生物学 第2版 — 第21章 ウイルス —

Japanese translation of “Biology 2e”

Better Late Than Never
75 min readOct 12, 2019

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21 | ウイルス

図21.1 | 透過型電子顕微鏡で見たこのタバコモザイクウイルス(左)は、最初に発見されたウイルスでした。このウイルスはタバコや他の植物、たとえばランの病気を引き起こします(右)。(credit a: USDA ARS; credit b: modification of work by USDA Forest Service, Department of Plant Pathology Archive North Carolina State University; scale-bar data from Matt Russell)

この章の概要

21.1:ウイルスの進化、形態学、および分類
21.2:ウイルス感染と宿主
21.3:ウイルス感染の予防と治療
21.4:他の無細胞実体:プリオンとウイロイド

はじめに

ウイルスはどのような界にも分類することができない非細胞性の寄生する実体です。それらは細菌、植物、そして動物といった多様な生物に感染することができます。実際のところ、ウイルスは生きている生物と生きていない実体の間のある種の冥府のようなところに存在しています。生き物は成長し、代謝し、そして生殖します。対照的に、ウイルスは細胞ではなく、代謝性を持つことも成長することもなく、細胞分裂によって分裂することもできません。ウイルスは自分自身をコピーまたは複製することができます。しかしながらウイルスは、成熟型として組み立てられるような子孫のウイルスを生産するために、その宿主細胞に由来する資源に完全に依存しています。ウイルスは化石の記録を残していないため、ウイルスがいつどのようにして進化したのか、どのような祖先の感染源からウイルスが進化したのか、誰も正確にはわかりません。一部のウイルス学者は、現代のウイルスはそれぞれの進化の道筋に沿ってさまざまな源から拾い上げた核酸の断片やかけらで構成されていると主張しています。

21.1 | ウイルスの進化、形態学、および分類

この節が終わるまでに、あなたは次のことができるようになります:
•ウイルスがどのようにして最初に発見されたのかとそれらが検出された方法を記述する
•ウイルスがどのように進化したかについて3つの仮説を議論する
•ウイルスの一般的な構造を記述する
•ウイルスの基本的な形を認識する
•ウイルスの過去と現在の分類システムを理解する
•ボルティモア分類システムの基本を記述する

ウイルスは多様な実体です。それらは構造、複製方法、感染する宿主が異なります。原核生物の細菌や古細菌から、植物、動物、菌類などの真核生物まで、ほぼすべての生物について、感染するような何らかのウイルスがあります。ほとんどの生物学的多様性は進化的な歴史を通して理解することができますが(種がどのようにして変化する環境条件に適応してきたかや、異なる種がどのように共通の系統を通して互いに関連しているかなど)、ウイルスの起源および進化についての多くのことが未知のまま残されています。

発見と検出

ウイルスが最初に発見されたのは、顕微鏡で見えるすべての細菌をあらゆる液体サンプルから除去することができる磁器製濾過器(シャンベラン-パスツール型濾過器)の開発後でした。1886年に、アドルフ・マイヤーは、タバコの植物の病気(タバコモザイク病)が、植物から抽出した液体を介して病気の植物から健康な植物へと伝染することを実証しました。1892年、ドミトリー・イワノフスキーは、シャンベラン-パスツール型濾過器によって抽出物からすべての生存している細菌を除去した後でも、この病気がその方法で伝染することを示しました。それでも、これらの「透過可能な」感染性病原体が、単なる非常に小さな細菌ではなく、新しいタイプの、疾患を引き起こす非常に小さな粒子であることが証明されるまでには何年もかかりました。

ほとんどのビリオン、すなわち単一のウイルス粒子は非常に小さく、直径が約20~250ナノメートルです。しかしながら、アメーバから最近発見されたウイルスの中には、最大で直径1000nmのものがあります。ポックスウイルスおよび他の大きなDNAウイルスのような大きなビリオンを除いて、ウイルスは光学顕微鏡で見ることができません。1930年代後半に電子顕微鏡が開発されて初めて、科学者たちは先に述べたタバコモザイクウイルス(TMV)(図21.1)や他のウイルス(図21.2)の構造をよく見ることができました。ビリオンの表面構造は、走査型電子顕微鏡と透過型電子顕微鏡の両方で観察することができますが、ウイルスの内部構造は透過型電子顕微鏡からの画像でしか観察することができません。電子顕微鏡および他の技術の使用は、あらゆる種類の生物についての多くのウイルスの発見を可能にしました。

図21.2 | ほとんどのウイルス粒子は電子顕微鏡でしか見えません。これらの透過型電子顕微鏡写真において、(a)ウイルスはそれが感染する細菌細胞に対して非常に矮小であり、(b)これらの大腸菌細胞は培養結腸細胞に対して非常に矮小です。(credit a: modification of work by U.S. Dept. of Energy, Office of Science, LBL, PBD; credit b: modification of work by J.P. Nataro and S. Sears, unpub. data, CDC; scale-bar data from Matt Russell)

ウイルスの進化

生物学者は今日のウイルスがどのように突然変異し適応するかについてかなりの量の知識を持っていますが、ウイルスが最初にどのようにして発生したかについてはあまり知ってはいません。ほとんどの生物の進化的な歴史を探るとき、科学者は化石記録や同様の歴史的証拠を見ることができます。しかしながら、私たちの知る限りでは、ウィルスは化石化していないので、研究者は今日のウィルスがどのように進化するかの調査から推定し、生化学的および遺伝的情報を使って推測によるウィルスの歴史を作成しなければなりません。

ほとんどの学者は、ウイルスは単一の共通の祖先を持たないということだけでなく、ウイルスの起源についての単一の妥当な仮説もないということに同意しています。ウイルスの起源を説明するかもしれない、現在の進化のシナリオがいくつかあります。そのような仮説の1つである「退化」または後退仮説は、ウイルスが自由生活性細胞から、または細胞内の原核生物寄生体から進化したことを示唆しています。しかしながら、このプロセスがどのように発生したかについての多くの要素は、依然として謎のままです。第2の仮説、すなわち逃避または前進仮説は、ウイルスが宿主細胞から脱出したRNAおよびDNA分子に由来することを示唆しています。3番目の仮説である自己複製仮説は、ウイルスがトランスポゾンや他の可動性の遺伝的要素に似た自己複製型の実体に由来している可能性があることを示唆しています。すべての場合において、ウイルスはおそらく、それらが宿主として依存している細胞とともに進化し続けています。

技術が進歩するにつれて、科学者たちはウイルスの起源を説明するために追加の仮説を発展させ改良するかもしれません。ウイルス分子系統分類学と呼ばれる新興分野は、配列決定された遺伝物質の比較を通してまさしくそれをすることを試みています。これらの研究者たちはいつの日かウイルスの起源をよりよく理解することを望んでいます — それはウイルスが作り出す病気の治療の進歩につながるかもしれない発見です。

ウイルスの形態学

ウイルスは非細胞性です。それは、ウイルスが細胞構造を持たない生物学的実体であることを意味します。それゆえ、それらは、細胞小器官、リボソーム、および原形質膜などの細胞の成分のほとんどを欠いています。ビリオンは、核酸コア、外側のタンパク質コーティング(またはカプシド)、そして時には宿主細胞由来のタンパク質とリン脂質膜でできた外側のエンベロープからなります。ウイルスはまた、カプシド内に、またはウイルスゲノムに付着したさらなるタンパク質(酵素など)を含むことがあります。異なるウイルスのファミリーのメンバー間の最も明白な違いはそれらの形態のバリエーションであり、それは非常に多様です。ウイルスの複雑さの興味深い特徴は、宿主の複雑さが必ずしもビリオンの複雑さと相関しないことです。実際のところ、最も複雑なビリオン構造のいくつかはバクテリオファージ — 最も単純な生物である細菌に感染するウイルス — の中に見られます。

形態

ウイルスにはさまざまな形や大きさがありますが、これらの特徴はウイルスのファミリーのそれぞれでは一貫しています。私たちが見たように、全てのビリオンは保護カプシドによって覆われた核酸ゲノムを有します。カプシドのタンパク質はウイルスゲノムにコードされており、カプソメアと呼ばれます。いくつかのウイルスカプシドは単純ならせんまたは多面体の「球」であり、他のものは構造が非常に複雑です(図21.3)。

図21.3 | ウイルスカプシドは、(a)らせ​​ん、(b)多面体、または(c)複雑な形状をとることができます。(credit a “micrograph”: modification of work by USDA ARS; credit b “micrograph”: modification of work by U.S. Department of Energy)

一般に、ウイルスのカプシドは4つのグループに分類されます:らせん状、正二十面体状、エンベロープ状、そして頭・尾状です。らせん状カプシドは細長く円筒形です。TMVを含む多くの植物のウイルスはらせん状です。正二十面体状ウイルスは、ポリオウイルスやヘルペスウイルスのように、ほぼ球形の形状をしています。エンベロープ状ウイルスは、カプシドを囲む宿主細胞に由来する膜を有します。HIVのような動物のウイルスは、しばしばエンベロープ状です。頭・尾状ウイルスは細菌に感染し、正二十面体状ウイルスに似た頭部とらせん状ウイルスのような形をした尾部を持っています。

多くのウイルスは、ウイルス受容体と呼ばれる細胞上の分子を介して宿主細胞に付着するために、ある種の糖タンパク質を使用します。これらのウイルスでは、後で細胞膜を貫通するために結合することが必要とされます。ウイルスが細胞内でその複製を完了できるのは、侵入が起こった後に限られます。ウイルスが使用する受容体は、通常は細胞表面に見られる分子であり、かつ、それら自身の生理学的機能を有するものです。ウイルスはこれらの分子を自身の複製のために利用するように単純に進化したように思われます。たとえば、HIVはその受容体のひとつとしてTリンパ球上のCD4分子を使用します(図21.4)。CD4は細胞接着分子と呼ばれる分子の一種で、Tリンパ球免疫反応の発生中に異なる種類の免疫細胞を互いに接近させておくように機能します。

図21.4 | ウイルスとその宿主受容体タンパク質。HIVウイルスは人間の細胞の表面上のCD4受容体に結合します。CD4受容体は、免疫反応を起こすときに白血球が免疫系の他の細胞とやり取りするのを助けます。(credit: modification of work by NIAID, NIH)

