系の個体を交配させるような交配を行いました。自然では自家受粉するエンドウマメにおいて、これは、ある種類の成熟したエンドウマメの葯からの花粉を別の種類の別の成熟したエンドウマメの柱頭に手作業で移すことにより行われます。植物では、花粉は雄の配偶子(精子)を柱頭に運びます。柱頭とは、花粉をとらえて精子が雌しべを下方に移動して雌の配偶子(卵子)に到達するのを可能にするような粘着性の器官です。エンドウマメが自家受粉により花粉を受け取り彼の実験結果を混乱させるのを防ぐために、メンデルは成熟する前に植物の花からすべての葯を慎重に取り除きました。
第1世代の交雑で使用された植物は、P₀、または親世代1と呼ばれました(図12.3)。それぞれの交雑の後、メンデルはP₀植物に属する種子を集め、それらを次の季節に育てました。これらの子孫は、F₁、または雑種第一代(first filial generation:filial = 子孫、娘または息子)と呼ばれました。メンデルはF₁世代の植物の特徴を調べた後、彼はそれらが自然に自家受粉することを可能にしました。それから、彼はF₁植物から種子を集めて育て、F₂世代、すなわち雑種第二代を作り出しました。メンデルの実験はF₂世代からF₃およびF₄世代などにまで及びましたが、P₀ — F₁ — F₂世代における特徴の比が最も興味深く、メンデルの公理の基礎となりました。
エンドウマメの特徴が遺伝の基礎を明らかにした
彼の1865年の出版物で、メンデルは7つの異なる特徴(それぞれが2つの対照的な形質を持つ)に関する交雑の結果を報告しました。形質とは、遺伝的特徴の物理的外観のバリエーションとして定義されます。その特徴は、植物の丈、種子の質感、種子の色、花の色、エンドウマメのさやのサイズ、エンドウマメのさやの色、および花の位置を含んでいました。たとえば、花の色の特徴については、2つの対照的な形質は白色と紫色でした。それぞれの特徴を十分に調べるために、メンデルは多数のF₁およびF₂植物を作り出し、1万9959個のF₂植物のみからの結果を報告しました。彼の調査結果は一貫していました。
メンデルは花の色についての交雑でどのような結果を見つけたのでしょうか?最初に、メンデルは白色または紫色の花をつける近交系の植物を手にしていることを確認しました。メンデルが何世代を調べたかにかかわらず、白い花をつける親から自家交配された子孫は白い花をつけ、紫色の花をつける親から自家交配された子孫は紫色の花をつけていました。さらにメンデルは、このエンドウマメ植物が花の色以外は物理的に同一であることを確認しました。
これらの検証が完了すると、メンデルは紫色の花をつける植物からの花粉を白い花をつける植物の柱頭に塗り付けました。この交雑から生じた種子を集めて播種した後、メンデルはF₁交配世代の100%が紫色の花をつけていることを発見しました。当時の常識(混合理論)では、交配された花は淡い紫色であるか、交配された植物は同数の白と紫の花をつけると予測していたでしょう。言い換えれば、対照的な親の形質は子孫の中で混ぜ合わされると予想されました。代わりに、メンデルの結果は、F₁世代の白い花の形質が完全に消えたことを示していました。
重要なことに、メンデルは彼の実験をそこで止めませんでした。彼は、F₁植物が自家受粉することを可能にし、そしてF₂世代植物のうち、705個が紫色の花をつけ、224個が白色の花をつけることを発見しました。これは3.15個の紫色の花に対して1個の白い花という比率、つまり約3:1の比率です。メンデルが紫色の花をつける植物から白い花をつける植物の柱頭に花粉を移したとき、あるいはその逆を行ったとき、彼はどちらの親(雄か雌か)がどちらの特性に寄与したかに関係なく、ほぼ同じ比率を得ました。これは、相互交雑と呼ばれ、それはペアとなる交雑であって、ひとつの交雑の雄と雌のそれぞれの形質がもうひとつの交雑の雌と雄のそれぞれの形質になるようなものです。メンデルが調べた他の6つの特徴については、F₁世代とF₂世代は花の色の場合と同じように振舞いました。2つの形質のうちの1つはF₁世代では完全に消滅し、F₂世代では約3:1の割合で再度出現しました(表12.1)。
メンデルは、何千もの植物についての彼の結果をまとめると、特徴が発現する形質と潜伏する形質とに分けられるとの結論を下しました。彼はこれらをそれぞれ顕性形質および潜性形質と呼びました。顕性形質とは、交配において変わらずに受け継がれるものです。潜性形質は、交配した子の世代において潜伏するかまたは消滅します。しかしながら、潜性形質は交配した子の、さらに子の世代に再び現れます。顕性形質の例は、紫色の花の形質です。これと同じ特徴(花の色)について、白い色の花は潜性形質です。F₂世代で潜性形質が再出現したという事実は、F₁世代の植物の中では形質が分離されたままである(混合されていない)ことを意味していました。メンデルはまた、植物が花の色の特徴についての形質の2つのコピーを持っていること、そして親が出会うときにはそれぞれの親がその2つのコピーのうちの1つをその子孫に伝達するということを提案しました。さらに、顕性形質が物理的に観察されるということは、生物の遺伝的構成にはその特徴についての2つの顕性型が含まれている、あるいは1つの顕性型と1つの潜性型が含まれている、ということを意味していました。逆に、潜性形質が観察されるということは、その生物がこの特徴についての顕性型を欠いていることを意味していました。
それでは、なぜメンデルは交雑の中で3:1の比率を繰り返し得ることになったのでしょうか?そのような比率をもたらす遺伝の基本メカニズムをメンデルがどのように推定したのかを理解するために、私たちはまず確率の法則を振り返ってみなければなりません。
確率の基本
確率とは、確からしさの数学的尺度です。ある事象の経験的確率とは、その事象が発生した回数をその事象が発生する機会の総数で割ることによって計算されます。ある事象が発生すると予想される回数をそれが発生する可能性がある回数で割ることによって理論的確率を計算することも可能です。経験的確率は、メンデルのものと同様に、観測から得られます。一方、理論的確率は、事象がどのように生成されるのかを知ること、そして個々の結果の確率が等しいと仮定することから得られます。ある事象に対しての1の確率とは、それが起きることが確実であることを示し、0の確率とは、それが起きないことが確実であることを示します。遺伝的事象の例は、エンドウマメ植物によって産みだされる丸い種子です。
ある実験では、メンデルは、近交系の両親でそのうちの1つは丸い種子を持ち、そのうちの1つはしわのある種子を持つときには、「丸い種子」事象が発生する確率は1であることを示しました。続いてF₁植物が自家交雑したとき、所与のF₂子孫が丸い種子を持つ確率は、4分の3になりました。言い換えれば、無作為に選択されたF₂子孫の大きな個体群において、75%が丸い種子を持つと予想された一方、25%はしわのある種子を持つと予想されました。メンデルは多数の交雑を利用することで、確率を計算し、それを使用して他の交配の結果を予測することができました。
積の規則と和の規則
メンデルは、エンドウマメ植物が親から子へと個別の単位として特徴を伝達することを実証しました。後述するように、メンデルはまた、種子の色や種子の質感などのさまざまな特徴が互いに独立して伝達されており、別々の確率分析で検討することができると判断しました。たとえば、緑色でしわのある種子を持つ植物と、黄色で丸い種子を持つ植物とで交雑を行っても、その子孫では、(種子の質感を無視すれば)緑色と黄色の種子が3:1の比率で現れ、(種子の色を無視すれば)丸型としわのあるの種子の比率が3:1で現れました。色と質感の特徴は互いに影響しませんでした。
確率の積の規則は、特徴の独立した伝達というここでの現象に適用することができます。積の規則とは、2つの独立した事象が一緒に発生するときの確率は、それぞれの事象が単独で起きるときの個々の確率をかけ合わせることによって計算できるというものです。積の規則を説明するために、あなたが6面のサイコロ(D)を転がし、同時にコイン(P)を弾くところを想像してください。サイコロは1~6の範囲の数字を出す(D₁ ~ D₆)一方で、コインは表(Pₕ)または裏(Pₜ)が出ます。サイコロを転がした結果はコインを弾いた結果に影響を与えませんし、逆もまた同じです。この行動の結果は12通りあり(表12.2)、それぞれの事象は同じ確率で発生すると予想されます。
12の可能な結果のうち、サイコロで2の目が出る確率は2/12(または1/6)で、コインで表が出る確率は6/12(または1/2)です。積の規則により、2の目およびコインの表を組み合わせた結果が得られる確率は、(D₂)×(Pₕ)=(1/6)×(1/2)すなわち1/12です(表12.3)。確率の説明の中の単語「および」に注目してください。「および」は積の規則を適用するためのシグナルです。たとえば、積の規則がどのように二遺伝子交雑に適用されるかを考えてみましょう。F₂の子が2つの顕性形質の両方を有する確率は、それぞれの特徴について顕性形質を有する確率の積であり、次のように示されます:
3/4 × 3/4 = 9/16
一方、確率の和の規則は、複数の経路によって発生する可能性がある2つの相互に排他的な結果を検討するときに適用されます。和の規則は、2つの相互に排他的な事象のうちの1つの事象または他の事象が発生する確率は、それらの個々の確率の和であることを述べています。確率の説明の中の単語「または」に注目してください。「または」は、和の規則を適用するべきであることを示しています。ここで、あなたが2枚のコイン(P)と(Q)を弾くところを想像してみましょう。1枚のコインで表が出て、1枚のコインで裏が出る確率は?この結果は、2通りの場合によって達成することができます:Pが表(Pₕ)でQが裏(Qₜ)となるか、またはQが表(Qₕ)でPが裏(Pₜ)となる場合です。どちらの場合でも結果は満たされます。私たちは、和の規則によって表と裏が1枚ずつ得られる確率を計算します。[(Pₕ) × (Qₜ)] + [(Qₕ) × (Pₜ)] = [(1/2) × (1/2)] + [(1/2) × (1/2)] = 1/2(表12.3)。私たちが和を計算する前に、積の規則を使用してPₕおよびQₜの確率、さらにQₕおよびPₜの確率を計算したことにも注意してください。やはり、和の規則を適用して、二遺伝子交雑のF₂世代においてただ1つの顕性形質を有する確率を示すことができます:
3/16 + 3/16 = 3/8
実際に確率法則を使用するには、小さいサンプルサイズは偶然に起因する偏差を生じやすいため、私たちは大きいサンプルサイズを用いて作業する必要があります。メンデルは大量のエンドウマメ植物を調べることによって、F₂世代に現れる形質の確率を計算することができました。あなたがこの先で学ぶように、この発見は親の形質が知られているときには、子孫の形質が受精の前においてさえも正確に予測することができることを意味しました。
