生物学 第2版 — 第37章 内分泌系 —

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Better Late Than Never
83 min readOct 20, 2019

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37 | 内分泌系

図37.1 | ここに示されるオタマジャクシからカエルへの段階で見られるような両生類の変態のプロセスは、ホルモンによって引き起こされます。(credit “tadpole”: modification of work by Brian Gratwicke)

この章の概要

37.1:ホルモンの種類
37.2:ホルモンの働き
37.3:身体プロセスの調節
37.4:ホルモン産生の調節
37.5:内分泌腺

はじめに

動物の内分泌系はホルモンの産生、分泌、調節を通じて体のプロセスを制御します。ホルモンは細胞や器官の活動に働きかけ、最終的には体の恒常性を維持するような、化学的な「メッセンジャー」として機能します。内分泌系は、成長、代謝、および性的発達において役割を果たします。人間において、一般的な内分泌系疾患は甲状腺疾患および真性糖尿病を含みます。変態を行う生物では、そのプロセスは内分泌系によって制御されます。たとえば、オタマジャクシからカエルへの変換は複雑で、特定の環境や生態学的状況に適応するために微妙に異なります。

37.1 | ホルモンの種類

この節が終わるまでに、あなたは次のことができるようになります:
•ホルモンのさまざまな種類を列挙する
•恒常性の維持におけるその役割を説明する

体内で恒常性を維持するには、多くの異なる系や器官の調整が必要とされます。隣接する細胞間、および体の離れた部分にある細胞間や組織間での通信は、ホルモンと呼ばれる化学物質の放出を通じて起こります。ホルモンは、これらの化学物質をその標的細胞へと運ぶ体液(通常は血液)に向けて放出されます。シグナルに対する受容体またはシグナル細胞由来のリガンドを有する細胞である標的細胞において、ホルモンは反応を誘発します。ホルモンを分泌する細胞、組織、器官は内分泌系を構成しています。内分泌系の腺の例には、ストレスに対する反応を調節するエピネフリンおよびノルエピネフリンなどのホルモンを産生する副腎、および代謝率を調節する甲状腺ホルモンを産生する甲状腺が含まれます。

人体には多くの異なるホルモンがありますが、それらはその化学構造に基づいて3つのクラスに分類することができます:脂質由来ホルモン、アミノ酸由来ホルモン、およびペプチド(ペプチドおよびタンパク質)ホルモンです。脂質由来ホルモンの重要な際立った特徴の1つは、それらが原形質膜を横切って拡散することができるのに対して、アミノ酸由来ホルモンおよびペプチドホルモンはそうすることができないことです。

脂質由来ホルモン(または脂溶性ホルモン)

図37.2に示されるように、ほとんどの脂質ホルモンはコレステロールに由来しているため、構造的にはコレステロールと類似しています。人間における脂質ホルモンの主なクラスはステロイドホルモンです。化学的には、これらのホルモンは通常はケトンかアルコールです。それらの化学名は、アルコールの場合は「ール(-ol)」、ケトンの場合は「オン(-one)」で終わるでしょう。ステロイドホルモンの例には、エストロゲン(または女性の性ホルモン)であるエストラジオール、およびアンドロゲン(または男性の性ホルモン)であるテストステロンが含まれます。これら2つのホルモンはそれぞれ女性と男性の生殖器官から放出されます。他のステロイドホルモンには、アルドステロンとコルチゾールが含まれ、これらは他の種類のアンドロゲンと一緒に副腎から放出されます。ステロイドホルモンは水に溶けず、血中の輸送タンパク質によって輸送されます。その結果、それらはペプチドホルモンより長く循環の中に留まります。たとえば、コルチゾールの半減期は60~90分ですが、アミノ酸由来ホルモンであるエピネフリンの半減期は約1分です。

図37.2 | ここに示される構造は、(a)コレステロール、およびステロイドホルモンの(b)テストステロンと(c)エストラジオールを表しています。

アミノ酸由来ホルモン

アミノ酸由来ホルモンは、図37.3に示されるように、アミノ酸のチロシンとトリプトファンに由来する比較的小さな分子です。もしあるホルモンがアミノ酸由来のものである場合、その化学名は「イン(-ine)」で終わるでしょう。アミノ酸由来ホルモンの例には、副腎の髄質で合成されるエピネフリンおよびノルエピネフリン、ならびに甲状腺によって産生されるチロキシンが含まれます。脳の松果腺は、睡眠周期を調節するメラトニンを作り、分泌します。

図37.3 | (a)闘争か逃走か反応を誘発するホルモンのエピネフリンは、アミノ酸のチロシンに由来します。(b)概日リズムを調節するホルモンのメラトニンは、アミノ酸のトリプトファンに由来します。

ペプチドホルモン

ペプチドホルモンの構造は、ポリペプチド鎖(アミノ酸の鎖)の構造です。ペプチドホルモンには、脳内で産生され下垂体後葉で血中に放出される抗利尿ホルモンおよびオキシトシンなどの短いポリペプチド鎖である分子が含まれます。このクラスには、下垂体によって産生される成長ホルモンのような小さなタンパク質、および下垂体によって産生される卵胞刺激ホルモンなどの大きな糖タンパク質も含まれます。図37.4にこれらのペプチドホルモンを示します。

インスリンのような分泌されるペプチドは、それらを合成する細胞内の小胞内に貯蔵されています。それらはその後、刺激(インスリンの場合には高い血糖値といった)に応答して放出されます。アミノ酸由来ホルモンおよびポリペプチドホルモンは、水溶性で脂質には不溶です。これらのホルモンは細胞の原形質膜を通過できません。したがって、それらの受容体が標的細胞の表面に見られます。

図37.4 | ペプチドホルモンの(a)オキシトシン、(b)成長ホルモン、および(c)卵胞刺激ホルモンの構造が示されています。これらのペプチドホルモンは、コレステロールやアミノ酸に由来するものよりはるかに大きいです。

キャリアへのつながり

内分泌科医

内分泌科医は、内分泌腺、ホルモン系、ならびにグルコースおよび脂質代謝経路の障害の治療を専門とする医師です。内分泌外科医は内分泌疾患や内分泌腺の外科的治療を専門としています。内分泌科医によって管理されている疾患のいくつかには、膵臓の疾患(真性糖尿病)、下垂体の疾患(巨人症、末端肥大症、および下垂体性小人症)、甲状腺の疾患(甲状腺腫およびグレーブス病)、ならびに副腎の疾患(クッシング病とアジソン病)があります。

内分泌科医は、臨床検査の広範な使用を通じて患者を評価し、内分泌障害を診断することが求められています。多くの内分泌疾患は、内分泌器官の機能を刺激または抑制するテストを使用して診断されます。次に、血液サンプルを採取して、ホルモンの産生に対する内分泌器官の刺激または抑制の影響を調べます。たとえば、真性糖尿病を診断するためには、患者は12~24時間絶食する必要があります。彼らはそれから糖分のある飲み物を与えられます。この飲み物は、血糖値を下げるためにインスリンを作り出すよう膵臓を刺激します。糖分のある飲み物を飲んでから1~2時間後に血液サンプルを採取します。もし膵臓が適切に機能していれば、血糖値は正常な範囲内にあるでしょう。別の例は、血液スクリーニング中に実施することができるA1Cテストです。A1Cテストでは、血糖値が長期間にわたってどの程度よく管理されているかを調べることによって、過去2~3か月の平均血糖値を測定します。

ひとたび病気が診断されると、内分泌科医はその病気を治療するためにライフスタイルの変化や薬を処方することができます。真性糖尿病のいくつかの例は、運動、体重減少、および健康的な食事によって管理することができます。他の場合には、インスリン放出を増強するために薬物療法が必要とされることがあります。もしこれらの方法で疾患を制御できない場合は、内分泌科医はインスリン注射を処方することがあります。

臨床診療に加えて、内分泌科医は研究開発活動に主として携わっていることもあります。たとえば、進行中の膵島移植の研究では、どのようにして健康な膵島細胞を糖尿病患者に移植することができるかを調査しています。膵島移植が成功すれば、患者はインスリン注射をやめることができるようになるでしょう。

37.2 | ホルモンの働き

この節が終わるまでに、あなたは次のことができるようになります:
•ホルモンの働きを説明する
•さまざまな種類のホルモン受容体の役割について議論する

ホルモンは特定のホルモン受容体に結合することによって標的細胞の変化を仲介します。このように、たとえホルモンが体中を循環し、そして多くの異なるタイプの細胞と接触するとしても、それらは必要な受容体を有する細胞にのみ影響を与えます。特定のホルモンのための受容体は、多くの異なる細胞上に見いだされることもありますし、または少数の特殊化された細胞に限定されていることもあります。たとえば、甲状腺ホルモンは多くの異なる種類の組織に作用し、全身の代謝活動を刺激します。細胞は、同じホルモンに対する多くの受容体を持つことができますが、しばしば異なるタイプのホルモンに対する受容体を持つこともあります。ある1つのホルモンに反応する受容体の数は、そのホルモンに対する細胞の感受性、そして結果として生じる細胞の反応を決定します。さらに、ある1つのホルモンに反応する受容体の数は時間の経過とともに変化することがあり、その結果、細胞の感受性が増減します。上向き調節では、ホルモンレベルの上昇に応じて受容体の数が増加し、細胞がホルモンに対してより敏感になり、より多くの細胞活性が可能になります。ホルモンレベルの上昇に反応して受容体の数が減少するときには、それは下向き調節と呼ばれ、細胞活性は低下します。

受容体結合は細胞活性を変化させ、そして正常な身体プロセスの増加または減少をもたらします。標的細胞上のタンパク質受容体の位置およびホルモンの化学構造に応じて、ホルモンは、細胞内ホルモン受容体に結合して遺伝子転写を調節することによる直接的な形で、あるいは細胞表面受容体に結合してシグナリング経路を刺激することによる間接的な形で、変化を媒介することができます。

細胞内ホルモン受容体

ステロイドホルモンなどの脂質由来(脂溶性)ホルモンは、内分泌細胞の膜を横切って拡散します。ひとたび細胞外に出ると、それらは輸送タンパク質と結合します。輸送タンパク質は、それらを血流中で可溶性に保ちます。標的細胞において、ホルモンは担体タンパク質から放出され、細胞の原形質膜の脂質二重層を横切って拡散します。ステロイドホルモンは、標的細胞の原形質膜を通過し、そして細胞質内または核内に存在する細胞内受容体に付着します。ステロイドホルモンによって誘導される細胞シグナリング経路は、細胞のDNA上の特定の遺伝子を調節します。ホルモンおよび受容体の複合体は、特定の遺伝子のmRNA分子の合成を増加または減少させることによって、転写調節因子として作用します。これは次に、遺伝子発現を変えることによって合成される対応するタンパク質の量を決定します。このタンパク質は、細胞の構造を変えるためにも、化学反応を触媒する酵素を生産するためにも使用することができます。このようにして、ステロイドホルモンは、図37.5に示されるように特定の細胞プロセスを調節します。

ビジュアルコネクション

図37.5 | 細胞内にある核内受容体(NR)は、熱ショックタンパク質(HSP)に結合して細胞質内に位置しています。ホルモンが結合すると、受容体は熱ショックタンパク質から解離して、核へと移動します。核内では、ホルモン-受容体複合体はホルモン応答要素(HRE)と呼ばれるDNA配列に結合し、それが遺伝子の転写と翻訳を引き起こします。対応するタンパク質産物はその後、細胞機能の変化を媒介することができます。

熱ショックタンパク質(HSP)は、誤って折り畳まれたタンパク質を再度折り畳むのを助けるためにそのように命名されています。温度の上昇(「熱ショック」)に反応して、熱ショックタンパク質はNR/HSP複合体から放出されることによって活性化されます。同時に、HSP遺伝子の転写が活性化されます。細胞が、誤って折り畳まれたタンパク質を再度折り畳むのを助けるタンパク質の活性を高めることによって熱ショックに反応するのはなぜだと思いますか?

