生物学 第2版 — 第18章 進化と種の起源 —

Japanese translation of “Biology 2e”

Better Late Than Never
63 min readOct 10, 2019

OpenStax のサイトで公開されている教科書“ Biology 2e”の翻訳です。こちらのページから各章へ移動できます。

18 | 進化と種の起源

図18.1 | すべての生物はその環境に適応した進化の賜物です。(a)サグアロ(Carnegiea gigantea)は1回の豪雨で750リットルの水を吸収することができ、これらのサボテンがメキシコとアメリカ合衆国南西部のソノラ砂漠の乾燥した気候で生き残ることを可能にします。(b)2010年にペルーで発見されたアンデス半水生トカゲ(Potamites montanicola)は標高1570~2100メートルの間に住んでおり、そしてほとんどのトカゲとは異なり、夜行性であり泳ぎます。科学者たちは、これらの冷血動物がアンデスの夜の寒い(10~15°C)温度でどのようにして活動することができるのかまだ知りません。(credit a: modification of work by Gentry George, U.S. Fish and Wildlife Service; credit b: modification of work by Germán Chávez and Diego Vásquez, ZooKeys)

この章の概要

18.1:進化を理解する
18.2:新しい種の形成
18.3:再結合率と種分化率

はじめに

細菌からヒヒ、ブルーベリーに至るまで、すべての生物は、ある時点で異なる種から進化しました。今日の生物はほぼ同じままでとどまっているように見えるかもしれませんが、そうではありません。進化は進行中のプロセスです。

進化の理論は生物学の統一理論であり、それはつまり、その中で生物学者が生きている世界について質問をするような枠組みであることを意味しています。進化の理論の力とは、現在も進行中の実験で生まれた生物についての予測の方向性を提供することです。ウクライナ生まれのアメリカの遺伝学者テオドシウス・ドブジャンスキーの有名な言葉では、「進化を除いた観点からでは生物学は何も意味をなさない。」[1]彼は、すべての生命が共通の祖先から進化し多様になったという信条が基盤であり、そこから私たちが生物学のすべての質問に取り組むのだ、ということを意味しています。

[1] Theodosius Dobzhansky. “Biology, Molecular and Organismic.” American Zoologist 4, no. 4 (1964): 449.

18.1 | 進化を理解する

この節が終わるまでに、あなたは次のことができるようになります:
•科学者が現在の進化の理論をどのように発展させたかを記述する
•適応を定義する
•収斂と分岐進化を説明する
•相同構造および痕跡構造を記述する
•進化論についての誤解を議論する

自然選択による進化は、種が時間とともにどのように変化するかについてのメカニズムを記述します。ダーウィンがこの考え方を探求し始めるかなり前に、科学者、哲学者、研究者などがこの話題について提案をし、議論をしていました。古典時代ギリシャの哲学者プラトンは彼の文章の中で種は静的で不変であることを強調しましたが、進化論的な考え方を表明した古代ギリシャ人もいました。18世紀には、博物学者のビュフォン伯ジョルジュ-ルイ・ルクレールが動物の進化についての考え方を再導入し、たとえ環境が似ていたとしても、さまざまな地理的地域には異なる動植物の個体群があることを観察しました。その時点で絶滅した種があることを認めていた人もいました。

また、18世紀の間には、スコットランドの地質学者で博物学者のジェームズ・ハットンが、今日起きているようなプロセスからの小さな変化が長期間にわたって蓄積することによって、地質学的変化が徐々に起こることを提案しました。これは、地球の地質学は比較的近い過去の間に起こった破局的な出来事の結果であるという当時の主流の見解とは対照的でした。19世紀の地質学者チャールズ・ライエルはハットンの見解を広めました。ダーウィンの友人であるライエルの考え方は、ダーウィンの思考に影響を及ぼしました。地球がより長い年齢を持つというライエルの概念は、種のゆるやかな変化のためにより多くの時間を与え、そして、地質の変化のプロセスは種の変化のためのアナロジーを提供しました。19世紀初頭に、ジャン-バティスト・ラマルクは、進化的変化のメカニズムを詳述した本を出版しました。私たちは現在、このメカニズムのことを、獲得形質の遺伝として言及します。これにより、環境がある個体の中で変化を引き起こすか、あるいは子孫がその生涯の間にある構造を使用または使用しないことで、種の変化を引き起こすことができます。多くの人が進化的変化に関してこのメカニズムを信用していない一方で、ラマルクの考え方は進化論的思考へ重要な影響を持っていました。