12.2 | 特徴と形質
この節が終わるまでに、あなたは次のことができるようになります:
•顕性および潜性遺伝子システムにおける遺伝子型と表現型の関係を説明する
•一遺伝子交雑における遺伝子型と表現型の予想される割合を計算するために、パネットの方形を作成する
•検定交雑の目的と方法を説明する
•不完全顕性、共顕性、潜性致死、複対立遺伝子、伴性など、非メンデル的な遺伝パターンを特定する
物理的な特徴は、染色体上で運ばれる遺伝子を通じて発現されます。エンドウマメの遺伝的構成は、それぞれの染色体の2つの類似した、または相同なコピー(それぞれの親から1つずつ)からなります。相同染色体のそれぞれの対は、遺伝子の線形な順序が同じです。言い換えれば、エンドウマメはそれぞれの染色体の2つのコピーを持っているという点で二倍体生物です。同じことが他の多くの植物や事実上すべての動物に当てはまります。二倍体生物は一倍体配偶子を産生し、それは受精時に結合して二倍体接合子を作り出すようなそれぞれの相同染色体の1つのコピーを含みます。
単一の遺伝子が単一の特徴を制御する場合、二倍体生物はその特徴の同じバージョンをコードししたりしなかったりする2つの遺伝子コピーを有します。突然変異によって生じ、相同染色体上の同じ相対位置に存在する遺伝子変異は対立遺伝子と呼ばれます。メンデルは、たった2つの対立遺伝子型を持つ遺伝子の遺伝を調べましたが、ある自然の個体群においては、何らかの遺伝子について2つよりも多い対立遺伝子が存在することが一般的です。
表現型と遺伝子型
二倍体生物における所与の遺伝子についての2つの対立遺伝子は発現されて、そして相互作用して物理的な特徴を生じさせます。生物によって発現される観察可能な形質は、その表現型と呼ばれます。物理的に目に見えるものと発現されていないものの両方の対立遺伝子からなるような、生物の基本的な遺伝子構造は、その遺伝子型と呼ばれます。メンデルの交配実験は、表現型と遺伝子型との間の違いを実証しています。一方の親が黄色のさやを有し、他方の親が緑色のさやを有している近交系植物が交雑受精された場合、全てのF₁交配子孫は黄色のさやを有していました。すなわち、交配された子孫は、表現型的には黄色のさやを有する近交系の親と同一でした。しかしながら、私たちは、緑色のさやを有する親によって提供された対立遺伝子が、単純に失われたのではないことを知っています。なぜなら、それはいくつかのF₂子孫に再び現れたからです。それゆえ、F₁植物は黄色のさやを有する親とは遺伝子型が異なっていたにちがいありません。
メンデルが彼の実験で使用したP₁植物は、それぞれ彼が研究していた形質に関してホモ接合型でした。所与の遺伝子または遺伝子座においてホモ接合型である二倍体生物は、それらの相同染色体上にその遺伝子について2つの同一の対立遺伝子を有します。メンデルが使った親のエンドウマメ植物は常に近交系でした。なぜなら、作り出される両方の配偶子が同じ形質を持っていたためです。対照的な形質を有するP₁植物が交雑受精されたとき、すべての子孫は対照的な形質についてヘテロ接合型です。ヘテロ接合型とは、調べられている遺伝子についてそれらが異なる対立遺伝子を有することが、その遺伝子型に反映されていることを意味します。
顕性および潜性対立遺伝子
ホモ接合型およびヘテロ接合型生物についての私たちの議論は、なぜF₁ヘテロ接合型の子孫が両方の対立遺伝子を発現するのではなく、一方の親と同一であったのか、という疑問を私たちにもたらします。エンドウマメ植物の7つの特性すべてにおいて、2つの対照的な対立遺伝子のうちの1つが顕性であり、他は潜性でした。メンデルは、顕性対立遺伝子を発現単位因子と呼び、潜性対立遺伝子を潜伏単位因子と呼びました。私たちは現在では、これらのいわゆる単位因子が、実際には相同染色体対上の遺伝子であることを知っています。顕性および潜性パターンで発現される遺伝子については、ホモ接合型顕性およびヘテロ接合型の生物は同一のように見えます(すなわち、それらは異なる遺伝子型を有しますが同じ表現型を有します)。潜性対立遺伝子は、ホモ接合型潜性の個体においてのみ観察されるでしょう(表12.4)。
遺伝子および対立遺伝子に言及するためのいくつかの決まり事が存在します。この章の目的のために、私たちは遺伝子の対応する顕性形質の最初の文字を使って遺伝子を省略します。たとえば、紫(バイオレット)はエンドウマメ植物の花の色にとっての顕性形質であるので、花の色の遺伝子はVと省略します(遺伝子記号はイタリック体にすることが慣例であることに注意してください)。さらに、私たちは顕性および潜性の対立遺伝子を表すためにそれぞれ大文字と小文字を使用します。したがって、私たちは、紫色の花を持つホモ接合型顕性のエンドウマメ植物の遺伝子型をVVとして、白い花を持つホモ接合型潜性のエンドウマメ植物をvvとして、そして、紫色の花を持つヘテロ接合型エンドウマメ植物をVvとして指します。
一遺伝子交雑におけるパネットの方形アプローチ
1つの特徴だけが異なる近交系の2つの親の間で受精が起こるとき、その過程は一遺伝子交雑と呼ばれます。そして、結果として生じる子孫は一遺伝子雑種です。メンデルは、対照的な形質を含むそれぞれの特徴について7つの一遺伝子交雑を行いました。メンデルは、F₁世代とF₂世代における彼の結果に基づいて、一遺伝子交雑でのそれぞれの親が、それぞれの子孫での2つの対になった単位因子のうちの1つに寄与しており、単位因子のすべての可能な組み合わせは同等にあり得ると仮定しました。
一遺伝子交雑を実証するために、黄色と緑色のマメの種子を有する近交系のエンドウマメ植物の場合を検討してみましょう。顕性の種子の色は黄色です。したがって、親の遺伝子型はそれぞれ、黄色の種子を持つ植物ではYY、緑色の種子を持つ植物ではyyでした。イギリスの遺伝学者レジナルド・パネットによって考案されたパネットの方形は、遺伝的交雑または交配のあり得る結果とそれらの予想される頻度を予測するために確率の規則を適用するように描くことができます。パネットの方形を作成するために、親の対立遺伝子のすべての可能な組み合わせが、表の上部(一方の親について)および側部(他方の親について)に沿って記載され、それらの一倍体配偶子への減数分裂による分離を表します。それから、どの対立遺伝子が組み合わされているかを示すために、卵子と精子の組み合わせが表の四角の中に書き入れられます。そうすると、それぞれの四角は、この交配から生じる可能性がある接合子または受精卵の二倍体遺伝子型を表すことになります。それぞれの可能性が同等にあり得るので、遺伝子型の比率はパネットの方形から決定することができます。もし遺伝のパターン(顕性または潜性)がわかっている場合には、表現型の比率も推測できます。2つの近交系の親の一遺伝子交雑の場合、それぞれの親は1種類の対立遺伝子に寄与します。この場合、可能な遺伝子型は1つだけです。すべての子孫はYyで、黄色い種子を持っています(図12.4)。
それぞれの親は2つの異なる対立遺伝子のうちの1つを提供することができるので、Yyヘテロ接合型子孫のうちの1つの自己交雑は2×2のパネットの方形で表すことができます。したがって、その子孫は4つの対立遺伝子の組み合わせ、YY、Yy、yY、またはyyのうちの1つを潜在的に持つことがあります(図12.4)。Yy遺伝子型を獲得する方法は2つあることに注意してください。Yを卵子から、yを精子から得るもの、またはyを卵子から、Yを精子から得るものです。これら両方の可能性を考慮に入れなければなりません。メンデルのエンドウマメ植物の特徴は、相互交雑でも同じように振舞ったことを思い出してください。それゆえ、2つの可能なヘテロ接合型の組み合わせは、それらの顕性および潜性の対立遺伝子が異なる親に由来するにもかかわらず、遺伝子型および表現型が同一である子孫を産み出します。それらは一緒にまとめられます。受精はランダムな事象であるため、それぞれの組み合わせが同等にあり得るものであり、子孫においてYY:Yy:yy遺伝子型が1:2:1の比率を示すことが予想されます(図12.4)。さらに、YYとYyの子孫は黄色の種子を持ち、表現型的に同一であるため、確率の和の規則を適用して、私たちはその子孫が黄色3:緑色1の表現型の比率を示すことが予想できます。実際に、メンデルは大規模なサンプルサイズで作業することにより、個々の形質について、交雑から生じるすべてのF₂世代でおよそこの比率を観察しました。
メンデルは、F₃交雑を行うことによってこれらの結果を確認し、そこでは彼は顕性および潜性を発現するF₂植物を自家交雑させました。彼が緑色の種子を発現する植物を自家交雑したとき、すべての子孫は緑色の種子を有し、すべての緑色の種子がyyのホモ接合型遺伝子型を有することを確認しました。彼が黄色の種子を発現するF₂植物を自家交雑したとき、彼は植物の3分の1が近交系であり、植物の3分の2が黄色:緑色の種子を3:1の比率で分離したことを発見しました。この場合、近交系植物はホモ接合型(YY)遺伝子型を有し、一方で、分離した植物はヘテロ接合型(Yy)遺伝子型に対応していました。これらの植物が自家受精したとき、その結果はF₁自家受精交雑とまさに同様でした。
検定交雑は顕性表現型を識別する
メンデルは、既知のホモ接合型またはヘテロ接合型の親の間の交雑の子孫を予測する以外に、顕性形質を発現する生物がヘテロ接合型かホモ接合型かを判断する方法も開発しました。それは検定交雑と呼ばれ、この技術は植物や動物のブリーダーによって今でも使用されています。検定交雑において、顕性を発現する生物は、同じ特徴についてホモ接合型潜性である生物と交雑されます。もし顕性を発現する生物がホモ接合型である場合、全てのF₁子孫は顕性形質を発現するヘテロ接合型となります(図12.5)。あるいは、もし顕性を発現する生物がヘテロ接合型である場合、F₁子孫はヘテロ接合型と潜性ホモ接合型を1:1の比率で示すでしょう(図12.5)。検定交雑は、単位因子のペアが等しく分離するというメンデルの仮説の正当性をさらに立証しています。
ビジュアルコネクション
エンドウマメ植物では、丸いエンドウマメ(R)がしわのあるエンドウマメ(r)に対して顕性です。あなたはしわのあるマメを持つひとつのエンドウマメ植物(遺伝子型rr)と、丸いマメを持つ未知の遺伝子型の植物との間で検定交雑をします。あなたは3つの植物が得られました。そして、そのすべては丸いマメを持っています。あなたは、このデータから、丸いマメを持つ親の植物がホモ接合型顕性かヘテロ接合型かどうかわかるでしょうか?もし丸いマメを持つ親の植物がヘテロ接合型である場合、3つの子のエンドウマメの無作為標本がすべて丸型になる確率は何ですか?