既知の最も複雑なビリオンの1つであるT4バクテリオファージ(大腸菌に感染します)細菌は、このウイルスが宿主細胞に結合するのに使用する尾部構造とそのDNAを収容する頭部構造とを持っています。

アデノウイルスという人間の呼吸器の病気を引き起こす非エンベロープ状の動物ウイルスは、宿主細胞に結合するためにそのカプソメアから突き出ている糖タンパク質の突起を使います。非エンベロープ状のウイルスには、ポリオ(ポリオウイルス)、足底疣贅(パピローマウイルス)、およびA型肝炎(A型肝炎ウイルス)を引き起こすものも含まれます。

インフルエンザウイルスなどのエンベロープ状ビリオンは、核酸(インフルエンザの場合はRNA)およびウイルスコードタンパク質を含むリン脂質二重層のエンベロープに囲まれたカプシドタンパク質からなります。ウイルスのエンベロープに埋め込まれた糖タンパク質は、宿主細胞に結合するために使用されます。他のエンベロープタンパク質は、エンベロープを安定化し、そしてしばしば子孫ビリオンの組み立てにおいて役割を果たすことのある基質タンパク質です。水痘、HIV、おたふく風邪などが、エンベロープを持つウイルスによって引き起こされる病気の他の例です。エンベロープの脆弱性のために、非エンベロープ状ウイルスはエンベロープ状ウイルスよりも温度、pH、およびいくつかの消毒剤の変化に対してより耐性があります。

全体として、ビリオンの形状とエンベロープの有無によっては、ウイルスが引き起こす可能性のある疾患や感染する可能性のある種についてわかることはほとんどありませんが、それでもそれらはウイルス分類を始めるための有用な手段です(図21.5)。

ビジュアルコネクション

図21.5 | 複雑なウイルス。ウイルスは複雑な形であることも比較的単純な形であることもあります。この図は、3つの比較的複雑なビリオンを示しています。バクテリオファージT4は、そのDNAを含む頭部、および宿主細胞に結合する尾部繊維を持っています。アデノウイルスは、そのカプシドからの突起を使用して宿主細胞に結合します。インフルエンザウイルスは、そのエンベロープに埋め込まれた糖タンパク質を使用して宿主細胞に付着します。インフルエンザウイルスはまた、エンベロープの内側に基質タンパク質を有し、これはビリオンの形状を安定させるのを助けます。(credit “bacteriophage, adenovirus”: modification of work by NCBI, NIH; credit “influenza virus”: modification of work by Dan Higgins, Centers for Disease Control and Prevention)

ウイルス構造についての次の記述のうち、正しいものはどれですか?
a.すべてのウイルスはウイルス膜に覆われている。
b.カプソメアは、カプシドと呼ばれる小さなタンパク質サブユニットで構成されている。
c.すべてのウイルスでDNAが遺伝物質である。
d.糖タンパク質は、ウイルスが宿主細胞に付着するのを助ける。

核酸の種類

遺伝物質としてDNAを使用するほとんどすべての生物とは異なり、ウイルスはDNAまたはRNAのいずれかを使用します。ウイルスコアにはゲノム、つまりウイルスの遺伝的内容のすべてが含まれています。ウイルスゲノムは小さい傾向があり、ウイルスが宿主細胞から得ることができないタンパク質をコードする遺伝子のみを含みます。この遺伝物質は一本鎖であることも二本鎖であることもあります。それはまた線状であることも環状であることもあります。大部分のウイルスは単一の核酸を含みますが、他のウイルスはいくつかのセグメントに分けられたゲノムを有します。インフルエンザウイルスのRNAゲノムはセグメント化されており、それはその多様性と継続的な進化に寄与し、そしてそれに対するワクチンを開発することがなぜ難しいのかを説明しています。

DNAウイルスでは、ウイルスDNAは宿主細胞の複製タンパク質に対して、ウイルスゲノムの新しいコピーを合成し、そのゲノムをウイルスタンパク質に転写および翻訳するように指示します。DNAウイルスによって引き起こされる人間の疾患には、水痘、B型肝炎、およびアデノウイルスが含まれます。性感染するDNAウイルスには、子宮頸がんや陰部疣贅に関連しているヘルペスウイルスやヒトパピローマウイルス(HPV)があります。

RNAウイルスはそれらの遺伝物質としてRNAのみを含みます。RNAウイルスは、宿主細胞内でそれらのゲノムを複製するために、RNAをRNAに(レトロウイルス内ではRNAをDNAに)複製することができるそれら自身の酵素をコードしなければなりません。これらのRNAポリメラーゼ酵素は、DNAポリメラーゼよりも複製エラーを起こしやすいので、転写中に間違いを犯すことが多いです。このため、RNAウイルスの変異はDNAウイルスよりも頻繁に発生します。これによりそれらのウイルスは変化し、より素早く宿主に適応します。RNAウイルスによって引き起こされる人間の病気には、インフルエンザ、C型肝炎、はしか、狂犬病などがあります。性感染するHIVウイルスはRNAレトロウイルスです。

ウイルス分類における困難

ほとんどのウイルスはおそらく異なる先祖から進化してきたので、科学者が原核細胞と真核細胞を分類するために使用してきた体系的な方法はあまり有用ではありません。もしウイルスが異なる生物の「残骸」を表すならば、ゲノム解析やタンパク質解析でさえも役に立ちません。なぜなら、ウイルスはそのすべてが共有するような共通のゲノム配列を持たないからです。たとえば、原核生物の系統発生を構築するのに非常に有用な16S rRNA配列は、そもそもリボソームを持たない生物にとっては使いようがありません!生物学者は過去にいくつかの分類システムを使用してきました。ウイルスは、最初は共有する形態によって分類されていました。後になって、ウイルスのグループはそれらが含んでいる核酸の種類(DNAまたはRNA)、そしてそれらの核酸が一本鎖か二本鎖かによって分類されました。しかしながら、これらの初期の分類方法は、ウイルスの異なる特徴の組に基づいていたため、ウイルスは異なった形でグループ分けされていました。今日最も一般的に使用されている分類方法はボルティモア分類スキームと呼ばれ、メッセンジャーRNA(mRNA)がウイルスの特定の種類のそれぞれにおいて、どのように生成されるかに基づいています。

過去の分類体系

ウイルスには、それに基づいて分類できるような要素がほんのいくつかしかありません:ウイルスゲノム、カプシドの種類、エンベロープ状ウイルスのエンベロープ構造です。これらの要素はすべて、過去のウイルス分類に使用されてきました(表21.1および図21.6)。ウイルスゲノムは、遺伝物質の種類(DNAまたはRNA)およびその構成(一本鎖または二本鎖、線状または環状、およびセグメント化または非セグメント化)において異なります。いくつかのウイルスでは、複製に必要な追加のタンパク質はゲノムと直接結合しているか、またはウイルスカプシド内に含まれています。

表21.1
図21.6 | ウイルスは、それらのコアの遺伝物質およびカプシドの設計に従って分類することができます。(a)狂犬病ウイルスは一本鎖RNA(ssRNA)コアおよびエンベロープ状のらせんカプシドを有しますが、(b)天然痘の原因物質である天然痘ウイルスは二本鎖DNA(dsDNA)コアおよび複雑なカプシドを有します。狂犬病伝染は、感染した哺乳動物の唾液が傷口に入ると起こります。このウイルスは、末梢神経系のニューロンを通って中枢神経系に移動し、そこで脳の機能を損ない、その後他の組織に移動します。このウイルスはあらゆる哺乳動物に感染する可能性があり、ほとんどが感染後数週間以内に死亡します。天然痘は、皮膚、口、およびのどに局在する天然痘ウイルスの吸入によって伝染するヒトウイルスであり、それは特徴的な発疹を引き起こします。1979年に根絶される前は、感染による死亡率は30%から35%でした。(credit “rabies diagram”: modification of work by CDC; “rabies micrograph”: modification of work by Dr. Fred Murphy, CDC; credit “small pox micrograph”: modification of work by Dr. Fred Murphy, Sylvia Whitfield, CDC; credit “smallpox photo”: modification of work by CDC; scale-bar data from Matt Russell)

ウイルスは、そのカプシドの設計によっても分類することができます(表21.2および図21.7)。カプシドは、裸の正二十面体、エンベロープ状の正二十面体、エンベロープ状のらせん、裸のらせん、および複雑なものとして分類されます。遺伝物質の種類(DNAまたはRNA)およびその構造(一本鎖または二本鎖、線状または環状、およびセグメント化または非セグメント化)を使用して、ウイルスのコア構造を分類します(表21.2)。

表21.2
図21.7 | さまざまなウイルスの透過型電子顕微鏡写真が、それらのカプシド構造を示しています。(a)ポリオウイルスのカプシドは裸の正二十面体です。(b)エプスタイン-バール・ウイルスのカプシドは、エンベロープ状の正二十面体です。(c)おたふく風邪ウイルスのカプシドはエンベロープ状のらせんです。(d)タバコモザイクウイルスのカプシドは裸のらせんです。(e)ヘルペスウイルスのカプシドは複雑なものです。(credit a: modification of work by Dr. Fred Murphy, Sylvia Whitfield; credit b: modification of work by Liza Gross; credit c: modification of work by Dr. F. A. Murphy, CDC; credit d: modification of work by USDA ARS; credit e: modification of work by Linda Stannard, Department of Medical Microbiology, University of Cape Town, South Africa, NASA; scale-bar data from Matt Russell)

ボルティモア分類

現在最も一般的に使用されているウイルス分類のシステムは、1970年代初頭にノーベル賞を受賞した生物学者のデイヴィッド・ボルティモアによって最初に開発されました。上述の形態学および遺伝学における相違に加えて、ボルティモア分類スキームは、ウイルスの複製サイクルの間にmRNAがどのように産生されるかに従ってウイルスをグループ分けします。

第1群(グループI):ウイルスはそれらのゲノムとして二本鎖DNA(dsDNA)を含みます。それらのmRNAは、宿主細胞の酵素を使用して、細胞DNAとほとんど同じ方法で転写によって産生されます。

第2群(グループII):ウイルスはそれらのゲノムとして一本鎖DNA(ssDNA)を有します。このウイルスは、mRNAへの転写が起こる前にそれらの一本鎖ゲノムをdsDNA中間体に変換します。