ビタミンDやチロキシンなど、ステロイドホルモンではない他の脂溶性ホルモンは、核内に位置する受容体を持っています。このホルモンは、原形質膜と核膜の両方を横切って拡散し、次に核内の受容体に結合します。ホルモン-受容体複合体は特定の遺伝子の転写を刺激します。

原形質膜ホルモン受容体

アミノ酸由来ホルモンおよびポリペプチドホルモンは脂質由来(脂溶性)ではないため、細胞の原形質膜を通って拡散することはできません。脂質不溶性ホルモンは、原形質膜ホルモン受容体を介して原形質膜の外表面上の受容体に結合します。ステロイドホルモンとは異なり、脂質不溶性ホルモンは細胞に入って直接DNAに作用することができないため、標的細胞に対しては直接の影響を与えません。これらのホルモンが細胞表面の受容体に結合すると、シグナリング経路が活性化されます。これは細胞内活性を引き起こし、ホルモンに関連した特定の効果を発揮します。この方法では、細胞膜を通過するものは何もありません。表面で結合するホルモンは細胞の表面に留まる一方で、細胞内産物は細胞の内側に留まります。図37.6に示されるように、シグナリング経路を開始するホルモンはファーストメッセンジャーと呼ばれ、それが細胞質内のセカンドメッセンジャーを活性化します。

図37.6 | アミノ酸由来ホルモンのエピネフリンとノルエピネフリンは、細胞の原形質膜上のβアドレナリン受容体に結合します。受容体に結合したホルモンはGタンパク質を活性化し、それが次にアデニル酸シクラーゼを活性化し、ATPをcAMPに変換します。cAMPは細胞に特異的な反応を媒介するセカンドメッセンジャーです。ホスホジエステラーゼと呼ばれる酵素がcAMPを分解して、シグナルを終結させます。

非常に重要なセカンドメッセンジャーの1つは、サイクリックAMP(cAMP)です。あるホルモンがその膜受容体に結合すると、その受容体に付随しているGタンパク質が活性化されます。Gタンパク質は、細胞膜にある、受容体とは別のタンパク質です。ホルモンが受容体に結合していない場合、Gタンパク質は不活性であり、グアノシン二リン酸(GDP)に結合しています。ホルモンが受容体に結合すると、Gタンパク質はGDPの代わりにグアノシン三リン酸(GTP)と結合することによって活性化されます。結合後、GTPはGタンパク質によってGDPに加水分解され、不活性になります。

活性化されたGタンパク質は、次にアデニル酸シクラーゼと呼ばれる膜によって包まれた酵素を活性化します。アデニル酸シクラーゼは、ATPからcAMPへの変換を触媒します。cAMPは、今度はプロテインキナーゼと呼ばれる一群のタンパク質を活性化し、これがリン酸化と呼ばれるプロセスにおいてリン酸基をATPから基質分子に転移させます。基質分子のリン酸化はその構造的配向を変化させ、それによって気質分子を活性化します。これらの活性化分子は細胞プロセスの変化を媒介することができます。

シグナリング経路が進むにつれて、ホルモンの効果が増幅されます。単一の受容体におけるホルモンの結合は、多くのGタンパク質の活性化を引き起こし、それらがアデニル酸シクラーゼを活性化します。次いで、アデニル酸シクラーゼのそれぞれの分子は、多くのcAMP分子の形成を引き起こします。プロテインキナーゼは、ひとたびcAMPによって活性化されると、多くの反応を触媒することができるので、さらなる増幅が起こります。このようにして、少量のホルモンが大量の細胞産物の形成を誘発することがあります。ホルモン活性を止めるために、cAMPは細胞質酵素のホスホジエステラーゼ(PDE)によって不活性化されます。PDEは常に細胞内に存在し、cAMPを分解してホルモン活性を制御し、細胞産物の過剰生産を防ぎます。

脂質不溶性ホルモンに対する細胞の特異的な反応は、細胞膜上に存在する受容体の種類および細胞質内に存在する基質分子に依存します。受容体のホルモン結合に対する細胞反応は、膜透過性および代謝経路の変化、タンパク質および酵素の合成の刺激、ならびにホルモン放出の活性化を含みます。

37.3 | 身体プロセスの調節

この節が終わるまでに、あなたは次のことができるようになります:
•ホルモンがどのように排泄系を調節するのかを説明する
•生殖器系におけるホルモンの役割を議論する
•ホルモンがどのように代謝を調節するのかを記述する
•さまざまな病気におけるホルモンの役割を説明する

ホルモンは広範囲の効果を持ち、そして多くの異なった身体プロセスを調整します。ここで検討される重要な調節プロセスは、排泄系、生殖器系、代謝、血中カルシウム濃度、成長、そしてストレス反応に影響を与えるものです。

排泄系のホルモン調節

体内の水分平衡を適切に保つことは、脱水症や水分過剰症(低ナトリウム血症)を避けるために重要です。体の水分濃度は視床下部の浸透圧受容器によって監視されます。浸透圧受容器は細胞外液中の電解質の濃度を検出します。血液中の電解質の濃度は、過度の発汗、水分摂取量の不足、または失血による血液量の減少によって水分が失われると上昇します。血中電解質レベルの上昇により、視床下部核の浸透圧受容器から神経細胞シグナルが送られます。下垂体には、前葉と後葉の2つの要素があります。下垂体前葉はタンパク質ホルモンを分泌する腺細胞で構成されています。下垂体後葉は視床下部の延長です。それは視床下部と連続しているニューロンから主に構成されています。

視床下部は、抗利尿ホルモン(ADH)として知られるポリペプチドホルモンを産生し、これは下垂体後葉に輸送され、そこから放出されます。ADHの主な作用は腎臓によって排泄される水の量を調節することです。ADH(バソプレシンとしても知られています)は腎臓の尿細管からの直接の水の再吸収を引き起こすので、塩分と廃棄物は最終的に尿として排泄されるものの中に濃縮されます。視床下部は、血液量または血液中の水分濃度を調節することによって、ADH分泌のメカニズムを制御します。脱水や生理的ストレスはオスモル濃度を300mOsm/L以上に増加させることがあり、それが次にADH分泌を高め、水分が保持され、血圧の上昇を引き起こします。ADHは血流中を腎臓まで移動します。腎臓に到達すると、ADHは一時的に水分チャネル(アクアポリン)を腎臓の尿細管に挿入することによって、腎臓を水に対してより透過性になるように変えます。水分はアクアポリンを通って腎臓の尿細管から出て、尿量を減らします。水分は毛細血管に再吸収され、血液のオスモル濃度を正常値に向かって下げます。血液のオスモル濃度が低下すると、負のフィードバックメカニズムが視床下部の浸透圧受容器の活性を低下させ、ADH分泌が低下します。ADHの放出は、アルコールを含む特定の物質によって減少することがあります。これは、尿の産生や脱水の増加を引き起こすことがあります。

ADHの慢性的な産生不足またはADH受容体の突然変異は尿崩症を引き起こします。もし下垂体後葉が十分なADHを放出しない場合、水分は腎臓によって保持することができず、尿として失われます。これによりのどの渇きが増しますが、取り込まれた水は再び失われるため、継続的に摂取しなければなりません。もし状態がそれほどひどくない場合、脱水は起こらないかもしれませんが、ひどい場合は脱水による電解質の不均衡につながる可能性があります。

細胞外液中の電解質濃度を維持することを担う別のホルモンはアルドステロン(副腎皮質によって産生されるステロイドホルモン)です。適切な水分平衡を維持するために水の再吸収を促すADHとは対照的に、アルドステロンは腎臓の尿細管内の細胞の細胞外液からのNa⁺再吸収およびK⁺分泌を増強することによって適切な水分平衡を維持します。アルドステロンは副腎の皮質で生成され、ミネラルのNa⁺とK⁺の濃度に影響を与えるので、それはミネラロコルチコイド(イオンと水分の平衡に影響を与えるコルチコステロイド)と呼ばれます。アルドステロンの放出は、血中ナトリウム濃度の低下、血液量の低下、血圧の低下、または血中カリウム濃度の上昇によって刺激されます。それは、汗、唾液、胃液からのNa⁺の損失も防ぎます。Na⁺の再吸収はまた、水の浸透圧的な再吸収をもたらし、それは血液量および血圧を変化させます。

図37.7に示されるように、アルドステロン産生は低い血圧によって刺激されることがあり、これが一連の化学物質の放出を引き起こします。血圧が下がると、レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系(RAAS)が活性化されます。腎臓のネフロンの機能を調節する傍糸球体装置内の細胞がこれを検出し、レニンを放出します。酵素であるレニンは、血中を循環し、アンジオテンシノーゲンと呼ばれる肝臓によって産生される血漿タンパク質と反応します。アンジオテンシノーゲンがレニンによって切断されると、それはアンジオテンシンIを産生し、それは次に肺においてアンジオテンシンIIに変換されます。アンジオテンシンIIはホルモンとして機能し、そして副腎皮質によるホルモンのアルドステロンの放出を引き起こし、Na⁺再吸収の増加、水分保持、そして血圧の上昇をもたらします。アンジオテンシンIIは、強力な血管収縮薬であることに加えて、ADHの増加およびのどの渇きの増加を引き起こします。これらは両方とも血圧を上昇させるのに役立ちます。

図37.7 | ADHとアルドステロンは血圧と血液量を増加させます。アンジオテンシンIIはこれらのホルモンの放出を刺激します。アンジオテンシンIIは、レニンがアンジオテンシノーゲンを切断すると形成されます。(credit: modification of work by Mikael Häggström)

生殖器系のホルモン調節

生殖器系の調節は、下垂体、副腎皮質、および生殖腺からのホルモンの作用を必要とするプロセスです。男性も女性もともに思春期の間に、視床下部が性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)を産生します。これは卵胞刺激ホルモン(FSH)および黄体形成ホルモン(LH)の産生および下垂体前葉からの放出を刺激します。これらのホルモンは生殖腺(男性では精巣、女性では卵巣)を調節するため、性腺刺激ホルモンと呼ばれます。男女ともにFSHは配偶子の産生を刺激し、LHは生殖腺によるホルモンの産生を刺激します。生殖腺ホルモンレベルの上昇は、負のフィードバックループを介してGnRH産生を阻害します。

男性の生殖器系の調節

男性では、FSHは精子細胞の成熟を刺激します。FSH産生は、精巣により放出されるホルモンのインヒビンにより阻害されます。LHは精巣の間質細胞による性ホルモン(アンドロゲン)の産生を刺激するので、間質細胞刺激ホルモンとも呼ばれます。

男性で最も広く知られているアンドロゲンはテストステロンです。テストステロンは精子の産生および男性的な特徴を促進します。副腎皮質も少量のテストステロン前駆体を産生しますが、この追加のホルモン産生の役割は完全には理解されていません。

日常へのつながり

合成ホルモンの危険性

図37.8 | プロ野球選手のジェイソン・ジアンビはトレーナーによって提供されたアナボリックステロイドの使用を公に認め、謝罪しました。(credit: Bryce Edwards)

アスリートの中には、筋肉能力を増強する人工的なホルモンを使用することによって彼らのパフォーマンスを高めることを試みる人もいます。アナボリックステロイド(男性の性ホルモンのテストステロンの一形態)は、最も広く知られている能力増強薬物の1つです。ステロイドは筋肉量を増やすのを助けるために使用されています。運動能力を高めるために使用される他のホルモンには、赤血球の産生を誘発するエリスロポエチン、および筋肉量の増加を助けることができるヒト成長ホルモンが含まれます。ほとんどの能力増強薬物は非医療目的では違法です。それらはまた、国際オリンピック委員会、米国オリンピック委員会、全米大学体育協会、メジャーリーグベースボール、およびナショナルフットボールリーグを含む国内および国際的な運営機関によって禁止されています。