多くの人間の病気は遺伝的に受け継がれています。何人かのメンバーが潜性の遺伝性疾患に苦しんでいるような家族の中で健康な人は、彼または彼女がその疾患の原因となる遺伝子を持っているかどうか、そしてその疾患を彼または彼女の子孫に受け渡すようなリスクが存在するかどうかを知りたいかもしれません。もちろん、人間で検定交雑を行うことは非倫理的で非実用的です。その代わりに、遺伝学者は家系分析を使って人間の遺伝病の遺伝パターンを研究します(図12.6)。
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1、2、および3と表示された個人の遺伝子型は何ですか?
顕性と潜性についてのいくつかの代替物
エンドウマメ植物を用いたメンデルの実験は以下のことを示唆しています。(1)すべての遺伝子に対して2つの「単位」または対立遺伝子が存在します。(2)対立遺伝子は各世代においてそれらの完全性を維持します(混合はありません)。(3)顕性対立遺伝子の存在下では、潜性対立遺伝子は隠れており、表現型に寄与しません。したがって、潜性対立遺伝子は「運ばれ」るものの、個体では発現しないことがあります。そのようなヘテロ接合型の個体は時に「キャリア」と呼ばれます。他の動植物におけるさらなる遺伝的研究では、はるかに大きな複雑さが存在することが示されましたが、メンデル遺伝学の基本原則はまだ当てはまることを示しています。続く節では、メンデル主義の拡張についていくつか考察します。もしメンデルがこれらの遺伝的複雑さを呈する実験系を選んでいたら、彼の結果が何を意味するのか理解できなかった可能性があります。
不完全顕性
形質が顕性と潜性のペアとして遺伝するというメンデルの結果は、子孫が両親の形質を混ぜ合わせたものを呈するという当時の見解と矛盾していました。しかしながら、ヘテロ接合型の表現型は時折、2つの親の中間にあるように見えることがあります。たとえば、キンギョソウ(Antirrhinum majus)(図12.7)では、白い花を持つホモ接合型の親(CᵂCᵂ)と赤い花を持つホモ接合型の親(CᴿCᴿ)との交雑は、ピンク色の花(CᴿCᵂ)を持つ子孫を生み出します。(これらのパターンを単純顕性および潜性と区別するために、メンデル式の拡張では異なる遺伝子型の省略記号が使用されていることに注意してください。)この遺伝パターンは不完全顕性と呼ばれ、個体が中間表現型を示すように2つの対照的な対立遺伝子が発現することを意味しています。赤い花の対立遺伝子は、白い花の対立遺伝子に対して不完全な形で顕性です。しかしながら、ヘテロ接合型の自己交雑の結果は、メンデル的な顕性および潜性交雑と同様に、依然として予測することができます。この場合、遺伝子型の比率は1CᴿCᴿ:2CᴿCᵂ:1CᵂCᵂであり、表現型の比率は赤:ピンク:白について1:2:1となるでしょう。
共顕性
不完全顕性の変形は共顕性であり、そこではヘテロ接合型において同じ特徴についての両方の対立遺伝子が同時に発現します。共顕性の例は、人間のMN血液型です。MおよびN対立遺伝子は、赤血球の表面に存在するMまたはN抗原の形で発現します。ホモ接合型(LᴹLᴹおよびLᴺLᴺ)はMまたはNのいずれかの対立遺伝子を発現し、ヘテロ接合型(LᴹLᴺ)は両方の対立遺伝子を等しく発現します。共顕性形質を発現するヘテロ接合型の間での自己交雑においては、3つの可能な子孫の遺伝子型は表現型が異なります。しかしながら、メンデル的な一遺伝子交雑に特徴的な1:2:1の遺伝子型の比率は依然として適用されます。
複対立遺伝子
メンデルは、所与の遺伝子には2つの対立遺伝子(1つは顕性、もう1つは潜性)しか存在し得ないと示唆しました。現在では、私たちはこれが過度な単純化であることを知っています。個々の人間(およびすべての二倍体生物)は所与の遺伝子に対して2つの対立遺伝子しか持てませんが、個体群レベルでは、2つの対立遺伝子の多くの組み合わせが観察されるように複数の対立遺伝子(複対立遺伝子)が存在し得ます。同じ遺伝子に対して多数の対立遺伝子が存在する場合、慣例では野生動物の中で最も一般的な表現型または遺伝子型を野生型(しばしば「+」と省略される)として示すことに注意してください。これは標準または基準と見なされます。他のすべての表現型または遺伝子型はこの標準の異型とみなされ、それらは野生型とは異なることを意味します。この異型は、野生型の対立遺伝子に対して潜性であることも顕性であることもあります。
複対立遺伝子の例は、ウサギの毛色です(図12.8)。ここでは、c遺伝子に対して4つの対立遺伝子が存在します。野生型のC⁺C⁺は、茶色の毛皮として発現します。チンチラ表現型cᶜʰcᶜʰは、先端が黒の白い毛皮として発現します。ヒマラヤ表現型cʰcʰは、四肢に黒い毛皮、それ以外のところに白い毛皮があります。最後に、アルビノ、つまり「無色の」表現型ccは、白い毛皮として発現します。複対立遺伝子の場合、顕性の階層が存在することがあります。この場合、野生型の対立遺伝子が他のすべてのものよりも顕性であり、チンチラがヒマラヤとアルビノに対して不完全顕性であり、そしてヒマラヤがアルビノに対して顕性です。この階層、または対立遺伝子シリーズは、それぞれの可能なヘテロ接合型の子孫の表現型を観察することによって明らかにされました。
野生型の表現型が他のすべての突然変異型よりも完全に顕性であることは、野生型の対立遺伝子は正しい量の遺伝子産物を供給するが、突然変異型の対立遺伝子はそれを供給できないといったような、特定の遺伝子産物の「投与」の効果として生じることがしばしばあります。ウサギの対立遺伝子シリーズでは、野生型の対立遺伝子は毛皮色素の所与の投与量を供給することができますが、突然変異体はそれより少ない投与量を供給するか、まったく供給しません。興味深いことに、ヒマラヤ表現型は、ウサギの体のより低温の箇所である四肢でのみ色素を産生する温度感受性の遺伝子産物を作り出すような対立遺伝子の結果です。
あるいは、1つの突然変異対立遺伝子が、野生型を含む他の全ての表現型に対して顕性になることがあります。これは、突然変異対立遺伝子が何らかの形で遺伝的メッセージを妨害し、その結果1つの野生型の対立遺伝子のコピーを有するヘテロ接合体であっても突然変異表現型を発現するときに起こり得ます。突然変異対立遺伝子が妨害し得る1つの方法は、野生型の遺伝子産物の機能を増強すること、または体内でのその分布を変えることによるものです。これの一例は、ショウジョウバエのアンテナペディア突然変異です(図12.9)。この場合、突然変異対立遺伝子は遺伝子産物の分布を拡大させ、その結果、アンテナペディアのヘテロ接合型はその頭の触角があるべきところに脚を発達させます。
進化へのつながり
複対立遺伝子はマラリア原虫に薬剤耐性を授ける
マラリアは、ガンビエハマダラカ(Anopheles gambiae)を含む感染した雌の蚊によって伝播される人間の寄生虫病であり(図12.10a)、周期的な高熱、悪寒、インフルエンザ様症状、および重度の貧血を特徴としています。熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)および三日熱マラリア原虫(P. vivax)はマラリアの最も一般的な病原体であり、熱帯熱マラリア原虫が最も致命的なものです(図12.10b)。迅速かつ正しく治療された場合、熱帯熱マラリア原虫の死亡率は0.1%です。しかしながら、世界の一部の地域では、この寄生虫は一般的に使用されているマラリア治療に対する耐性を進化させているため、最も効果的なマラリア治療は地域によって異なります。
東南アジア、アフリカ、および南米では、熱帯熱マラリア原虫は、抗マラリア薬クロロキン、メフロキン、およびスルファドキシン-ピリメタミンに対する耐性を発達させました。熱帯熱マラリア原虫は、人間に対して感染性である生命の段階では一倍体であり、dhps遺伝子の複数の薬剤耐性突然変異対立遺伝子を進化させてきました。スルファドキシンに対するさまざまな程度の耐性は、これらの対立遺伝子のそれぞれと関連しています。熱帯熱マラリア原虫は一倍体であることから、この形質を発現するために1つの薬物耐性対立遺伝子しか必要としません。
東南アジアでは、dhps遺伝子のさまざまなスルファドキシン耐性対立遺伝子がさまざまな地域に局在しています。これは、薬剤耐性突然変異体が個体群内で発生し、近接している他の熱帯熱マラリア原虫の孤立群と交配するために起こる一般的な進化的現象です。スルファドキシン耐性寄生虫は、この薬が市販のマラリア治療薬として広く使用されている地域で、人間にかなりの苦難を引き起こします。感染周期内で多数に増殖する病原体に共通なように、熱帯熱マラリア原虫は、一般的に使用される抗マラリア薬の選択圧に反応して比較的急速に(10年程度で)進化します。このため、科学者は絶えず世界中のマラリアの重荷に対抗するような新しい薬や薬の組み合わせを開発するために努力しなければなりません。
[2] Sumiti Vinayak, et al., “Origin and Evolution of Sulfadoxine Resistant Plasmodium falciparum,” Public Library of Science Pathogens 6, no. 3 (2010): e1000830, doi:10.1371/journal.ppat.1000830.
X連鎖形質
人間や他の多くの動物およびいくつかの植物において、個体の性別は性染色体によって決定されます。性染色体は一対の非相同染色体です。これまで、私たちは非性染色体、すなわち常染色体間の遺伝パターンのみを考えてきました。常染色体の22の相同対に加えて、人間の女性はX染色体の相同対を持つのに対し、人間の男性はXY染色体対を持っています。Y染色体はX染色体と類似した小さい領域を含み、それらは減数分裂中に対合することができますが、Y染色体ははるかに短く、そしてはるかに少ない遺伝子を含みます。ある調べている遺伝子がX染色体上に存在するがY染色体上に存在しない場合、それはX連鎖であると言われます。
ショウジョウバエの目の色は、同定された最初のX連鎖形質の1つでした。トーマス・ハント・モーガンは、1910年にこの形質をX染色体にマッピングしました。ショウジョウバエの雄は人間と同様にXY染色体対を持ち、雌はXXです。ハエでは、野生型の目の色は赤(Xᵂ)で、白目の色(Xʷ)に対して顕性です(図12.11)。目の色の遺伝子の位置のために、相互交雑は子孫を同じ比率では生み出しません。雄は、X連鎖性の特徴に対して対立遺伝子が1つしかないため、半接合型であると言われています。半接合性は、XYの雄についての顕性や潜性という記述を無意味にします。ショウジョウバエの雄はY染色体上の2番目の対立遺伝子のコピーを欠いています。すなわち、それらの遺伝子型はXᵂYあるいはXʷYのみとなります。対照的に、雌はこの遺伝子の2つの対立遺伝子コピーを持ち、XᵂXᵂ、XᵂXʷ、またはXʷXʷになることができます。
X連鎖交雑において、F₁およびF₂子孫の遺伝子型は、P₁世代において潜性形質が雄または雌のどちらによって発現されたかに依存します。ショウジョウバエの目の色に関しては、P₁の雄が白目の表現型を発現し、雌がホモ接合型の赤目である場合、F₁世代のすべてのメンバーが赤目を示します(図12.12)。F₁の雌はヘテロ接合型(XᵂXʷ)です。また、雄はすべてXᵂYであり、X染色体をホモ接合型顕性P₁の雌から、Y染色体をP₁の雄から受け取っています。XᵂXʷの雌とXᵂYの雄との間でのその後の交雑では、赤目のみの雌(XᵂXᵂまたはXᵂXʷの遺伝子型を有する)および赤目と白目の雄(XᵂYまたはXʷYの遺伝子型を有する)を生じさせます。それでは、ホモ接合型の白い目の雌と赤い目の雄の間での交雑を考えてみましょう。F₁世代は、ヘテロ接合型の赤目のみの雌(XᵂXʷ)および白目のみの雄(XʷY)を示すでしょう。F₂の雌の半分は赤目(XᵂXʷ)であり半分は白目(XʷXʷ)でしょう。同様に、F₂の雄の半分は赤目(XᵂY)であり、半分は白目(XʷY)でしょう。
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白い目の雄と、ヘテロ接合型で赤い目の色の雌との交雑からは、どのような比率の子孫が生まれますか?
