生物学 第2版 — 第46章 生態系 —

Japanese translation of “Biology 2e”

Better Late Than Never
73 min readOct 24, 2019

OpenStax のサイトで公開されている教科書“ Biology 2e”の翻訳です。こちらのページから各章へ移動できます。

46 | 生態系

図46.1 | 米国南西部では、雨天により松の実の生産が増加し、シロアシネズミの個体数が激増します。シロアシネズミは、人間に呼吸器疾患を引き起こし、致死率が高いシンノンブルと呼ばれるウイルス(ハンタウイルスの1つ)を持っていることがあります。1992年から1993年にかけて、エルニーニョの雨天によりシンノンブルが流行しました。この病気と天候の関係に気づいていたナバホの治療師は、この流行を予測していました。(credit “highway”: modification of work by Phillip Capper; credit “mouse”: modification of work by USFWS)

この章の概要

46.1:生態系の生態学
46.2:生態系を通じたエネルギーの流れ
46.3:生物地球化学的循環

はじめに

1993年に、まれな肺疾患が米国南西部の住民を襲ったときに、生態系の動態の興味深い例が生じました。この病気は憂慮すべき死亡率を示し、初期患者の半数以上が死亡しました。初期患者の多くはアメリカ先住民でした。これらの以前は健康だった若い成人は、完全な呼吸不全で死亡しました。この疾患は未知のものであり、潜在的な流行の管理を担当する米国政府機関である疾病管理センター(CDC)が調査のために呼び出されました。科学者たちは、この地域に住んでおり、降雨とネズミの個体群との間の関係に気づいていたナバホの治療師と話をすることを知っていれば、この病気について学ぶことができていたでしょう。

CDCの調査者によって数週間以内に特定された病気の原因は、シンノンブル(「名無し」のウイルス)として知られているハンタウイルスでした。伝統的なナバホ医療からの洞察により、科学者は病気を迅速に特徴付け、その広がりを防ぐための健康対策を効果的に実施することができました。この例は、生態系の複雑さと、環境の変化に対して生態系が反応する方法とを理解することの重要性を示しています。

46.1 | 生態系の生態学

この節が終わるまでに、あなたは次のことができるようになります:
•基本的な生態系のタイプを記述する
•生態学者が生態系の構造と動態を研究するために使用する方法を説明する
•生態系モデリングのさまざまな方法を特定する
•食物連鎖と食物網を区別し、それぞれの重要性を認識する

ある生態系における生活とは、しばしば限られた資源をめぐる競争であり、これは自然選択の理論の1つの特徴です。生物群集(特定の生息地内のすべての生物)内の競争は、種内および異なる種間のどちらでも観察されます。生物が競合する資源には、有機材料、日光、および無機栄養素が含まれ、これらは生命プロセスにエネルギーを提供するとともに生物の物理的構造を構成するための物質を提供します。生物群集の動態に影響するその他の重要な要因は、その物理的および地理的環境の構成要素です:すなわち、生息地の緯度、降雨量、地形(標高)、利用可能な種です。これらはすべて、特定の地域に存在できる生物を決定する重要な環境変数です。

生態系とは、生き物の生物群集、およびそれらと非生物的(生きていない)環境との相互作用のことです。生態系は、多くの海の岩場の近くにある潮溜まりのように小さいこともあれば、ブラジルのアマゾン熱帯雨林のように大きいこともあります(図46.2)。

図46.2 | (a)メイン州のマチニカス島の潮溜まりの生態系は小さな生態系であり、(b)ブラジルのアマゾン熱帯雨林は大きな生態系です。(credit a: modification of work by “takomabibelot”/Flickr; credit b: modification of work by Ivan Mlinaric)

一般的な環境に基づいた生態系には、淡水、海洋、陸上の3つの広範なカテゴリーがあります。これらの広範なカテゴリーの中には、存在する生物と環境的な生息地のタイプに基づいた個々の生態系のタイプがあります。

海洋生態系は最も一般的なものであり、地球の表面の70%以上を占め、3つの基本的なタイプで構成されています:浅海、深海水、深海表面(深海の底の領域)です。浅海生態系には非常に生物が多様なサンゴ礁生態系が含まれており、深海表面生態系はそれを支える多数のプランクトンとオキアミ(小さな甲殻類)で知られています。植物プランクトンは地球上のすべての光合成の40%を実行するため、これらの2つの環境は世界中の好気呼吸生物にとって特に重要です。他の2つほど多様ではありませんが、深海生態系には多種多様な海洋生物が含まれています。そのような生態系は、光が水を透過できない海の底にさえ存在します。

淡水生態系は最もまれなもので、地球の表面のわずか1.8%で生じています。湖、川、小川、湧水がこれらの系を構成しています。それらは非常に多様で、さまざまな魚類、両生類、爬虫類、昆虫、植物プランクトン、菌類、および細菌をサポートしています。

陸上生態系も多様性で知られており、熱帯雨林、サバンナ、砂漠、針葉樹林、落葉樹林、ツンドラなどの生物群系と呼ばれる大きなカテゴリーに分類されます。これらの生態系をわずかな生物群系のカテゴリーにグループ化してしまうと、それらの中の個々の生態系の大きな多様性がわかりにくくなります。たとえば、砂漠の植生には大きなバリエーションがあります:西アフリカ沖の島であるボア・ビスタ島の荒涼とした岩の多い砂漠と比較すると、米国のソノラ砂漠にはベンケイチュウや他の植物が比較的豊富にあります(図46.3)。

図46.3 | すべての生態系と同様に、砂漠の生態系は大きく異なることがあります。(a)アリゾナ州のサワロ国立公園の砂漠には豊富な植物が生息していますが、(b)アフリカのカーボベルデのボア・ビスタ島の岩だらけの砂漠には植物が生息していません。(credit a: modification of work by Jay Galvin; credit b: modification of work by Ingo Wölbern)

生態系は複雑で、多くの相互作用する部分があります。それらは日常的にさまざまな撹乱、すなわちその組成に影響を与える環境の変化にさらされています。それは、降雨や温度といった年ごとの変動、および数年がかかるような植物の成長といったより遅いプロセスです。これらの撹乱の多くは、自然のプロセスに起因しています。たとえば、稲妻が森林火災を引き起こし、森林生態系の一部を破壊すると、地面にはそのうちに草が生え、次に茂みや低木が生え、そして後に成熟した樹木が成長し、森林をかつての状態に戻します。人間の活動によって引き起こされる環境の撹乱の影響は、自然のプロセスによってもたらされる変化と同じくらい重要です。人間の農業の実践、大気汚染、酸性雨、地球規模の森林伐採、魚の乱獲、富栄養化、油の流出、陸上および海洋への廃棄物の投棄はすべて、自然保護主義者にとっての懸念事項です。

平衡とは、すべての生物がその環境と、そしてお互いの生物同士とバランスを保っているような生態系の定常状態です。生態学では、生態系の変化を測定するために、抵抗力(レジスタンス)と回復力(レジリエンス)という2つのパラメーターが使用されます。抵抗力とは、撹乱にもかかわらず生態系が平衡を保つ能力のことです。回復力とは、生態系が撹乱された後に平衡を回復する速度のことです。人間への影響を考慮するときには、生態系の抵抗力と回復力は特に重要です。生態系の性質は、その回復力を完全に失うほどに変化する場合があります。このプロセスは、生態系の完全な破壊または不可逆的な変化につながることがあります。

食物連鎖と食物網

「食物連鎖」という用語は、時には人間の社会的状況を表すために隠喩的に使用されることもあります。成功しているとみなされる個人は食物連鎖の最上位にいると見られ、自身の利益のために他のすべての者を消費する一方で、成功していない人は最下位にあると見られます。

食物連鎖の科学的理解は、日常での使用法よりも正確なものです。生態学では、食物連鎖とは、生物の線形の配列であり、それを通じて栄養素とエネルギーが受け渡されます。一次生産者、一次消費者、および高次の消費者は、生態系の構造と動態を記述するために使用されます。この連鎖には単一の経路があります。食物連鎖のそれぞれの生物は、栄養段階と呼ばれるものを占有します。生産者または消費者としての役割に応じて、種または種のグループはさまざまな栄養段階に割り当てられます。

多くの生態系では、食物連鎖の底は光合成生物(植物および/または植物プランクトン)で構成されており、それらは一次生産者と呼ばれています。一次生産者を消費する生物は草食動物であり、これは一次消費者です。二次消費者は通常、一次消費者を食べる肉食動物です。三次消費者は、他の肉食動物を食べる肉食動物です。より高次の消費者は、ひとつ低い栄養段階のものを食べ、これと同じことが食物連鎖の最上位の生物である頂点消費者まで続きます。図46.4に示されるオンタリオ湖の食物連鎖では、マスノスケがこの食物連鎖の頂点にいる頂点消費者です。

図46.4 | これらは、米国とカナダの国境にあるオンタリオ湖の食物連鎖の栄養段階です。エネルギーと栄養素は、食物連鎖の一番下にある光合成性緑藻類から、頂点のマスノスケまで流れます。

食物連鎖の長さを制限する主な要因の1つはエネルギーです。エネルギーは、熱力学の第二法則により、それぞれの栄養段階の間で熱として失われます。したがって、限られた数の栄養エネルギーの移動後には、食物連鎖の中に残っているエネルギーの量は、より高い栄養段階で存続可能な個体群をサポートするのに十分ではないかもしれません。

栄養段階の間のエネルギー損失は、1940年代のフロリダ州シルバースプリングスの生態系におけるハワード・T・オダムの先駆的な研究によって示されています(図46.5)。一次生産者は20819kcal/m²/年(1平方メートルあたり年間あたりキロカロリー)を生成し、一次消費者は3368kcal/m²/年を生成し、二次消費者は383kcal/m²/年を生成し、三次消費者は21kcal/m²/年のみを生成します。したがって、この生態系では、もう1つの段階の消費者のために残っているエネルギーはほとんどありません。

図46.5 | フロリダ州シルバースプリングスの生態系における栄養段階の相対エネルギーが示されています。栄養段階ごとに利用できるエネルギーが少なくなり、次の段階でサポートされる生物が少なくなります。