第3群(グループIII):ウイルスは、それらのゲノムとしてdsRNAを使用します。この鎖が分離し、それらのうちの1つが、ウイルスによってコードされているRNA依存性RNAポリメラーゼを使用してmRNAを生成するための鋳型として使用されます。

第4群(グループIV):ウイルスは、それらのゲノムとして正の極性のssRNAを有します。これはゲノムRNAが直接mRNAとして働くことができることを意味します。複製中間体と呼ばれるdsRNAの中間体は、ゲノムRNAをコピーする過程で作られます。これらの中間体から、負の極性の複数の完全長RNA鎖(プラス鎖のゲノムRNAに相補的)が形成され、これは、完全長ゲノムRNAおよびそれより短い長さのウイルスmRNAの両方を含む、正の極性のRNAの産生のための鋳型として役立ちます。

第5群(グループV):ウイルスは、負の極性のssRNAゲノムを含み、これはそれらの配列がmRNAに相補的であることを意味します。グループIVのウイルスと同様に、dsRNA中間体がゲノムのコピーを作成するため、そしてmRNAを産生するために使用されます。このグループの場合、マイナス鎖のゲノムを直接mRNAに変換することができます。さらに、完全長のプラスのRNA鎖が、マイナス鎖ゲノムの産生のための鋳型として役立つように作られます。

第6群(グループVI):ウイルスは、逆転写酵素という酵素を用いてdsDNAに変換しなければならない二倍体(2つのコピー)ssRNAゲノムを有します。次に、dsDNAは宿主細胞の核に輸送され、宿主ゲノムに挿入されます。次いで、宿主ゲノムに組み込まれたウイルスDNAの転写によってmRNAが産生されます。

第7群(グループVII):ウイルスは部分的dsDNAゲノムを有し、mRNAとして作用するもののゲノム複製に必要な逆転写酵素によってdsDNAゲノムに逆変換もされるssRNA中間体を作成します。

ボルティモア分類における各群の特徴を、各群の例とともに表21.3に要約します。

表21.3

21.2 | ウイルス感染と宿主

この節が終わるまでに、あなたは次のことができるようになります:
•複製の段階を列挙し、それぞれの段階で何が起きるのかを説明する
•ウイルス複製の溶解サイクルと溶原性サイクルを記述する
•動植物ウイルスの伝染について説明する
•動植物ウイルスによって引き起こされる病気のいくつかについて議論する
•動植物ウイルスの経済的影響について議論する

ウイルスは偏性の細胞内寄生生物です。ウイルスは侵入する前にまず特定の生きている細胞を認識してそれに付着しなければなりません。侵入した後、入ってきたウイルスはそのゲノムをコピーし、それ自身のタンパク質を製造しなければなりません。最後に、子孫のビリオンは、それらが他の細胞に感染することができるように宿主細胞から脱出しなければなりません。ウイルスは、特定の種類の宿主とその宿主内の特定の細胞にのみ感染することができます。ウイルスが占領し、複製に使用しなければならない特定の宿主細胞は、許容状態にあると言われます。ほとんどの場合、この特異性の分子的な基盤は、宿主細胞表面上のウイルス受容体として知られている特定の表面分子によるものです。ウイルスが付着するには特定のウイルス受容体が必要とされます。さらに、代謝および宿主細胞の免疫反応(差次的遺伝子発現に基づく)の違いは、ウイルスがどの細胞を複製の標的とし得るかを決定する際の有力な要因となります。

ウイルス感染の段階

ウイルスは増殖するためにその宿主細胞のプロセスを使用しなければなりません。ウイルスの複製サイクルは、宿主細胞において劇的な生化学的および構造的変化を引き起こすことがあり、それは細胞の損傷へとつながるかもしれません。細胞変性効果と呼ばれるこれらの変化は、細胞の機能を変えたり、細胞を破壊することさえあります。ライノウイルスとして知られる一般的な風邪ウイルスに感染した細胞など、一部の感染細胞は溶解(破裂)またはアポトーシス(プログラムされた細胞死または「細胞自殺」)によって死滅し、すべての子孫のビリオンを一度に放出します。ウイルス性疾患の症状は、ウイルスによって引き起こされるそのような細胞損傷と、ウイルスを制御し体から排除しようと試みるウイルスに対する免疫反応との両方から生じます。

HIV(ヒト免疫不全ウイルス)のような多くの動物ウイルスは、ビリオンが個々に細胞を離れる出芽として知られるプロセスによって、免疫系の感染細胞を離れます。出芽のプロセスの間、細胞は溶解されず、そして直ちに殺されることもありません。しかしながら、ウイルスが感染する細胞への損傷は、たとえその細胞が一定期間生存していたとしても、その細胞が正常に機能することを不可能にするかもしれません。ほとんどの増殖的なウイルス感染は、ウイルス複製サイクルの中で類似のステップをたどります:付着、侵入、脱殻、複製、組み立て、そして放出です(図21.8)。

付着

ウイルスは、カプシド内の付着タンパク質を介して、またはウイルスエンベロープ内に埋め込まれた糖タンパク質を介して、宿主の細胞膜上の特定の受容体部位に付着します。この相互作用の特異性によって、特定のウイルスに感染される宿主、および宿主内の細胞が決まります。これは、いくつかの鍵といくつかの錠前があって、それぞれの鍵が1つの特定の錠前にしかはまらないような状況を考えることで説明できます。

学習へのリンク

このビデオ(http://openstaxcollege.org/l/influenza)は、インフルエンザがどのようにして体を攻撃するかを説明しています。

侵入

ウイルスはウイルスカプシドを伴ったままでも伴わないでも宿主細胞に侵入することがあります。バクテリオファージの核酸は「裸」になって宿主細胞に入り、細胞の外側にカプシドを残します。植物や動物のウイルスは、エンドサイトーシス(細胞膜がウイルス全体を取り囲み、飲み込むものであることを思い出してください)を通じて侵入することができます。いくつかのエンベロープ状ウイルスは、ウイルスエンベロープが細胞膜と直接融合するときに細胞に侵入します。ひとたび細胞内に入ると、ウイルスカプシドが分解し、その後ウイルス核酸が放出され、複製および転写に利用可能になります。

複製と組み立て

複製メカニズムはウイルスのゲノムに依存します。DNAウイルスは通常、宿主細胞のタンパク質と酵素を使用してウイルスのDNAを複製し、ウイルスのmRNAを転写します。そして、これをウイルスのタンパク質合成を指示するために使用します。RNAウイルスは通常、ウイルスゲノムRNAおよびmRNAの合成のための鋳型としてRNAコアを使用します。ウイルスのmRNAは、宿主細胞にウイルス酵素およびカプシドタンパク質を合成し、そして新しいビリオンを組み立てるように指示します。

もちろん、このパターンには例外があります。もし宿主細胞がウイルス複製に必要な酵素を提供しない場合、ウイルス遺伝子は欠けているタンパク質を直接合成するための情報を供給します。HIV(ボルティモア分類スキームのグループVI)のようなレトロウイルスは、DNAに逆転写されなければならないRNAゲノムを有し、これは次に宿主細胞ゲノムに組み込まれます。レトロウイルスは、RNAをDNAに変換するために、RNA鋳型をDNAに転写するウイルス特異的な酵素である逆転写酵素をコードする遺伝子を含まなければなりません。感染していない宿主細胞では、逆転写は決して起こりません — 逆転写酵素は感染した宿主細胞内でのウイルス遺伝子の発現にのみ由来します。HIVが宿主には見られないそれ自身の酵素のいくつかを産生するという事実は、研究者が宿主の代謝に影響を及ぼすことなくこれらの酵素を阻害する薬物を開発することを可能にしました。

このアプローチは、HIVを治療するために使用されるさまざまな薬物の開発につながり、そしてHIVに感染した多くの人において、血液中の感染性ビリオン(ウイルスRNAのコピー)の数を検出不可能なレベルまで減少させるのに有効です。

放出

ウイルス複製の最終段階は、宿主の生物内で産生された新しいビリオンの放出であり、それらは隣接する細胞に感染し、そして複製サイクルを繰り返すことができます。あなたがこれまでに学んだように、いくつかのウイルスは宿主細胞が死ぬときに放出され、他のウイルスは細胞を直接殺すことなく膜を通って出芽することによって感染細胞を離れていくことができます。

ビジュアルコネクション

図21.8 | インフルエンザの繁殖周期。インフルエンザウイルス感染において、カプシド上の糖タンパク質が宿主の上皮細胞に付着します。これに続いて、ウイルスは飲み込まれます。その後、RNAとタンパク質が作られ、新しいビリオンへと組み立てられます。

インフルエンザウイルスは、原形質膜と融合するウイルスエンベロープに包まれています。この方法によって、ウイルスは宿主細胞を殺すことなくそこから出ることができます。宿主細胞を生きたままにさせることによってウイルスはどのような利点を得ますか?