ミバエの遺伝学における発見は、人間の遺伝学にも応用できます。女性の親が潜性のX連鎖形質についてホモ接合型である場合、彼女はその形質を彼女の子の100%に引き継ぎます。したがって、彼女の子のうちの男性は、父親のY染色体を遺伝することになるため、この形質を発現するよう定められています。人間では、特定の症状(ある種の色覚異常、血友病、および筋ジストロフィー)の対立遺伝子はX連鎖です。これらの疾患についてヘテロ接合型である女性はキャリアであると言われており、いかなる表現型の効果も示さないかもしれません。これらの女性は、彼女らの息子のうちの半分にその病気を受け渡し、娘のうちの半分にキャリアの地位を受け渡します。したがって、潜性のX連鎖形質は、女性よりも男性の方に頻繁に現れるように見えます。
性染色体を持つ生物のうちのあるグループでは、非相同性染色体を持つ性別は雄ではなく雌です。これはすべての鳥に当てはまります。この場合、伴性形質は半接合型の雌に現れる可能性が高くなります。
人間の伴性疾患
モーガンの研究室での伴性の研究は、赤-緑色覚異常、A型およびB型血友病を含む、人間におけるX連鎖潜性疾患を理解するための基礎を提供しました。人間の男性が罹患するためには潜性突然変異X対立遺伝子を1つだけ遺伝する必要があるため、X連鎖疾患は男性に不均衡に多く観察されます。女性がこの形質を発現するためには両親の両方から潜性X連鎖対立遺伝子を遺伝しなければなりません。女性が1つの潜性X連鎖の突然変異対立遺伝子および1つの顕性X連鎖の野生型対立遺伝子を受け継ぐとき、彼女らはその形質のキャリアであり、そして典型的には罹患しません。キャリアの女性は、X染色体の1つに位置する顕性対立遺伝子が不活性化されていることによって、軽度の形質を発現することがあります。しかしながら、女性のキャリアはその息子にその形質を受け渡すことで息子がその形質を発現するようにさせるか、あるいはその娘に潜性の対立遺伝子を受け渡すことで娘がその形質のキャリアとなるようにさせることがあります(図12.13)。いくつかのY連鎖潜性疾患も存在しますが、典型的にはそれらは男性の不妊症と関連しており、したがってその後の世代には伝達されません。
学習へのリンク
このビデオを見て、伴性形質の詳細を学んでください。(http://cnx.org/content/m66487/1.4/#eip-id1170504131681)
致死性
ある個体のゲノム中の遺伝子の大部分は生存に不可欠なものです。時折、必須遺伝子について非機能的な対立遺伝子が突然変異によって生じることがあり、(この対立遺伝子を持つ個体が野生型の機能的な複製も有している限り)その非機能的な対立遺伝子が個体群に伝達されることがあります。野生型の対立遺伝子は生命を維持するのに十分な能力でもって機能し、したがって非機能的な対立遺伝子に対して顕性であるとみなされます。しかしながら、仮想の必須遺伝子について野生型/非機能的突然変異の遺伝子型を有するヘテロ接合型の両親のことを検討してみましょう。彼らの子の4分の1において、非機能的対立遺伝子についてホモ接合型潜性である個体を観察することが期待できるでしょう。この遺伝子は必須であるため、これらの個体は、その遺伝子を必要とする生命の段階に応じて、過去の受精を発達させるのに失敗する、子宮内で死ぬ、または人生の後半で死ぬことがあるかもしれません。対立遺伝子がホモ接合型の形態においてのみ致死的であり、ヘテロ接合型は正常であるかまたは何らかの改変された致死的ではない表現型を有するような遺伝パターンは、潜性致死と呼ばれます。
ホモ接合型であるときには出生前に死に至るような潜性致死の対立遺伝子を有するヘテロ接合型個体間の交配については、野生型でホモ接合型およびヘテロ接合型のみが観察されるでしょう。したがって、遺伝子型の比率は2:1になります。他の例において、潜性致死の対立遺伝子はまた、ヘテロ接合型において顕性の(しかし致死性ではない)表現型を示すことがあります。たとえば、ショウジョウバエの潜性致死のCurly対立遺伝子は、ヘテロ接合型の形態では羽の形状に影響を与えますが、ホモ接合型では致死性です。
通常に機能するまたは生存するためでさえも、野生型対立遺伝子の単一のコピーで常に十分であるというわけではありません。顕性致死遺伝パターンとは、ホモ接合型とヘテロ接合型の両方で対立遺伝子が致死性であるものです。この対立遺伝子は、致死表現型が生殖年齢後に発生する場合にのみ伝達されることがあります。顕性致死の対立遺伝子をもたらすような突然変異を有する個体は、ヘテロ接合型でさえも生存することができません。あなたが予想するように、この対立遺伝子は1世代しか続かず、伝達されることがないので、顕性致死の対立遺伝子は非常にまれです。しかしながら、潜性致死の対立遺伝子が死の表現型をすぐには現さないように、顕性致死の対立遺伝子も成人期まで発現されないかもしれません。ひとたび個体が生殖年齢に達すると、その対立遺伝子は知られることなくに受け継がれ、その結果、両世代で遅延性の死をもたらす可能性があります。人間におけるこの例は、ハンチントン病であり、その病気では神経系が徐々に衰弱していきます(図12.14)。顕性ハンチントン対立遺伝子(Hh)がヘテロ接合型である人々は必然的に致命的な病気を発症するでしょう。しかしながら、ハンチントン病の発症は40歳までは起こらないかもしれません。その時点で、罹患した人はすでに自分の子孫の50%にその対立遺伝子を受け渡しているかもしれません。
12.3 | 遺伝の法則
この節が終わるまでに、あなたは次のことができるようになります:
•遺伝学および減数分裂の事象の観点からメンデルの分離の法則および独立組み合わせを説明する
•分岐線法と確率の規則を使用して、複数の遺伝子交雑からの遺伝子型と表現型の確率を計算する
•配偶子遺伝子型に対する連鎖と組換えの効果を説明する
•遺伝子間のエピスタシスの効果の表現型についての結果を説明する
メンデルは、彼のエンドウマメ植物実験の結果を4つの仮説に一般化しました。そのいくつかは時に「法則」と呼ばれることがあり、それは二倍体生物における顕性遺伝と潜性遺伝の基礎を記述しています。あなたがここまでで学んだように、同じF₂表現型の比率(3:1)を示さない、より複雑なメンデル主義の拡張が存在します。それにもかかわらず、これらの法則は古典的遺伝学の基本を要約しています。
単位因子、または遺伝子の対
メンデルは最初に、遺伝の一対の単位因子が配偶子形成と受精の間にそれぞれ対の因子の分離と再結合によって世代から世代へと忠実に伝達されることを提案しました。彼が対照的な形質を持つエンドウマメを交雑し、潜性形質がF₂世代に再出現したのを発見した後、メンデルは遺伝的因子は個別の単位として受け継がれていなければならないと推論しました。この発見は、親の形質は子孫の中で混じり合うという当時の考えと矛盾していました。
対立遺伝子は顕性または潜性になり得る
メンデルの顕性の法則は、ヘテロ接合型では、1つの形質が同じ特徴についての別の形質の存在を隠すということを述べています。両方の対立遺伝子が表現型に寄与するのではなく、顕性対立遺伝子が排他的に発現されるでしょう。潜性対立遺伝子は「潜伏」したままですが、顕性対立遺伝子が伝達されるのと同じ方法で子孫に伝達されるでしょう。潜性形質は、この対立遺伝子の2つのコピーを持つ子孫によってのみ発現され(図12.15)、これらの子孫は自己交雑したときに近交系になります。
メンデルがエンドウマメ植物を使って実験して以来、研究者たちは顕性の法則が必ずしも成り立つとは限らないことを発見しました。代わりに、いくつかの異なる遺伝のパターンが存在することがわかっています。
対立遺伝子の均等な分離
対照的な形質を持つ近交系のエンドウマメ植物の観察において、すべてが顕性形質を発現するF₁世代と3:1の比率で顕性および潜性形質を発現するF₂世代とが生み出されたことから、メンデルは分離の法則を提案しました。この法則は、子孫が同等の確からしさでいずれかの因子を受け継ぐように、対をなす単位因子(遺伝子)は配偶子に等しく分離しなければならないということを述べています。一遺伝子交雑のF₂世代の場合、遺伝子型では次の3つの可能な組み合わせが得られます:ホモ接合型顕性、ヘテロ接合型、またはホモ接合型潜性です。ヘテロ接合型は2つの異なる経路(どちらかの親から1つの顕性対立遺伝子と1つの潜性対立遺伝子を受け取る)から生じる可能性があるため、そしてヘテロ接合型の個体とホモ接合型顕性の個体は表現型が同一であるため、この法則はメンデルが観察した3:1の表現型の比率を支持します。対立遺伝子が均等に分離していることが、既知の遺伝子型を持つ両親の子孫を正確に予測するためにパネットの方形を適用できる理由です。メンデルの分離の法則の物理的基礎は減数分裂の最初の分裂であり、そこでは各遺伝子の異なるバージョンを有する相同染色体は娘核に分離します。有性生殖における染色体の減数分裂の役割は、メンデルが生きている間には、科学界では理解されていませんでした。
独立組み合わせ
メンデルの独立組み合わせの法則は、配偶子への対立遺伝子の仕分けに関して遺伝子は互いに影響を及ぼさず、そしてあらゆる遺伝子についてのあらゆる対立遺伝子の可能な組み合わせが等しく起こり得ると述べています。遺伝子の独立組み合わせは、二遺伝子交雑(2つの特徴について異なる形質を発現する2つの近交系の親の間の交雑)によって説明することができます。2つのエンドウマメ植物で種子の色と種子の質感という特徴を考えてみましょう。1つは緑色のしわのある種子(yyrr)を、もう1つは黄色の丸い種子(YYRR)を持ちます。それぞれの親はホモ接合型であるため、分離の法則は、緑色/しわのある植物の配偶子はすべてyrであり、黄色/丸の植物の配偶子はすべてYRであることを示しています。したがって、F₁世代の子はすべてYyRrです(図12.16)。
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エンドウマメ植物では、紫色の花(P)が白い花(p)に対して顕性であり、黄色のエンドウマメ(Y)が緑色のエンドウマメ(y)に対して顕性です。PpYYとppYyのエンドウマメ植物の交雑で可能な遺伝子型と表現型は何ですか?この交雑のパネットの方形分析をするのに必要な四角の数はいくつですか?