ほとんどの生態系を正確に記述するために食物連鎖を使用する場合、1つの問題があります。たとえすべての生物が適切な栄養段階に分類されているときであっても、これらの生物のいくつかは複数の栄養段階からの種を食べることができます。同様に、これらの生物のいくつかは、複数の栄養段階の種によって食べられることがあります。言い換えれば、生態系の線形モデルである食物連鎖は、生態系の構造を完全に記述しているわけではありません。全体論的なモデル(異なる種の間のすべての相互作用と、それら同士の、そして環境との相互接続された複雑な関係とを説明します)とは、生態系のより正確で記述的なモデルのことです。食物網は、生態系の構造と動態を記述するために使用される、一次生産者、一次消費者、および高次消費者の全体論的で非線形の網の目のグラフィック表現です(図46.6)。

図46.6 | この食物網は、オンタリオ湖の生態系の複数の栄養段階にわたる生物間の相互作用を示しています。一次生産者は緑色で、一次消費者はオレンジ色で、二次消費者は青色で、三次(頂点)消費者は紫色で外枠が描かれています。矢印は、消費される生物からそれを消費する生物を指しています。いくつかの線が複数の栄養段階を指していることに注意してください。たとえば、オポッサムシュリンプは一次生産者と一次消費者の両方を食べます。(credit: NOAA, GLERL)

これら2つのタイプの生態系の構造的モデルを比較すると、両方の強みが示されます。食物連鎖は、分析モデリングに対してより柔軟性があり、辿りやすく、実験しやすい一方で、食物網モデルは生態系の構造と動態をより正確に表し、データがシミュレーションモデリングの入力として直接使用できます。

学習へのリンク

このオンラインインタラクティブシミュレーター(http://openstaxcollege.org/l/food_web)にアクセスして、食物網の機能を調べてください。[Interactive Labs]ボックスの[Food Web]で、[Step1]をクリックしてください。最初に指示を読んでから、追加の指示のために[Step2]をクリックします。シミュレーションを作成する準備ができたら、[Interactive Labs]ボックスの右上隅にある[OPEN SIMULATOR]をクリックしてください。

2つの一般的なタイプの食物網が、単一の生態系内で相互作用していることがしばしば示されます。生食食物網(図46.6のオンタリオ湖の食物網など)は、その基部に植物または他の光合成生物を持ち、その後に草食動物とさまざまな肉食動物が続きます。腐食食物網は、分解者または腐食動物と呼ばれる腐敗する有機物(死んだ生物)を食べる生物の基部でもって構成されています。これらの生物は通常、細菌または菌類であり、それら自身が他の生物によって消費される際に、有機物を生態系の生物部分へとリサイクルします。すべての生態系は死んだ生物からの材料をリサイクルする方法を必要とするため、ほとんどの生食食物網には関連する腐食食物網があります。たとえば、牧草地の生態系では、植物はさまざまな生物(一次消費者、および他の段階の消費者)の生食食物網をサポートすると同時に、死んだ植物や動物を食べる細菌、菌類、および腐食性無脊椎動物の腐食食物網をサポートします。

進化へのつながり

イトヨ

環境の変化が生態系内の種の進化に大きな役割を果たすことは、自然選択の理論によって十分に確立されています。しかしながら、生態系内の種の進化が生態系の環境をどのように変化させるかについてはほとんど知られていません。2009年、アイダホ大学のルーク・ハーモン博士は、生物の亜種への進化がその生態系の環境に直接影響を与えることができることを初めて示した論文を発表しました。[1]

[1] Nature (Vol. 458, April 1, 2009)

イトヨ(Gasterosteus aculeatus)は、約1万年前に淡水湖に住めるように海水魚から進化した淡水魚であり、約1万年前というのは進化的な時間においては最近の出来事だと考えられています(図46.7)。過去1万年の間に、これらの淡水魚は異なる湖で互いに隔離されるようになりました。どの湖の個体群を調査したかに応じて、これらのトゲウオは1種のままであるか、2種に進化したかのいずれかであることが判明しました。種の多様化は、採餌のために池の異なる領域(マイクロニッチと呼ばれます)を使用することによって可能になりました。

ハーモン博士と彼のチームは、250ガロンのタンクに人工池のマイクロコズムを作り、魚を支えるための動物プランクトンや他の無脊椎動物の供給源として淡水池の泥を追加しました。さまざまな実験用タンクで、単一種の湖または2つの種の湖のいずれかから1種のトゲウオを導入しました。

時間が経つにつれて、チームは、一部のタンクでは藻類ブルームが起こり、他のタンクではブルームが起こらないことを観察しました。これは科学者を困惑させ、彼らは、その水の溶存有機炭素(DOC)を測定することにしました。溶存有機炭素とは、大部分が腐敗した有機物の大きな分子で構成され、池の水にわずかに茶色がかった色を与えるものです。すると、2つの種の魚を含むタンクからの水には、単一種の魚を含むタンクからの水よりも大きなDOC粒子が含まれている(したがって水がより暗くなっている)ことが分かりました。DOCのこの増加により、日光が遮断され、藻類ブルームが防がれました。逆に、単一種のタンクからの水には、より小さなDOC粒子が含まれていたため、より多くの日光が浸透して藻類ブルームを促進していました。

この環境の変化は、それぞれの湖のタイプのトゲウオ種の異なる摂食習慣によるものであり、これらの生態系の他の種、特に他の光合成生物の生存におそらく大きな影響を与えます。したがって、この研究は、少なくともこれらの生態系では、環境と個体群の進化とが相互作用を持ち、それは現在のシミュレーションモデルに要因として組み込まれる可能性があることを示しています。

図46.7 | イトヨは、海水魚から淡水魚へと進化しました。(credit: Barrett Paul, USFWS)

生態系の動態の研究:生態系の実験とモデリング

環境の変化(撹乱)または内部の力によって引き起こされる生態系の構造の変化についての研究は、生態系の動態と呼ばれます。生態系は、さまざまな研究の方法論を用いて特徴付けられます。生態学者の中には、統制された実験系を使用して生態系を研究する者もいれば、自然の状態の生態系全体を研究する者もおり、両方のアプローチを使用する者もいます。

全体論的な生態系モデルは、生態系全体の構成、相互作用、および動態を定量化しようと試みます。それは、自然な状態の生態系を最もよく表すものです。食物網は、全体論的な生態系モデルの一例です。しかしながら、このタイプの研究は時間と費用、および大規模な自然の生態系で実験を行うことが現実的でも倫理的でもないという事実によって制限されています。特にアマゾンの熱帯雨林などの大規模な生息地を研究する場合、生態系のすべての異なる種とその生息地の動態を定量化することは困難です。

これらの理由から、科学者は、より統制された条件下で生態系を研究しています。実験系には通常、メソコズムと呼ばれる実験に使用できる自然生態系の一部を分割したものか、またはマイクロコズムと呼ばれる屋内または屋外の実験室環境の中で生態系を完全に再現することが含まれます。これらのアプローチの主な制限は、個々の生物を自然の生態系から除去したり、分割によって自然の生態系を変更したりすると、生態系の動態が変わる可能性があることです。これらの変化は、しばしば、種の数と多様性の違い、および自然の生息地の分割(メソコズム)または再作成(マイクロコズム)によって引き起こされる環境の変化によるものです。したがって、これらのタイプの実験は、収集元の生態系で生じるであろう変化を完全に予測するものではありません。

これらのアプローチには両方とも限界があるため、一部の生態学者は、これらの実験系からの結果は、生態系の構造、機能、および動態について最もよく表すデータを取得するために、全体論的な生態系研究と組み合わせてのみ使用されるべきだと示唆しています。

科学者は、これらの実験的研究によって生成されたデータを使用して、生態系の構造と動態を実証する生態系モデルを開発します。彼らは、研究と生態系管理において、概念モデル、分析モデル、シミュレーションモデルという3つの基本的なタイプの生態系モデリングを使用しています。概念モデルは、生態系の生きている構成要素と生きていない構成要素という異なる区画の相互作用を示すフローチャートで構成される生態系モデルです。概念モデルは、生態系の構造と動態を記述し、環境の撹乱が生態系にどのように影響するかを示します。しかしながら、これらの撹乱の影響を予測する能力は限られています。対照的に、分析モデルとシミュレーションモデルは、正確さについては多少の制限はありますが、直接的な実験なしで潜在的な環境変化の影響を実際に予測することができるように生態系を記述する数学的方法です。分析モデルは、単純な数式を使用して作成された生態系モデルであり、生態系の構造と動態に対する環境の撹乱の影響を予測します。シミュレーションモデルは、複雑なコンピュータアルゴリズムを使用して作成された生態系モデルであり、生態系を全体論的にモデル化するとともに、生態系の構造と動態に対する環境の撹乱の影響を予測します。理想的には、これらのモデルは、生態系のどの要素が撹乱に対して特に敏感であるかを判断するのに十分なほど正確なものであり、生態系の健全さの実際的な維持において生態系管理者(保全生態学者や漁業生物学者など)への指針として役立ちます。

概念モデル

概念モデルは、生態系の構造と動態を記述し、生物群集内のさまざまな生物の間の関係や、それらと環境との関係を示すのに役立ちます。概念モデルは通常、フローチャートとして図示されます。生物とその資源は特定の区画にグループ化され、矢印はそれらの間のエネルギーや栄養素の関係と移動を示します。したがって、これらの図は区画モデルと呼ばれることもあります。

無機栄養素の循環をモデル化するために、有機栄養素と無機栄養素は、生物学的に利用可能なもの(生体高分子に組み込まれる準備ができているもの)とそうでないものに細分されます。たとえば、石炭の堆積物に近い陸上生態系であっても、この生態系の植物にとって利用可能な炭素は、短期的には二酸化炭素であって、炭素が豊富な石炭自体からではありません。しかしながら、長期的には、石炭を消化できる微生物は石炭の炭素を取り込むか、天然ガス(メタン、CH₄)として放出し、この利用できない有機源を利用可能なものに変えます。この変換は、人間による化石燃料の燃焼(大量の二酸化炭素を大気中に放出します)によって大幅に加速されます。これは、産業時代における大気中の二酸化炭素レベルの上昇の主要な要因であると考えられています。化石燃料の燃焼から放出される二酸化炭素は、光合成生物が使用できるよりも速く作り出されています。このプロセスは、世界的な森林伐採による光合成性の樹木の減少によって強化されています。ほとんどの科学者は、大気中の二酸化炭素がグローバルな気候変動の主な原因であることに同意しています。

概念モデルは、特定の生態系を通じたエネルギーの流れを示すためにも使用されます。図46.8は、ハワード・T・オダムによる20世紀半ばのフロリダ州シルバースプリングスの全体論的な生態系に関する古典的な研究に基づいています。[2]この研究は、さまざまな生態系の区画の間のエネルギー含有量と移動を示しています。

[2] Howard T. Odum, “Trophic Structure and Productivity of Silver Springs, Florida,” Ecological Monographs 27, no. 1 (1957): 47–112.