学習へのリンク

ウイルスについてのビデオ(https://www.khanacademy.org/science/biology/her/tree-of-life/v/viruses)を見て、構造、伝達様式、複製などを確認してください。

異なる宿主とそのウイルス

あなたが学んできたように、ウイルスはしばしば非常に特定の宿主、そして宿主内の特定の細胞に感染します。ウイルスのこの特徴によって、ウイルスは地球上の生命の1つまたは少数の種に特有なものとなります。一方、地球上には非常に多くの種類のウイルスが存在するため、ほぼすべての生物がその細胞に感染しようとするウイルスを持っています。最も小さく最も単純な細胞である原核生物でさえ、特定の種類のウイルスに攻撃されることがあります。次の項目では、私たちは原核細胞のウイルス感染のいくつかの特徴を見ていきます。私たちが学んだように、細菌に感染するウイルスはバクテリオファージと呼ばれます(図21.9)。古細菌にも同様のウイルスがあります。

バクテリオファージ

図21.9 | 宿主細胞に付着したバクテリオファージ(透過型電子顕微鏡写真)。ここに示すもののような尾部を有するバクテリオファージでは、尾部はファージゲノムの伝達のための通路として役立ちます。(credit: modification of work by Dr. Graham Beards; scale-bar data from Matt Russell)

ほとんどのバクテリオファージはdsDNAウイルスであり、これはDNA複製およびRNA転写に宿主の酵素を使用します。ファージ粒子は特定の表面受容体に結合し、そしてゲノムを宿主細胞に能動的に挿入しなければなりません。(多くのバクテリオファージに見られる複雑な尾部構造は、ウイルスゲノムが原核生物の細胞壁を越えることに能動的に関与しています。)バクテリオファージによる細胞の感染が新たなビリオンの産生をもたらす場合、その感染は増殖的であると言われます。細胞を破裂させることによりビリオンを放出する場合には、ウイルスは溶解サイクルによって複製します(図21.10)。溶解性バクテリオファージの一例はT4であり、これは人間の腸管に見られる大腸菌に感染します。しかしながら、時には、ウイルスが放出されずに細胞内に残ることがあります。たとえば、テンペレートバクテリオファージが細菌細胞に感染すると、それは溶原性サイクルによって複製し(図21.10)、ウイルスゲノムが宿主細​​胞のゲノムに組み込まれます。ファージDNAが宿主細胞のゲノムに組み込まれるとき、それはプロファージと呼ばれます。溶原性バクテリオファージの例はλ(ラムダ)ウイルスであり、これもまた大腸菌に感染します。植物や動物の細胞に感染するウイルスは、長期間ビリオンを産生していないような状態で感染することがあります。一例は、単純ヘルペスウイルスを含む動物ヘルペスウイルスであり、これは人間における口腔および性器ヘルペスの原因となるものです。これらのウイルスは、潜伏と呼ばれるプロセスで、新しいビリオンを生成することなく神経組織内に長期間存在することができ、定期的に潜伏期を離れ、ウイルスが複製する場所の皮膚に病変を引き起こします。溶原性と潜伏との間に類似点があるとしても、溶原性サイクルという用語は通常バクテリオファージを説明するために用いられます。潜伏については、次の項目でより詳しく説明します。

ビジュアルコネクション

図21.10 | テンペレートバクテリオファージは溶解サイクルと溶原性サイクルの両方を有します。溶解サイクルにおいて、ファージは複製し、そして宿主細胞を溶解します。溶原性サイクルにおいて、ファージDNAは宿主ゲノムに組み込まれ、そこでそれは次の世代に受け継がれます。飢餓や有毒化学物質への暴露などの環境ストレス要因によって、プロファージが切除して溶解サイクルに入ることがあります。

次の記述のうち、間違っているものはどれですか?
a.溶解サイクルにおいて、新しいファージが産生され、そして環境中に放出される。
b.溶原性サイクルにおいて、ファージDNAは宿主ゲノムに組み込まれる。
c.環境ストレス要因はファージに溶原性サイクルを開始させることができる。
d.細胞溶解は溶解サイクルでのみ起こる。

植物ウイルス

タバコモザイクウイルスのようなほとんどの植物ウイルスは、一本鎖(+)RNAゲノムを有します。しかしながら、他のほとんどのウイルスカテゴリーに含まれるような植物ウイルスもあります。バクテリオファージとは異なり、植物ウイルスは防御的な細胞壁を越えてウイルスゲノムを伝達するための能動的なメカニズムを持っていません。植物ウイルスが新しい宿主植物に侵入するためには、ある種の物理的な損傷が発生しなければなりません。この損傷はしばしば天候、昆虫、動物、火、あるいは農業や造園のような人間の活動によって引き起こされます。植物内の細胞から細胞への移動は、原形質連絡(ある植物細胞から隣の細胞へとわたされる細胞質の糸)のウイルス的な改変によって促進されることがあります。さらに、植物の子孫は親植物からウイルス性疾患を受け継ぐことがあります。植物ウイルスは、感染した植物の樹液との接触、昆虫や線虫などの生物、花粉を介するなど、さまざまな媒介物によって伝達されます。ある植物から別の植物へのウイルスの伝播は水平感染として知られている一方、親からウイルスを受け継ぐことは垂直感染と呼ばれています。

ウイルス性疾患の症状はウイルスとその宿主によって異なります(表21.4)。一般的な症状の1つは、過形成、すなわちこぶとして知られる植物の腫瘍の出現を引き起こすような細胞の異常増殖です。他のウイルスは、植物の葉に低形成(または細胞増殖の減少)を誘発し、厚さが薄く、黄色の領域を出現させます。さらに他のウイルスは、植物細胞を直接殺すことによって植物に影響を与えます。これは細胞壊死として知られるプロセスです。植物ウイルスの他の症状には、奇形の葉、植物の茎の黒い条斑病、茎・葉・果実の成長の変化、および輪紋病(葉に見られる円形または線状の変色領域)が含まれます。

表21.4

植物ウイルスは作物の成長と発達を深刻に混乱させ、私たちの食糧供給に大きな影響を与えます。それらは世界的に作物の質と量の低下の原因となっており、そして毎年巨額の経済的損失をもたらしています。他のウイルスは、造園で使用される植物を損傷するかもしれません。農業の食用植物に感染するいくつかのウイルスには、トマト黄化えそウイルス、インゲンマメモザイクウイルス、およびキュウリモザイクウイルスといった、それらが感染する植物の名前が含まれます。造園に使用される植物では、最も一般的なウイルスの2つはシャクヤク輪紋病ウイルスとバラモザイクウイルスです。それぞれを詳細に論じることのできないくらい多くの植物ウイルスがありますが、インゲンマメモザイクウイルスの症状はインゲンマメ生産の低下と、発育不全で増殖することのできない植物をもたらします。観賞用バラでは、バラモザイク病がこの植物の葉に波状の黄色い線と変色した斑点を引き起こします。

動物ウイルス

動物ウイルスは、植物や細菌のウイルスとは異なり、宿主細胞にアクセスするためには必ずしも細胞壁を貫通しなければならないわけではありません。このウイルスは、感染過程において協調するように宿主細胞を誘導することさえあり得ます。非エンベロープ状または「裸」の動物ウイルスは、2つの異なる方法で細胞に侵入する可能性があります。ウイルスカプシド中のタンパク質が宿主細胞上の受容体に結合することで、ウイルスが受容体媒介エンドサイトーシスという通常の細胞プロセスの間に小胞を介して細胞内に取り込まれることがあります。非エンベロープ状のウイルスによって使用される細胞への侵入のもう1つの方法は、受容体に結合した後にカプシドタンパク質が形状変化をして、宿主の細胞膜にチャネルを形成するものです。次いで、ウイルスゲノムは、多くのバクテリオファージによって使用されるのと類似のやり方でこれらのチャネルを通して宿主細胞に「注入」されます。

エンベロープ状ウイルスもまた、受容体に結合した後に細胞に侵入する2つの方法があります:すなわち、受容体媒介エンドサイトーシス、または融合です。多くのエンベロープ状ウイルスは、いくつかの非エンベロープ状ウイルスで見られるのと同様の方式で、受容体媒介エンドサイトーシスによって細胞に侵入します。一方、融合はエンベロープ状ビリオンでのみ発生します。とりわけHIVを含むこれらのウイルスでは、それらのエンベロープ内の特別な融合タンパク質を使用してエンベロープを細胞の原形質膜と融合させ、それによってウイルスのゲノムおよびカプシドを細胞質の中に放出します。

動物ウイルスは、それらのタンパク質を作り、そしてゲノムをコピーした後、新しいビリオンの組み立てを完成させて細胞を出ていきます。私たちがインフルエンザウイルスの例を使用してすでに議論したように、エンベロープ状の動物ウイルスは自分自身を組み立てると細胞膜から出芽し、その過程で細胞の原形質膜の一部をはぎ取ります。一方、ライノウイルスなどの非エンベロープ状のウイルスの子孫は、溶解またはアポトーシスのシグナルがあるまで感染した細胞の中に蓄積し、すべてのビリオンは一斉に放出されます。

次の項目で学ぶように、動物ウイルスはさまざまな人間の病気に関連しています。そのうちのいくつかは、症状が短期間の間にどんどん悪化し、続いて免疫系によって身体からウイルスが除去され、そして最終的に感染から回復するという、急性疾患の古典的なパターンに従います。急性ウイルス性疾患の例は、風邪とインフルエンザです。他のウイルスには、C型肝炎を引き起こすウイルスのように長期の慢性的な感染を引き起こすものがある一方、単純ヘルペスウイルスのような他のウイルスは、間欠的な症状を引き起こすだけです。場合によってさほど深刻でない小児期の病気であるバラ疹を引き起こすことがあるヒトヘルペスウイルス6および7などのさらに他のウイルスは、しばしば宿主にまったく症状を引き起こさずに増殖的な感染を引き起こすことがあるため、私たちはこれらの患者のことを無症候性感染を有すると言います。

C型肝炎への感染では、ウイルスは肝細胞内で成長・増殖し、低レベルの肝障害を引き起こします。この障害は非常に小さいので、感染した個人はしばしば感染していることに気づかないことがあり、多くの感染は静脈注射による薬物使用などの危険因子を持つ患者に対する日常的な血液検査によってのみ検出されます。他方、ウイルス性疾患の症状の多くは免疫反応によって引き起こされるため、症状の欠如はこのウイルスに対する弱い免疫反応の指標となります。これは、低レベルの子孫のビリオンを生成しながら、ウイルスが免疫系による排除を回避し、何年もの間個体の中で生存することを可能にします。これは、慢性のウイルス性疾患として知られています。このウイルスによる肝臓の慢性感染は、時には初期感染から30年もたったあとで、肝臓がんに発展する可能性をはるかに高めます。

すでに議論したように、単純ヘルペスウイルスは数ヶ月間、さらには数年もの間、神経組織の中で潜伏状態のままでいることがあります。ウイルスが組織内に「隠れて」おり、ウイルスタンパク質はたとえあったとしてもほとんど作られないため、免疫反応がそれに対抗するような作用をすることはなく、そのウイルスに対する免疫はゆっくりと低下します。さまざまな種類の身体的および心理的ストレスを含む特定の条件下では、潜在性単純ヘルペスウイルスは再活性化され、皮膚内で溶解性複製サイクルを行い、この疾患に関連する病変を引き起こすことがあります。ひとたびビリオンが皮膚で産生され、ウイルスタンパク質が合成されると、免疫反応は再び刺激され、皮膚内のウイルスを破壊することによって数日または数週間で皮膚の病変を解消します。この種の複製サイクルの結果としては、たとえウイルスが一生神経組織に残っていたとしても、口唇ヘルペスおよび性器ヘルペスが断続的に発生するだけです。潜在性の感染は、水痘を引き起こす水痘・帯状疱疹ウイルスを含む他のヘルペスウイルスでも同様に一般的です。水痘・帯状疱疹ウイルスは、小児期に水痘に感染するとその後何年も潜伏したままになり、成人で再活性化して「帯状疱疹」として知られる痛みを伴う症状を引き起こすことがあります(図21.11)。