チャールズ・ダーウィンと自然選択

19世紀半ばに、2人の博物学者チャールズ・ダーウィンとアルフレッド・ラッセル・ウォレスが独立して進化の実際のメカニズムを考え出し、説明しました。重要なこととして、それぞれの博物学者は熱帯地方への探査で自然の世界を探検することに時間を費やしていました。1831年から1836年まで、ダーウィンはビーグル号で、南アメリカ、オーストラリア、そしてアフリカの南端での停留を含む世界中を旅しました。ウォレスは1848年から1852年までアマゾンの熱帯雨林で昆虫を集めるためにブラジルを、そして1854年から1862年までマレー諸島を訪れました。ダーウィンの旅は、ウォレスの後のマレー諸島への旅と同じように、いくつかの諸島で停留することを含んでいました。その最後のものは、エクアドルの西にあるガラパゴス諸島でした。ダーウィンはこれらの島で、明らかに類似しているものの、まだはっきりとした違いがあるような、異なる島にいる生物種を観察しました。たとえば、ガラパゴス諸島に生息するガラパゴスフィンチは、独特のくちばしの形をしたいくつかの種から構成されていました(図18.2)。それぞれの島の種では、最も類似したものの間では非常に小さな違いであるような一連の段階となったくちばしのサイズと形がありました。彼はこれらのフィンチが南アメリカ本土の他のフィンチの種によく似ていることを観察しました。ダーウィンは、この諸島の種は、本土のオリジナルの種の1つから変更された種であるかもしれないと思いました。彼がさらに研究すると、それぞれのフィンチの多様なくちばしは、この鳥が特定の種類の食物を獲得するのを助けていることに気付きました。たとえば、植物の種を食べるフィンチは種を割るためのより強く、より厚いくちばしを持っており、そして、昆虫を食べるフィンチは獲物を突き刺すために槍のようなくちばしを持っていました。

図18.2 | ダーウィンは、くちばしの形状がフィンチの種によって異なることを観察しました。彼は祖先の種のくちばしが、フィンチがさまざまな食料源を獲得するくちばしを備えるように、時間をかけて適応してきたと仮定しました。

ウォレスとダーウィンの両者とも他の生物でも同様のパターンを観察しており、どのようにそしてなぜそのような変化が起こるのかについて、同じ説明を独立して発展させました。ダーウィンはこのメカニズムを自然選択と呼びました。自然選択、または「適者生存」とは、環境変化を生き抜くのに好ましい形質を持つ個体が、それらの形質のために、より多く繁殖することです。これは進化的な変化につながります。

たとえば、ダーウィンは、ガラパゴス諸島のゾウガメの個体群が、他の乾燥した低地の島々に生息するカメよりも長い首を持っていることを観察しました。これらのカメは、首の短いものよりも多くの葉に到達し、より多くの食料にアクセスできるために、「選択」されました。より少ない葉しか利用できないであろう干ばつの時期には、より多くの葉に達することができるカメは、食料源に達することができないカメよりも、食べ物を食べて生き残るためのより良い機会を持っていました。その結果、長い首のカメは生殖的に成功し、長い首の形質を彼らの子孫に渡す可能性が高くなります。時間が経つにつれて、この個体群には長い首のカメだけが存在することになるでしょう。