合成ホルモンの副作用はしばしば重大かつ不可逆的であり、場合によっては致命的です。アンドロゲンは、肝機能障害や肝腫瘍、前立腺肥大、排尿困難、骨端軟骨の早期閉鎖、精巣萎縮、不妊、免疫系の抑制など、いくつかの問題を引き起こします。これらの物質によって引き起こされる生理学的な負担は、しばしば身体が扱うことができるものよりも大きく、予測不可能で危険な効果をもたらすとともに、それらの使用を心臓発作、脳卒中、および心機能障害へと結び付けます。

女性の生殖器系の調節

女性では、FSHは卵胞と呼ばれる構造の中で発達する卵子と呼ばれる卵細胞の発達を刺激します。卵胞細胞はホルモンのインヒビンを産生し、インヒビンはFSH産生を阻害します。図37.9に示されるように、LHは卵子の発達、排卵の誘発、ならびに卵巣によるエストラジオールおよびプロゲステロン産生の刺激においても役割を果たします。エストラジオールとプロゲステロンは、妊娠のために体を準備するステロイドホルモンです。エストラジオールは女性に第二次性徴を生み出す一方で、エストラジオールとプロゲステロンの両方が月経周期を調節します。

図37.9 | 女性の生殖器系のホルモン調節には、視床下部、下垂体、および卵巣からのホルモンが関係しています。

FSHおよびLHを産生することに加えて、下垂体の前葉はまた、女性においてホルモンのプロラクチン(PRL)も産生します。プロラクチンは、出産後の乳腺による乳の産生を刺激します。プロラクチンのレベルは、視床下部ホルモンのプロラクチン放出ホルモン(PRH)とプロラクチン抑制ホルモン(PIH)(現在ではドーパミンであることが知られています)によって調節されています。PRHはプロラクチンの放出を刺激し、PIHはそれを阻害します。

下垂体後葉はホルモンのオキシトシンを放出し、それは出産時に子宮の収縮を刺激します。子宮平滑筋は、妊娠後期に子宮内のオキシトシン受容体の数がピークに達するまでオキシトシンに対してあまり感受性はありません。子宮および子宮頸部の組織の伸張は出産時のオキシトシン放出を刺激します。出産が完了するまで、オキシトシンの血中濃度が正のフィードバックメカニズムを介して上昇するにつれて、収縮は強度を増します。オキシトシンはまた、乳を産生する乳腺の周囲にある筋上皮細胞の収縮を刺激します。これらの細胞が収縮するにつれて、乳は分泌胞から乳管に押し出され、乳汁排出(「催乳」)反射で乳房から排出されます。オキシトシン放出は幼児の吸い込みによって刺激され、それが視床下部におけるオキシトシンの合成および下垂体後葉における血液循環への放出を誘発します。

代謝におけるホルモン調節

血糖値は、食物摂取の期間と絶食の期間とが交互に起こるため、一日の間で大きく変動します。インスリンとグルカゴンは、主に血糖値の恒常性維持を担う2つのホルモンです。追加の調節は甲状腺ホルモンによって仲介されます。

インスリンとグルカゴンによる血糖値の調節

体の細胞は機能するために栄養素を必要とし、そしてこれらの栄養素は摂食を通して得られます。栄養素の摂取量を管理し、必要に応じて過剰な摂取量を蓄えたり、蓄えを利用したりするために、体はホルモンを使ってエネルギー貯蔵量を調整します。インスリンは膵臓のベータ細胞によって産生され、膵臓は血糖値が上昇するにつれて(たとえば食事が摂取された後に)インスリンを放出するように刺激されます。インスリンは、ATP産生にグルコースを使用する標的細胞によるグルコースの取り込み速度および利用速度を促進することによって血糖値を低下させます。それはまた肝臓を刺激してグルコースをグリコーゲンへと変換し、グリコーゲンはその後の使用のために細胞によって貯蔵されます。インスリンは筋肉細胞や肝臓などの特定の細胞へのグルコース輸送も増加させます。これは、インスリン媒介による細胞膜中のグルコース輸送タンパク質の数の増加から生じ、それは促進された拡散によって血液循環からグルコースを除去します。インスリンがインスリン受容体およびシグナル伝達を介してその標的細胞に結合すると、それによって細胞はグルコース輸送タンパク質をその膜に取り込みます。これはグルコースが細胞に入ることを可能にし、そこでそれはエネルギー源として使用することができます。しかしながら、これはすべての細胞で起こるわけではありません:腎臓や脳の細胞を含むいくつかの細胞は、インスリンを使用せずにグルコースにアクセスすることができます。インスリンはまた、脂肪細胞におけるグルコースの脂肪への変換およびタンパク質の合成を刺激します。インスリンによって媒介されるこれらの作用は血糖濃度を低下させます。これは血糖降下的な「低血糖」効果と呼ばれ、それは負のフィードバックループを通してベータ細胞からのさらなるインスリン放出を阻害します。

学習へのリンク

このアニメーションは、糖尿病におけるインスリンと膵臓の役割を説明しています。(http://cnx.org/content/m66629/1.3/#eip-id1171750017253)

インスリン機能が損なわれると、真性糖尿病と呼ばれる状態につながることがあります。その主な症状は図37.10に示されています。これは、膵臓のベータ細胞による低レベルのインスリン産生、またはインスリンに対する組織細胞の感受性の低下によって引き起こされることがあります。これは、グルコースが細胞によって吸収されるのを妨げ、高レベルの血糖値、すなわち高血糖を引き起こします。血糖値が高いと、腎臓が発生段階の尿からすべてのグルコースを回収することが困難になり、その結果、尿中にグルコースが失われます。高血糖状態はまた、腎臓によって再吸収される水分が少なくなり、大量の尿が生成されることになります。これは脱水につながることがあります。時間がたつと、高血糖値は、目および末梢の体組織への神経損傷とともに、腎臓および心血管系への損傷を引き起こすことがあります。インスリンの過剰分泌は血糖降下状態(低血糖値)を引き起こす可能性があります。これは、細胞のグルコース利用可能性を不十分にし、しばしば筋肉の衰弱をもたらし、そしてもし未治療のままにされるならば時には意識不明または死を引き起こすことがあります。

図37.10 | 糖尿病の主な症状が示されています。(credit: modification of work by Mikael Häggström)

血糖値が通常の値を下回るほど低下したとき、たとえば食事と食事の間や運動中にグルコースが急速に利用されたとき、ホルモンのグルカゴンが膵臓のアルファ細胞から放出されます。グルカゴンは、グリコーゲン分解と呼ばれるプロセスで骨格筋細胞および肝細胞においてグリコーゲンのグルコースへの分解を刺激することによって、いわゆる高血糖効果を引き出すことにより血糖値を上昇させます。それからグルコースは筋肉細胞によってエネルギーとして利用され、肝細胞によって血液循環に放出されます。グルカゴンはまた、肝臓による血液からのアミノ酸の吸収を刺激し、肝臓は次にそれらをグルコースに変換します。このグルコース合成プロセスは、グルコース新生と呼ばれます。グルカゴンはまた、脂肪細胞を刺激して血中に脂肪酸を放出させます。グルカゴンによって媒介されるこれらの作用によって、血糖値は正常な恒常性レベルへと上昇します。血糖値の上昇は、負のフィードバックメカニズムを介して膵臓によるさらなるグルカゴン放出を阻害します。このようにして、図37.11に示されるように、インスリンとグルカゴンは協調してグルコースの恒常性レベルを維持します。

ビジュアルコネクション

図37.11 | インスリンとグルカゴンは血糖値を調節します。

膵臓腫瘍はグルカゴンの過剰な分泌を引き起こすことがあります。I型糖尿病は、膵臓がインスリンを産生できないことから生じます。これら2つの症状についての次の記述のうち、正しいものはどれですか?
a.膵臓腫瘍とI型糖尿病は血糖値に反対の影響を及ぼす。
b.膵臓腫瘍とI型糖尿病はどちらも高血糖を引き起こす。
c.膵臓腫瘍とI型糖尿病はどちらも低血糖を引き起こす。
d.膵臓腫瘍およびI型糖尿病の両方によって、細胞がグルコースを取り込むことができなくなる。

甲状腺ホルモンによる血糖値の調節

安静時に体が必要とするカロリー量である基礎代謝率は、甲状腺によって産生される2つのホルモン、すなわちチロキシン(テトラヨードチロニンまたはT₄としても知られます)と、トリヨードチロニン(T₃としても知られます)によって決定されます。これらのホルモンは、成人の脳、子宮、精巣、血球、脾臓を除く、体のほぼすべての細胞に影響を与えます。それらは標的細胞の原形質膜を横切って輸送され、そしてミトコンドリア上の受容体に結合してATP産生の増加をもたらします。核内では、T₃およびT₄がエネルギー産生およびグルコース酸化に関与する遺伝子を活性化します。これによって代謝率と体での熱の産生率が増加し、これはホルモンの熱発生成効果として知られています。

甲状腺からのT₃およびT₄の放出は、下垂体前葉によって産生される甲状腺刺激ホルモン(TSH)によって刺激されます。甲状腺濾胞の受容体におけるTSHの結合は、サイログロブリンと呼ばれる糖タンパク質からのT₃およびT₄の産生を誘発します。サイログロブリンは甲状腺の濾胞に存在し、ヨウ素が加えられると甲状腺ホルモンに変換されます。ヨウ素は、血流から甲状腺濾胞に能動的に輸送されるヨウ素イオンから形成されます。次いで、酵素のペルオキシダーゼが、サイログロブリン中に見出されるアミノ酸のチロシンにヨウ素を結合させます。T₃は3個のヨウ素イオンが結合しているのに対し、T₄は4個のヨウ素イオンが結合しています。次に、T₃およびT₄が血流中に放出されます。T₄はT₃よりはるかに多い量で放出されます。T₃はT₄よりも活性であり、そして甲状腺ホルモンの効果の大部分を担うので、体の組織はヨウ素イオンの除去によりT₄をT₃に変換します。放出されたT₃およびT₄の大部分は血流中の輸送タンパク質に付​​着するようになり、細胞の原形質膜を通過することができません。これらのタンパク質に結合した分子は、結合していないホルモンの血中濃度が低下し始めたときにのみ放出されます。このようにして、1週間分に相当する貯蔵ホルモンが血中に維持されます。血中のT₃およびT₄レベルの上昇はTSHの放出を阻害し、それは甲状腺からのT₃およびT₄の放出を低下させます。

甲状腺の濾胞細胞はT₃とT₄を合成するためにヨウ化物(ヨウ素のアニオン)を必要とします。食事から得られたヨウ化物は、濾胞細胞に能動的に運ばれ、血中よりも約30倍高い濃度になります。北米の典型的な食事では、食卓塩にヨウ化物が添加されているため、必要以上に多くのヨウ素を提供します。多くの開発途上国で起こっている不十分なヨウ素摂取によって、T₃とT₄ホルモンを合成することが不可能になります。甲状腺は、甲状腺腫と呼ばれる症状でもって肥大します。これは甲状腺ホルモンが形成されることなくTSHが過剰生産されると引き起こされます。サイログロブリンはコロイドと呼ばれる液体に含まれており、TSH刺激は甲状腺に高レベルのコロイド蓄積をもたらします。ヨウ素がない場合、これは甲状腺ホルモンに変換されず、甲状腺にコロイドがますます蓄積し始め、甲状腺腫につながります。

甲状腺ホルモンの過少産生と過剰産生の両方から障害が生じることがあります。甲状腺機能低下症(甲状腺ホルモンの過少産生)は、体重増加につながる低代謝率、寒さに対する敏感さ、および精神活動の低下や、他の症状を引き起こすことがあります。小児では、甲状腺機能低下症はクレチン病を引き起こすことがあり、それは精神遅滞および成長障害につながることがあります。甲状腺機能亢進症(甲状腺ホルモンの過剰産生)は、代謝率の増加とその影響:体重減少、過剰な発熱、発汗、心拍数の増加につながる可能性があります。グレーブス病は甲状腺機能亢進症の一例です。