図21.11 | 潜伏ウイルス感染。(a)水痘を引き起こすウイルスである水痘・帯状疱疹ウイルスは、この透過型電子顕微鏡写真に見られるようなエンベロープ状の正二十面体カプシドを有します。その二本鎖DNAゲノムは、宿主DNAに組み込まれるようになり、そして潜伏後に再活性化して(b)帯状疱疹の形態でしばしば発疹を呈します。(credit a: modification of work by Dr. Erskine Palmer, B. G. Martin, CDC; credit b: modification of work by “rosmary”/Flickr; scale-bar data from Matt Russell)

上述のC型肝炎ウイルスを含むいくつかの動物に感染するウイルスは、発がん性ウイルスとして知られています。それらはがんを引き起こす能力を持っています。これらのウイルスは、制御されない細胞増殖を促進する遺伝子(がん遺伝子)を導入することによって、または細胞増殖を阻害する遺伝子の発現を妨害することによって、宿主の細胞周期の正常な調節を妨害します。発がん性ウイルスはDNAウイルスであることもRNAウイルスであることもあります。ウイルス感染に関連することが知られているがんには、ヒトパピローマウイルス(HPV)によって引き起こされる子宮頸がん(図21.12)、B型肝炎ウイルスによって引き起こされる肝臓がん、T細胞白血病、およびいくつかの種類のリンパ腫が含まれます。

図21.12 | HPV(ヒトパピローマウイルス)は、この透過型電子顕微鏡写真で見ることができる裸の正二十面体カプシドおよび宿主DNAに組み込まれている二本鎖DNAゲノムを持っています。このウイルスは性感染するもので、発がん性があり、子宮頸がんを引き起こすことがあります。(credit: modification of work by NCI, NIH; scale-bar datafrom Matt Russell)

学習へのリンク

動物ウイルスの複製周期のさまざまな段階を示すインタラクティブアニメーション(http://openstaxcollege.org/l/animal_viruses)にアクセスして、フラッシュアニメーションのリンクをクリックしてください。

21.3 | ウイルス感染の予防と治療

この節が終わるまでに、あなたは次のことができるようになります:
•人間に影響を与える主要なウイルス性疾患を特定する
•ウイルスに対する医学的アプローチとしてワクチン接種と抗ウイルス薬を比較する

ウイルスは、人間を含む動物に対して、通常の風邪から髄膜炎などの致命的な可能性のある病気まで、さまざまな疾患を引き起こします(図21.13)。これらの病気は抗ウイルス薬やワクチンによって治療することができます。しかしながら、HIVなどのいくつかのウイルスは、免疫反応を回避することと、宿主生物内で突然変異して抗ウイルス薬に対して耐性を持つことの両方が可能です。

図21.13 | 人間のウイルスの見本。ウイルスは、軽度の病気から重度の病気まで、人間に何十もの病気を引き起こすことがあります。(credit: modification of work by Mikael Häggström)

予防のためのワクチン

ウイルス性疾患を制御する主な方法はワクチン接種によるもので、これはウイルスまたはウイルスファミリーに対する免疫を構築することによって流行を防ぐことを目的としています(図21.14)。ワクチンは生ウイルス、死滅ウイルス、またはウイルスの分子サブユニットを用いて調製することができます。死滅ウイルスワクチンとサブユニットウイルスワクチンはどちらも病気を引き起こすことができないこと、そしてワクチン接種が自閉症に貢献するといういかなる妥当な証拠もないことに注意してください。

生ウイルスワクチンは、接種者に将来の感染に対する防御免疫を与えつつ、ほとんど症状を引き起こさないように実験室で設計されています。ポリオは、ワクチンの使用における画期的な出来事を表す1つの病気です。1950年代(死滅ワクチン)と1960年代(生ワクチン)の集団予防接種キャンペーンは、この病気の発生率を顕著に減らしました。この病気は、小児に筋肉麻痺を引き起こし、地域的な流行が起こったときには大多数の一般大衆に恐怖を引き起こしていました。ポリオワクチンの成功は、はしか、おたふく風邪、風疹、水痘、および他の病気に対する小児期ワクチンの定期接種への道を開きました。

生ワクチン(通常は死滅ワクチンよりも効果的です)を使用することに伴う問題は、これらのウイルスが復帰突然変異によって疾患を引き起こす形態に戻るという、数は少ないものの重大な危険性があるということです。生ワクチンは通常、実験室において、ウイルスが宿主でなじんでいるのとは異なる組織内または温度で増殖させることによって、「野生型」(病気を引き起こす)ウイルスを弱毒化(弱体化)することによって作られます。これらの新しい細胞または温度への適応によってウイルスのゲノムに突然変異が誘発され、ウイルスが実験室でよりよく成長することを可能する一方で、宿主に見られる状態に再導入されたときに病気を引き起こす能力を阻害します。したがって、これらの弱毒化されたウイルスは依然として感染を引き起こしますが、それらはあまりよく増殖せず、免疫反応を進行させて主要な疾患を予防することを可能にします。復帰突然変異は、ワクチンが宿主に再適応し、そして再び病気を引き起こすことができるような突然変異を宿主内で生じさせたときに起こります。それは、その後の流行で他の人間に広がることが可能になります。この種のシナリオは、最近では2007年にナイジェリアで発生し、ポリオワクチンの突然変異がその国でポリオの流行を引き起こしました。

インフルエンザやHIVなどの特定のウイルスは、他のウイルスや正常な宿主細胞と比較して高い突然変異率を示すため、一部のワクチンは継続的に開発されています。インフルエンザでは、ウイルスの表面分子の突然変異が、以前のインフルエンザシーズンで獲得された防御免疫を回避するのを助けるため、個人は毎年ワクチン接種を受ける必要があります。はしか、おたふく風邪、風疹などの小児疾患を引き起こすものなど、他のウイルスはめったに変異しないため、同じワクチンが何年も使用されています。

図21.14 | ワクチン接種は、感染を防ぐためにウイルスに対する免疫力を高めるように設計されています。(credit: USACE Europe District)

学習へのリンク

このNOVAのビデオ(http://openstaxcollege.org/l/1918_flu)を見て、微生物学者がいかにして致命的な1918年スペイン風邪インフルエンザウイルスを複製し、ウイルス学についてさらに理解しようとしているかを学んでください。

治療のためのワクチンと抗ウイルス薬

いくつかの場合では、ワクチンを用いて活性のあるウイルス感染を治療することができます。これの背景にある概念は、ワクチンを接種することによって、病気を引き起こすウイルスをさらに増やすことなく免疫力が高められるということです。狂犬病ウイルスに感染した動物の唾液を介して伝染する致命的な神経疾患である狂犬病の場合、動物が噛みついた時からウイルスが中枢神経系に入る時までの疾患の進行は2週間以上かかります。これは、狂犬病にかかった動物に噛まれたと疑われる個人にワクチン接種するのに十分な時間であり、そしてその押し上げられた免疫反応はウイルスが神経組織に入るのを防ぐのに十分です。したがって、この病気の潜在的に致命的である神経系への影響は避けられ、そして個人は感染した咬傷から回復するだけでよくなります。このアプローチは、地球上で最も速く最も致命的なウイルスの1つであるエボラの治療にも使用されています。この病気はコウモリや類人猿によって伝染されて、2週間以内に感染した人間の70%から90%に死を引き起こすことがあります。この方法で免疫反応を促進する新しく開発されたワクチンを使用することで、影響を受けた個人がウイルスをよりよく制御できるようになり、感染した人のより大きな割合を急速かつ非常な苦痛をもたらす死から救うことができる可能性があります。

ウイルス感染を治療する別の方法は抗ウイルス薬の使用です。ウイルスは複製および新しいウイルスタンパク質の産生のために宿主細胞の資源を使用するので、宿主にダメージを与えずにそれらの活性を遮断することは困難です。しかしながら私たちは、HIVやインフルエンザの治療に使用されるものなど、いくつかの効果的な抗ウイルス薬を手にしています。いくつかの抗ウイルス薬は特定のウイルスに特異的であり、他のものは多種多様なウイルス性疾患の症状を抑制および軽減するために使用されています。ほとんどのウイルスにとって、これらの薬は1つかそれ以上のウイルスタンパク質の作用を防ぐことによってウイルスを抑制することができます。標的タンパク質はウイルス遺伝子によってコードされていること、およびこれらの分子は健康な宿主細胞には存在していないことに留意しておくことが重要です。このようにして、宿主を損傷することなくウイルス増殖が阻害されます。

抗ウイルス薬は性器ヘルペス(単純ヘルペスII)とインフルエンザを治療するために開発されています。性器ヘルペスの場合、アシクロビルなどの薬は、活性なウイルス性疾患(この間に患者は皮膚細胞にウイルス性病変を発症します)の発症の数と期間を減らすことができます。ウイルスは生涯の間、体の神経組織に潜伏したまま残るので、この薬は治療的ではありませんが、この病気の症状をより扱いやすくすることができます。インフルエンザの場合、タミフル(オセルタミビル)(図21.15)のような薬は「インフルエンザ」の症状の持続時間を1日か2日減らすことができますが、この薬は症状を完全に防ぐわけではありません。タミフルは、新しいビリオンが感染細胞を離れることを可能にする酵素(ウイルス・ノイラミニダーゼ)を阻害することによって機能します。このように、タミフルは、感染した細胞から感染していない細胞へのウイルスの拡散を抑制します。リバビリンなどの他の抗ウイルス薬は、さまざまなウイルス感染症の治療に使用されていますが、特定のウイルスに対するその作用機序は不明のままです。

図21.15 | 抗ウイルス薬の作用(a)タミフルは、インフルエンザウイルスのエンベロープに見られるノイラミニダーゼ(NA)と呼ばれるウイルス酵素を阻害します。(b)ノイラミニダーゼは、やはりウイルスのエンベロープに見られるウイルスのヘマグルチニン(HA)と宿主細胞の表面上の糖タンパク質との間の結合を切断します。ノイラミニダーゼの阻害は、ウイルスが宿主細胞から脱離するのを防ぎ、それによってさらなる感染を阻止します。(credit a: modification of work by M. Eickmann)