ビジュアルコネクション

図46.8 | この概念モデルは、フロリダ州シルバースプリングスのある泉の生態系を通じたエネルギーの流れを示しています。栄養段階が増加するたびにエネルギーが減少していることに注意してください。

一次生産者の総生産性の値が、熱および呼吸の総量の値と同じ(20810kcal/m²/年)なのはなぜだと思いますか?

分析モデルとシミュレーションモデル

概念モデルの主な制限は、生態系の種および/または環境の変化の結果を予測できないことです。生態系は動的な存在であり、自然の力および/または人間の活動によって引き起こされるさまざまな非生物的および生物的撹乱の影響を受けます。初期の平衡状態から変化した生態系は、しばしばこうした撹乱から回復し、平衡状態に戻ります。ほとんどの生態系は周期的な撹乱を受けやすく、しばしば変化の状態にあるため、それらは通常は平衡状態に向かっているか、または平衡状態から遠ざかりつつあります。生態系のさまざまな要素の間には、これらの平衡状態の多くが存在し、それらは生態系全体に影響を及ぼします。さらに、人間は生態系の種の内容と生息地を大幅かつ急速に変更できる能力があるため、生態系がこれらの変化にどのように反応するかを理解できる予測モデルの必要性がより重要になります。

分析モデルでは、食物連鎖などの生態系の単純な線形要素を使用することが多く、数学的に複雑であることが知られています。したがって、かなりの数学的知識と専門知識が必要です。分析モデルは大きな潜在能力を持っていますが、それらは複雑な生態系を単純化してしまうために精度が制限されると考えられています。コンピュータプログラムを使用するシミュレーションモデルは、生態系構造の複雑さをより適切に処理できます。

シミュレーションモデリングの最近の発展では、スーパーコンピュータを使用して個体ベースのシミュレーションを作成および実行します。これは、個々の生物の行動とその生態系全体への影響を考慮しています。これらのシミュレーションは、撹乱に対する生態系の複雑な反応を最も正確に予測するものと考えられています。

学習へのリンク

ダーウィン・プロジェクト(http://openstaxcollege.org/l/Darwin_project)にアクセスして、さまざまな生態系モデルをご覧ください。

46.2 | 生態系を通じたエネルギーの流れ

この節が終わるまでに、あなたは次のことができるようになります:
•生物が食物網および関連する食物連鎖でエネルギーを獲得する方法を記述する
•栄養段階の間のエネルギー伝達の効率が生態系の構造と動態にどのように影響するかを説明する
•栄養段階と、それらをモデル化するためにどのようにして生態学的ピラミッドが使用されるかを議論する

すべての生物は何らかの形でエネルギーを必要とします。エネルギーは、ほとんどの複雑な代謝経路、特に小さな化合物から大きな分子を構築する役割を担うものにおいて(しばしばアデノシン三リン酸(ATP)の形態で)必要とされ、生命そのものがエネルギーによって駆動されるプロセスです。生物は、一定のエネルギー入力なしでは、モノマーサブユニットから高分子(タンパク質、脂質、核酸、複合炭水化物)を組み立てることができません。

生物がどのようにしてエネルギーを獲得し、そのエネルギーが食物網とそれを構成する食物連鎖を通じてどのようにしてある生物から別の生物に渡されるかを理解することが重要です。食物網は、どのようにしてエネルギーが方向性をもって生態系を通じて流れるかを示しており、そこには生物がいかに効率的にそれを獲得し、使用し、食物網の他の生物が使用するためにエネルギーがどれだけ残っているかなどが含まれています。

生物はいかにして食物網の中でエネルギーを獲得するか

エネルギーは、生物によって3つの方法で獲得されます:光合成、化学合成、および従属栄養生物による他の生物または以前に生きていた生物の摂食と消化です。

光合成生物および化学合成生物はどちらも、独立栄養生物として知られるカテゴリーに分類されます。つまり、自分の食物を合成できる生物(より具体的には、炭素源として無機炭素を使用することができる生物)です。光合成性の独立栄養生物(光独立栄養生物)は太陽光をエネルギー源として使用し、化学合成性の独立栄養生物(化学独立栄養生物)は無機分子をエネルギー源として使用します。独立栄養生物はすべての生態系にとって重要です。これらの生物がいなければ、エネルギーは他の生物が利用することができず、生命そのものが不可能になってしまいます。

植物、藻類、光合成細菌などの光独立栄養生物は、世界の大多数の生態系のエネルギー源として機能します。これらの生態系は、しばしば生食食物網という言葉によって記述されます。光独立栄養生物は、太陽の太陽エネルギーをATP(およびNADP)の形の化学エネルギーに変換することによって利用します。ATPに蓄積されたエネルギーは、グルコースなどの複雑な有機分子の合成に使用されます。

化学独立栄養生物は主として、暗い洞窟や海底の熱水噴出孔に付随するものなど、日光が利用できない希少な生態系に見られる細菌です(図46.9)。熱水噴出孔の多くの化学独立栄養生物は、化学エネルギー源として噴出孔から放出される硫化水素(H₂S)を使用します。これにより、化学独立栄養生物は、グルコースなどの複雑な有機分子を合成して、自身のエネルギーを得ることができ、その結果、残りの生態系にエネルギーを供給できます。

図46.9 | 海底の熱水噴出孔付近で泳いでいるエビ、数匹のスクワットロブスター、および数百のイガイが見られます。日光はこの深さまで届かないため、この生態系は化学独立栄養細菌と海面から沈んできた有機物によって支えられています。この写真は、2006年にアメリカ海洋大気庁(NOAA)によって日本の海岸沖の水中にある北西永福海山で撮影されました。この非常に活発な火山の頂上は、水面下1535mにあります。

栄養段階内の生産性

生態系内の生産性は、特定の栄養段階でバイオマスに組み込まれた生態系に入るエネルギーの割合として定義できます。バイオマスとは、測定時の単位面積において、ある栄養段階内の生きている生物または以前に生きていた生物の総質量です。生態系には、それぞれの栄養段階で特徴的な量のバイオマスがあります。たとえば、イギリス海峡の生態系では、一次生産者は4g/m²(1平方メートルあたりグラム)のバイオマスを占めますが、一次消費者は21g/m²のバイオマスを示します。

一次生産者の生産性は、どの生態系でも特に重要です。なぜなら、これらの生物は光独立栄養性または化学独立栄養性によって他の生物にエネルギーをもたらすからです。光合成性の一次生産者が太陽からのエネルギーを取り入れる割合は、総一次生産性と呼ばれます。総一次生産性の例は、シルバースプリングスの水中生態系内のエネルギーフローの区画の図に示されています(図46.8)。この生態系では、一次生産者によって蓄積された総エネルギー(総一次生産性)は20810kcal/m²/年であることが示されていました。

すべての生物は、自身の機能(呼吸や、その結果生じる代謝による熱損失など)のためにこのエネルギーの一部を使用する必要があるため、科学者はしばしば生態系の純一次生産性に言及します。純一次生産性とは、生物の呼吸と熱損失を考慮した後、一次生産者に残るエネルギーのことです。純生産性は、次の栄養段階で一次消費者にとって利用可能なものになります。シルバースプリングスの例では、20810kcal/m²/年のうち13187kcal/m²/年が呼吸に使用されるか、熱として失われ、一次消費者が使用するために7633kcal/m²/年のエネルギーが残ります。

生態学的効率:栄養段階間のエネルギーの伝達

図46.8に示されるように、エネルギーが一次生産者からさまざまな栄養段階を流れるにつれ、生態系は大量のエネルギーを失います。この損失の主な理由は、熱力学の第二法則です。これは、エネルギーがある形式から別の形式に変換されるときはいつでも、系内では無秩序(エントロピー)に向かう傾向があることを示します。生物学的な系では、このエネルギーは代謝熱の形を取り、生物が他の生物を消費すると失われます。シルバースプリングスの生態系の例(図46.8)では、一次消費者が、一次生産者に由来する利用可能な7618kcal/m²/年のエネルギーから1103kcal/m²/年を生成したことがわかります。連続する2つの栄養段階間のエネルギー伝達効率の測定値は、栄養段階伝達効率(TLTE)と呼ばれ、次の式で定義されます:

シルバースプリングスでは、最初の2つの栄養段階間のTLTEは約14.8%でした。栄養段階間のエネルギー伝達の低効率は通常、食物網で観察される食物連鎖の長さを制限する主な要因となっています。事実、4~6回のエネルギー伝達の後には、また別の栄養段階をサポートするのに十分なエネルギーが残っていません。図46.6に示されるオンタリオ湖の例では、一次生産者(緑藻類)と頂点消費者(マスノスケ)の間で発生したエネルギー伝達は3回だけです。

生態学者は、生態系内のエネルギー伝達を測定する多くのさまざまな方法を持っています。測定の難しさは、生態系の複雑さと、科学者が生態系を観察するためにどれだけアクセスするかによって異なります。言い換えれば、一部の生態系は他の生態系よりも研究が難しく、時にはエネルギー伝達の定量化は推定に頼らなければなりません。