F₂世代については、分離の法則は、それぞれの配偶子がY対立遺伝子またはy対立遺伝子のいずれかとともにR対立遺伝子またはr対立遺伝子のいずれかを受け取ることを要求します。独立組み合わせの法則は、r対立遺伝子が仕分けされた配偶子では、Y対立遺伝子またはy対立遺伝子のいずれかを含む可能性が等しいだろうと述べています。したがって、以下のように、YyRrヘテロ接合型が自己交雑したときに形成され得る4つの同等に確からしい配偶子があります:YR、Yr、yR、およびyr。これらの配偶子を4×4のパネットの方形の上と左に配置すると(図12.16)、同様に確からしい16の遺伝子型の組み合わせが得られます。これらの遺伝子型から、私たちは、9丸/黄色:3丸/緑色:3しわ/黄色:1しわ/緑色という表現型の比率を推定できます(図12.16)。十分な大きさのサンプル数で交雑を行ったと仮定すると、これらは私たちが期待できる子孫の比率です。
独立組み合わせと顕性のために、9:3:3:1という二遺伝子の表現型の比率は、2つの3:1の比率(顕性および潜性パターンに従うあらゆる一遺伝子交雑に特徴的なもの)に分解することができます。上記の二遺伝子交雑において、種子の色を無視し、種子の質感のみを考慮すると、私たちはF₂世代の子孫の4分の3が丸くなり、4分の1がしわになることが予想できます。同様に、種子の色だけを分離すると、F₂の子孫の4分の3が黄色になり、4分の1が緑色になると想定できます。質感と色の対立遺伝子の割り振りは独立した事象なので、私たちは積の規則を適用することができます。したがって、丸くて黄色のF₂の子孫の割合は、(3/4)×(3/4)= 9/16と予測され、しわのある緑色の子孫の割合は、(1/4)×(1/4)= 1/16と予測されます。これらの割合は、パネットの方形を使用して得られたものと同一です。丸くて緑色、そしてしわのある黄色の子孫も、これらの遺伝子型のそれぞれに1つの顕性表現型と1つの潜性表現型が含まれるため、積の規則を使用して計算することができます。したがって、それぞれの割合は、(3/4)×(1/4)= 3/16と計算されます。
独立組み合わせの法則はまた、黄色でしわのある(YYrr)親と、緑色で丸い(yyRR)親の間の交雑がYYRR × yyrr交雑と同じF₁とF₂の子孫を生み出すであろうことを示しています。
独立組み合わせの法則の物理的根拠もまた、減数分裂Iにあります。そこでは、異なる相同対がランダムな方向に並びます。それぞれの配偶子は、中期板上での四分染色体の向きがランダムであるため、父親および母親の染色体(したがってそれらの遺伝子)の任意の組み合わせを含むことができます。
分岐線の手法
2つより多い遺伝子が考慮されているとき、パネットの方形の手法は扱いにくくなります。たとえば、4つの遺伝子を含む交雑を調べるには、256個の四角を含む16×16の格子が必要です。それぞれの遺伝子型を手で書き入れていくのは非常に面倒です。より複雑な交雑の場合は、分岐線の手法と確率の手法が好ましいです。
AABBCC親とaabbcc親との間の交雑から生じるF₁ヘテロ接合型の間の交雑についての分岐線図を準備するために、私たちはまず考慮するべき遺伝子の数に等しい行を作成し、そして個々の一遺伝子交雑の確率にしたがって、各行の対立遺伝子を分岐した線上で分離します(図12.17)。次に、私たちは分岐した各経路に沿って値を掛けていき、F₂の子孫の確率を得ます。このプロセスは積の規則の図式バージョンであることに注意してください。それぞれの遺伝子は独立して仕分けられるので、それぞれの分岐経路に沿った値を掛けることができます。三遺伝子交雑の場合、F₂表現型の比率は27:9:9:9:3:3:3:1です。
確率の手法
分岐線の手法は交雑での確率の経過を追うための図形的アプローチですが、確率の手法は追加の視覚的補助なしに、子孫が示すと予想されるそれぞれの表現型(または遺伝子型)の割合を与えてくれます。どちらの手法も積の規則を利用し、それぞれの遺伝子の対立遺伝子を別々に考慮します。先では、私たちは分岐線の手法を用いて三遺伝子交雑の表現型の比率を調べました。それでは、ここからは確率の手法を使って、さらに多くの遺伝子での交雑の遺伝子型の割合を調べていきます。
三遺伝子交雑では、分岐線の手法を書くのは面倒です(パネットの方形の手法を使用するほど面倒ではありませんが)。しかしながら、確率の手法の力を十分に実証するために、私たちは特定の遺伝的計算を検討してみることができます。たとえば、4つすべての遺伝子のヘテロ接合型であり、4つすべての遺伝子が独立して組み合わせられ、かつ顕性と潜性のパターンを持つ個体の間の四遺伝子交雑の場合、4つすべての対立遺伝子についてホモ接合型潜性であると予想される子孫の割合は何でしょうか?私たちは、考えられるすべての遺伝子型を書き出すのではなく、確率の手法を使用することができます。私たちは、それぞれの遺伝子について、ホモ接合型潜性の子孫の割合が1/4になることを知っています。それゆえ、この割合を4つの遺伝子のそれぞれについて掛け合わせる(1/4) × (1/4) × (1/4) × (1/4)と、私たちは、子孫のうちの1/256が4重にホモ接合型潜性になると決定できます。
同じ四遺伝子交雑について、4つの遺伝子座すべてで顕性の表現型を持つ子孫の予想される割合は何ですか?私たちは表現型の比率を使ってこの質問に答えることができますが、遺伝子型の比率を使った難しい方法でやってみましょう。この質問では、1)Aがホモ接合型顕性またはAがヘテロ接合型であり、および、2)Bがホモ接合型顕性またはBがヘテロ接合型、および、等々という子孫の割合が問われています。それぞれの状況で「または」と「および」に注目すると、和と積の規則をどこに適用するかが明確になります。Aがホモ接合型顕性の確率は1/4であり、Aがヘテロ接合型の確率は1/2です。ホモ接合型またはヘテロ接合型の確率は、和の規則を使用すると、1/4 + 1/2 = 3/4です。他の遺伝子のそれぞれについて同じ方法を用いて同じ確率を得ることができるので、AおよびBおよびCおよびDにおける顕性表現型の確率は、積の規則を使用すると、3/4 × 3/4 × 3/4 × 3/4すなわち81/256に等しくなります。もしあなたが、どのようにして確率を組み合わせるのかについて確信が持てない場合は、分岐線の手法に戻れば明確になるでしょう。
複数遺伝子受精のためのいくつかの規則
与えられた交雑から子孫の遺伝子型と表現型を予測することは、メンデル遺伝学についてのあなたの知識をテストするための最良の方法です。独立組み合わせに従い、顕性と潜性のパターンにならう複数遺伝子交雑を考慮すると、いくつかの一般化された規則が存在します。あなたはこれらの規則を使用して、遺伝学計算の作業をする際にその結果をチェックすることができます(表12.5)。これらの規則を適用するには、まず、あなたはヘテロ接合型遺伝子対の数(それぞれ2つの対立遺伝子を分離している遺伝子の数)nを決定しなければなりません。たとえば、AaBbヘテロ接合型とAaBbヘテロ接合型との間の交雑では、nは2の値を有します。対照的に、AABbとAABbとの間の交雑では、nは1の値を有します。なぜなら、Aはヘテロ接合型ではないからです。
連鎖遺伝子は独立組み合わせの法則に違反する
メンデルのエンドウマメの特徴のすべてが独立組み合わせの法則に従って振舞いましたが、私たちは今ではいくつかの対立遺伝子の組み合わせが互いに独立して遺伝されないことを知っています。別々の非相同染色体上に位置する遺伝子は常に独立して仕分けされます。しかしながら、それぞれの染色体には数百または数千の遺伝子が含まれており、紐の上のビーズのように染色体上に直線的に編成されています。対立遺伝子の配偶子への分離は連鎖によって影響を受ける可能性があり、そこでは同じ染色体上で互いに物理的に近い位置にある遺伝子は対として遺伝する可能性が高くなります。しかしながら、組換え、または「交差」のプロセスのために、同じ染色体上の2つの遺伝子が独立して、またはそれらが関連していないかのように振る舞うことが可能となります。これを理解するために、遺伝子連鎖と組換えの生物学的基礎を考えてみましょう。
相同染色体は、同じ線形の順序で同じ遺伝子を有します。対立遺伝子は相同染色体対で異なるかもしれませんが、それらが対応する遺伝子はそうではありません。減数分裂の最初の分裂に備えて、相同染色体は複製しシナプシスを形成します。ホモログ上の類似遺伝子は互いに整列しています。この段階で、相同染色体のセグメントは遺伝物質の線状セグメントを交換します(図12.18)。このプロセスは組換え、あるいは交差と呼ばれ、それは一般的な遺伝的プロセスです。遺伝子は組換え中に整列しているので、遺伝子の順序は変わりません。その代わりに、組換えの結果は、母親と父親の対立遺伝子が同じ染色体上に組み合わされるということです。所与の染色体にわたって、いくつかの組換え事象が起こるかもしれず、対立遺伝子の大規模なシャッフルを引き起こします。
2つの遺伝子が同じ染色体上で近接している場合、それらは連鎖しているとみなされ、それらの対立遺伝子は一緒に減数分裂を介して伝達される傾向があります。これの例として、花の色と植物の高さを含み、染色体上でそれらの遺伝子が隣り合っているような二遺伝子交雑を想像してみてください。もし一方の相同染色体が背の高い赤色の花の対立遺伝子を持ち、もう一方の染色体が背が低く黄色の花の遺伝子を持つ場合、配偶子が形成されるときには、背が高く赤色の対立遺伝子は一緒にひとつの配偶子に行き、背が低く黄色の対立遺伝子は別の配偶子に行きます。これらは、個々の配偶子を産生する親からそのまま受け継がれてきたので、親の遺伝子型と呼ばれます。しかし、遺伝子が異なる染色体上にある場合とは異なり、背の高い黄色の対立遺伝子を持つ配偶子や、背の低い赤色の対立遺伝子を持つ配偶子はありません。もしあなたがこれらの配偶子を使ってパネットの方形を作成するならば、二遺伝子交雑の古典的なメンデル式の予測の9:3:3:1という結果は当てはまらないでしょう。2つの遺伝子間の距離が増すにつれて、それらの間の1つかそれ以上の交差が起こる確率が高まり、そして遺伝子はますますそれらが別々の染色体上にあるかのように振舞うようになります。遺伝学者たちは、遺伝子が染色体上でどれだけ離れているかの尺度として、組換え配偶子(親とは似ていないもの)の割合を使用してきました。この情報を使用して、彼らは人間を含むよく研究された生物のために染色体上の遺伝子の精巧な地図を構築しました。
メンデルの独創的な発表は連鎖について言及していません。そして、多くの研究者は彼が連鎖に直面したものの、それらが彼の独立組み合わせ仮説を無効にしてしまうのではないかという懸念からそれらの交雑を公表しないことを選んだのではないかと疑問視しています。エンドウマメには7つの染色体があります。そして、一部の人は、彼の7つの特徴の選択が偶然ではなかったことを示唆しました。しかしながら、たとえ彼が調べた遺伝子が別々の染色体上に位置していなくとも、彼は組換えにおける広範なシャッフル効果のために単純に連鎖を観察しなかったという可能性もあります。
科学的方法へのつながり
独立組み合わせの仮説を検証する
メンデルの実験に注がれた労力と創意工夫の量をよりよく理解するために、メンデルの二遺伝子交雑のうちの1つの過程をたどってみてください。
質問:二遺伝子交雑の子孫はどうなるでしょうか?