血中カルシウム濃度のホルモン制御

血中カルシウム濃度の調節は、電気的に刺激される筋肉収縮や神経インパルスの発生にとって重要です。もしカルシウムレベルが高くなりすぎると、ナトリウムに対する膜の透過性が低下し、膜の反応性が低下します。もしカルシウムレベルが低くなりすぎると、ナトリウムに対する膜の透過性が増加し、ひきつけまたは筋肉のけいれんが起こり得ます。

図37.12に示されるように、血中カルシウムレベルは副甲状腺により産生される副甲状腺ホルモン(PTH)によって調節されています。PTHは、血中のCa²⁺レベルが低いことに反応して放出されます。PTHは骨格、腎臓、腸を標的にすることによりCa²⁺レベルを上昇させます。骨格では、PTHが破骨細胞を刺激し、それによって骨が再吸収され、骨からCa²⁺が血中に放出されます。PTHはまた、骨芽細胞を抑制し、骨中でのCa²⁺沈着を減少させます。腸では、PTHは食物中のCa²⁺吸収を増加させ、腎臓では、PTHはCa²⁺の再吸収を刺激します。PTHは腎臓に直接作用してCa²⁺再吸収を増加させますが、腸に対するその効果は間接的です。PTHはカルシトリオール(ビタミンDの活性型)の形成を引き起こします。これが腸に作用して食物の中のカルシウムの吸収を高めます。PTH放出は血中カルシウムレベルの上昇によって抑制されます。

図37.12 | 副甲状腺ホルモン(PTH)は、低い血中カルシウムレベルに反応して放出されます。それは骨格、腎臓、腸を標的にすることにより血中カルシウムレベルを上昇させます。(credit: modification of work by Mikael Häggström)

副甲状腺機能亢進症は、副甲状腺ホルモンの過剰産生に起因します。これは骨から過剰にカルシウムが取り除かれて血液循環に導入され、骨の構造的な弱さを引き起こし、それが変形や骨折、そして高血中カルシウムレベルによる神経系の障害につながることがあります。副甲状腺機能低下症(PTHの過少産生)は、非常に低いレベルの血中カルシウムをもたらし、それは筋肉機能障害を引き起こし、テタニー(重度の持続的な筋肉収縮)をもたらすこともあります。

甲状腺の傍濾胞細胞またはC細胞によって産生されるホルモンのカルシトニンは、PTHが行うものとは反対の効果を血中カルシウム濃度に及ぼします。カルシトニンは破骨細胞を抑制し、骨芽細胞を刺激し、そして腎臓によるカルシウム排泄を刺激することによって、血中カルシウムレベルを減少させます。これによりカルシウムが骨に加えられて構造的完全性が促進されます。カルシトニンは子供(骨の成長を刺激するとき)、妊娠中(母親の骨量減少を減らすとき)、そして長く続く飢餓の間(骨量の減少を減らすため)において最も重要です。健康で妊娠しておらず、飢えてもいない成人においては、カルシトニンの役割は不明です。

成長におけるホルモン調節

ホルモン調節は体内のほとんどの細胞の成長と複製に必要とされます。下垂体の前葉で産生される成長ホルモン(GH)は、特に骨格筋と骨においてタンパク質合成の速度を速めます。成長ホルモンは直接的および間接的な作用機序を有します。GHの最初の直接的な作用は、脂肪細胞によるトリグリセリド分解(脂肪分解)および血中への放出の刺激です。これは、ほとんどの組織において、エネルギー源としてのグルコースの利用から脂肪酸の利用への切り替えをもたらします。このプロセスはグルコース節約効果と呼ばれます。別の直接的なメカニズムでは、GHは肝臓でのグリコーゲン分解を刺激します。その後グリコーゲンはグルコースとして血中に放出されます。ほとんどの組織はそのエネルギー需要のためにグルコースの代わりに脂肪酸を利用しているので、血糖値は上昇します。GHによって仲介された血糖値の増加は、真性糖尿病において見られる高い血糖値に似ているため、糖尿病誘発効果と呼ばれます。

GH作用の間接的なメカニズムは、インスリン様成長因子(IGF)またはソマトメジンによって媒介されます。これらは、組織成長を刺激する、肝臓によって産生される成長促進タンパク質のファミリーです。図37.13に示されるように、IGFは血液からのアミノ酸の取り込みを刺激し、特に骨格筋細胞、軟骨細胞、および他の標的細胞における新しいタンパク質の形成を可能にします。これは食事の後、つまり血糖値やアミノ酸濃度が血中で高い場合に特に重要です。GHレベルは視床下部によって産生される2つのホルモンによって調節されます。GH放出は成長ホルモン放出ホルモン(GHRH)によって刺激され、成長ホルモン抑制ホルモン(GHIH)(ソマトスタチンとも呼ばれます)によって抑制されます。

図37.13 | 成長ホルモンは骨格筋と骨のタンパク質合成の速度を直接的に加速します。インスリン様成長因子1(IGF-1)は成長ホルモンによって活性化され、これもまた筋肉細胞と骨で新しいタンパク質の形成を可能にします。(credit: modification of work by Mikael Häggström)

成長ホルモンのバランスのとれた産生は適切な発達のために重要です。成人におけるGHの過少産生はいかなる異常も引き起こさないように見えますが、子供においては成長が低下する下垂体性小人症を引き起こす可能性があります。下垂体性小人症は対称的な体の形成を特徴とします。場合によっては、個人の身長は30インチ(約75センチメートル)未満です。成長ホルモンの過剰分泌は、過度の成長を引き起こして、子供の巨人症につながることがあります。いくつかの確認されたケースでは、個人は8フィート(約2.4メートル)以上の身長に達することがあります。成人では、過剰なGHは末端肥大症につながることがあり、それは顔面、手、および足の骨が肥大し、なお成長することがあります。

ストレスに対するホルモン調節

脅威や危険が知覚されると、身体はホルモンを放出することによって反応し、それによって「闘争か逃走か」反応に備えます。この反応の影響は、ストレスの多い状況にいる人にはおなじみのものです:心拍数の増加、口の渇き、そして毛が逆立つことです。

進化へのつながり

闘争か逃走か反応

内分泌ホルモンの相互作用は、体の内部環境が安定したまま維持されることを確実にするために進化してきました。ストレス要因は恒常性を乱す刺激です。脊椎動物の自律神経系の交感神経部分は、ストレスによって誘発された恒常性に対する混乱に対抗するために、闘争か逃走か反応を進化させてきました。最初の警戒段階では、交感神経系は血糖値の上昇を通じてエネルギーレベルの上昇を刺激します。これはストレスに反応するために必要とされるかもしれない身体活動のために(つまり、生存をかけて戦うために、または危険から逃げるために)体を準備します。

しかしながら、病気や怪我などのいくつかのストレスは長期間続くことがあります。ストレスに対する短期的な反応にエネルギーを提供するグリコーゲン貯蔵量は、数時間後に使い尽くされ、長期的なエネルギー需要を満たすことができません。もしグリコーゲン貯蔵量が利用可能な唯一のエネルギー源である場合、神経系によるグルコースに対する大量の要求のために貯蔵量が枯渇すると、神経機能は維持することができないでしょう。このような状況では、身体は糖質コルチコイドの作用を通じて長期的なストレスに対抗する反応を進化させており、それによって長期的なエネルギー要求を確実に満たすことができます。糖質コルチコイドは、脂質およびタンパク質の貯蔵を動員し、グルコース新生を刺激し、神経組織による使用のためにグルコースを保存し、そして塩分および水分の保存を刺激します。ここで記述した恒常性を維持するためのメカニズムは、人体で観察されたものです。しかしながら、闘争か逃走か反応はすべての脊椎動物に何らかの形で存在します。

交感神経系は視床下部を介してストレス反応を調節します。ストレスのある刺激が起こると、視床下部は、神経インパルスを介して副腎髄質(短期ストレス反応を仲介します)にシグナルを送るとともに、下垂体前葉で産生される副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)というホルモンを介して副腎皮質(長期ストレス反応を仲介します)にシグナルを送ります。

短期ストレス反応

ストレスの多い状況にさらされたとき、体はエネルギーのほとばしりを提供するホルモンの放出を求めることによって反応します。ホルモンのエピネフリン(アドレナリンとしても知られています)およびノルエピネフリン(ノルアドレナリンとしても知られています)は、副腎髄質によって放出されます。これらのホルモンはどのようにしてエネルギーのほとばしりをもたらすのでしょうか?エピネフリンおよびノルエピネフリンは、グリコーゲンを分解するために肝臓および骨格筋を刺激することにより、そして肝細胞によるグルコース放出を刺激することにより、血糖値を上昇させます。さらに、これらのホルモンは心拍数を高め、細気管支を拡張することによって、細胞への酸素供給を高めます。このホルモンはまた、心臓、脳、骨格筋などの重要な器官への血液供給を増加させるとともに、皮膚、消化器系、腎臓などの緊急に必要のない器官への血流を制限することによって、身体機能を優先させます。エピネフリンとノルエピネフリンはまとめてカテコールアミンと呼ばれます。

学習へのリンク

闘争か逃走か反応を説明するこのディスカバリーチャンネルのアニメーション(http://openstaxcollege.org/l/adrenaline)をご覧ください。

長期ストレス反応

長期ストレス反応は短期ストレス反応とは異なります。体はエピネフリンとノルエピネフリンによって仲介されるエネルギーのほとばしりを長い間持続することができません。代わりに、他のホルモンが役割を果たすようになります。長期ストレス反応において、視床下部は下垂体前葉からのACTHの放出を引き起こします。副腎皮質はACTHによって刺激されて、コルチコステロイドと呼ばれるステロイドホルモンを放出します。コルチコステロイドは、標的細胞の核内の特定の遺伝子の転写を開始させます。それらは細胞質中の酵素濃度を変え、そして細胞代謝に影響を与えます。2つの主要なコルチコステロイドがあります:コルチゾールなどの糖質コルチコイドと、アルドステロンなどのミネラロコルチコイドです。これらのホルモンは脂肪組織における脂肪から脂肪酸への分解を標的にしています。脂肪酸は、他の組織がATP産生に使用するために血流中に放出されます。糖質コルチコイドは、グルコース合成を刺激することによって、主にグルコース代謝に影響を与えます。糖質コルチコイドはまた、免疫系の阻害を介した抗炎症作用も有します。たとえば、コルチゾンは抗炎症薬として使用されます。しかしながら、それは、その免疫抑制効果のために疾患に対するかかりやすさを増大させるので、長期間使用することはできません。

ミネラロコルチコイドは、体のイオンと水分の平衡を調節する働きをします。ホルモンのアルドステロンは腎臓で水分とナトリウムイオンの再吸収を刺激し、これにより血圧と血液量を上昇させます。

糖質コルチコイドの過剰分泌は、クッシング病として知られる症状を引き起こすことがあり、それは体の脂肪蓄積領域の移動を特徴とします。これにより、顔や首に脂肪組織が蓄積され、血中のグルコースが過剰になることがあります。コルチコステロイドの過少分泌はアジソン病を引き起こす可能性があり、それは皮膚の銅色化、低血糖症、および血中の電解質の低いレベルをもたらすことがあります。

37.4 | ホルモン産生の調節

この節が終わるまでに、あなたは次のことができるようになります:
•ホルモン産生がどのように調節されているかを説明する
•体内のホルモンレベルを制御するさまざまな刺激について議論する

ホルモンの産生と放出は主に負のフィードバックによって制御されています。負のフィードバックシステムでは、ある刺激によってある物質の放出が誘発されます。ひとたびその物質が一定のレベルに達すると、それ以上の物質の放出を止めるシグナルを送ります。このようにして、血中のホルモン濃度は狭い範囲内に維持されます。たとえば、下垂体前葉は甲状腺に甲状腺ホルモンを放出するようにシグナルを送ります。図37.14に示されるように、血中のこれらのホルモンのレベルが上がると、視床下部と下垂体前葉にフィードバックが与えられ、甲状腺へのそれ以上のシグナリングが阻害されます。内分泌腺が刺激されてホルモンを合成および放出するメカニズムは3つあります:体液性刺激、ホルモン性刺激、神経細胞性刺激です。