生態系内のエネルギーの流れを特徴付けるには、他のパラメーターが重要です。純生産効率(NPE)により、生態学者は特定の栄養段階の生物が受け取ったエネルギーをバイオマスにどの程度効率的に組み込むかを定量化できます。NPEは次の式を使用して計算されます:

純消費者生産性は、次の栄養段階の生物が利用できるエネルギー含有量です。同化は、食物の不完全な摂取、呼吸に使用されたエネルギー、および廃棄物としてのエネルギーの損失により失われたエネルギーを考慮した後の現在の栄養段階のバイオマス(単位面積あたりに生成されるエネルギー含有量)です。不完全な摂取とは、一部の消費者が食物の一部しか食べないという事実を指しています。たとえば、ライオンがレイヨウを殺すときには、ライオンは皮と骨以外のすべてを食べます。ライオンは骨の中のエネルギーが豊富な骨髄を食べないので、ライオンは獲物が提供できるすべてのカロリーを利用することはありません。

このように、NPEは、それぞれの栄養段階がその食物からのエネルギーをどれだけ効率的に使用してバイオマスに取り入れて、次の栄養段階にエネルギーを供給しているかを測定します。一般に、無脊椎動物、魚類、両生類、爬虫類などの冷血動物(外温動物)は、鳥類や哺乳類などの温血動物(内温動物)よりも呼吸と熱のために得るエネルギーの使用量が少なくなります。内温動物で発生する余分な熱は、より寒い環境にいるこれらの生物の活動に関しては利点ですが、NPEに関しては大きな欠点です。そのため、多くの内温動物は、生存に必要なエネルギーを得るために外温動物よりも頻繁に食べなければなりません。一般に、外温動物のNPEは内温動物の場合よりも1桁(10倍)高くなります。たとえば、葉を食べる毛虫のNPEは18%と測定されていますが、ドングリを食べるリスのNPEは1.6%ほどまで低い場合があります。

温血動物によるエネルギー使用の非効率性は、世界の食糧供給に大きな意味を持っています。食肉産業は家畜を養うために大量の作物を使用していますが、NPEが低いため、動物飼料からのエネルギーの多くが失われることは広く受け入れられています。たとえば、1000食事性カロリー(kcal)のトウモロコシまたは大豆を生産するのには約0.01ドルかかりますが、牛肉消費のために牛を成長させて同数のカロリーを生産するのには約0.19ドルかかります。牛乳の同じエネルギー含有量も費用が高くつき、1000kcalあたり約0.16ドルです。この差の多くは、牛のNPEが低いためです。したがって、食肉産業のために動物に与えるエネルギーの浪費を減らすために、非肉および非乳製品の消費を促進する動きが世界中に広がっています。

生態系のエネルギーの流れのモデリング:生態学的ピラミッド

生態系の構造は、1920年代のチャールズ・エルトンの先駆的な研究によって初めて記述された生態学的ピラミッドを用いて視覚化できます。生態学的ピラミッドは、栄養段階全体にわたるさまざまなパラメーター(生物の数、エネルギー、バイオマスなど)の相対的な量を示します。

個体数のピラミッドは、生態系に応じて、直立していることも逆転していることもあります。図46.10に示されるように、夏の間の典型的な草地には多くの植物からなる基部があり、それぞれの栄養段階で生物の数は減少していきます。しかしながら、夏の間の温帯林では、ピラミッドの基部は、主に昆虫である一次消費者の数と比較して少数の樹木で構成されています。木は大きいため、光合成能力が高く、日光を獲得するに際してこの生態系の他の植物よりも優勢です。森林の一次生産者は、たとえ少数であったとしても、依然として他の栄養段階をサポートすることができます。

生態系の構造を視覚化する別の方法は、バイオマスのピラミッドを使用することです。このピラミッドは、さまざまな栄養段階で生体組織に変換されるエネルギー量を測定します。シルバースプリングスの生態系の例を使用すると、このデータは直立したバイオマスのピラミッドを示しています(図46.10)が、イギリス海峡の例のピラミッドは逆転しています。シルバースプリングスの生態系の植物(一次生産者)は、そこにあるバイオマスの大部分を占めています。しかしながら、イギリス海峡の例における植物プランクトンは、一次消費者である動物プランクトンよりも少ないバイオマスを構成しています。個体数のピラミッドの逆転した形と同様に、この逆転したピラミッドは一次生産者の生産性の不足によるものではなく、植物プランクトンの高い入れ替わり率に起因しています。植物プランクトンは一次消費者によって急速に消費されるため、特定の時点でのバイオマスは最小限に抑えられます。しかしながら、植物プランクトンは迅速に繁殖するため、それらは生態系の他のものをサポートすることができます。

ピラミッドによる生態系のモデリングは、栄養段階を通るエネルギーの流れを示すためにも使用できます。これらの数字は、図46.8のエネルギーの流れの区画の図で使用されている数字と同じものであることに注意してください。エネルギーのピラミッドは常に直立しており、十分な一次生産性のない生態系は支えることが不可能です。すべてのタイプの生態学的ピラミッドは、生態系の構造を特徴付けるのに役立ちます。しかしながら、生態系を通るエネルギーの流れの研究においては、エネルギーのピラミッドが生態系の構造の最も一貫した代表的なモデルです(図46.10)。

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図46.10 | 生態学的ピラミッドは、それぞれの栄養段階の(a)バイオマス、(b)生物の数、および(c)エネルギーを示しています。

生物の数またはバイオマスを表すピラミッドは、逆転、直立、またはひし形の場合があります。しかしながら、エネルギーのピラミッドは常に直立しています。これはなぜでしょうか?

食物網の結果:生物濃縮

生態系の動態の環境への影響の中で最も重要なものの1つは、生物濃縮です。生物濃縮とは、一次生産者から頂点消費者に至るまでのそれぞれの栄養段階で、生物の中の難分解性の有毒物質の濃度が増加することです。殺虫剤ジクロロジフェニルトリクロロエタン(DDT)(これは、レイチェル・カーソンによる1960年代のベストセラー「沈黙の春」の中で記述されています)を含む多くの物質が生物蓄積することが示されています。DDTは、その危険性が知られる前には一般的に使用されていた殺虫剤でした。一部の水中生態系では、それぞれの栄養段階の生物はより低い段階の多くの生物を消費するため、魚を食べた鳥(頂点消費者)においてDDTが増加しました。したがって、鳥には卵の殻に脆弱性を引き起こすのに十分な量のDDTが蓄積されました。この効果によって、営巣中の卵が壊れることが増加し、これらの鳥の個体群に悪影響を与えることが示されました。米国では、1970年代にDDTの使用が禁止されました。

生物濃縮する他の物質は、1979年に使用が禁止されるまで米国で冷却液に使用されていたポリ塩化ビフェニル(PCB)、および水銀、鉛、カドミウムなどの重金属です。これらの物質は、水中生態系で最もよく研​​究されました。そこでは、さまざまな栄養段階の魚類の種が、一次生産者によって生態系を通じてもたらされた有毒物質を蓄積します。ヒューロン湖のサギノー湾でアメリカ海洋大気庁(NOAA)が実施した研究(図46.11)に示されているように、PCB濃度は、生態系の一次生産者(植物プランクトン)から、さまざまな栄養段階の魚の種を通じて増加していました。頂点消費者(ウォールアイ)は、植物プランクトンと比較して4倍以上の量のPCBを持っています。また、他の研究の結果に基づくと、これらの魚を食べる鳥は、湖の魚で見つかったものより少なくとも1桁高いPCBレベルを持っている可能性があります。

図46.11 | この図は、ヒューロン湖のサギノー湾の生態系のさまざまな栄養段階で見られるPCB濃度を示しています。x軸の数字は、栄養段階が上がっていることのマーカーである窒素の重い同位体(¹⁵N​​)の濃縮を反映しています。栄養段階が高い魚は、栄養段階が低い魚よりも多くのPCBを蓄積していることに注目してください。(credit: Patricia Van Hoof, NOAA, GLERL)

他の懸念は、特定の種類の魚介類における水銀やカドミウムなどの重金属の蓄積によって引き起こされています。米国環境保護庁(EPA)は、妊娠中の女性と幼児は、水銀含有量が高いため、メカジキ、サメ、キングマッケレル、アマダイなどを摂取しないことを推奨しています。これらの人は、水銀の少ない魚、サケ、ティラピア、エビ、ポロック、ナマズを食べるよう勧められています。生物濃縮は、生態系の動態が私たちの日常生活にどのように影響し、私たちが食べる食物にも影響を与えるかを示す良い例です。

46.3 | 生物地球化学的循環

この節が終わるまでに、あなたは次のことができるようになります:
•水、炭素、窒素、リン、硫黄の生物地球化学的循環について議論する
•人間の活動がこれらの循環にどのように影響するかと、地球にとっての潜在的な帰結を説明する

エネルギーは、生態系を介して方向性をもって流れます。エネルギーは、日光(または化学独立栄養生物の場合は無機分子)として入り、栄養段階間の多くの伝達中に熱として去ります。しかしながら、生物を構成する物質は保存され、リサイクルされます。炭素、窒素、水素、酸素、リン、硫黄という、有機分子に関連する最も一般的な6つの元素は、さまざまな化学的形態を取り、大気中、陸上、水中、または地球の表面下に長期間存在します。風化、侵食、排水、大陸プレートの沈み込みなどの地質学的プロセスはすべて、この物質のリサイクルにおいて役割を果たします。地質学と化学はこのプロセスの研究において重要な役割を果たしているため、生物とその環境の間での無機物質のリサイクルは生物地球化学的循環と呼ばれています。

水には、すべての生命プロセスに不可欠な水素と酸素が含まれています。水圏は、水の移動と貯留が起こる地球の領域です。表面上または表面下では、水は、川、湖、海、地下水、極地の氷冠、氷河において液体または固体の形で存在します。そして、水は大気中では水蒸気として存在します。炭素はすべての有機高分子に含まれており、化石燃料の重要な成分です。窒素は私たちの核酸とタンパク質の主要な成分であり、人間の農業にとって重要なものです。(窒素とともに)核酸の主要な成分であるリンは、農業で使用される人工肥料と、それに伴う地表の水の環境的な影響にとっての主要な要因の1つです。硫黄は、ジスルフィド結合など、タンパク質の三次元の折り畳みに不可欠です。