背景:エンドウマメ植物は1つの生育期間で成熟し、あなたは数千のエンドウマメ植物を育てることができる大きな庭を利用できると考えてください。次のような形質のペアを持ついくつかの近交系植物があります:膨らんださやを持つ大型の植物、そして収縮したさやを持つ小型の植物。植物が成熟する前に、あなたは自家受精を防ぐためにあなたの交雑の中の大型/膨らんでいる植物から花粉を生産する器官を取り除きます。植物が成熟すると、小型/収縮した植物から大型/膨らんでいる植物の柱頭へと花粉を移動させることによって植物を手作業で交雑します。
仮説:両方の形質のペアはメンデルの法則に従って独立に組み合わせられます。近交系の両親が交雑されるときには、すべてのF₁の子は大型で膨らんださやを持ち、これは大型の形質と膨らんだ形質がそれぞれ小型と収縮した形質に対して顕性であることを示しています。F₁ヘテロ接合型の自己交雑によって、2000のF₂子孫がもたらされます。
仮説を検証する:それぞれの形質ペアは独立して組み合わせられるため、大型:小型と膨らんだ:収縮したの比率はそれぞれ3:1になると予想されます。大型/小型の形質のペアをT/tと呼び、そして膨らんだ/収縮した形質のペアはI/iと示します。それゆえ、F₁世代のそれぞれのメンバーはTtIiの遺伝子型を有します。図12.16に似た格子を作成すると、その図では、あなたは2つのTtIiの個体を交雑させることになります。それぞれの個体は、2つの形質の4つの組み合わせ、すなわちTI、Ti、tI、またはtiを提供することができます。つまり、子孫の遺伝子型には16の可能性があります。TおよびI対立遺伝子が顕性であるので、それらの対立遺伝子のうちの1つまたは2つを有する任意の個体は、それらがtまたはi対立遺伝子も有するかどうかにかかわらず、それぞれ大型の表現型または膨らんだ表現型を発現します。ttまたはiiである個体のみがそれぞれ小型および収縮した対立遺伝子を発現します。図12.19に示されるように、あなたは、大型/膨らんだ:大型/収縮した:小型/膨らんだ:小型/収縮したという子孫の割合を、9:3:3:1の比率で観察することになると予想できます。大型/小型と膨らんだ/収縮した形質のペアを格子から個別に検討すると、それらはそれぞれ3:1の比率で遺伝されていることがわかります。
仮説を検証する:あなたは小型と大型を交雑させ、それから子を自家交雑させます。最良の結果を得るために、これを数百、さらには数千のエンドウマメ植物で繰り返します。交雑の際や植物の成長の際には、どんな特別な注意を払うべきですか?
データを分析する:あなたは、F₂世代で以下のような植物の表現型を観察しました:2706個の大型/膨らんだ、930個の大型/収縮した、888個の小型/膨らんだ、そして300個の小型/収縮した。これらの調査結果をある比率へとまとめ、それらがメンデルの法則と一致しているかどうかを判断してください。
結論を形成する:結果は予想される9:3:3:1の表現型の比率に近かったですか?この結果は予測を支持しますか?対立遺伝子がランダムに配偶子へと分離することを考えると、はるかに少ない植物を使用した場合には、何が観察されるでしょうか?そのような数のエンドウマメ植物を育てることを想像してみて、実験誤差の可能性を検討してください。たとえば、ある日に非常に風が強かったとしたらどうなるでしょうか?
エピスタシス
エンドウマメ植物におけるメンデルの研究は、個体の表現型の合計が、すべての特徴が単一の遺伝子によって明確かつ完全に制御されるような形で、遺伝子(または彼が呼ぶところの単位因子)によって制御されることを含意していました。実際のところ、単一の観察可能な特徴は、ほとんどすべての場合、一斉に作用する複数の遺伝子(それぞれが2つかそれ以上の対立遺伝子を有する)の影響下にあります。たとえば、人間の目の色には、少なくとも8つの遺伝子が寄与しています。
学習へのリンク
人間の目の色は複数の遺伝子によって決まります。親の目の色から子供の目の色を予測するために、「目の色の計算機(Eye Color Calculator)」(http://openstaxcollege.org/l/eye_color_calc)を使ってみてください。
いくつかの場合において、いくつかの遺伝子は、それらの遺伝子産物が直接相互作用することなく、共通の表現型の側面に寄与することがあります。たとえば、器官の発達の場合、遺伝子は逐次的に発現され、それぞれの遺伝子は器官の複雑さおよび特異性を増大させていきます。遺伝子は、ある表現型に影響を及ぼすために2つかそれ以上の遺伝子が同時に発現される必要があるように、相補的または相乗的な形で機能することもあります。ある遺伝子が別の遺伝子の発現を修飾するように、遺伝子は互いに対立することもあります。
エピスタシスでは、遺伝子間の相互作用は拮抗的であり、その結果、1つの遺伝子が他の遺伝子の発現を覆い隠すかまたは妨害します。「エピスタシス」とは「立ち上がる」ことを意味するギリシャ語の語源からなる単語です。覆い隠されている、または沈黙させられている対立遺伝子は、覆い隠している上位(エピスタシス)対立遺伝子に対して下位であると言われます。エピスタシスの生化学的根拠はしばしば遺伝子経路にあります。そこでは、ある遺伝子の発現が経路内でそれに先行するまたはそれに続く遺伝子の機能に依存しています。
エピスタシスの例は、マウスの色素沈着です。野生型の毛皮の色、アグーチ(AA)は、無地の毛皮(aa)に対して顕性です。しかしながら、色素産生のためには別の遺伝子(C)が必要とされます。この遺伝子座に潜性のc対立遺伝子を持つマウスは色素を産生することができず、遺伝子座Aに存在する対立遺伝子に関係なくアルビノになります(図12.20)。したがって、遺伝子型AAcc、Aacc、およびaaccはすべて同じアルビノ表現型を生み出します。両方の遺伝子のヘテロ接合型間の交雑(AaCc×AaCc)は9アグーチ:3無地:4アルビノの表現型の比率の子孫を生み出すでしょう(図12.20)。この場合、C遺伝子はA遺伝子に対して上位にあります。
顕性な対立遺伝子が別の遺伝子の発現を覆い隠すときも、エピスタシスが起こることがあります。夏カボチャの果実の色はそのようにして発現されます。W遺伝子のホモ接合型潜性発現(ww)とY遺伝子のホモ接合型顕性またはヘテロ接合発現(YYまたはYy)との組み合わせは黄色い果実を生じさせ、そしてwwyy遺伝子型は緑色の果実を生じさせます。しかしながら、もしW遺伝子の顕性コピーがホモ接合型またはヘテロ接合型の形態で存在する場合、夏カボチャはY対立遺伝子に関係なく白い果実をつくります。両方の遺伝子についての白いヘテロ接合型間の交雑(WwYy×WwYy)は、表現型の比率が12白:3黄:1緑の子を生み出すでしょう。
最後に、エピスタシスは、どちらの遺伝子も(顕性(または潜性)の形で存在するときに)同じ表現型を発現するような方法で相互的であることもあります。ナズナ植物(Capsella bursa-pastoris:羊飼いの財布)では、種子の形状の特徴は、顕性で上位の関係にある2つの遺伝子によって制御されています。遺伝子AおよびBが両方ともホモ接合型潜性(aabb)である場合、種子は卵形です。もしこれらの遺伝子のいずれかに対する顕性対立遺伝子が存在する場合、その結果は三角形の種子となりす。すなわち、aabb以外のあらゆる可能な遺伝子型は三角形の種子をもたらし、そして両方の遺伝子についてのヘテロ接合型間の交雑(AaBb × AaBb)は15三角形:1卵形の表現型の比率で子孫を生じるでしょう。
遺伝学の問題を解くときには、表現型の比率の合計が16になるような単一の特徴は、2つの遺伝子の相互作用に典型的なものであることを心に留めておいてください。メンデルの二遺伝子交雑の表現型の遺伝パターンを思い出してください。それは2つの非相互作用遺伝子を考慮したもので9:3:3:1の比率でした。同様に、私たちは、相互作用する遺伝子対も16の部分として表される比率を示すと予想することができるでしょう。ここで、私たちは相互作用する遺伝子は連鎖していないと仮定していることに注意してください。それらはまた、配偶子へと独立して組み合わせられます。
学習へのリンク
メンデルの実験の優れたレビューと、あなた自身で交雑を実行し、そして遺伝のパターンを特定するために、「メンデルのエンドウマメ(Mendel’s Peas)」(http://openstaxcollege.org/l/mendels_peas)というウェブ実験室を訪れてみてください。
重要用語
対立遺伝子:突然変異によって生じ、相同染色体上の同じ相対位置に存在するバリエーション
常染色体:非性染色体のいずれか
遺伝の混合理論:親の形質が子孫の中で混合されて中間的な物理的外観を生み出すという仮説的な遺伝パターン
共顕性:ヘテロ接合型において、同じ特徴に対する両方の対立遺伝子の完全かつ同時の発現
連続変異:ある特徴が、その形質の間で大きな隔たりではなく小さなグラデーションをもってその値の範囲を示すような遺伝パターン
二遺伝子交雑:2つの特徴について異なる形質を発現する2つの近交系の親の間の交雑の結果
不連続変異:形質が明確であり、互いに独立して伝わるような遺伝パターン
顕性:個体が形質の2つのコピーを持っているか、1つの顕性の形質のコピーと1つの潜性の形質のコピーを持っているかにかかわらず、同じ物理的外観を与えるような形質
顕性致死:ホモ接合型およびヘテロ接合型の両方において対立遺伝子が致死性である遺伝パターン。この対立遺伝子は、致死的な表現型が生殖年齢の後に起こる場合にのみ伝わることがある