ビジュアルコネクション

図37.14 | 下垂体前葉は甲状腺を刺激して甲状腺ホルモンT₃とT₄を放出させます。血中でこれらのホルモンのレベルが上昇すると、視床下部および下垂体前葉へのフィードバックが生じ、甲状腺へのさらなるシグナリングが阻害されます。(credit: modification of work by Mikael Häggström)

甲状腺機能亢進症は、甲状腺が過剰に活発になる状態です。甲状腺機能低下症は、甲状腺が過少に機能する状態です。次の2人の患者が罹患している可能性が最も高い状態はどちらですか?
患者Aは、体重増加、寒さに対する敏感さ、低い心拍数、および疲労を含む症状を呈している。
患者Bは、体重減少、大量の発汗、心拍数の上昇、および睡眠困難を含む症状を呈している。

体液性刺激

「体液性」という用語は、「体液」という用語に由来し、これは血液などの体の液体を指します。体液性刺激は、血液または血液中のイオン濃度などの細胞外液の変化に反応したホルモン放出の制御のことを指します。たとえば、血糖値の上昇は膵臓によるインスリンの放出を引き起こします。インスリンは血糖値を低下させ、それは負のフィードバックループによって膵臓がインスリンの産生を停止するようにシグナルを送ります。

ホルモン性刺激

ホルモン性刺激は、他のホルモンに反応してホルモンが放出されることを表します。他の内分泌腺により放出されるホルモンによって刺激されると、多くの内分泌腺がホルモンを放出します。たとえば、視床下部は、下垂体の前葉を刺激するホルモンを産生します。次に、下垂体前葉は、他の内分泌腺によるホルモン産生を調節するホルモンを放出します。下垂体前葉は甲状腺刺激ホルモンを放出し、甲状腺刺激ホルモンは甲状腺を刺激してホルモンT₃とT₄を生成します。T₃およびT₄の血中濃度が上昇するにつれて、それらは、負のフィードバックループにおいて下垂体および視床下部の両方を阻害します。

神経細胞性刺激

場合によっては、神経系は内分泌腺を直接刺激してホルモンを放出させます。これは神経細胞性刺激と呼ばれます。短期ストレス反応では、身体が反応するのに必要なエネルギーのほとばしりを提供するためにホルモンのエピネフリンとノルエピネフリンが重要であるということを思い出してください。ここでは、交感神経系からの神経細胞性シグナリングが副腎髄質を直接刺激して、ストレスに反応するホルモンのエピネフリンおよびノルエピネフリンを放出させます。

37.5 | 内分泌腺

この節が終わるまでに、あなたは次のことができるようになります:
•内分泌系におけるさまざまな腺の役割を記述する
•恒常性を維持するために異なる腺がどのように協調して作用するのかを説明する

内分泌系も神経系も化学的シグナルを使って体の生理機能を伝えたり調節したりします。内分泌系は、発生、成長、エネルギー代謝、生殖、そして多くの行動を調節するために標的細胞に作用するホルモンを放出します。神経系は、ニューロン、筋肉細胞、および内分泌細胞を調節する神経伝達物質または神経ホルモンを放出します。ニューロンはホルモンの放出を調節することができるので、神経系と内分泌系は協調的に作用して身体の生理機能を調節します。

視床下部-下垂体軸

脊椎動物の視床下部は内分泌系と神経系を統合しています。視床下部は、脳の間脳に位置する内分泌器官です。それは身体や他の脳領域からの入力を受け取り、環境変化に対する内分泌反応を開始します。視床下部は内分泌器官として作用し、ホルモンを合成し、それらを軸索に沿って下垂体後葉に輸送します。それは下垂体前葉の内分泌細胞を制御する調節ホルモンを合成して分泌します。視床下部は、ニューロン制御を介して副腎髄質の内分泌細胞を制御する自律神経中枢を含みます。

下垂体は「マスター腺」とも呼ばれることがあり、図37.15に示されるように、頭蓋骨の蝶形骨の溝であるトルコ鞍の中の、脳の基部に位置しています。それは下垂体柄(または漏斗)と呼ばれる柄を介して視床下部に接続されています。下垂体の前葉は視床下部により産生される放出ホルモンまたは放出抑制ホルモンによって調節され、そして下垂体後葉は神経分泌細胞を介して視床下部によって産生されるホルモンを放出するシグナルを受け取ります。下垂体には、下垂体前葉と下垂体後葉という2つの異なる領域があり、それらの間で9つの異なるペプチドホルモンまたはタンパク質ホルモンが分泌されます。下垂体の後葉には視床下部ニューロンの軸索が含まれています。

図37.15 | 下垂体は、(a)脳の基部に位置するとともに、(b)下垂体柄によって視床下部に接続されています。(credit a: modification of work by NCI; credit b: modification of work by Gray’s Anatomy)

下垂体前葉

下垂体前葉(または腺下垂体)は、視床下部から漏斗に沿って下垂体前葉まで伸びる毛細血管網によって囲まれています。この毛細血管網は、視床下部から下垂体前葉に物質を運搬し、下垂体前葉から循環器系にホルモンを運搬する下垂体門脈系の一部です。門脈系とは、ある毛細血管網から別の毛細血管網に血液を運ぶものです。したがって、下垂体門脈系は、視床下部によって産生されるホルモンが、先に循環器系に入ることなく下垂体前葉に直接運ばれることを可能にします。

下垂体前葉は、成長ホルモン(GH)、プロラクチン(PRL)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、メラニン刺激ホルモン(MSH)、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)、卵胞刺激ホルモン(FSH)、黄体形成ホルモン(LH)の7つのホルモンを産生します。下垂体前葉ホルモンは他の器官の機能を制御するため、刺激ホルモンと呼ばれることがあります。これらのホルモンは下垂体前葉によって産生されますが、その産生は視床下部により産生される調節ホルモンによって制御されます。これらの調節ホルモンは、放出ホルモンまたは抑制ホルモンであり、下垂体前葉ホルモンを多く分泌させたり少なく分泌させたりします。これらは視床下部から下垂体門脈系を通って下垂体前葉まで移動し、そこで効果を発揮します。そして、負のフィードバックによって、これらの調節ホルモンのどれだけが放出され、どれだけの量の下垂体前葉ホルモンが分泌されるかが調節されます。

下垂体後葉

下垂体後葉は、下垂体前葉と構造が大きく異なります。それは、視床下部から下方に伸びる脳の一部であり、そして神経線維および神経膠細胞(視床下部から下垂体後葉まで伸びる軸索を支持します)を主に含みます。下垂体後葉と漏斗は一緒になって神経下垂体と呼ばれます。

バソプレシンとしても知られている抗利尿ホルモン(ADH)、およびオキシトシンといったホルモンは、視床下部のニューロンによって産生され、漏斗に沿ってこれらの軸索内を下垂体後葉へと輸送されます。それらは視床下部からの神経シグナリングを介して循環器系に放出されます。これらのホルモンは、視床下部によって産生されますが、下垂体後葉ホルモンと考えられています。なぜなら、下垂体後葉がそれらのホルモンが循環器系に放出される場所だからです。下垂体後葉自体はホルモンを産生しませんが、その代わりに、視床下部によって産生されたホルモンを貯蔵して血流へと放出します。

甲状腺

図37.16に示されるように、甲状腺は首の中で、喉頭の真下、気管の前に位置しています。それは峡部によって接続されている2つの葉を持つ蝶形の腺です。それは、その広範な血管系のために濃い赤色をしています。甲状腺が機能不全のために膨張しているとき、それは首の皮膚の下に感じることができます。

図37.16 | この図は甲状腺の位置を示しています。

甲状腺は、多くの球状の甲状腺濾胞から構成されており、それらは単層立方上皮によって裏打ちされています。これらの濾胞はコロイドと呼ばれる粘性の液体を含んでいます。この液体は、糖タンパク質のサイログロブリン(甲状腺ホルモンの前駆体です)を貯蔵します。濾胞は、コロイド中に貯蔵されるか、または循環器系を介した体の他の部分への輸送のために周囲の毛細血管網に放出されるホルモンを産生します。

甲状腺濾胞細胞は、ホルモンのチロキシン(4個のヨウ素原子を含むためにT₄としても知られています)、およびトリヨードチロニン(3個のヨウ素原子を含むためにT₃としても知られています)を合成します。濾胞細胞は、下垂体前葉によって産生される甲状腺刺激ホルモン(TSH)によって、貯蔵されたT₃およびT₄を放出するように刺激されます。これらの甲状腺ホルモンはミトコンドリアのATP産生率を高めます。

第3のホルモンのカルシトニンは、放出ホルモンまたは抑制ホルモンのいずれかにより甲状腺の傍濾胞細胞によって産生されます。カルシトニンの放出はTSHによっては制御されておらず、その代わりに血中のカルシウムイオン濃度が上昇すると放出されます。カルシトニンは体液中のカルシウム濃度の調節を助ける働きをします。それは骨の中では破骨細胞の活動を阻害するように作用し、そして腎臓の中ではカルシウムの排出を刺激するように作用します。これら2つの事象の組み合わせによって、カルシウムの体液レベルが下がります。

副甲状腺

ほとんどの人は4つの副甲状腺を持っています。しかしながら、その数は2つから6つまで変化することがあります。図37.17に示されるように、これらの腺は甲状腺の後面に位置しています。通常、甲状腺の2つの葉のそれぞれに付随した上腺と下腺があります。それぞれの副甲状腺は結合組織で覆われており、毛細血管網に関連する多くの分泌細胞を含んでいます。

図37.17 | 副甲状腺は甲状腺の後部に位置しています。(credit: modification of work by NCI)

副甲状腺は副甲状腺ホルモン(PTH)を産生します。カルシウムイオンレベルが正常値を下回ると、PTHは血中カルシウム濃度を上昇させます。 PTHは、(1)腎臓によるCa²⁺の再吸収を増強し、(2)破骨細胞の活動を刺激するとともに骨芽細胞の活動を阻害し、そして(3)腎臓によるカルシトリオールの合成および分泌を刺激し、それが消化器系によるCa²⁺吸収を増強します。PTHは副甲状腺の主細胞によって産生されます。PTHおよびカルシトニンは、体液中の恒常性Ca²⁺レベルを維持するために互いに反対に作用します。別の種類の細胞である好酸性細胞が副甲状腺に存在しますが、それらの機能は分かっていません。これらのホルモンは子供や女性における骨の成長、筋肉量、そして血球形成を促進します。

副腎

副腎は腎臓に付随しています。図37.18に示されるように、それぞれの腎臓の上に1つの腺が位置しています。副腎は、外側副腎皮質と内側副腎髄質で構成されています。これらの領域は異なるホルモンを分泌します。

図37.18 | 腎臓の上にある副腎の位置を示しています。(credit: modification of work by NCI)

副腎皮質

副腎皮質は、上皮細胞の層とそれに付随する毛細血管網からなります。これらの層は3つの異なる領域を形成します:ミネラロコルチコイドを産生する外側の球状帯、糖質コルチコイドを産生する中央の束状帯、およびアンドロゲンを産生する内側の網状帯です。

主なミネラロコルチコイドはアルドステロンで、これは尿、汗、膵臓、唾液中のNa⁺イオンの濃度を調節します。副腎皮質からのアルドステロンの放出は、ナトリウムイオンの血中濃度、血液量、血圧の低下、または血中カリウムレベルの上昇によって刺激されます。

3つの主要な糖質コルチコイドは、コルチゾール、コルチコステロン、およびコルチゾンです。糖質コルチコイドは、肝細胞によるグルコースの合成およびグルコース新生(非炭水化物からグルコースへの変換)を刺激し、それらは脂肪組織からの脂肪酸の放出を促進します。これらのホルモンは血糖値を上げて、食事と食事の間に血糖値を正常範囲内に維持します。これらのホルモンはACTHに反応して分泌され、そのレベルは負のフィードバックによって調節されます。