これらの元素の循環は相互に接続されています。たとえば、窒素とリン酸塩が川、湖、海洋に浸出するためには、水の移動が重要です。さらに、海洋自体が炭素の主要な貯留場所です。したがって、無機栄養素は、生物圏全体を通じて、ある生物から別の生物に、そして生物的な世界と非生物的な世界の間で、急速にまたはゆっくりと循環します。

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このウェブサイト(http://openstaxcollege.org/l/biogeochemical)にアクセスして、生物地球化学的循環について詳しく学んでください。

水(水文学的)循環

水は、地球上のすべての生命プロセスの基礎です。地球上での水の貯蔵量を調べると、その97.5%は飲用に適さない塩水です(図46.12)。残りの水のうち、99%は水として地下に、あるいは氷として閉じ込められています。したがって、湖や川から簡単にアクセスできる淡水は1%未満です。植物、動物、菌類などの多くの生物は、そのわずかな淡水の地表水に依存しており、その不足は生態系の動態に大きな影響を与えることがあります。繁栄するためには、生物は変動する水の供給に適応しなければなりません。当然のことながら、人間は、井戸を掘って地下水を採取したり、雨水を貯めたり、海水から飲料水を得るために淡水化するなど、水の利用可能性を高める技術を開発してきました。

図46.12 | 地球上の水のたった2.5%だけが淡水であり、生物が簡単にアクセスできるのは淡水の1%未満です。

水の循環は、生態系の動態にとって非常に重要です。水は気候に対して、したがって生態系の環境に対して大きな影響を与えます。地球上の水のほとんどは、海洋、地下、および氷に長期間保存されます。図46.13は、個々の水分子が地球の主要な水の貯留場所で過ごす可能性のある平均時間を示しています。滞留時間は、個々の水分子が特定の貯留場所に滞在する平均時間の尺度です。

図46.13 | このグラフは、地球の水の貯留場所における水分子の平均滞留時間を示しています。

図46.14に示されるように、水の循環中に発生するさまざまなプロセスがあります。これらのプロセスには以下のものが含まれます:
•蒸発/昇華
•凝縮/降水
•地下水流
•表面流出/融雪
•河川流

水の循環は、海やその他の表層水を温める太陽のエネルギーによって駆動されます。これにより、液体である表層水の蒸発(水から水蒸気)と凍結した水の昇華(氷から水蒸気)が発生し、大量の水蒸気が大気中に蓄積します。時間が経つにつれて、この水蒸気は液体または凍結した小滴として雲へと凝縮し、最終的には降水(雨または雪)へと続き、水が地球の表面に戻ります。雨はやがて地面に浸透し、地表近くにある場合には再び蒸発することもあれば、地下で流れること、または長期間保管されることもあります。より容易に観察されるのは、表面流出です。これは、雨または氷の融解による淡水の流れです。その後、流出水は川や湖を通り抜けて海に流れ込むか、直接海に流れ込みます。

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このウェブサイト(http://openstaxcollege.org/l/freshwater)にアクセスして、世界の淡水供給について詳しく学んでください。

雨と表面流出は、炭素、窒素、リン、硫黄などの鉱物が陸地から水へと循環する主要な方法です。流出の環境への影響については、後でこれらの鉱物の循環が説明される際に議論します。

図46.14 | 陸地と海からの水は、蒸発または昇華によって大気中に入り、そこで凝縮して雲になり、雨または雪として落下します。降った水は淡水域に入るか、土壌に浸透することがあります。表層水または地下水が海に再び入ると、循環が完了します。(credit: modification of work by John M. Evans and Howard Perlman, USGS)

炭素循環

炭素は、生物の中で2番目に豊富な元素です。炭素はすべての有機分子の中に存在し、高分子の構造におけるその役割は、生物にとって最も重要なものです。

炭素循環は、相互接続された2つのサブ循環として最も簡単に学ぶことができます:1つは生物の間での急速な炭素交換を扱い、もう1つは地質学的プロセスを通じた炭素の長期循環を扱います。炭素循環の全体が図46.15に示されています。

図46.15 | 二酸化炭素の気体は大気中に存在し、水に溶解します。光合成は二酸化炭素の気体を有機炭素に変換し、呼吸は有機炭素を二酸化炭素の気体に戻します。有機炭素の長期貯蔵は、生物からの物質が地下深くに埋められ、化石化したときに生じます。火山活動、そして最近では人間の排出により、この貯蔵された炭素が炭素循環に戻されています。(credit: modification of work by John M. Evans and Howard Perlman, USGS)

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生物学的な炭素循環

生物は、たとえ生態系同士の間であっても、多くの方法で接続されています。このつながりの良い例は、大気中の二酸化炭素による、生態系内および生態系間の独立栄養生物と従属栄養生物との間の炭素の交換です。二酸化炭素は、ほとんどの独立栄養生物がグルコースのような多炭素・高エネルギー化合物を構築するために使用する基本的な構成要素です。太陽から得られるエネルギーは、これらの生物によって炭素原子を結合する共有結合を形成するために使用されます。それにより、これらの化学結合は、後で呼吸のプロセスで使用するためにこのエネルギーを保存します。ほとんどの陸生の独立栄養生物は二酸化炭素を大気から直接取得する一方で、海洋の独立栄養生物は二酸化炭素を溶解した形(炭酸、H₂CO₃⁻)で取得します。どのような方法で二酸化炭素が取得されたとしても、そのプロセスの副生成物は酸素になります。光合成生物は、私たちが現在観測している大気中の約21%の酸素含有量を蓄積する役割を担っています。

従属栄養生物および独立栄養生物は、生物学的な炭素交換のパートナーです(特に、主に草食動物である一次消費者)。従属栄養生物は、独立栄養生物を摂取することによりそれらから高エネルギーの炭素化合物を得て、それらを呼吸によって分解してATPなどの細胞エネルギーを取得します。最も効率的なタイプの呼吸である好気呼吸には、大気から得た酸素または水に溶けた酸素が必要です。したがって、独立栄養生物(炭素を必要とする)と従属栄養生物(酸素を必要とする)との間で酸素と二酸化炭素の絶え間ない交換があります。大気と水を介したガス交換は、炭素循環が地球上のすべての生物をつなぐ1つの方法です。

生物地球化学的な炭素循環

土地、水、空気を通じた炭素の移動は複雑であり、多くの場合、生物間で見られるよりもはるかにゆっくりと地質学的に生じます。炭素は、大気、液体の水域(主に海洋)、海洋堆積物、土壌、陸の堆積物(化石燃料を含む)、および地球の内部を含む、いわゆる炭素の貯留場所として知られるところに長期間保存されます。

上で述べたように、大気は二酸化炭素の形での炭素の主要な貯留場所であり、光合成のプロセスにとって不可欠なものです。大気中の二酸化炭素のレベルは、海洋の炭素の貯留場所に大きく影響されます。大気と水の貯留場所の間における炭素の交換は、それぞれの場所で見られる炭素の量に影響し、それぞれが相互に影響します。大気中の二酸化炭素(CO₂)は水に溶解し、水分子と結合して炭酸を形成し、イオン化して炭酸イオンと炭酸水素イオンになります(図46.16)。

図46.16 | 二酸化炭素は水と反応して炭酸水素イオンと炭酸イオンを形成します。

平衡係数とは、海洋の炭素の90%以上が炭酸水素イオンとして検出される、というように表すものです。これらのイオンの一部は海水のカルシウムと結合して、海洋生物の殻の主要成分である炭酸カルシウム(CaCO₃)を形成します。これらの生物は最終的に海底に堆積物を形成します。地質学的な時間の間に、この炭酸カルシウムが石灰岩を形成し、これが地球上で最大の炭素の貯留場所を構成します。

陸上では、炭素は、生物の分解(分解者による)の結果として、または陸の岩石や鉱物の風化によって土壌に蓄積されます。この炭素は、表面流出によって水中の貯留場所に浸出することがあります。より深い地下(陸地および海底の)には化石燃料があります。これは、嫌気的に分解された植物の残骸で、何百万年もかけて形成されます。化石燃料は、その利用が形成速度をはるかに超えているため、再生不可能な資源と見なされています。化石燃料などの再生不可能な資源は、非常にゆっくりと再生されるか、まったく再生されません。炭素が大気に入る別の方法は、火山の噴火や他の地熱系によって陸地(海面下の陸地を含む)から入るものです。海底の炭素堆積物は、沈み込みのプロセスによって地球の深部へと取り込まれます。沈み込みとは、ある構造プレートが別の構造プレートの下に移動することです。炭素は、火山が噴火したとき、または火山性の熱水噴出孔から二酸化炭素として放出されます。

人間は化石燃料やその他の材料の燃焼により大気中の炭素に貢献しています。産業革命以来、人間は炭素と炭素化合物の放出を大幅に増加させており、それが気候と環境全体に影響を与えています。

人間による畜産も大気中の炭素を増加させます。地球の増加する人口を養うために飼育された多数の陸生動物は、農業の実践と呼吸およびメタン生成のために大気中の二酸化炭素レベルを増加させています。これは、人間の活動が生物地球化学的循環に間接的に大きな影響を与える方法の別の例です。気候変動に対する大気中の炭素の増加の将来の影響についての議論の多くは化石燃料に焦点を当てていますが、科学者は火山や呼吸などの自然のプロセスを考慮に入れて、この増加の将来の影響をモデル化および予測しています。