これまでのところ、抗ウイルス剤の最も成功した用途はレトロウイルスのHIVの治療にあります。HIVは、もし治療しなければ感染後10~12年以内に通常致命的な疾患を引き起こします。抗HIV薬は、これらの薬を投与された個人が未治療の場合よりもかなり長い期間生存することができるところまでウイルスの複製を制御することができるようになっています。

抗HIV薬は、HIV複製サイクルの多くの異なる段階でウイルス複製を阻害します(図21.16)。HIVウイルスエンベロープと宿主細胞の原形質膜との融合を阻害するもの(融合阻害剤)、ウイルスのRNAゲノムの二本鎖DNAへの変換を阻害するもの(AZTのような逆転写酵素阻害剤)、ウイルスDNAの宿主ゲノムへの組込みを阻害するもの(インテグラーゼ阻害剤)、およびウイルスタンパク質のプロセシングを阻害するもの(プロテアーゼ阻害剤)といった薬剤が開発されています。

図21.16 | HIVの生活環。エンベロープ状の正二十面体ウイルスであるHIVは、免疫細胞のCD4受容体に付着し、細胞膜と融合します。ウイルス内容物が細胞内に放出され、そこでウイルス酵素が一本鎖RNAゲノムをDNAに変換し、それを宿主ゲノムに組み込みます。(credit: NIAID, NIH)

残念なことに、これらの薬物のいずれかが個別に使用される場合、ウイルスの高い突然変異率によってウイルスがその薬物に対する耐性を容易かつ迅速に発達させることが可能になり、その薬物の有効性を制限します。HIV治療における画期的な進歩はHAART(高活性抗レトロウイルス療法・多剤併用療法)の開発であり、それはさまざまな薬物を併用するもので、時に薬剤「カクテル」と呼ばれます。複製サイクルの異なる段階でウィルスを攻撃することによって、ウイルスが同時に複数の薬剤に対する耐性を発達させることははるかに困難になります。それでも、組み合わせHAART療法を使用したとしても、時間の経過とともにウイルスがこの療法に対する耐性を発達させることが懸念されています。したがって、この非常に致命的なウイルスとの戦いが継続するという見込みのもと、新しい抗HIV薬が絶えず開発されています。

日常へのつながり

応用ウイルス学:

ウイルスの研究は、非ウイルス性疾患を治療するためのさまざまな新しい方法の開発につながりました。ウイルスは遺伝子治療に使用されてきています。遺伝子治療は、子供が重大な欠陥のある免疫系をもって生まれてくる、遺伝性で潜性の疾患である重症複合免疫不全(SCID)などの遺伝病の治療に使用されます。SCIDのよくあるタイプの1つは、プリン塩基を分解する酵素、アデノシンデアミナーゼ(ADA)の欠如によるものです。遺伝子治療によってこの疾患を治療するためには、SCID患者から骨髄細胞を採取し、そしてADA遺伝子を挿入します。ここがウイルスが用いられるところであり、そしてウイルスの使用は、ウイルスが生きている細胞に侵入し、それにより遺伝子を持ち込む能力に依拠するものです。人間の上気道のウイルスであるアデノウイルスのようなウイルスは、ADA遺伝子を付加するように改変され、そして次にこのウイルスはその遺伝子を細胞内へと輸送します。ADAを作ることができるようになった改変された細胞は、その病気の治癒を期待して患者に戻されます。遺伝子の運び手としてウイルスを使用する遺伝子治療(ウイルスベクター)は、まだ実験的ではありますが、多くの遺伝病の治療に有望です。それでも、このアプローチを遺伝病を治療するための実行可能な方法とするためには、多くの技術的問題を解決する必要があります。

ウイルスの他の医学的用途は、それらの特異性およびそれらが感染する細胞を殺す能力に依拠しています。腫瘍溶解性ウイルスは、がん細胞を特異的に攻撃し殺すように実験室で設計されています。2005年以来、H101として知られる遺伝子組換えアデノウイルスが、頭頸部がんを治療するために中国の臨床試験で使用されてきました。その結果は、化学療法単独の場合よりも化学療法とウイルス療法の併用の場合の方が短期間の奏効率が高いものであり、将来的に有望なものです。この進行中の研究は、がんが体内のどこに拡がっているかにかかわらず、ウイルスががん細胞を見つけて特異的に死滅させるように設計されるような、がん療法の新しい時代の始まりを告げる可能性があります。

医学におけるウイルスの3番目の用途はそれらの特異性に依拠しており、細菌感染症の治療にバクテリオファージを使用することを含みます。細菌性疾患は1940年代以来抗生物質で治療されてきました。しかしながら、時が経つにつれて、多くの細菌が抗生物質に対する耐性を進化させてきました。良い例は、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA、「マーサ」と発音します)であり、一般的に病院で感染する感染症です。この細菌はさまざまな抗生物質に耐性があり、治療をすることは困難です。そのような細菌に特異的なバクテリオファージを使用することで抗生物質に対するそれらの耐性を回避し、そしてそれらを特異的に殺すことができるでしょう。ジョージア共和国では抗生物質耐性細菌を治療するためにファージ療法が使用されていますが、ほとんどの国では人間の疾患を治療するための使用は承認されていません。しかしながら、米国食品医薬品局が食物病原体リステリアを破壊するためにバクテリオファージを食肉に噴霧することを承認した際には、この治療の安全性が米国で確認されました。ますます多くの抗生物質耐性細菌株が進化するにつれて、バクテリオファージの使用がこの問題に対する潜在的な解決策となる可能性があり、そしてファージ療法の開発は世界中の研究者にとって非常に興味深いものとなっています。

21.4 | 他の無細胞実体:プリオンとウイロイド

この節が終わるまでに、あなたは次のことができるようになります:
•プリオンとその基本的性質を記述する
•ウイロイドとその感染標的を定義する

プリオンおよびウイロイドは、ウイルスよりも単純な構造を有する病原体(病気を引き起こす能力を持つ因子)ですが、プリオンの場合、依然として致命的な疾患を引き起こすことがあります。

プリオン

プリオン(タンパク質(プロテイン)性であるためそう呼ばれます)は、ウイルスよりも小さい感染性粒子であり、核酸を含みません(DNAもRNAも含みません)。歴史的に、核酸を使用しない感染性病原体という考え方は不可能であると考えられていましたが、ノーベル賞を受賞した生物学者スタンリー・プルシナーによる先駆的な研究は、そのような病原体が確かに存在すると大多数の生物学者を納得させました。

人間におけるクールー病や牛における牛海綿状脳症(BSE)(一般的に「狂牛病」として知られています)などの致命的な神経変性疾患は、プリオンによって伝染することが示されています。この病気は、同じ種のメンバー間での肉、神経組織、または内臓の消費によって広がりました。パプアニューギニアの人間の風土病であるクールー病は、儀式的な人肉食によって人間から人間へと広まりました。最初にイギリスで検出されたBSEは、牛の神経組織を他の牛の飼料に含めることによって、牛の間に広がりました。クールー病とBSEを患っている個体は、運動制御の喪失および異常な行動(クールー病の場合の制御できない笑いなど)という症状を示し、続いて死に至ります。クールー病はその儀式的な人肉食を放棄するように集団を説得することによって統制されました。

一方、BSEは当初、牛にのみ影響を及ぼすと考えられていました。この病気で死亡した牛は、脳内に病変や「穴」が形成され、脳組織がスポンジのような状態を呈していました。しかしながら、この流行が始まってからしばらくして、変異型クロイツフェルト-ヤコブ病(CJD)として知られる人間における同様の脳症が、BSEに感染した動物の牛肉の摂取から獲得される可能性があることが示されました。そのため、さまざまな国による英国の牛肉の輸入禁止が巻き起こり、英国の牛肉業界にかなりの経済的損害を与えました(図21.17)。BSEは依然としてさまざまな地域に存在し、そしてまれな疾患ではありますが、CJDに罹患した個人は治療が困難です。この病気は血液によって人間から人間へ広がる可能性があるため、多くの国でBSEに関連する地域からの献血が禁止されています。

クールー病およびBSEなどの海綿状脳症の原因は、PrP(プリオンタンパク質)と呼ばれる、正常な細胞タンパク質の感染性構造変異体です。プリオン粒子を構成するのはこの変異体です。PrPは2つの形態、すなわちPrPᶜ(このタンパク質の正常型)およびPrPˢᶜ(感染型)で存在します。ひとたび体内に導入されると、プリオン内に含まれるPrPˢᶜはPrPᶜに結合し、それをPrPˢᶜに変換します。これは、PrPˢᶜタンパク質の指数関数的増加をもたらし、それらは凝集します。PrPˢᶜは異常に折り畳まれ、そして結果として生じる立体構造(形状)は感染した牛の脳に見られる病変の直接の原因となります。このように、科学者たちの間に反対者がいないわけではありませんが、プリオンは感染性因子の全く新しい形であるように思われます。つまり、その感染がDNAまたはRNAから作られた遺伝子に依存しない最初のものです。

図21.17 | 人間における狂牛病。(a)内因性正常プリオンタンパク質(PrPᶜ)は、このタンパク質の変異型の形態のものに遭遇すると、疾患を引き起こす形態(PrPˢᶜ)に変換されます。PrPˢᶜは脳組織内で自然に発生することがある(特にこのタンパク質の変異型が存在する場合)か、または食物として摂取した誤って折り畳まれたプリオンの脳組織への拡散を介して発生することがあります。(b)光学顕微鏡を用いて視覚化されたこのプリオンに感染した脳組織は、伝染性海綿状脳症に典型的な海綿状の質感を与える液胞を示しています。(credit b: modification of work by Dr. Al Jenny, USDA APHIS; scale-bar data from Matt Russell)

ウイロイド

ウイロイドは植物病原体であり、それは、ウイルスよりはるかに単純な、小さな一本鎖の環状RNA粒子です。それらはカプシドまたは外側エンベロープを有しませんが、ウイルスのように宿主細胞内でのみ繁殖することができます。しかしながら、ウイロイドはいかなるタンパク質も製造せず、それらは単一の特異的RNA分子を産生するだけです。ウイロイドによって引き起こされる人間の病気はまだ特定されていません。