エピスタシス:ある遺伝子が他の遺伝子の発現を覆い隠したり妨害したりするような、遺伝子間の拮抗的な相互作用
F₁:交雑における最初の子の世代。親世代の子
F₂:F₁個体が自己交雑または互いに受精した場合に生じる2番目の子の世代
遺伝子型:生物において、物理的に見える対立遺伝子と発現していない対立遺伝子の両方からなる、根本的な遺伝子構造
半接合型:X連鎖と同様に、1つの特徴に対して1つの対立遺伝子のみが存在する。半接合性は顕性と潜性の説明を無意味にする
ヘテロ接合型:相同染色体上の所与の遺伝子に対して2つの異なる対立遺伝子を持つ
ホモ接合型:相同染色体上の所与の遺伝子に対して2つの同一の対立遺伝子を持つ
交配:子孫で所定の特徴を達成する到達点が異なるような2つの個体を交配するプロセス
不完全顕性:ヘテロ接合型において、個体が中間的な表現型を示すような2つの対照的な対立遺伝子の発現
顕性の法則:ヘテロ接合型において、1つの形質が同じ特徴の別の形質の存在を隠す
独立組み合わせの法則:対立遺伝子の配偶子への仕分けに関して、遺伝子が互いに影響を及ぼさない。対立遺伝子のあらゆる可能な組み合わせが同等の確からしさで起こる
分離の法則:子孫が因子の任意の組み合わせを遺伝する可能性が等しくなるように、対になった単位因子(すなわち、遺伝子)が配偶子に等しく分離する
連鎖:同じ染色体上で互いに近接して位置する対立遺伝子が一緒に遺伝する可能性がより高くなる現象
モデル系:他の異なる種に適用される特定の生物学的現象を研究するために使用される種または生物学的な系
一遺伝子交雑:1つの特徴に対してのみ異なる形質を発現する2つの近交系の親の間の交雑の結果
P₀:交雑での親の世代
表現型:生物によって発現される観察可能な形質
積の規則:2つの独立した事象が同時に発生する確率は、それぞれの事象が単独で発生する個々の確率を掛け合わせることによって計算できる
パネットの方形:2つの個体間の交雑の視覚的表現。それぞれの個体の配偶子はそれぞれ格子の上部と側面に沿って表示され、可能な接合子の遺伝子型は格子の中のそれぞれの四角で再度組み合わされる
潜性:個体がその同じ特徴に対して顕性な形質も持っているときには「潜伏」または発現していないように見える形質。2つの同一のコピーとして存在するとき、潜性形質は発現される
潜性致死:対立遺伝子がホモ接合型でのみ致死性であるような遺伝パターン。ヘテロ接合型は正常であるか、または何らかの改変された致死的ではない表現型を有している可能性がある
相互交雑:一方の交雑の雄と雌のそれぞれの形質が他方の交雑の雌と雄のそれぞれの形質になるような、対となる交雑
伴性:性染色体上の任意の遺伝子
和の規則:2つの相互に排他的な事象のうち少なくとも1つの発生確率は、それらの個々の確率の合計である
検定交雑:未知の遺伝子型を有する顕性発現個体とホモ接合型潜性個体との間の交雑。子の表現型は、未知の親が顕性形質に関してヘテロ接合型であるかホモ接合型であるかを示す
形質:遺伝的特徴についての物理的外観の変化
X連鎖:X染色体には存在するがY染色体には存在しない遺伝子
この章のまとめ
12.1 | メンデルの実験と確率の法則
メンデルは、エンドウマメ植物を使って作業することによって、1つの形質が異なる親の間の交配では、すべてが片方の親の形質を発現するようなF₁の子を生み出すことを発見しました。観察可能な形質は顕性と呼ばれ、発現されていない形質は潜性と表現されます。メンデルの実験における子が自己交雑したとき、F₂の孫は顕性形質または潜性形質を3:1の比率で示し、潜性形質が元のP₀の親から忠実に伝達されたことが確認されました。相互交雑は同一のF₁およびF₂の子孫の比率を生じました。標本サイズを調べることによって、メンデルは彼の交雑が確率の法則に従って再現可能に振舞うこと、そして形質が独立した事象として遺伝されることを示しました。
異なる交雑からの異なる形質の子孫の予想される割合を見つけるために、確率の2つの規則を使用することができます。2つかそれ以上の独立した事象が一緒に発生する確率を見つけるには、積の規則を適用して個々の事象の確率を掛け合わせます。「および」という言葉の使用は、積の規則を適用することが適切であると示唆しています。2つかそれ以上の事象が組み合わさって発生する確率を見つけるには、和の規則を適用してそれらの個々の確率を合計します。「または」という言葉の使用は、和の規則を適用することが適切であると示唆しています。
12.2 | 特徴と形質
特定の形質が異なる近交系の個体またはホモ接合型個体が交雑されると、すべての子はその形質についてヘテロ接合型となります。もしその形質が顕性および潜性として遺伝する場合、F₁の子はすべて、顕性形質についてホモ接合型である親と同じ表現型を示すでしょう。もしこれらのヘテロ接合型の子が自己交雑されると、得られるF₂の孫は顕性または潜性形質を有する配偶子を同等の確からしさで受け継ぎ、1/4がホモ接合型顕性、1/2がヘテロ接合型、および1/4がホモ接合型潜性となります。ホモ接合型顕性の個体およびヘテロ接合型の個体は表現型的に同一であるので、F₂子孫において観察される形質は、1つの潜性に対して3つの顕性という比率を示すでしょう。
対立遺伝子は、常に顕性と潜性のパターンで振る舞うわけではありません。不完全顕性は、ヘテロ接合型がホモ接合型の表現型の間の中間的な表現型を示す状況を表しています。共顕性は、ヘテロ接合型における両方の対立遺伝子の同時発現を表しています。二倍体生物は任意の遺伝子について2つの対立遺伝子しか有することができませんが、ある個体群中で1つの遺伝子について2つより多い対立遺伝子が存在することは一般的です。多くの動物やいくつかの植物と同様に、人間においても、女性は2つのX染色体を持ち、男性は1つのX染色体と1つのY染色体を持ちます。X染色体上に存在するがY染色体上には存在しない遺伝子はX連鎖であると言われ、男性はその遺伝子に対して1つの対立遺伝子のみを受け継ぎ、女性は2つを受け継ぎます。最後に、いくつかの対立遺伝子は致死的になることがあります。潜性致死の対立遺伝子はホモ接合型においてのみ致死性ですが、顕性致死の対立遺伝子はヘテロ接合型においても致死性です。
12.3 | 遺伝の法則
メンデルは、遺伝子(特徴)は顕性と潜性のパターンで振る舞うような対立遺伝子(形質)のペアとして遺伝すると仮定しました。対立遺伝子は、それぞれの配偶子が二倍体の個体に存在する2つの対立遺伝子のいずれか一方を同等の確からしさで受け取るような形で、配偶子に分離します。さらに、遺伝子は互いに独立して配偶子に仕分けされます。すなわち、対立遺伝子は、一般に他の遺伝子の特定の対立遺伝子をもつ配偶子に分離しやすいということはありません。焦点となる複数の遺伝子が異なる染色体上にある場合、または同じ染色体上で互いに離れている場合、二遺伝子交雑は独立組み合わせを示します。2つより多い遺伝子を含む交雑の場合は、子孫の遺伝子型と表現型を予測するためには、パネットの方形ではなく、分岐線の手法または確率の手法を使用してください。
染色体は減数分裂中に独立して配偶子に仕分けされますが、メンデルの独立組み合わせの法則は染色体ではなく遺伝子を指し、そして単一の染色体は1000を超える遺伝子を保有することがあります。遺伝子が同じ染色体上で近接した位置にある場合、それらの対立遺伝子は一緒に遺伝する傾向があります。これは、メンデルの独立組み合わせの法則に違反するような比率の子孫をもたらします。しかしながら、組換えは、相同染色体上の遺伝物質を交換するのに役立ち、その結果、母親および父親の対立遺伝子が同じ染色体上で組換えられます。これが、所与の染色体上の対立遺伝子が常に一緒に遺伝するわけではない理由です。組換えは染色体上のどこででも起こるランダムな事象です。したがって、同じ染色体上ではるかに離れている遺伝子は、介在する染色体空間で発生する組換え事象のために、依然として独立して仕分けられる可能性が高いです。
それらが独立して仕分けられているかどうかにかかわらず、遺伝子は、ある遺伝子についての対立遺伝子の発現が異なる遺伝子についての対立遺伝子の発現を覆い隠すかまたは修飾するような遺伝子産物のレベルで相互作用することがあります。これはエピスタシスと呼ばれます。
ビジュアルコネクション問題
1.図12.5 | エンドウマメ植物では、丸いエンドウマメ(R)がしわのあるエンドウマメ(r)に対して顕性です。あなたはしわのあるマメを持つひとつのエンドウマメ植物(遺伝子型rr)と、丸いマメを持つ未知の遺伝子型の植物との間で検定交雑をします。あなたは3つの植物が得られました。そして、そのすべては丸いマメを持っています。あなたは、このデータから、丸いマメを持つ親の植物がホモ接合型顕性かヘテロ接合型かどうかわかるでしょうか?もし丸いマメを持つ親の植物がヘテロ接合型である場合、3つの子のエンドウマメの無作為標本がすべて丸型になる確率は何ですか?
2.図12.6 | 1、2、および3と表示された個人の遺伝子型は何ですか?
3.図12.12 | 白い目の雄と、ヘテロ接合型で赤い目の色の雌との交雑からは、どのような比率の子孫が生まれますか?
4.図12.16 | エンドウマメ植物では、紫色の花(P)が白い花(p)に対して顕性であり、黄色のエンドウマメ(Y)が緑色のエンドウマメ(y)に対して顕性です。PpYYとppYyのエンドウマメ植物の交雑で可能な遺伝子型と表現型は何ですか?この交雑のパネットの方形分析をするのに必要な四角の数はいくつですか?