窒素循環

窒素を生物界に取り込むことは困難です。この分子は大気の約78%を構成していますが、植物と植物プランクトンは、大気から窒素を取り込むための用意がありません(窒素は、しっかりと結合した三重共有結合のN₂として存在します)。窒素は、窒素固定(N₂の変換)を通じて窒素を高分子に取り込む自由生活性の共生細菌を介して生物界に入ります。シアノバクテリアは、日光が存在するほとんどの水中生態系に生息しています。それらは窒素固定に重要な役割を果たします。シアノバクテリアは、無機窒素源を使用して窒素を「固定」することができます。リゾビウム属の細菌はマメ科植物(エンドウマメ、小豆、ピーナッツなど)の根粒で共生的に生活し、それらが必要とする有機窒素を供給します。(たとえば、園芸家はしばしば、その作物を得るとともに土壌に自然に窒素を加えるために、エンドウマメを育てます。この科学は最近理解されたばかりですが、この慣行は古代に遡ります。)アゾトバクター属などの自由生活細菌もまた、重要な窒素固定者です。

一次生産や分解などの多くの生態系プロセスが利用可能な窒素の供給によって制限されるため、有機窒素は生態系の動態の研究にとって特に重要なものです。図46.17に示されるように、窒素固定によって生物系に入る窒素は、細菌によって有機窒素から窒素ガスに連続的に変換されます。このプロセスは、陸上系ではアンモニア化、硝化、脱窒の3つのステップで起こります。まず、アンモニア化プロセスは、生きている動物または死んだ動物の残骸からの窒素廃棄物を、特定の細菌や菌類によってアンモニウム(NH₄⁺)に変換します。第2に、ニトロソモナス属などの硝化細菌によって硝化を通じてアンモニウムが亜硝酸塩(NO₂⁻)に変換されます。その後、亜硝酸塩は同様の生物によって硝酸塩(NO₃⁻)に変換されます。第3に、脱窒のプロセスが発生し、そこでは、シュードモナス属やクロストリジウム属などの細菌が硝酸塩を窒素ガスに変換し、大気中に再度入ることが可能になります。

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図46.17 | 窒素は、窒素固定細菌を介して大気から生物界に入ります。この窒素および動物からの窒素廃棄物は、土壌細菌によって処理されて気体状の窒素に戻されます。土壌細菌はまた、必要な有機窒素を陸上の食物網に供給します。(credit: modification of work by John M. Evans and Howard Perlman, USGS)

窒素循環についての次の記述のうち、間違っているものはどれですか?
a.アンモニア化は、生物からの有機窒素物質をアンモニウム(NH₄⁺)に変換する。
b.細菌による脱窒は、硝酸塩(NO₃⁻)を窒素ガス(N₂)に変換する。
c.細菌による硝化は、硝酸塩(NO₃⁻)を亜硝酸塩(NO₂⁻)に変換する。
d.窒素固定細菌は、窒素ガス(N₂)を有機化合物に変換する。

人間の活動は、2つの主要な手段によって環境へと窒素を放出することができます:さまざまな窒素酸化物を放出する化石燃料の燃焼と、農業における人工肥料の使用(後に表面流出によって湖、小川、川へと洗い流されます)です。大気中の窒素は、酸性雨の発生(硝酸、HNO₃のように)や気候変動を引き起こす可能性のある温室効果ガス(亜酸化窒素、N₂Oのように)など、地球の生態系に対するいくつかの影響に関連しています。肥料の流出による主な影響は、海水と淡水の富栄養化です。これは、栄養素の流出によって微生物の過剰な成長が引き起こされ、溶存酸素レベルを枯渇させ、生態系の動物相を殺してしまうようなプロセスです。

同様のプロセスが海洋の窒素循環で発生し、そこではアンモニア化、硝化、脱窒プロセスが海洋の細菌によって実行されます。この窒素の一部は、堆積物として海底に落下し、地球の表面の隆起によって地質学的な時間の間に陸へと移動し、それによって陸上の岩石に取り込まれます。岩石から生命系へと直接的に移動する窒素は、大気から固定される窒素と比較すると取るに足らないものとして伝統的に見られてきましたが、最近の研究はこのプロセスが実際には顕著なものであり、すべての地球規模の窒素循環の研究に含まれるべきであることを示しました。[3]

[3] Scott L. Morford, Benjamin Z. Houlton, and Randy A. Dahlgren, “Increased Forest Ecosystem Carbon and Nitrogen Storage from Nitrogen Rich Bedrock,” Nature 477, no. 7362 (2011): 78–81.

リン循環

リンは、生命プロセスに不可欠な栄養素です。それは核酸とリン脂質の主要な成分であり、リン酸カルシウムとして、私たちの骨の支持成分を構成します。リンは、しばしば、水中生態系の制限栄養素(成長に必要なもの)です(図46.18)。

リンは自然ではリン酸イオン(PO₄³⁻)として生じます。人間の活動の結果としてのリン酸塩の流出に加えて、風化によってリン酸塩を含む岩から浸出するときに自然の表面流出が生じ、川、湖、および海にリン酸塩が送られます。この岩の起源は海にあります。リン酸を含む海洋堆積物は、主に海洋生物の体とその排泄物から形成されます。しかしながら、遠隔地では、火山灰、エアロゾル、および鉱物粉末も重要なリン酸塩の源であることがあります。この堆積物は、地球の表面の隆起によって地質学的時間をかけて陸地に移動します。

リンはまた、海洋に溶解したリン酸塩と海洋生態系の間で相互に交換されます。リン酸塩の海洋から陸地への移動と土壌を介した移動は非常に遅く、平均的なリン酸イオンの海洋滞留時間は2万年~10万年です。

図46.18 | 自然界では、リンはリン酸イオン(PO₄³⁻)として存在します。岩石の風化と火山活動は、土壌、水、空気へとリン酸塩を放出し、そこで陸上の食物網にとって利用可能になります。リン酸は、表面流出、地下水流、および河川流を介して海洋に入ります。リン酸は海水循環内で海洋食物網へと溶解します。海洋食物網からの一部のリン酸塩は海底に落ち、そこで堆積物を形成します。(credit: modification of work by John M. Evans and Howard Perlman, USGS)

第44章で説明したように、肥料の流出や下水からこれらの生態系へと入る過剰なリンと窒素は、微生物の過剰な成長を引き起こし、溶存酸素を枯渇させ、貝類や魚類などの多くの生態系の動物相の死につながります。このプロセスは、湖や多くの主要河川の河口のデッドゾーン(酸欠水域)の原因となっています(図46.19)。

図46.19 | デッドゾーンは、肥料からのリンと窒素が微生物の過剰な成長を引き起こし、酸素を枯渇させ、動物相を殺すときに発生します。世界的には、人口密度の高い沿岸地域に大きなデッドゾーンが見られます。(credit: NASA Earth Observatory)

前述のように、デッドゾーンは淡水または海洋生態系の中の領域であり、そこでは広い領域で通常の動植物相が激減しています。これらのゾーンは、富栄養化、油の流出、有毒化学物質の投棄、および他の人間の活動によって引き起こされることがあります。デッドゾーンの数は数年にわたって増加しており、2008年の時点で400を超えるこれらのゾーンが存在しました。最悪のデッドゾーンの1つは、メキシコ湾の合衆国沿岸沖にあります。そこでは、ミシシッピ川流域からの肥料の流出によって、8463平方マイル以上のデッドゾーンが作り出されました。肥料からのリンと硝酸の流出はまた、米国東部のチェサピーク湾を含むいくつかの湖と湾の生態系にも悪影響を及ぼしています。

日常へのつながり

チェサピーク湾

図46.20 | この(a)衛星画像は、リン酸塩と硝酸塩の流出によって影響を受けている生態系であるチェサピーク湾を示しています。(b)陸軍工兵隊のメンバーが、この湾におけるカキの復元活動の一部として使用されているカキの塊を持っています。(credit a: modification of work by NASA/MODIS; credit b: modification of work by U.S. Army)

チェサピーク湾は、地球上で最も風光明媚な地域の1つとして長い間評価されてきました。そこは現在では苦境にあり、衰退している生態系として認識されています。1970年代、チェサピーク湾は、多くの魚類やハマグリ、カキ、蠕虫などの底生生物を殺し続けているデッドゾーンとして特定された最初の生態系の1つとなりました。チェサピーク湾では、陸上で使用される人工肥料からの過剰な栄養素を含む地表水の流出により、いくつかの種が減少しています。肥料(窒素およびリン酸塩の含有量が高い)の供給源は、農業の実践に限定されません。近くには多くの都市部があり、芝生や庭からの肥料の流出を運ぶ150を超える川や小川が湾に流れ込んでいます。したがって、チェサピーク湾の衰退は複雑な問題であり、産業、農業、および普通の住宅所有者の協力が必要とされます。

自然保護主義者にとって特に興味深いのは、カキの個体群です。1700年代には20万エーカー以上のカキ礁が湾に存在していたと推定されていますが、その数は現在3万6000エーカーにまで減少しています。カキの収穫は、かつてチェサピーク湾の主要産業でしたが、1982年から2007年にかけて88%減少しました。この減少は、肥料流出とデッドゾーンだけでなく、過剰収穫にも原因があります。カキは生殖するために近接していなければならないため、特定の最低限度の個体群密度が必要です。人間の活動は、カキの個体群と場所を変え、生態系を大きく混乱させています。

チェサピーク湾のカキの個体群の復元は数年にわたって進行しており、ある程度の成功を収めています。多くの人がカキを食べるのはおいしいと感じるだけではなく、カキはまた、この湾をきれいにもします。カキは濾過摂食動物であり、それらが食事をするときには周囲の水をきれいにします。1700年代には、カキの個体群が湾全体を濾過するのに数日しかかからなかったと推定されました。今日、水の状態が変化したため、現在の個体群が同じ仕事をするのに1年近くかかると推定されています。

チェサピーク湾財団などの非営利団体によって、復元の取り組みが数年にわたって継続されています。復元の目標は、カキがより効率的に生殖できるように、個体群密度を高める方法を見つけることです。多くの病気に抵抗性のある品種(ウィリアム・アンド・メアリー大学のバージニア海洋科学研究所で開発されました)が現在利用可能であり、実験的なカキ礁の建設に使用されています。この湾に入ってくる汚染の多くは他の州から来ているため、バージニア州とデラウェア州による湾の清掃と復元の努力は妨げられており、復元を成功させるために州間の協力の必要性が強調されています。