アンドロゲンは男性性を促進する性ホルモンです。それらは男性と女性の両方の副腎皮質によって少量が産生されます。それらは性徴に影響を及ぼさず、生殖腺から放出される性ホルモンを補っているのかもしれません。

副腎髄質

副腎髄質は、血管と密接に関連している大きくて不規則な形をした細胞を含んでいます。これらの細胞は、中枢神経系からの節前自律神経線維によって神経支配されています。

副腎髄質には、2種類の分泌細胞が含まれています:1つはエピネフリン(アドレナリン)を産生するもの、もう1つはノルエピネフリン(ノルアドレナリン)を産生するものです。エピネフリンは副腎髄質の分泌の75~80%を占める主要な副腎髄質ホルモンです。エピネフリンとノルエピネフリンは、心拍数、呼吸数、心筋収縮、血圧、および血糖値を上昇させます。それらはまた、骨格筋内のグルコースおよび脂肪組織内の貯蔵脂肪の分解を加速させます。

エピネフリンとノルエピネフリンの放出は、交感神経系からの神経インパルスによって刺激されます。これらのホルモンの分泌は、副腎髄質を神経支配する節前交感神経線維からのアセチルコリン放出によって刺激されます。これらの神経インパルスは、身体が闘争か逃走か反応に備えるようなストレスに反応して視床下部から発出します。

膵臓

図37.19に示される膵臓は、胃と小腸の近位部の間に位置する細長い器官です。それは、消化酵素を排出する外分泌細胞と、ホルモンを放出する内分泌細胞との両方を含みます。それは内分泌機能と外分泌機能の両方を持つため、時には内外分泌腺と呼ばれます。

図37.19 | 膵臓は胃の下にあり、脾臓のほうを向いています。(credit: modification of work by NCI)

図37.20に示される顕微鏡写真で見えるように、膵臓の内分泌細胞は、膵島またはランゲルハンス島と呼ばれるクラスターを形成します。膵島は、2つの主要な細胞タイプを含んでいます:ホルモンのグルカゴンを産生するアルファ細胞、およびホルモンのインスリンを産生するベータ細胞です。これらのホルモンは血糖値を調節します。血糖値が下がると、アルファ細胞はグルカゴンを放出し、肝臓によるグリコーゲン分解とグルコース放出の速度を上昇させることによって血糖値を上昇させます。食事後などに血糖値が上昇すると、ベータ細胞がインスリンを放出し、ほとんどの体細胞でのグルコースの取り込み速度を速くするとともに骨格筋や肝臓でのグリコーゲン合成を増加させることによって、血糖値を下げます。グルカゴンとインスリンは、一緒になって血糖値を調節します。

図37.20 | ランゲルハンス島は膵臓に見られる内分泌細胞のクラスターです。それらは周囲の細胞よりも明るい色で染色されています。(credit: modification of work by Muhammad T. Tabiin, Christopher P. White, Grant Morahan, and Bernard E. Tuch; scale-bar data from Matt Russell)

松果腺

松果腺はメラトニンを産生します。メラトニン産生の速度は光周期によって影響されます。視覚経路からのコラテラルが松果体を神経支配します。光周期の中の日中の間には、メラトニンはほとんど生成されません。しかしながら、暗い光周期(夜)の間に、メラトニン産生は増加します。一部の哺乳動物では、メラトニンは、精子、卵母細胞、および生殖器官の産生および成熟を減少させることによって、生殖機能に抑制的な影響を及ぼします。メラトニンは、一酸化窒素や過酸化水素などのフリーラジカルからCNSを保護する、効果的な抗酸化剤です。最後に、メラトニンは生物リズム、特に睡眠-覚醒周期や食習慣などの概日リズムに関与しています。

生殖腺

生殖腺 — 男性の精巣と女性の卵巣 — はステロイドホルモンを産生します。精巣はアンドロゲン(テストステロンが最も顕著なものです)を産生し、これが第二次性徴および精子細胞の産生を可能にします。卵巣はエストラジオールとプロゲステロンを産生し、これらは第二次性徴を引き起こし、出産のために体を準備します。

表37.1

二次内分泌機能を有する器官

主な機能は内分泌ではないものの、内分泌機能も有するような器官がいくつかあります。これらには、心臓、腎臓、腸、胸腺、生殖腺、および脂肪組織が含まれます。

心臓は、心房の壁に特殊な心筋細胞である内分泌細胞を持っています。これらの細胞は、血液量の増加に反応してホルモンの心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)を放出します。血液量が多いと細胞が引き伸ばされ、ホルモンが放出されます。ANPは腎臓に作用してNa⁺の再吸収を減らし、Na⁺と水分を尿として排泄させます。ANPはまた、腎臓によって放出されるレニンおよび副腎皮質によって放出されるアルドステロンの量を減少させ、水分の貯留をさらに妨げます。このようにして、ANPは血液量と血圧の低下を引き起こし、そして血液中のNa⁺の濃度を低下させます。

胃腸管は消化を助けるいくつかのホルモンを産生します。内分泌細胞は、胃と小腸全体の胃腸管の粘膜に位置しています。産生されるホルモンの中には、食物が存在すると分泌されるガストリン、セクレチン、およびコレシストキニンが含まれ、それらのうちのいくつかは膵臓、胆嚢、および肝臓などの他の器官に作用します。それらは胃液の放出を引き起こし、それが胃腸管で食物を分解して、消化するのを助けます。

腎臓に付随する副腎は主要な内分泌腺ですが、腎臓自体も内分泌機能を持っています。レニンは減少した血液量または血圧に応じて放出されます。レニンはレニン-アンジオテンシン-アルドステロン系の一部であり、アルドステロンの放出をもたらします。それからアルドステロンはNa⁺および水分を保持し、血液量を増加させます。腎臓はカルシトリオールも放出し、これはCa²⁺およびリン酸イオンの吸収を助けます。エリスロポエチン(EPO)は、骨髄内で赤血球の形成を引き起こすタンパク質ホルモンです。EPOは低酸素レベルに反応して放出されます。赤血球は酸素の運搬体であるため、産生量の増加は体全体へのより多くの酸素供給をもたらします。筋肉細胞へのより多くの酸素供給によってより大きな持久力が可能になるため、EPOはパフォーマンスを改善するために運動選手によって使用されてきました。赤血球は血液の粘性を増加させるため、人為的にEPOを高レベルにすることは深刻な健康上のリスクを引き起こすことがあります。

胸腺は胸骨の後ろにあります。それは幼児において最も顕著であり、成人期までにサイズが小さくなります。胸腺は、サイモシンと呼ばれるホルモンを産生し、これは免疫反応の発達に寄与します。

脂肪組織は体全体に見られる結合組織です。それは食物摂取に反応してホルモンのレプチンを生産します。レプチンは、食欲減退ニューロンの活動を増加させ、食欲増進ニューロンの活動を減少させて、食後の満腹感を生み出し、それによって食欲に影響を与え、そしてさらなる摂食への衝動を減少させます。レプチンは生殖にも関連しています。GnRHおよび性腺刺激ホルモン合成が起こるためにはレプチンが存在していなければなりません。極端に痩せている女性は思春期に遅れて入るかもしれません。しかしながら、もし脂肪レベルが上昇すれば、より多くのレプチンが産生され、生殖能力が向上するでしょう。

重要用語

末端肥大症:成人におけるGHの過剰産生によって引き起こされる症状

アジソン病:コルチコステロイドの過少分泌によって引き起こされる障害

アデニル酸シクラーゼ:ATPのサイクリックAMPへの変換を触媒する酵素

副腎皮質:コルチコステロイドを産生する副腎の外側部分

副腎:腎臓に付随する内分泌腺

副腎髄質:エピネフリンおよびノルエピネフリンを産生する副腎の内側部分

副腎皮質刺激ホルモン(ACTH):下垂体前葉から放出されるホルモンで、長期ストレス反応時に副腎皮質を刺激してコルチコステロイドを放出させる

アルドステロン:副腎皮質によって産生されるステロイドホルモンで、細胞外液からのNa⁺の再吸収とK⁺の分泌を刺激する

アルファ細胞:ホルモンのグルカゴンを産生する膵島の内分泌細胞

アミノ酸由来ホルモン:アミノ酸に由来するホルモン

アンドロゲン:テストステロンのような、男性の性ホルモン

下垂体前葉:6つのホルモンを産生する下垂体の一部

抗利尿ホルモン(ADH):視床下部によって産生され、下垂体後葉から放出されるホルモンで、腎臓による水分吸収を増加させる

心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP):血液量、血圧、およびNa⁺濃度を低下させるために心臓によって産生されるホルモン

ベータ細胞:ホルモンのインスリンを産生する膵島の内分泌細胞

カルシトニン:甲状腺の傍濾胞細胞によって産生されるホルモンで、血中Ca²⁺濃度を低下させ、骨の成長を促進するように機能する

コロイド:糖タンパク質のサイログロブリンを含む甲状腺内の液体

コルチコステロイド:長期ストレスに反応して副腎皮質によって放出されるホルモン

コルチゾール:ストレスに反応して産生される糖質コルチコイド

クッシング病:糖質コルチコイドの過剰分泌によって引き起こされる障害

尿崩症:ADHの産生不足によって引き起こされる障害

真性糖尿病:低レベルのインスリン活性によって引き起こされる障害

糖尿病誘発効果:真性糖尿病と同様に血糖値を上昇させるGHの効果

下向き調節:ホルモンレベルの上昇に反応したホルモン受容体数の減少

内分泌腺:ホルモンを周囲の間質液(その後、血中に拡散し体内のさまざまな器官や組織に運ばれる)に分泌する腺

エピネフリン:短期ストレスに反応して副腎髄質によって放出されるホルモン

エリスロポエチン(EPO):骨髄における赤血球産生を刺激するために腎臓によって産生されるホルモン

エストロゲン:卵巣によって産生され、第二次性徴を引き出すとともに卵子の成熟を制御する、一群のステロイドホルモン(エストラジオールおよび他のいくつかを含む)