ウイロイドは植物に感染することが知られており(図21.18)、毎年作物の不作や何百万ドルもの農業収入の損失の原因となっています。それらが感染する植物には、ジャガイモ、キュウリ、トマト、菊、アボカド、そしてココヤシが含まれます。

図21.18 | これらのジャガイモはジャガイモやせいもウイロイド(PSTV)に感染しています。これは通常、感染したナイフを使用して健康なジャガイモを切断し、それを植えたときに広まります。(credit: Pamela Roberts, University of Florida Institute of Food and Agricultural Sciences, USDA ARS)

キャリアへのつながり

ウイルス学者

ウイルス学とはウイルスの研究であり、ウイルス学者はその学問分野で訓練を受けた個人です。ウイルス学での訓練は、さまざまなキャリアの道筋へとつながっています。ウイルス学者は大学や医科大学院の学術研究や教育に積極的に関与しています。一部のウイルス学者は患者を治療したり、ワクチンの生成や製造に関わっています。可能なキャリアをほんのいくつかあげるとしたら、彼らは疫学研究に参加したり(図21.19)、サイエンスライターになったりするかもしれません。

図21.19 | このウイルス学者は野外調査に取り組んでおり、鳥インフルエンザのためにこの巣から卵をサンプリングしています。(credit: Don Becker, USGS EROS, U.S. Fish and Wildlife Service)

もしあなたがウイルス学でのキャリアに興味がある場合には、その分野のメンターを見つけてください。多くの大規模医療センターにはウイルス学の部門があり、小規模の病院では通常、その微生物学部門内にウイルス学研究室があります。1つの学期の間ウイルス学研究室でボランティアを行うか、夏の間に1つの場所で働いてみてください。この職業について話し合い、その仕事を直接見てみると、ウイルス学のキャリアが自分に適しているかどうかを判断するのに役立ちます。米国ウイルス学会(American Society of Virology)のウェブサイト(http://openstaxcollege.org/l/asv)は、ウイルス学の訓練およびキャリアに関する優れた情報源です。

重要用語

無細胞:細胞がないこと

急性疾患:症状が短期間で増減する疾患

無症候性疾患:症状がなく、臨床検査を実施しない限りその個人が感染していることに気づかない疾患

弱毒化:ワクチン開発中におけるウイルスの弱体化

AZT:ウイルス酵素である逆転写酵素を阻害する抗HIV薬

復帰突然変異:生ウイルスワクチンがその病気を引き起こす表現型に戻るとき

バクテリオファージ:細菌に感染するウイルス

出芽:特定の動物ウイルスで使用されている細胞からの離脱方法。これでは、ビリオンは、宿主の原形質膜の一部をとらえることによって個別に細胞を離れる

カプシド:ウイルスコアのタンパク質コーティング

カプソメア:カプシドを構成するタンパク質サブユニット

細胞壊死:細胞の死

慢性感染:ウイルスが体内に長期間持続する時期を表す

細胞変性:細胞損傷を引き起こす

エンベロープ:いくつかのウイルスを取り囲む脂質二重層

融合:ウイルスエンベロープが宿主細胞の原形質膜と融合する、いくつかのエンベロープ状ウイルスによる侵入方法

こぶ:植物の腫瘍の外観

遺伝子治療:細胞内に新しい遺伝子を運ぶためにウイルスを使用して、遺伝子を追加することによる遺伝病の治療

第1群(グループI)ウイルス:dsDNAゲノムを持つウイルス

第2群(グループII)ウイルス:ssDNAゲノムを持つウイルス

第3群(グループIII)ウイルス:dsRNAゲノムを持つウイルス

第4群(グループIV)ウイルス:正の極性のssRNAゲノムを持つウイルス

第5群(グループV)ウイルス:負の極性のssRNAゲノムを持つウイルス

第6群(グループVI)ウイルス:逆転写酵素によりdsDNAに変換されるssRNAゲノムを持つウイルス

第7群(グループVII)ウイルス:ゲノム複製のためにdsDNAに変換される一本鎖mRNAを持つウイルス

水平感染:無関係な個体間の病気の伝播

過形成:異常に高い細胞増殖および分裂

低形成:異常に低い細胞増殖および分裂

間欠的症状:散発的に発生する症状

潜伏性:長期間体内に残るが間欠的な症状を引き起こすだけのウイルス

溶解:細胞の破裂

溶原性サイクル:ウイルスゲノムが宿主細​​胞のゲノムに組み込まれるようなウイルス複製のタイプ

溶解サイクル:細胞の溶解または破裂によってビリオンが放出されるようなウイルス複製のタイプ

基質タンパク質:エンベロープを安定化させ、そしてしばしば子孫ビリオンの組み立てにおいて役割を果たすエンベロープタンパク質

負の極性:そのmRNAに相補的なゲノムを持つssRNAウイルス

発がん性ウイルス:がんを引き起こす能力を持つウイルス

腫瘍溶解性ウイルス:がん細胞に特異的に感染して殺すように設計されたウイルス

病原体:病気を引き起こす能力を持つ因子

許容状態:ウイルスの増殖的な複製をサポートすることができる細胞の種類

ファージ療法:特定の細菌に特異的なバクテリオファージを用いた細菌性疾患の治療

正の極性:そのmRNAに見られるのと同じ塩基配列およびコドンを含むゲノムを有するssRNAウイルス

プリオン:DNAまたはRNAなしで複製するタンパク質からなる感染性粒子

増殖的:新しいビリオンの生産につながるウイルス感染

プロファージ:宿主細胞ゲノムに組み込まれるファージDNA

PrPᶜ:正常なプリオンタンパク質

PrPˢᶜ:感染型のプリオンタンパク質

複製中間体:ゲノムRNAをコピーする過程で作られたdsRNA中間体

逆転写酵素:ボルティモア分類のグループVIおよびVIIにある一本鎖RNAを二本鎖DNAに変換する酵素

ワクチン:ウイルス成分、ウイルス、または免疫反応を引き起こすその他の物質の弱められた溶液

垂直伝播:親から子への病気の伝播

ウイルス受容体:細胞上の分子を介してウイルスを宿主細胞に付着させるために使用される糖タンパク質

ビリオン:宿主細胞外での個々のウイルス粒子

ウイロイド:単一の特異的RNAのみを産生する植物病原体

ウイルスコア:ウイルスゲノムを含む

この章のまとめ

21.1 | ウイルスの進化、形態学、および分類

ウイルスは、通常、電子顕微鏡でしか見ることができない、小さな非細胞の実体です。そのゲノムはDNAかRNAのどちらかを含んでいます — 両方ではありません。そしてそれらは宿主細胞の複製タンパク質を使うことによって、あるいはウイルスゲノムにコードされたタンパク質を使うことによって複製します。ウイルスは多様で、古細菌、細菌、菌類、植物、そして動物に感染します。ウイルスは、タンパク質カプシドによって囲まれた核酸コアからなり、外側の脂質エンベロープを持つことも持たないこともあります。カプシド形状、エンベロープの存在、およびコア組成は、ウイルスの分類のいくつかの要素を決定づけます。最も一般的に使用されている分類方法であるボルティモア分類は、ウイルスがどのようにmRNAを産生するかに基づいてウイルスをカテゴリー分けします。

21.2 | ウイルス感染と宿主

植物ウイルスは、親の生殖細胞から垂直に伝染することも、または損傷を受けた植物組織を通じて水平に伝染することもあります。植物のウイルスは、作物植物と装飾用の植物の両方における重大な経済的損害の原因となっています。動物ウイルスは、数種類のウイルス-宿主細胞間の相互作用を介して宿主に侵入し、さまざまな感染症を引き起こします。ウイルス感染症は、短期間の感染で宿主の免疫反応によって終結する急性であることも、感染が持続する慢性であることもあります。持続性の感染は、慢性症状(C型肝炎)、間欠的な症状(単純ヘルペスウイルス1などの潜伏ウイルス)を引き起こすことも、または実質的に無症候性(ヒトヘルペスウイルス6および7)であることもあります。動物における発がん性ウイルスは、宿主の細胞周期の調節を妨害することによってがんを引き起こす能力を有します。

21.3 | ウイルス感染の予防と治療

ウイルスは人間にさまざまな病気を引き起こします。これらの疾患の多くは、ウイルスワクチンの使用によって予防することができます。ワクチンは、大きな疾患を引き起こすことなくウイルスに対する防御免疫を刺激するものです。ウイルスワクチンはまた、活性なウイルス感染においても使用することができ、免疫系がウイルスを制御または破壊する能力を増強します。ウイルス遺伝子の酵素および他のタンパク質産物を標的とする一連の抗ウイルス薬が開発され、そして成功の度合いはさまざまながらも使用されています。抗HIV薬の組み合わせが、ウイルスを効果的に制御し、感染した個人の寿命を延ばすために使用されてきました。ウイルスは、遺伝性疾患、がん、および細菌感染症の治療など、医療において多くの用途があります。

21.4 | 他の無細胞実体:プリオンとウイロイド

プリオンはタンパク質からなる感染性病原体ですが、DNAもRNAも含まず、その形状を複製し組織の中に蓄積することによって致命的な効果を生み出すようです。それらは、狂牛病およびクロイツフェルト-ヤコブ病を含むいくつかの進行性脳障害の一因となっていると考えられています。ウイロイドは植物に感染する一本鎖RNA病原体です。それらの存在は農業産業に深刻な影響を及ぼすことがあります。

ビジュアルコネクション問題

1.図21.5 | ウイルス構造についての次の記述のうち、正しいものはどれですか?
a.すべてのウイルスはウイルス膜に覆われている。
b.カプソメアは、カプシドと呼ばれる小さなタンパク質サブユニットで構成されている。
c.すべてのウイルスではDNAが遺伝物質である。
d.糖タンパク質は、ウイルスが宿主細胞に付着するのを助ける。

2.図21.8 | インフルエンザウイルスは、原形質膜と融合するウイルスエンベロープに包まれています。この方法によって、ウイルスは宿主細胞を殺すことなくそこから出ることができます。宿主細胞を生きたままにさせることによってウイルスはどのような利点を得ますか?