新しくて栄養のあるカキの系統は、新たな経済的に存続可能な産業であるカキ養殖業を生み出しました。これは、食料と利益のためにカキを供給するだけでなく、湾をきれいにするという追加の利点もあります。

硫黄循環

硫黄は、生物の高分子にとって不可欠な元素です。硫黄は、アミノ酸のシステインの一部として、タンパク質内のジスルフィド結合の形成に関与しています。この結合は、タンパク質の三次元の折り畳みパターン、そしてしたがってその機能を決定するのに役立ちます。図46.21に示されるように、硫黄は海洋、陸地、大気の間を循環します。大気中の硫黄は二酸化硫黄(SO₂)の形態で見つかり、有機分子の分解、火山活動と地熱の噴出孔、人間による化石燃料の燃焼の3つの方法で大気中へと入ります。

図46.21 | 大気からの二酸化硫黄は、降水に溶解して弱い硫酸となった場合、または降下物として直接地球に落下した場合に、陸上および海洋の生態系で利用可能になります。岩石の風化によっても、硫酸塩が陸上生態系で利用可能になります。生物の分解は、硫酸塩を海洋、土壌、大気に戻します。(credit: modification of work by John M. Evans and Howard Perlman, USGS)

陸上では、硫黄は4つの主要な方法で現れます:降水、大気からの直接の降下、岩石の風化、地熱の噴出孔です(図46.21)。大気中の硫黄は二酸化硫黄(SO₂)の形で見つかり、大気を通って雨が降ると硫黄は弱い硫酸(H₂SO₄)の形で溶解します。硫黄は、降下と呼ばれるプロセスで大気から直接落ちることもあります。また、硫黄を含有する岩石の風化は硫黄を土壌に放出します。これらの岩石は、海洋堆積物の地質学的隆起によって陸地に移動した海洋堆積物に由来します。陸上の生態系はこれらの土壌の硫酸塩(SO₄²⁻)を利用することができ、これらの生物が死滅して分解すると、硫化水素(H₂S)ガスとして硫黄を大気中に戻します。

図46.22 | カリフォルニア州北東部のラッセン火山国立公園のこの硫黄の噴出孔では、噴出孔の近くに黄色がかった硫黄の堆積物が見られます。

硫黄は、陸地からの流出、大気からの降下物、および水中の地熱の噴出孔を介して海洋に入ります。一部の生態系(図46.9)は、生物エネルギー源として硫黄を使用する化学独立栄養生物に依存しています。この硫黄は、硫酸塩の形で海洋生態系を支えます。

人間の活動は、グローバルな硫黄循環のバランスを変える上で大きな役割を果たしてきました。大量の化石燃料、特に石炭の燃焼により、大量の硫化水素ガスが大気中に放出されています。酸性雨は、この二酸化硫黄ガスを通り抜けて、弱い硫酸に変わった雨水が地面に降り注ぐことによって引き起こされます。酸性雨は湖のpHを下げることで自然環境にダメージを与え、多くの居住動物相を殺します。また酸性雨は、建物の化学的劣化を通じて人工の環境にも影響を与えます。たとえば、ワシントンDCのリンカーン記念堂などの多くの大理石の記念建築物は、長年にわたる酸性雨によって大きな被害を受けています。

学習へのリンク

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重要用語

酸性雨:二酸化硫黄ガスを通り抜けて、弱い硫酸に変わった雨水が地面に降り注ぐことによって引き起こされる腐食性の雨。構造物と生態系に損傷を与えることがある

分析モデル:生態系の構造と動態に対する環境の撹乱の影響を予測するための、数式を用いて作成された生態系モデル

頂点消費者:食物連鎖のトップにいる生物

同化:食物の不完全な摂取により失われたエネルギー、呼吸に使用されたエネルギー、および廃棄物として失われたエネルギーを考慮した後の、以前の栄養段階から摂取および同化されたバイオマス

生物地球化学的循環:生態系および非生物世界を介した無機栄養素の循環

生物濃縮:一次生産者から頂点消費者に至るまでのそれぞれの栄養段階における、生物中の有毒物質の持続的な濃度の増加

バイオマス:ある栄養段階内の単位面積内の生きている生物または以前に生きていた生物の測定時の総重量

化学独立栄養生物:無機分子からのエネルギーを使用して自身の食物を合成することができる生物

概念モデル(または、区画モデル):生態系の生きている構成要素と生きていない構成要素という異なる区画の相互作用を示すフローチャートで構成される生態系モデル

デッドゾーン:生態系の広い領域で通常の動植物相が激減している、湖や川の河口付近の生態系内の領域。これらのゾーンは、富栄養化、油の流出、有毒化学物質の投棄、および他の人間の活動によって引き起こされることがある

腐食食物網:一次消費者が分解者からなる食物網のタイプ。これらは、しばしば同じ生態系内の生食食物網に関連している

生態学的ピラミッド(または、エルトンのピラミッド):生物の数、バイオマス、またはエネルギー含有量に基づいて生態系のさまざまな栄養段階を図的に表示したもの

生態系:生物の生物群集とその非生物的環境との相互作用

生態系の動態:環境または内的な力の変化によって引き起こされる生態系の構造の変化の研究

平衡:すべての生物がそれぞれの環境およびお互いにおいてバランスを保っている生態系の定常状態

富栄養化:栄養素の流出が微生物の過剰な成長を引き起こし、溶存酸素レベルを枯渇させ、生態系の動物相を殺すプロセス

降下:大気から陸地または海洋に固体の鉱物が直接堆積すること

食物連鎖:生態系の構造と動態を記述するために使用される、一次生産者、一次消費者、および高次消費者の連鎖の線形表現

食物網:生態系の構造と動態を記述するために使用される、一次生産者、一次消費者、および高次消費者の全体論的で非線形の網の目の図的な表現

生食食物網:一次生産者が陸上の植物または水中の植物プランクトンのいずれかである食物網のタイプ。しばしば、同じ生態系内の腐食食物網に関連している

総一次生産性:光合成性の一次生産者が太陽からのエネルギーを取り入れる割合

全体論的な生態系モデル:生態系全体の構成、相互作用、および動態を定量化しようと試みる研究。しばしば、生態系に応じて経済的および物流上の困難によって制限される

水圏:水の移動と貯留が起こる地球の領域

メソコズム:実験に使用される自然の生態系の一部

マイクロコズム:実験に使用される実験室環境での自然の生態系の再作成

純消費者生産性:次の栄養段階の生物が利用できるエネルギー含有量

純一次生産性:生物の呼吸と熱損失を考慮した後、一次生産者に残るエネルギー

純生産効率(NPE):ある栄養段階が以前の栄養段階から受け取ったエネルギーをバイオマスに変換する能力の尺度

再生不可能な資源:化石燃料などの、非常にゆっくり再生されるか、まったく再生されない資源

一次消費者:生態系の一次生産者からエネルギーを得る栄養段階

一次生産者:太陽光、無機化学物質、または死んだ有機物質および/または腐敗した有機物質からエネルギーを得る栄養段階

滞留時間:個々の水分子が特定の貯留場所に滞在する平均時間の測定値

(生態学的)回復力(レジリエンス):生態系が撹乱された後に平衡を回復する速度

(生態学的)抵抗力(レジスタンス):撹乱にもかかわらず生態系が平衡を保つ能力

二次消費者:通常は、一次消費者を食べる肉食動物

シミュレーションモデル:生態系を全体論的にモデル化し、生態系の構造と動態に対する環境の撹乱の影響を予測するために、コンピュータプログラムを用いて作成された生態系モデル

沈み込み:1つの構造プレートが別のプレートの下に移動すること

三次消費者:他の肉食動物を食べる肉食動物

栄養段階:食物連鎖または食物網における種または種のグループの位置

栄養段階伝達効率(TLTE):2つの連続した栄養段階間のエネルギー伝達効率

この章のまとめ

46.1 | 生態系の生態学

生態系は陸上、海洋、空中、地下に存在します。環境の撹乱が生態系の構造と動態にどのように影響するかを理解するには、生態系をモデル化するさまざまな方法が必要です。概念モデルは、生物の間の一般的な関係とそれらの間の物質またはエネルギーの流れとを示すのに役立ちます。分析モデルは線形の食物連鎖を記述するために使用され、シミュレーションモデルは全体論的な食物網で最もよく機能します。

46.2 | 生態系を通じたエネルギーの流れ

生態系の生物はさまざまな方法でエネルギーを獲得します。エネルギーは食物網の底部から上部に流れるようにして栄養段階の間で移動し、移動のたびにエネルギーが失われます。これらの伝達の効率は、温血動物と冷血動物の異なる行動と食習慣を理解するために重要です。生態系エネルギーのモデリングは、エネルギーの生態学的ピラミッドで行うのが最適ですが、他の生態学的ピラミッドも、生態系の構造についての他の重要な情報を提供します。

46.3 | 生物地球化学的循環

無機栄養素は、生態系とその環境を循環します。特に重要なのは、水、炭素、窒素、リン、硫黄です。これらの循環はすべて、生態系の構造と機能に大きな影響を及ぼします。汚染、油の流出、その他の出来事などのさまざまな人間活動が生態系を損傷し、おそらくグローバルな気候変動を引き起こしています。地球の健康は、これらの循環を理解することと、不可逆的な損傷から環境をいかにして保護するかにかかっています。

ビジュアルコネクション問題

1.図46.8 | 一次生産者の総生産性の値が、熱および呼吸の総量の値と同じ(20810kcal/m²/年)なのはなぜだと思いますか?

2.図46.10 | 生物の数またはバイオマスを表すピラミッドは、逆転、直立、またはひし形の場合があります。しかしながら、エネルギーのピラミッドは常に直立しています。これはなぜでしょうか?