ファーストメッセンジャー:原形質膜のホルモン受容体に結合してシグナル伝達経路を開始させるホルモン

卵胞刺激ホルモン(FSH):配偶子産生を刺激する、下垂体前葉によって産生されるホルモン

Gタンパク質:ホルモンのファーストメッセンジャーにより活性化されてサイクリックAMPの形成を活性化する膜タンパク質

巨人症:子供におけるGHの過剰産生によって引き起こされる症状

グルカゴン:低血糖値に反応して膵臓のアルファ細胞によって産生されるホルモン。血糖値を上げるよう機能する

糖質コルチコイド:グルコース代謝に影響を与えるコルチコステロイド

グルコース新生:アミノ酸からのグルコースの合成

グルコース節約効果:組織に対して、エネルギー源としてグルコースの代わりに脂肪酸を使わせるGHの効果

グリコーゲン分解:グリコーゲンのグルコースへの分解

甲状腺腫:不十分な食事のヨウ素レベルのために引き起こされる甲状腺の肥大

性腺刺激ホルモン:生殖腺を調節するホルモンで、FSHおよびLHを含む

成長ホルモン(GH):下垂体前葉によって産生されるホルモンで、タンパク質合成と体の成長を促進する

成長ホルモン抑制ホルモン(GHIH):視床下部によって産生されるホルモンで、成長ホルモン産生を阻害する。ソマトスタチンとも呼ばれる

成長ホルモン放出ホルモン(GHRH):視床下部によって放出されるホルモンで、GHの放出を引き起こす

ホルモン性刺激:他のホルモンに反応したホルモンの放出

ホルモン受容体:ホルモンに結合する細胞タンパク質

体液性刺激:血液などの細胞外液の変化または血液中のイオン濃度の変化に反応したホルモン放出の制御

高血糖:高い血糖値

甲状腺機能亢進症:甲状腺の過剰活動

低血糖:低い血糖値

下垂体門脈系:視床下部から下垂体前葉にホルモンを運ぶ血管系

甲状腺機能低下症:甲状腺の過少活動

インスリン:高血糖値に反応して膵臓のベータ細胞によって産生されるホルモン。血糖値を下げるよう機能する

インスリン様成長因子(IGF):肝臓によって産生される成長促進タンパク質

細胞内ホルモン受容体:細胞の細胞質内または核内のホルモン受容体

ランゲルハンス島(膵島):膵臓の内分泌細胞

峡部:甲状腺の2つの葉を結ぶ組織塊

レプチン:脂肪組織によって産生されるホルモンで、満腹感を促進し、空腹感を軽減する

脂質由来ホルモン:主にコレステロールに由来するホルモン

ミネラロコルチコイド:イオンと水分の平衡に影響を与えるコルチコステロイド

神経細胞性刺激:神経系による内分泌腺の刺激

ノルエピネフリン:性腺による短期ストレスホルモン産生に反応して副腎髄質によって放出されるホルモン

浸透圧受容器:血液中の電解質濃度を監視する視床下部の受容器

オキシトシン:出産時の子宮収縮および乳腺における乳汁催乳を刺激するために下垂体後葉によって放出されるホルモン

膵臓:胃と小腸の間に位置し、外分泌細胞と内分泌細胞を含む器官

傍濾胞細胞:ホルモンのカルシトニンを産生する甲状腺細胞

副甲状腺:副甲状腺ホルモンを産生する、甲状腺の表面にある腺

副甲状腺ホルモン(PTH):低い血中Ca²⁺レベルに反応して副甲状腺によって産生されるホルモン。血中Ca²⁺レベルを上昇させるよう機能する

ペプチドホルモン:ポリペプチド鎖からなるホルモン

ホスホジエステラーゼ(PDE):cAMPを不活性化させて、ホルモン活性を停止させる酵素

下垂体性小人症:小児におけるGHの過少産生によって引き起こされる症状

下垂体:脳の基底部に位置し、前葉と後葉からなる内分泌腺

下垂体柄(または、漏斗):下垂体と視床下部をつなぐ柄

原形質膜ホルモン受容体:細胞の原形質膜の表面のホルモン受容体

下垂体後葉:視床下部によって産生されるホルモンを放出する脳の伸長部分。それは、漏斗と合わせて神経下垂体とも呼ばれる

プロラクチン(PRL):下垂体前葉によって産生されるホルモンで、乳汁産生を刺激する

プロラクチン抑制ホルモン:視床下部によって産生されるホルモンで、プロラクチンの放出を抑制する

プロラクチン放出ホルモン:視床下部によって産生されるホルモンで、プロラクチンの放出を刺激する

レニン:腎臓の傍糸球体装置によって産生される酵素で、アンジオテンシノーゲンと反応してアルドステロンを放出させる

胸腺:胸骨の後ろに位置し、免疫系の発達に寄与するサイモシンホルモンを産生する腺

サイログロブリン:甲状腺に見られる糖タンパク質で、甲状腺ホルモンに変換される

甲状腺:首に位置する内分泌腺で、甲状腺ホルモンのチロキシンとトリヨードチロニンを産生する

甲状腺刺激ホルモン(TSH):下垂体前葉によって産生されるホルモンで、甲状腺からのT₃およびT₄の放出を制御する

チロキシン(テトラヨードチロニン、T₄):4つのヨウ素を含む甲状腺ホルモンで、基礎代謝率を制御する

トリヨードチロニン(T₃):3つのヨウ素を含む甲状腺ホルモンで、基礎代謝率を制御する

上向き調節:ホルモンレベルの上昇に反応したホルモン受容体数の増加

この章のまとめ

37.1 | ホルモンの種類

ホルモンには、脂質由来ホルモン、アミノ酸由来ホルモン、ペプチドホルモンの3つの基本的な種類があります。脂質由来ホルモンはコレステロールと構造的に類似しており、エストラジオールおよびテストステロンなどのステロイドホルモンを含みます。アミノ酸由来ホルモンは比較的小さな分子で、副腎ホルモンのエピネフリンとノルエピネフリンが含まれます。ペプチドホルモンは、ポリペプチド鎖またはタンパク質であり、そして下垂体ホルモン、抗利尿ホルモン(バソプレシン)、およびオキシトシンを含みます。

37.2 | ホルモンの働き

ホルモンは、標的細胞上の受容体に結合することによって細胞の変化を引き起こします。標的細胞上の受容体の数はホルモン活性に反応して増減することがあります。ホルモンは、細胞内ホルモン受容体を介して直接的に、または原形質膜ホルモン受容体を介して間接的に細胞に影響を及ぼすことができます。

脂質由来(可溶性)ホルモンは、原形質膜を横切って拡散することによって細胞に入り、DNAに結合して遺伝子転写を調節するとともに、一般に細胞の長期構造および機能に影響を与えるようなタンパク質の産生を誘導することによって細胞の活性を変化させます。脂質不溶性ホルモンは、原形質膜表面の受容体に結合し、短期間で細胞に影響を与えるようなさまざまな細胞産物の産生を誘導することによって細胞の活性を変化させるシグナリング経路を開始させます。このホルモンはファーストメッセンジャーと呼ばれ、細胞成分はセカンドメッセンジャーと呼ばれます。Gタンパク質はセカンドメッセンジャー(サイクリックAMP)を活性化し、細胞反応を誘発します。シグナリング経路が進行するにつれて、ホルモン結合に対する反応が増幅されます。ホルモンに対する細胞反応は、タンパク質および酵素の産生ならびに膜透過性の変化を含みます。

37.3 | 身体プロセスの調節

体内の水分レベルは抗利尿ホルモン(ADH)によって制御されており、これは視床下部で産生され、腎臓による水分の再吸収を引き起こします。ADHの産生不足は尿崩症を引き起こすことがあります。腎臓の副腎皮質によって産生されるホルモンであるアルドステロンは、細胞外液からのNa⁺再吸収とその後の拡散による水分再吸収を促進します。レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系はアルドステロンの放出が制御される1つの方法です。

生殖器系は、下垂体によって産生される性腺刺激ホルモンの卵胞刺激ホルモン(FSH)および黄体形成ホルモン(LH)によって制御されています。性腺刺激ホルモンの放出は視床下部ホルモンである性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)によって制御されます。男性においては、FSHは精子細胞の成熟を刺激し、ホルモンのインヒビンによって阻害される一方で、LHはアンドロゲンのテストステロンの産生を刺激します。女性においては、FSHは卵子の成熟を刺激する一方で、LHはエストロゲンとプロゲステロンの産生を刺激します。エストロゲンは卵巣によって産生される一群のステロイドホルモンであり、女性における第二次性徴の発達を引き起こすとともに、卵子の成熟を制御します。女性では、下垂体はまた、出産後の乳汁産生を刺激するプロラクチン、および出産時の子宮収縮および授乳中の乳汁催乳を刺激するオキシトシンを産生します。

インスリンは、血糖値の上昇に反応して膵臓によって産生され、細胞が血糖を利用し、後で使用するために過剰なグルコースを保存することを可能にします。真性糖尿病はインスリン活性の低下によって引き起こされ、高い血糖値、すなわち高血糖を引き起こします。グルカゴンは、低い血糖値に反応して膵臓によって放出され、グリコーゲンのグルコース(体内で使用できます)への分解を促進します。体の基礎代謝率は、甲状腺ホルモンのチロキシン(T₄)とトリヨードチロニン(T₃)によって制御されます。下垂体前葉は甲状腺刺激ホルモン(TSH)を産生し、これが甲状腺からのT₃とT₄の放出を制御します。ヨウ素は甲状腺ホルモンの産生に必要であり、ヨウ素の欠乏は甲状腺腫と呼ばれる症状につながることがあります。

副甲状腺ホルモン(PTH)は、低い血中Ca²⁺レベルに反応して副甲状腺によって産生されます。甲状腺の傍濾胞細胞はカルシトニンを産生し、それは血中Ca²⁺レベルを低下させます。成長ホルモン(GH)は下垂体前葉によって産生され、筋肉と骨の成長速度を制御します。GHの作用はインスリン様成長因子(IGF)によって間接的に媒介されます。短期間のストレスによって、視床下部は副腎髄質にエピネフリンとノルエピネフリン放出を開始させ、それが闘争か逃走か反応を誘発します。長期間のストレスによって、視床下部は下垂体前葉に副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)放出を開始させ、それが副腎皮質からのコルチコステロイド、糖質コルチコイド、ミネラロコルチコイドの放出を引き起こします。

37.4 | ホルモン産生の調節

ホルモンレベルは主として負のフィードバックを通じて制御されます。負のフィードバックでは、ホルモンレベルの上昇はホルモンのさらなる放出を阻害します。ホルモン放出の3つのメカニズムは、体液性刺激、ホルモン性刺激、および神経細胞性刺激です。体液性刺激は、細胞外液レベルまたはイオンレベルの変化に反応するホルモン放出の制御のことを指します。ホルモン性刺激は、他の内分泌腺によって放出されるホルモンに反応してホルモンが放出されることを指します。神経細胞性刺激は、神経刺激に反応してホルモンが放出されることを指します。

37.5 | 内分泌腺

下垂体は脳の基部に位置し、漏斗により視床下部に付着しています。下垂体前葉は、下垂体門脈系によって視床下部からの産物を受け取り、6つのホルモンを産生します。下垂体後葉は脳の延長部分で、視床下部によって産生されるホルモン(抗利尿ホルモンとオキシトシン)を放出します。

甲状腺は首に位置し、峡部によって接続された2つの葉から構成されています。甲状腺はホルモンのチロキシンとトリヨードチロニンを産生する濾胞細胞で構成されています。甲状腺の傍濾胞細胞はカルシトニンを産生します。副甲状腺は甲状腺の後面にあり、副甲状腺ホルモンを産生します。

副腎は腎臓の上に位置しており、腎皮質と腎髄質で構成されています。副腎皮質は副腎の外側部分であり、コルチコステロイド、糖質コルチコイド、およびミネラロコルチコイドを産生します。副腎髄質は副腎の内側部分であり、カテコールアミンのエピネフリンとノルエピネフリンを産生します。

膵臓は胃と小腸の間の腹部にあります。膵臓の内分泌細胞の塊は、グルカゴンを放出するアルファ細胞とインスリンを放出するベータ細胞からなるランゲルハンス島を形成します。

いくつかの器官は、二次的機能として内分泌活性を有していますが、その他に一次的機能を有しています。心臓はホルモンの心房性ナトリウム利尿ペプチドを産生し、それは血液量、血圧、そしてNa⁺濃度を低下させるように機能します。胃腸管は消化を助けるさまざまなホルモンを作り出します。腎臓はレニン、カルシトリオール、エリスロポエチンを産生します。脂肪組織はレプチンを産生し、これは脳内の満腹シグナルを促進します。

ビジュアルコネクション問題

1.図37.5 | 熱ショックタンパク質(HSP)は、誤って折り畳まれたタンパク質を再度折り畳むのを助けるためにそのように命名されています。温度の上昇(「熱ショック」)に反応して、熱ショックタンパク質はNR/HSP複合体から放出されることによって活性化されます。同時に、HSP遺伝子の転写が活性化されます。細胞が、誤って折り畳まれたタンパク質を再度折り畳むのを助けるタンパク質の活性を高めることによって熱ショックに反応するのはなぜだと思いますか?