ダーウィンは、自然選択は自然の中で機能する3つの原則の避けられない結果であると主張しました。第1に、生物のほとんどの特徴は遺伝している、すなわち親から子へと受け継がれています。その時代には、ダーウィンとウォレスを含む誰もがどのようにしてこれが起こるのかは知りませんでしたが、それは共通の理解でした。第2に、生き残ることができるよりも多くの子孫が生み出されるので、生存と繁殖のための資源は限られています。すべての生物における繁殖能力は、その数を支えるための資源の利用可能性を凌駕しています。したがって、各世代でこれらの資源をめぐる競争があります。ダーウィンとウォレスのどちらも、この原則を人間の人口に関連して説明した経済学者トマス・マルサスの小論を読んだことから、この原則の理解を得ました。第3に、子孫はその特性に関して互いに異なり、それらの変動は遺伝します。ダーウィンとウォレスは、限られた資源について最もうまく競争をすることを可能にする遺伝的な特性を持つ子孫が生き残ることができ、うまく競争することができないバリエーションを持つ個体よりも多くの子孫を持つだろうと推論しました。特性は継承されるため、これらの形質は次世代ではより多くの個体で表現されるでしょう。これは、ダーウィンが変化を伴う系統と呼んだ過程の中で、いくつもの世代を経て個体群の変化につながるでしょう。結局のところ、自然選択はその個体群の局所的な環境へのよりよい適応へとつながります。それは適応進化として知られている唯一のメカニズムです。

1858年に、ダーウィンとウォレス(図18.3)はロンドン・リンネ協会で自然選択の考え方を論じた論文を発表しました。翌年、ダーウィンの著書 「種の起源について」が出版されました。彼の本は、自然選択による進化に対する彼の主張をかなり詳細に概説しました。

図18.3 | (a)チャールズ・ダーウィンと(b)アルフレッド・ウォレスはどちらも、1858年にリンネ協会で一緒に発表した自然選択に関する科学論文を書きました。

自然選択による進化の例を文書化し提示することは困難で時間がかかります。ガラパゴスフィンチはその好例です。ピーターとローズマリーのグラント夫妻、そして彼らの同僚は、1976年以来毎年ガラパゴスフィンチの個体群を研究し、自然選択の重要な証拠を提供してきました。グラント夫妻は、ガラパゴス諸島の大ダフネ島にいるガラパゴスフィンチが持つくちばし形状の分布に、世代ごとに変化があることを発見しました。この鳥はくちばしの形の変化を受け継いでいます。いくつかのものは広くて厚いくちばしを持っていて、他のものはより薄いくちばしを持っています。エルニーニョのために降雨量が通常より多かった時期には、大きなくちばしを持つ鳥が食べるような大きくて硬い種子が不足していました。しかしながら、小さなくちばしの鳥が食べるような小さくて柔らかい種子はたくさんがありました。したがって、小さなくちばしの鳥は生き残って繁殖することができました。このエルニーニョに続く数年に、グラント夫妻は個体群のくちばしサイズを測定し、そして、平均のくちばしのサイズがより小さくなったことを発見しました。くちばしのサイズは遺伝された形質なので、小さいくちばしを持つ親はより多くの子孫を持ち、くちばしはずっと小さいサイズへと進化しました。1987年に状況が改善され、より大きな種子がさらに入手可能になるにつれて、より小さな平均のくちばしサイズへの傾向は消滅しました。

キャリアへのつながり

野外生物学者

多くの人が​​レクリエーションのために、ハイキング、洞窟探検、スキューバダイビング、登山などをしています。人々はしばしば、野生生物を見ることを望んでこれらの活動に参加します。アウトドアを体験することは、信じられないほど楽しく、元気をくれます。あなたの仕事が自然の中で働くことを伴うならば、どうでしょうか?定義上、野外生物学者は屋外である「野外」で働いています。この場合の野外という用語は、屋外のあらゆる場所を指し、水中でさえもあります。野外生物学者は通常、特定の種、生物のグループ、または単一の生息地に研究を集中しています(図18.4)。

図18.4 | 野外生物学者が研究のためにホッキョクグマを鎮静させています。(credit: Karen Rhode)