3.図46.17 | 窒素循環についての次の記述のうち、間違っているものはどれですか?
a.アンモニア化は、生物からの有機窒素物質をアンモニウム(NH₄⁺)に変換する。
b.細菌による脱窒は、硝酸塩(NO₃⁻)を窒素ガス(N₂)に変換する。
c.細菌による硝化は、硝酸塩(NO₃⁻)を亜硝酸塩(NO₂⁻)に変換する。
d.窒素固定細菌は、窒素ガス(N₂)を有機化合物に変換する。

レビュー問題

4.環境の撹乱後に平衡状態へと戻る生態系の能力は________と呼ばれます。
a.抵抗力
b.復元
c.改革
d.回復力

5.実験室環境で再作成された生態系は、________として知られています。
a.メソコズム
b.シミュレーション
c.マイクロコズム
d.再生

6.分解者はどの種類の食物網に関連していますか?
a.生食
b.腐食
c.逆転
d.水中

7.海洋の生食食物網の一次生産者は、通常________です。
a.植物
b.動物
c.菌類
d.植物プランクトン

8.生態系の線形の側面のモデリングにおける数式の使用について記述する用語は何ですか?
a.分析モデリング
b.シミュレーションモデリング
c.概念モデリング
d.個体ベースのモデリング

9.食物連鎖に沿った生物の位置は________として知られています。
a.場
b.位置
c.栄養段階
d.マイクロコズム

10.頂点消費者の喪失は、食物網のどの栄養段階に影響するでしょうか?
a.一次生産者
b.一次消費者
c.二次消費者
d.上記のすべて

11.食物連鎖は、以下のどの質問に答える際に、食物網よりも適しているでしょうか?
a.エネルギーは、ある栄養段階の生物から次の栄養段階の生物にどのように移動しますか?
b.栄養段階内でエネルギーはどのように移動しますか?
c.草を食べるものは何ですか?
d.森林では有機物はどのようにリサイクルされますか?

12.特定の時点での生態系内の生物の重量は次のように呼ばれます。
a.エネルギー
b.生産
c.エントロピー
d.バイオマス

13.生態系の栄養段階に沿って有毒物質が増加するプロセスを記述する用語はどれですか?
a.バイオマス化
b.生物濃縮
c.バイオエントロピー
d.従属栄養性

14.無機分子を使用して自身の食物を作ることができる生物は次のように呼ばれます。
a.独立栄養生物
b.従属栄養生物
c.光独立栄養生物
d.化学独立栄養生物

15.イギリス海峡の生態系では、________ため、一次生産者の数は一次消費者の数よりも少ないです。
a.頂点消費者の入れ替わり率が低い
b.一次生産者の入れ替わり率が低い
c.一次生産者の入れ替わり率が高い
d.一次消費者の入れ替わり率が高い

16.エネルギーがある形式から別の形式に変換されるときに、どれだけのエネルギーを伝達できるかを決定するのはどの化学の法則ですか?
a.熱力学の第一法則
b.熱力学の第二法則
c.物質の保存
d.エネルギーの保存

17.北西永福海山に生息するイガイは_______の例です。
a.化学独立栄養生物
b.光独立栄養生物
c.頂点捕食者
d.一次消費者

18.生物とその環境を通じた無機栄養素の移動は、________循環と呼ばれます。
a.生物学的
b.生物蓄積
c.生物地球化学的
d.生化学的

19.炭素は________として大気中に存在します。
a.二酸化炭素
b.炭酸イオン
c.炭素粉末
d.一酸化炭素

20.地球上で見られる水の大半は________です。
a.氷
b.水蒸気
c.淡水
d.塩水

21.分子が貯留場所で費やす平均時間は________として知られています。
a.滞留時間
b.制限時間
c.回復時間
d.保管時間

22.水中系の過剰な栄養素のために微生物が成長することによって酸素が枯渇するプロセスは________と呼ばれます。
a.デッドゾーン化
b.富栄養化
c.古風化
d.枯渇

23.窒素が有機分子に取り込まれるプロセスは________と呼ばれます。
a.硝化
b.脱窒
c.窒素固定
d.窒素循環

24.温室効果を持つ二酸化炭素を削減する最も効果的な方法は次のうちどれですか?
a.深海への廃棄物の堆積を増やす。
b.より環境に適した植物を植える。
c.副生成物として二酸化炭素を生成しない燃料源の使用を増やす。
d.畜産農業を減らす。

25.森林での菌類の喪失は、その地域の生物地球化学的循環にどのように影響するでしょうか?
a.窒素はもはや有機分子に固定されることができない。
b.リンの貯蔵物は、他の生物が使用するために放出される。
c.侵食する岩石からの硫黄の放出が停止する。
d.炭素は死んだ有機物と廃棄物の中に蓄積する。

クリティカルシンキング問題

26.食物連鎖と食物網を比較対照してください。生態系を記述する際におけるそれぞれの概念の長所は何ですか?

27.淡水、海洋、陸上の生態系を記述してください。

28.生食食物網と腐食食物網を比較してください。なぜ同じ生態系に両方が存在するのでしょうか?

29.マイクロコズムモデリングアプローチは、生態学の研究に全体論的なモデルを使用することとどのように異なりますか?

30.生態系の概念モデルと分析モデルは、どのようにお互いに補完し合っていますか?

31. 3種類の生態学的ピラミッドと、それらが生態系の構造をどの程度うまく記述しているかを比較してください。逆転した形をとれるものを特定し、それぞれの逆ピラミッドの例を示してください。

32.温血動物(内温動物)が食べる食物の量は、純生産効率(NPE)とどのように関係していますか?

33.ある研究では、ある海洋領域におけるサメ、その水生の獲物、および植物プランクトンの間の関係を実証するために、逆転したピラミッドを使用しています。どのタイプのピラミッドが使用されていなければならないでしょうか?これは、この領域の捕食について読者に何を伝えますか?

34.ある生態学者がある1ヘクタール内で鳥類の寄生生物、アオカケス、およびオークの木の間の関係をモデル化する場合、個体数のピラミッドがどのようなものになるかを記述してください。これはエネルギーの流れのピラミッドと一致しますか?

35.窒素固定と、それが農業にとって重要である理由を記述してください。

36.デッドゾーンを引き起こす要因は何ですか?特に、原因としての富栄養化を記述してください。

37.飲料水の供給が多くの国で依然として大きな懸念事項となっているのはなぜですか?

38.人間による炭素循環の混乱が、どのようにして海洋の酸性化を引き起こしたかを議論してください。

解答のヒント

第46章

1 図46.8 熱力学の第一法則によれば、エネルギーは生成も破壊もされません。最終的に、生体系で消費されるすべてのエネルギーは熱として失われるか、呼吸に使用されます。系の総エネルギー出力は、系に入ったエネルギーと等しくなければなりません。3 図46.17 C:細菌による硝化は、硝酸塩(NO₃⁻)を亜硝酸塩(NO₂⁻)に変換する。4 D 6 B 8 A 10 D 12 D 14 D 16 B 18 C 20 D 22 B 24 B 26 食物網は、異なる種の相互作用するグループと、そのグループ同士およびそれらと環境との多くの相互接続を示しています。食物連鎖は食物網の線形の側面であり、定義された栄養段階で順番にお互いを消費する生物を表します。食物網は、生態系の構造と動態のより正確な表現です。食物連鎖は、実験研究で容易にモデル化と使用ができます。28 生食食物網は、その基盤に一次生産者を持ち、それは陸上生態系の植物または水中生態系の植物プランクトンのいずれかです。生産者は、そのエネルギーをさまざまな栄養段階の消費者に受け渡します。腐食食物網の基盤には分解者がおり、このエネルギーを他のさまざまな消費者に受け渡します。腐食食物網は、多くの生食食物網の健康にとって重要です。なぜなら、それらは死んだ腐敗する有機物質を排除し、それによって、新しい生物のためのスペースを空け、病気の潜在的な原因を取り除くからです。死んだ有機物質を分解することにより、分解者は無機栄養素を一次生産者が利用できるようにします。このプロセスは栄養循環の重要なつながりです。30 概念モデルにより、生態学者は、生態系のさまざまな構成要素がお互いに、そしてエネルギー源や資源とどのように相互作用するかの「全体像」を見ることができます。しかしながら、このアプローチは定量的というよりも記述的であるため、系の抵抗力または回復力について結論を出すことは困難です。分析モデリングは、撹乱に応じて生態系の関係がどのように変化するかを予測できるモデルを作成しますが、概念モデリングで見られる関係の複雑さを伝えません。32 NPEは、呼吸、排泄、熱損失を考慮に入れた上で、1つの栄養段階が前の段階で得られたバイオマスを使用および生成できる割合を測定します。内温動物は代謝が高く、多くの体熱を発生させます。これにより、より低い気温での活動レベルは向上しますが、これらの生物は、冷血動物と比較して、食べる食物からのエネルギーを利用する効率が10倍も低いため、より頻繁に食べなければなりません。34 この生態学的モデルでは、オークの木(生産者)が最下部にあり、アオカケスが中間レベル(ドングリの一次消費者)に、寄生生物が最上位(二次消費者)になります。しかしながら、それぞれの鳥は複数の寄生生物をサポートでき、それぞれの木は複数の鳥をサポートできるため、ピラミッドは逆転したものになります。このピラミッドは、エネルギーの流れのピラミッドの反対のように見えるでしょう。36 栄養素が豊富な表面流出による富栄養化、油の流出、有毒廃棄物の流出、気候の変化、海洋へのゴミの投棄など、多くの要因が湖や海洋の生命を殺す可能性があります。富栄養化は、窒素とリンを多く含む人工肥料を使用した土地からの栄養豊富な流出の結果です。これらの栄養素は、微生物の急速かつ過剰な成長を引き起こし、それにより局所的な溶存酸素が枯渇し、多くの魚や他の水生生物が死滅します。38 人間の活動により、地球の大気中の二酸化炭素ガスの量が大幅に増加しています。二酸化炭素の海洋レベルと大気レベルはリンクしているため、大気中の二酸化炭素レベルが増加すると、海洋中の溶存二酸化炭素の量も増加します(酸素の分圧)。二酸化炭素が水に溶解すると、弱酸性の重炭酸塩が生成されます。産業革命以来、海洋のpHは0.1pH単位低下し、酸性度が30%増加しました。

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