3.図21.10 | 次の記述のうち、間違っているものはどれですか?
a.溶解サイクルにおいて、新しいファージが産生され、そして環境中に放出される。
b.溶原性サイクルにおいて、ファージDNAは宿主ゲノムに組み込まれる。
c.環境ストレス要因はファージに溶原性サイクルを開始させることができる。
d.細胞溶解は溶解サイクルでのみ起こる。

レビュー問題

4.次の記述のうち、正しいものはどれですか?
a.ビリオンはDNAとRNAを含む。
b.ウイルスは無細胞である。
c.ウイルスは細胞外で複製する。
d.ほとんどのウイルスは光学顕微鏡で簡単に見ることができる。

5.ウイルス________は、宿主細胞にビリオンを付着させる役割を果たします。
a.コア
b.カプシド
c.エンベロープ
d.bとcの両方

6.ウイルスは、_______。
a.すべて丸い形状を有する
b.細長い形状を有することができない
c.いかなる形状をも維持しない
d.形状が異なる

7.クラミジア属の細菌には、細胞内寄生生物としてのみ生き残ることができる種が含まれているという観察は、ウイルスの起源の仮説のうちどれを支持するでしょうか?
a.前進
b.後退
c.自己複製
d.ウイルス優先

8.ある科学者が、らせんカプシドに囲まれた直鎖状のRNAゲノムを持つ新しいウイルスを発見しました。このウイルスは、構造分類に基づくと、どのファミリーのメンバーになる可能性最も高いですか?
a.狂犬病ウイルス
b.ヘルペスウイルス
c.レトロウイルス
d.インフルエンザウイルス

9.ウイルスの複製に当てはまらない記述はどれですか?
a.溶原性サイクルは宿主細胞を殺す。
b.ウイルス複製サイクルには6つの基本的な段階がある。
c.ウイルス複製は宿主細胞の機能に影響を及ぼさない。
d.新しく放出されたビリオンは隣接する細胞に感染することができる。

10.ウイルスの複製について正しい記述はどれですか?
a.アポトーシスの過程で、細胞は生き残る。
b.付着する際に、ウイルスは細胞表面の特定の部位に付着する。
c.ウイルスカプシドは、宿主細胞がウイルスゲノムのより多くのコピーを産生するのを助ける。
d.mRNAは宿主細胞の外側で作用して酵素およびタンパク質を産生する。

11.逆転写酵素について正しい記述はどれですか?
a.それは核酸である。
b.それは細胞に感染する。
c.それはRNAを転写してDNAを作る。
d.それは脂質である。

12.発がん性ウイルスコアは_______。
a.RNAであり得る
b.DNAであり得る
c.RNAでもDNAでもない
d.RNAでもDNAでもあり得る

13.DNAウイルスに当てはまるものはどれですか?
a.それらは自身のゲノムの新しい複製を作り出すために宿主細胞の機構を使う。
b.それらはすべてエンベロープを持っている。
c.それらはがんを引き起こすことができる唯一のウイルスの種類である。
d.それらは重要な植物病原体ではない。

14.バクテリオファージは________に感染することができる。
a.肺
b.ウイルス
c.プリオン
d.細菌

15.T細胞表面タンパク質のCCR5Δ32突然変異を有する人々は、HIV−1のいくつかの株に曝露されても病気になることがありません。この変異では、ウイルスの生活環のどの段階が阻害されている可能性が高いですか?
a.放出
b.逆転写
c.脱殻
d.付着

16.あるリンゴ栽培者は、いくつかの幹に菌類が育っているリンゴの木は壊死性の輪紋を生じているが、その果樹園の菌類のない他の木は健康的に見えることに気付きました。リンゴの木に感染しているウイルスについてこの農家が出す結論のうち、最も可能性の高いものは何でしょうか?
a.リンゴの木は水平感染によって感染した。
b.この菌類が病気を持っている。
c.この菌類は病気を媒介する昆虫を引き付ける。
d.リンゴの木は垂直伝播によって感染した。

17.次のうち、活性なウイルス性疾患の治療に使用されていないものはどれですか?
a.ワクチン
b.抗ウイルス薬
c.抗生物質
d.ファージ療法

18.ワクチンは、_______。
a.ウイロイドに似ている
b.一度だけ必要である
c.ウイルスを殺す
d.免疫反応を刺激する

19.ある患者が診療所において急性ウイルス感染を呈しています。このウイルスの生活環を分析する試験の結果、このウイルスはセグメント化されたゲノムを持つグループVに分類されました。この患者の診断として最も可能性が高いのは、どのウイルスですか?
a.狂犬病ウイルス
b.ピコルナウイルス
c.HIV-1
d.A型インフルエンザウイルス

20.次のうちプリオンと関係がないものはどれですか?
a.形状を複製する
b.狂牛病
c.DNA
d.毒性タンパク質

21.どの記述がウイロイドに当てはまりますか?
a.それらは一本鎖RNA粒子である。
b.それらは細胞の外側でのみ増殖する。
c.それらはタンパク質を生産する。
d.それらは植物と動物の両方に影響を与える。

クリティカルシンキング問題

22.ウイルス(タバコモザイクウイルス)の最初の電子顕微鏡写真は1939年に作成されました。それ以前に、科学者たちがウイルスを見ることができない場合に、彼らはどうやってウイルスが存在していることを知ったのでしょうか?(ヒント:初期の科学者たちはウイルスのことを「透過可能な病原体」と呼んでいました。)

23.水痘・帯状疱疹ウイルスは、水痘を引き起こす二本鎖DNAウイルスです。そのゲノム構造は、どのようにして一本鎖DNAウイルスに対する進化的な利点を提供するのでしょうか?

24.ボルティモア分類とゲノム構造システムの両方で狂犬病ウイルス(ラブドウイルスの一種)とHIV-1を分類し、その結果を比較してください。これら2つの異なる方法についてどのような結論を下すことができますか?

25.犬がはしかにかかることがないのはなぜですか?

26.HIV(レトロウイルス)感染に対抗するための薬物において、最初の最も重要な標的の1つは逆転写酵素です。それはなぜですか?

27.この章では、さまざまな種類のウイルスとウイルス性疾患について紹介しました。あなたがウイルスについて学んだ中で、最も興味深い点や驚くべき点について簡単に論じてください。

28.植物ウイルスは人間に感染することはできませんが、それらが人間に影響を与えるいくつかの方法とは何でしょうか?

29.あるバクテリオファージは溶解性の生活環を有していますが、突然変異によって、溶原性の生活環も行うことが可能になりました。これはどのようにして、溶解サイクルを通じてのみ広がることができる他のバクテリオファージに対する進化的な利点をもたらすでしょうか?

30.なぜ狂犬病の動物に噛まれた後の免疫付与は非常に効果的なのでしょうか?また、なぜ人々は犬や猫のように狂犬病のワクチン接種を受けていないのでしょうか?

31.性器疣贅の病因であるヒトパピローマウイルス(HPV)を標的とするワクチンのガーダシルは、抗HPV薬ポドフィロックスの後に開発されました。なぜ抗ウイルス薬が入手可能になった後でも、医師はワクチンを作成したいと望むのでしょうか?

32.プリオンは、過去10年間にイギリスで100人以上の人が死亡した変異型クロイツフェルト-ヤコブ病の原因です。人間はどのようにしてこの病気にかかるのでしょうか?

33.ウイロイドはどのようにウイルスに似ていますか?

34.ある植物学者は、トマトが病気にかかっているように見えることに気づきました。この植物学者はどのようにして、病気を引き起こす病原体がウイロイドでありウイルスではないのを確認することができるでしょうか?

解答のヒント

第21章

1 図21.5 D 3 図21.10 C 4 B 6 D 8 A 10 B 12 D 14 D 16 A 18 D 20 C 22 ウイルスは、その当時、光学顕微鏡で見ることのできたすべての細菌を除去するフィルターを通過しました。細菌を含まない濾液が健康な生物に投与されたときに依然として感染症を引き起こすことがあったため、この観察は非常に小さな感染性病原体の存在を実証しました。後に、これらの病原体は細菌とは無関係であることが示され、ウイルスとして分類されました。24 狂犬病ウイルスは、そのゲノムからmRNAを転写する(-)鎖RNAウイルスです(グループV)。HIV-1は、逆転写酵素を使用してそのゲノムの二本鎖DNAコピーを作製する一本鎖RNAレトロウイルスであり、そのゲノムはmRNAを作製する前に宿主の人間のゲノムに組み込まれます(グループVI)。ゲノム構造システムは、両方のウイルスを線状ゲノムを有する一本鎖RNAウイルスとして分類します。ボルティモア分類では、狂犬病ウイルスとHIV-1が2つの異なるグループに分類されており、2つのウイルスの生活環は非常に異なっていることを示しています。しかしながら、ゲノム構造分類は2つのウイルスを区別しません。これはウイルス機能と生存に関する重要な情報を省いてしまいます。26 逆転写酵素は、より多くのHIV-1ウイルスを作るために必要とされるので、逆転写酵素を標的とすることはウイルスの複製を阻害する1つの方法かもしれません。重要なことに、宿主細胞は逆転写酵素を作らないので、私たちは逆転写酵素を標的とすることによっては宿主細胞にほとんど害を及ぼしません。したがって、逆転写酵素阻害剤を使用すると、宿主細胞ではなくウイルスを特異的に攻撃することができます。28 植物ウイルスは作物に感染し、作物の損傷と不作、そして著しい経済的損失を引き起こします。30 狂犬病ウイルスが咬傷の部位から中枢神経系(この病気のほとんどの重大な症状はここで起こります)に移動するのに1週間かかるため、狂犬病ワクチンは噛み付かれた後でも効果があります。2つの理由から、成人は日常的に狂犬病ワクチンを接種されていません。1つは、家畜に対する定期的なワクチン接種のために、動物に噛まれた際に人間が狂犬病に感染する可能性が低いからです。第2に、野生動物や予防接種されたことを確認できない家畜に噛まれた場合でも、ワクチンを接種し、しばしばこの病気の致命的な結果を回避するだけの時間があるからです。32 このプリオンに基づく病気は、感染した肉を人間が摂取することによって伝染します。34 この植物学者は、感染した植物細胞から外来核酸を分離し、RNA分子がその病気の病因であることを確認する必要があります。次に、植物学者は、そのRNAがカプシドなしで植物細胞に感染することができ、そしてRNAが複製はするがタンパク質を生産するために翻訳はされないことを証明する必要があるでしょう。

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