2.図37.11 | 膵臓腫瘍はグルカゴンの過剰な分泌を引き起こすことがあります。I型糖尿病は、膵臓がインスリンを産生できないことから生じます。これら2つの症状についての次の記述のうち、正しいものはどれですか?
a.膵臓腫瘍とI型糖尿病は血糖値に反対の影響を及ぼす。
b.膵臓腫瘍とI型糖尿病はどちらも高血糖を引き起こす。
c.膵臓腫瘍とI型糖尿病はどちらも低血糖を引き起こす。
d.膵臓腫瘍およびI型糖尿病の両方によって、細胞がグルコースを取り込むことができなくなる。

3.図37.14 | 甲状腺機能亢進症は、甲状腺が過剰に活発になる状態です。甲状腺機能低下症は、甲状腺が過少に機能する状態です。次の2人の患者が罹患している可能性が最も高い状態はどちらですか?
患者Aは、体重増加、寒さに対する敏感さ、低い心拍数、および疲労を含む症状を呈している。
患者Bは、体重減少、大量の発汗、心拍数の上昇、および睡眠困難を含む症状を呈している。

レビュー問題

4.新しく発見されたあるホルモンは、一緒に結合された4つのアミノ酸を含んでいます。このホルモンはどの化学物質クラスに分類されますか?
a.脂質由来ホルモン
b.アミノ酸由来ホルモン
c.ペプチドホルモン
d.糖タンパク質

5.どの分類のホルモンが原形質膜を通過して拡散することができますか?
a.脂質由来ホルモン
b.アミノ酸由来ホルモン
c.ペプチドホルモン
d.糖タンパク質ホルモン

6.ステロイドはなぜ原形質膜を横切って拡散することができるのでしょうか?
a.それらの輸送タンパク質が、それらを膜を通して移動させるから。
b.それらは両親媒性であり、それらがリン脂質全体と相互作用することを可能にするから。
c.細胞は、ホルモンが細胞内へと濃度勾配を下降することを可能にするチャネルを発現するから。
d.それらは無極性分子であるから。

7.原形質膜受容体に結合してそれを遮断する新しい拮抗分子が発見されました。この拮抗薬はステロイドホルモンのテストステロンにどのような影響を与えるでしょうか?
a.それは、テストステロンがその受容体に結合するのを阻止するだろう。
b.それは、テストステロンがcAMPシグナリングを活性化するのを阻止するだろう。
c.それは、テストステロンを介したシグナリングを増加させるだろう。
d.それは、テストステロンを介したシグナリングには影響しないだろう。

8.cAMP阻害剤はペプチドホルモンを介したシグナリング経路にどのような影響を与えるでしょうか?
a.それは、ホルモンがその受容体に結合するのを妨げるだろう。
b.それは、Gタンパク質の活性化を妨げるだろう。
c.それは、アデニル酸シクラーゼの活性化を妨げるだろう。
d.それは、プロテインキナーゼの活性化を妨げるだろう。

9.インスリンがその受容体に結合すると、複合体は細胞内に取り込まれます。これはホルモンのシグナリングに反応した______の例です。
a.cAMP活性化
b.細胞内レセプターの生成
c.ホルモン反応要素の活性化
d.受容体の下向き調節

10.アルコール飲料を飲むと尿の量が増加します。これはアルコールが________ために起こります。
a. ADHの放出を阻害する
b. ADHの放出を刺激する
c. TSHの放出を阻害する
d. TSHの放出を刺激する

11.下垂体前葉からのFSHおよびLHの放出は、________によって刺激されます。
a.TSH
b.GnRH
c.T₃
d.PTH

12.膵臓のベータ細胞によってどのホルモンが産生されますか?
a.T₃
b.グルカゴン
c.インスリン
d.T₄

13.血中カルシウム濃度が低いと、PTHは________を刺激します。
a.腎臓からのカルシウムの排出
b.腸からのカルシウムの排出
c.骨芽細胞
d.破骨細胞

14.アンドロゲン受容体の機能を完全に除去するような突然変異は、XY染色体を持つ人間の表現型の発達に対してどのように影響を与えるでしょうか?
a.患者は、表現型的に女性に見えるだろう。
b.患者は、表現型的に第二次性徴が未発達な男性に見えるだろう。
c.患者は、表現型的に男性に見えるが精子を作り出すことはできないだろう。
d.患者は、男性と女性の両方の第二次性徴を発現するだろう。

15.血糖値の上昇は膵臓からのインスリンの放出を引き起こします。ホルモン産生のこのメカニズムは________によって刺激されます。
a.体液性刺激
b.ホルモン性刺激
c.神経細胞性刺激
d.負の刺激

16.もし視床下部からのシグナリングおよびホルモン放出が遮断された場合、ホルモンの刺激のどのメカニズムが影響を受けるでしょうか?
a.体液性刺激およびホルモン性刺激
b.ホルモン性刺激および神経細胞性刺激
c.神経細胞性刺激および体液性刺激
d.ホルモン性刺激および負の刺激

17.ある科学者は、膵臓のホルモン産生は神経細胞性刺激によって制御されていると仮定しています。どの観察がこの仮説を支持するでしょうか?
a.インスリンが血糖値の上昇なしに突然のストレスに反応して産生される。
b.インスリンがグルカゴンレベルの上昇に反応して産生される。
c.ベータ細胞がエピネフリン受容体を発現する。
d.インスリンが脳内の血糖値の上昇に反応して産生される。

18.どの内分泌腺が腎臓に付随していますか?
a.甲状腺
b.下垂体
c.副腎
d.生殖腺

19.次のホルモンのうち、下垂体前葉によって産生されないものはどれですか?
a.オキシトシン
b.成長ホルモン
c.プロラクチン
d.甲状腺刺激ホルモン

20.最近の研究は、青色の光への曝露が人間の概日リズムに影響を及ぼすことがあることを示唆しています。これは、青い光が_____の機能を混乱させることを示唆しています。
a.副腎
b.下垂体
c.松果腺
d.甲状腺

クリティカルシンキング問題

21.人体にはさまざまなホルモンがありますが、それらはその化学構造に基づいて3つのクラスに分類することができます。これらのクラスとは何でしょうか?そして、それらを区別する1つの要因は何でしょうか?

22.インスリンはどこに貯蔵されていますか?そして、それはなぜ放出されるのでしょうか?

23.グルカゴンは、身体が血流中にグルコースを放出するように合図するペプチドホルモンです。グルカゴンはどのようにして体全体の恒常性の維持に貢献するでしょうか?他のどのホルモンが血糖サイクルの調節に関与していますか?

24.ホルモン受容体の2つの重要な機能を挙げてください。

25.ホルモンはどのように変化を媒介しますか?

26.ステロイドホルモンのシグナリングにおいて、なぜcAMPを介したシグナル増幅が必要とされないのでしょうか?その代わりに、ステロイドのシグナリングがどのように増幅されるかを記述してください。

27.下垂体前葉によって産生される1つのホルモンと、下垂体後葉によって産生される1つのホルモンを挙げて、機能を記述してください。

28.成長ホルモン(GH)の直接的な作用を1つ記述してください。

29.最近、研究者らは、ストレスを受けている人々は、ストレスを受けていない人々よりも風邪にかかりやすいことを示しました。感染した患者はどのようなストレスを経験していなければならないでしょうか?そして、なぜそのストレスは彼らをウイルスに対してより敏感にするのでしょうか?

30.ホルモンの産生と放出は主にどのように制御されていますか?

31.ホルモン性刺激と体液性刺激を比較対照してください。

32.経口避妊薬は、合成プロゲスチンを毎日女性に届けることによって機能します。なぜこれが効果的な妊娠の制御方法であるかを記述してください。

33.アルドステロンは何を調節し、どのように刺激されますか?

34.副腎髄質には、2つのタイプの分泌細胞があります。それらは何ですか?また、それらの機能は何ですか?

35.下垂体後葉の損傷は、ADHおよび抑制ホルモンの産生および放出にどのように影響するでしょうか?

解答のヒント

第37章

1 図37.5 タンパク質はより高い温度で展開、または変性します。3 図37.14 患者Aは代謝の低下に関連した症状があり、甲状腺機能低下症に罹患している可能性があります。患者Bは代謝の増加に関連した症状があり、甲状腺機能亢進症に罹患している可能性があります。4 C 6 D 8 D 10 A 12 C 14 A 16 B 18 C 20 C 21 人体にはさまざまなホルモンがありますが、それらはその化学構造に基づいて3つのクラスに分類することができます:脂質由来ホルモン、アミノ酸由来ホルモン、およびペプチドホルモンです。脂質由来ホルモンの重要な際立った特徴の1つは、それらが原形質膜を横切って拡散することができるのに対し、アミノ酸由来ホルモンおよびペプチドホルモンはそうすることができないことです。23 グルカゴンは、血糖を健康なレベルに維持するために、インスリン(血流からグルコースを取り込むように細胞を刺激するペプチドホルモン)とは反対に作用します。血糖値の低下に反応してグルカゴンが血中に放出されると、肝臓はその貯蔵グリコーゲンを異化してグルコースを放出します。もしグルカゴンが適切に機能しない場合、インスリンのシグナリングが細胞による血液からの取り込みを促進するために、血糖は低くなりすぎてしまうでしょう。25 標的細胞上のタンパク質受容体の位置およびホルモンの化学構造に応じて、ホルモンは、細胞内受容体に結合して遺伝子転写を調節することにより直接的に変化を媒介するか、あるいは細胞表面受容体に結合してシグナリング経路を刺激することにより間接的に変化を媒介することができます。27 FSHおよびLHの産生に加えて、下垂体前葉は女性においてホルモンのプロラクチン(PRL)も産生します。プロラクチンは、出産後の乳腺による乳汁の産生を促進します。プロラクチンのレベルは、視床下部ホルモンであるプロラクチン放出ホルモン(PRH)とプロラクチン抑制ホルモン(PIH)(現在はドーパミンであることが知られています)とによって調節されています。PRHはプロラクチンの放出を刺激し、PIHはそれを阻害します。下垂体後葉はホルモンのオキシトシンを放出し、それは出産時の収縮を刺激します。子宮平滑筋は、子宮内のオキシトシン受容体の数がピークに達する妊娠後期まではオキシトシンに対してあまり敏感ではありません。子宮および膣の組織の伸張によって、出産時のオキシトシン放出が刺激されます。出産が完了するまでオキシトシンの血中濃度が上昇するにつれて、収縮の強度は増加します。29 風邪をひいたストレスを受けている患者は、慢性的(長期的)なストレスを受けていなければなりません。長期的なストレスは、コルチゾールなどの糖質コルチコイドの産生をもたらします。これらのホルモンは免疫系の機能を阻害し、それによって人々は感染症にかかりやすくなります。31 体液性という用語は、体液(血液などの体の液体を指します)という用語に由来します。体液性刺激は、血液のような細胞外液または血液中のイオン濃度の変化に応じてホルモン放出を制御することを指します。たとえば、血糖値の上昇は膵臓によるインスリンの放出を引き起こします。インスリンは血糖値を低下させ、それは負のフィードバックループによって膵臓がインスリンの産生を停止するように合図します。ホルモン性刺激は、他のホルモンに反応したホルモンの放出を指します。多くの内分泌腺は、他の内分泌器官によって放出されるホルモンによって刺激されると、ホルモンを放出します。たとえば、視床下部は下垂体前葉を刺激するホルモンを産生します。下垂体前葉は、他の内分泌腺によるホルモン産生を調節するホルモンを放出します。たとえば、下垂体前葉は甲状腺刺激ホルモンを放出し、それは甲状腺を刺激してホルモンのT₃およびT₄を産生させます。T₃およびT₄の血中濃度が上昇するにつれて、それらは、負のフィードバックループによって下垂体および視床下部の両方を阻害します。33 主なミネラロコルチコイドはアルドステロンで、それは尿、汗、唾液中のイオン濃度を調節します。副腎皮質からのアルドステロンの放出は、ナトリウムイオンの血中濃度、血液量、または血圧の低下、または血中カリウム濃度の上昇によって刺激されます。35 下垂体後葉の損傷は、体内へのADHとオキシトシンの放出を妨げるでしょう。しかしながら、視床下部のADH産生能力は影響を受けないでしょう。視床下部はまた、依然として下垂体前葉を調節するために抑制ホルモンを産生および放出することができるでしょう。

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