レビュー問題
5.メンデルは雄の植物の____から雌の卵子に花粉を移すことにより交配を行いました。
a.葯
b.雌しべ
c.柱頭
d.種子
6.メンデルがエンドウマメ植物で観察した7つの特徴のうちの1つはどれですか?
a.花の大きさ
b.種子の質感
c.葉の形
d.茎の色
7.あなたが庭のエンドウマメ植物で種子の色に関する交雑を行っていると想像してください。もしあなたが緑色の種子と黄色の種子を持つ近交系の両親を交雑させた場合、あなたはどんなF₁子孫を予測するでしょうか?黄色の種子は緑色の種子に対して顕性です。
a.100%が黄緑色の種子
b.100%が黄色の種子
c.50%が黄色の種子で、50%が緑色の種子
d.25%が緑色の種子で、75%が黄色の種子
8.エンドウマメのさやの質感の形質を調べるための交雑を考えてみましょう。さやの質感は、収縮したものと膨らんだものがあります。メンデルは、膨らんださやが顕性であるような顕性/潜性のパターンに従ってその形質が振る舞うことを見出しました。もしあなたがこの交雑を行い、F₂世代で650個の膨らんださやの植物を得たとしたら、およそいくつの収縮したさやの植物があると予想できるでしょうか?
a.600
b.165
c.217
d.468
9.ある科学者が、紫色の花を末端につける近交系のエンドウマメ植物に、白色の花を軸上につける近交系のエンドウマメ植物からの花粉を受粉させました。次の観察のうちどれが最も正確にF₂世代を記述しているでしょうか?
a.75%が紫色の花。75%の花が末端につく
b.75%が白色の花を末端の位置につける
c.75%が紫色の花。75%の花が軸上につく
d.75%が紫色の花を軸上の位置につける
10.生物によって発現される観察可能な形質は、その________と言われます。
a.表現型
b.遺伝子型
c.対立遺伝子
d.接合子
11.潜性形質は、その形質について________である個体において観察されるでしょう。
a.ヘテロ接合型
b.ホモ接合型またはヘテロ接合型
c.ホモ接合型
d.二倍体
12.もし白と黒の近交系のマウスが交配され、その結果がすべて灰色の子孫である場合、これはどのような遺伝パターンを示しているのでしょうか?
a.顕性
b.共顕性
c.複対立遺伝子
d.不完全顕性
13.人間におけるABO血液型は、Iᴬ、Iᴮ、およびi対立遺伝子として発現します。Iᴬ対立遺伝子はA血液型抗原をコードし、IᴮはB型をコードし、そしてiはO型をコードします。AおよびBの両方がOに対して顕性です。もしヘテロ接合型血液型Aの親(Iᴬi)とヘテロ接合型血液型Bの親(Iᴮi)とが交配した場合、子の4分の1が両方の抗原が等しく発現するAB血液型(IᴬIᴮ)になります。したがって、ABOの血液型は以下の例です。
a.複対立遺伝子と不完全顕性
b.共顕性と不完全顕性
c.不完全顕性のみ
d.複対立遺伝子と共顕性
14.子宮内で発現する潜性致死の対立遺伝子についてヘテロ接合型である2つの個体間の交配において、どの遺伝子型の比率(ホモ接合型顕性:ヘテロ接合型:ホモ接合型潜性)が子において観察されると予想できるでしょうか?
a.1:2:1
b.3:1:1
c.1:2:0
d.0:2:1
15.もし多指症(6本の指)をコードする対立遺伝子が顕性である場合、なぜほとんどの人が5本の指を持つのでしょうか?
a.遺伝的要素が多指症遺伝子を抑制するため。
b.多指症は胚性致死であるため。
c.6本目の指が出生時に除去されるため。
d.多指症対立遺伝子が人間の個体群では非常にまれであるため。
16.ある農家が黒と白のニワトリを飼育しています。驚いたことに、第1世代の卵が孵化すると、すべての鶏が黒くて、それらの羽毛全体に白い斑点が現れています。斑点のあるニワトリを近親交配させた後に卵が産まれたとき、農家は何を予想するでしょうか?
a.すべての子孫は斑点を持つ。
b.子孫の75%は斑点を持ち、25%は黒くなる。
c.子孫の50%は斑点を持ち、25%は黒くなり、そして25%は白くなる。
d.子孫の50%は黒くなり、子孫の50%は白くなる。
17.遺伝子連鎖がないと仮定すると、AABB × aabbの二遺伝子交雑の結果のAaBbのF₁ヘテロ接合型において、F₂子孫を生じさせるであろうF₁配偶子(AB、aB、Ab、ab)の比率は何ですか?
a.1:1:1:1
b.1:3:3:1
c.1:2:2:1
d.4:3:2:1
18.分岐線の手法と確率の手法はどのような確率の規則を利用していますか?
a.検定交雑
b.積の規則
c.一遺伝子交雑の規則
d.和の規則
19.3つの形質(これら形質は顕性および潜性のパターンで振る舞います)のすべてについてヘテロ接合型である親の間の三遺伝子交雑において、いくつの異なる子孫の遺伝子型が予想されるでしょうか?表現型はいくつでしょうか?
a.64個の遺伝子型。16個の表現型
b.16個の遺伝子型。64個の表現型
c.8個の遺伝子型。27個の表現型
d.27個の遺伝子型。8個の表現型
20.ラブラドル・レトリーバー犬の毛皮の色は、EとBという2つの対立遺伝子によって制御されています。ee__の遺伝子型を持つものは黄色い犬になりますが、B_E_の遺伝子型を持つものは黒い犬になり、bbE_の遺伝子型を持つものはチョコレート色の犬になります。これは_____の例です。
a.エピスタシス
b.共顕性
c.不完全顕性
d.連鎖
21.次の状況のうち独立組み合わせの法則に従っていないものはどれですか?
a.ブロンドの男性とブルネットの女性が、時間をかけて3人の子を生み、その子たちはすべてブロンドの髪をしていた。
b.茶色の雄牛と交雑した白い雌牛が、葦毛の子牛を生んだ。
c.雄豚と雌豚を交配させると、雌の子豚6匹が生まれた。
d.男性は女性よりも血友病に罹患する可能性が高い。
クリティカルシンキング問題
22.エンドウマメが遺伝を研究するためのモデル系の優れた選択であった理由の1つを記述してください。
23.エンドウマメの茎の高さの特徴に関して、あなたならどのようにして相互交雑を行いますか?
24.メンデルが、丸い黄色の種子を持つ近交系のエンドウマメ植物と、しわのある緑色の種子を持つ近交系のエンドウマメ植物を使って交雑を行います。子孫が緑色の丸い種子を持つ確率は何でしょうか?F₁世代とF₂世代の確率を計算してください。
25.標準的なトランプのデッキの中から、ハートの札または絵札を引く確率を計算してください。この結果は、ハートの絵札を引くよりも、大きいですか、小さいですか?
26.エンドウマメ植物における花の位置についての遺伝子は、軸上または末端という対立遺伝子として存在します。軸上が末端に対して顕性であると仮定すると、それぞれの形質についてホモ接合型である親を含む交配から可能なF₁およびF₂の遺伝子型および表現型の全てを列挙してください。遺伝子型を慣習的な遺伝子略語で表現してください。
27.小型のエンドウマメ植物(ホモ接合型潜性)と大型のエンドウマメ植物(ヘテロ接合型)との交雑における子孫を予測するために、パネットの方形を使用してください。子孫の表現型の比率は何ですか?
28.人間の男性は、赤-緑の色覚異常のキャリアになることができますか?
29.ホモ接合型顕性のドナーよりもホモ接合型潜性のドナーとの検定交雑を実施するほうが効率的なのはなぜですか?ホモ接合型顕性のドナーでは、どのようにして同じ情報を見つけることができるでしょうか?
30.確率の手法を使用して、AABBCcとAabbccの両親の間の交雑の遺伝子型と遺伝子型の割合とを計算してください。
31.ギリシャ語の語源の「立ち上がる」という観点からエピスタシスを説明してください。
32.12.3節「遺伝の法則」では、夏カボチャについてのエピスタシスの例が示されました。白いWwYyヘテロ接合型を交雑させて、本文中で与えられている12白:3黄:1緑という表現型の比率を証明してください。
33.トリソミー21を有する人はダウン症候群を発症します。この病気では、メンデルの遺伝の法則のどれが破られていますか?これが最も起こりそうな方法は何ですか?
34.ヘテロ接合型のエンドウマメ植物が、紫色の花と黄色い丸い種子をつけました。メンデル的な遺伝によって産生された配偶子の予想される遺伝子型を説明してください。もし3つの遺伝子すべてが1つの染色体の同じ腕にある場合、科学者は遺伝パターンがメンデル遺伝学に従うだろうと予測するべきですか?
解答のヒント
第12章
1 図12.5 データセットが小さすぎるため、あなたはこの植物がホモ接合型であるかヘテロ接合型であるかを確信することはできません。潜性遺伝子が存在していたとしても、偶然によって3つの植物すべてが顕性遺伝子のみを獲得した可能性があります。もし丸いエンドウマメの親がヘテロ接合型である場合、3つの子のエンドウマメの無作為標本がすべて丸型になる確率は8分の1です。3 図12.12 雌の子孫の半分は赤い目をしたヘテロ接合型(XᵂXʷ)であり、半分は白い目をしたホモ接合型潜性(XʷXʷ)です。雄の子孫の半分は赤い目をした半接合型顕性(XᵂY)であり、半分は白い目をした半接合型潜性(XʷY)です。5 A 7 B 9 C 11 C 13 D 15 D 17 A 19 D 21 D 22 エンドウマメは無柄で自家受粉の間にしっかりと花を閉じます。これらの機能は、メンデルのデータの正確性を損なうかもしれない偶発的または意図的でない受精を防ぐのに役立ちます。24 私たちは2つの独立した事象が同時に発生する確率を計算しているので、積の規則を使用します。F₁世代:緑色の種子の色は潜性であるため、F₁世代のどの植物も緑色の丸い種子を持つ可能性は0%です。F₂世代:緑色の種子を持つF₂世代の植物が成長する確率は1/4であり、丸い種子を持つF₂世代の植物が成長する確率は3/4です。私たちは、積の規則を使用して(表12.3)、緑色の丸い種子を持つ植物の確率を計算できます。1/4×3/4 = 3/16 26 軸上が顕性であるため、この遺伝子はAと表示されます。F₁は、すべてが軸上の表現型を持つヘテロ接合型Aaでしょう。F₂は、AA、Aa、およびaaという遺伝子型があり得るでしょう。これらは、それぞれ軸上、軸上、および末端という表現型に対応します。28 いいえ、男性は色覚異常を発現することしかできません。ある個人がキャリアになるには2つのX染色体が必要なので、男性は色覚異常のキャリアになることができません。30 それぞれの遺伝子を別々に考えると、Aでの交配は、半分がAAで、半分がAaである子を生み出すでしょう。BはすべてBbである子を生み出します。Cは半分がCcで、半分がccである子を生み出します。その場合、割合は(1/2)×(1)×(1/2)、すなわち1/4 AABbCcです。他の可能性について続けると、1/4 AABbcc、1/4 AaBbCcおよび1/4 AaBbccが得られます。したがって、比率は1:1:1:1です。32 この交雑は、それぞれの親に配偶子(WY、Wy、wY、およびwy)をあてた4×4のパネットの方形で表すことができます。顕性W遺伝子を発現する12の子孫全てについて、その子孫は白いでしょう。wに対してホモ接合型潜性であるが顕性Y遺伝子を発現する3つの子孫は黄色になるでしょう。残りのwwyyの子孫は緑色になります。34 メンデル的な遺伝は、3つの遺伝子すべてが独立して遺伝していると予測するでしょう。したがって、8つの異なる配偶子の遺伝子型の可能性があります:VYR、VYr、VyR、Vyr、vYR、vYr、vyR、vyr。もし3つの遺伝子すべてが同じ染色体の腕にある場合、それらの遺伝子は互いに接近している(連鎖している)ため、独立組み合わせが起こる可能性は低いです。
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