多くの野外生物学者の目的の1つは、記録されていない新しい種を発見することです。そのような発見は私たちの自然界に対する理解を広げるだけでなく、それらは医学や農業などの分野における重要な革新にもつながります。特に植物や微生物の種は、薬や栄養に関する新しい知識を明らかにすることがあります。他の生物は生態系で重要な役割を果たしていたり、もし希少であるならば保護が必要とされていたりするかもしれません。研究者は、これらの重要な種が発見されたとき、環境規制や法律のための証拠としてそれらを使うことができます。

進化のプロセスとパターン

自然選択は、個体群の中の個体の間に変動、すなわち違いがある場合にのみ起こり得ます。重要なこととして、これらの違いは何らかの遺伝的根拠を持たなければなりません。そうでなければ、選択は次世代の変化につながらないでしょう。非遺伝的な理由が個体間の変動を引き起こす(異なる遺伝子ではなくより良い栄養状態による個人の身長など)可能性があるため、これは重要です。

個体群の遺伝的多様性は、2つの主なメカニズム、すなわち突然変異と有性生殖から来ています。DNAの変化である突然変異は、あらゆる個体群における新しい対立遺伝子、すなわち新しい遺伝的変動の究極の原因です。突然変異が引き起こす遺伝的変化は、表現型に関する3つの結果のうちの1つを持つことができます。ある突然変異は、適応度の低下、すなわち生存の可能性の低下または子孫の減少をもたらすように、生物の表現型に影響を与えます。ある突然変異は、適応度に有益な効果を持つ表現型を生み出す可能性があります。また、多くの突然変異は表現型の適応度には何の影響も持たないでしょう。私たちはそれらのことを中立突然変異と呼びます。表現型の中で発現される突然変異はまた、小さな効果から大きな効果まで、生物の適応度に対して広い範囲の効果の大きさを持つことがあります。有性生殖は遺伝的多様性ももたらします。2人の親が生殖をすると、対立遺伝子の独特な組み合わせが集まって、それぞれの子孫に独特の遺伝子型、したがって表現型が生み出されます。

私たちは、現在の環境における生物の生存と繁殖を助ける遺伝的形質のことを適応と呼びます。科学者たちは、遺伝的変動が時間の経過とともに発生し、その個体群の環境への「適応」が向上または維持される場合、その生物のグループが環境に適応していると記述します。カモノハシの水かきのついた足は泳ぐための適応です。ユキヒョウの厚い毛皮は寒さの中で生活するための適応です。チーターの速いスピードは獲物を捕まえるための適応です。

ある形質が好ましいかどうかは、現在の環境条件に依存します。環境条件が変わることがあるため、同じ形質が常に選択されるとは限りません。たとえば、湿潤な気候で育ち、水を節約する必要のない植物の種を考えてみましょう。この植物が太陽からより多くのエネルギーを得ることを可能にするため、大きな葉が選択されました。大きな葉は小さな葉よりも維持するのにより多くの水を必要とし、湿潤な環境は大きな葉を支えるのに好ましい条件を提供しました。数千年後、気候は変わり、この地域にはもはや過剰な水がありませんでした。自然選択の方向は、小さい葉を持つ植物が選ばれるようにシフトしました。なぜなら、それらの個体群は新しい環境条件を生き残るために水を節約することができたからです。

種の進化は、形態と機能に大きな変動をもたらしました。時に進化は、互いに非常に異なったものになる生物のグループを生み出します。私たちは、ある1つの共通の点から多様な方向に進化する2つの種のことを分岐進化と呼びます。私たちは、顕花植物の生殖器官の形でそのような分岐進化を見ることができます。それらは同じ基本的な生体構造を共有しますが、しかしながら、異なる物理的環境における選択および異なる種類の受粉媒介者への適応の結果として、非常に異なった外見を持つことがあります(図18.5)。

図18.5 | 顕花植物は共通の祖先から進化しました。(a)リアトリス(Liatrus spicata)と(b)ムラサキバレンギク(Echinacea purpurea)の外観は異なりますが、どちらも似たような基本的な形態を共有しています。(credit a: modification of work by Drew Avery; credit b: modification of work by Cory Zanker)

他の場合では、遠く離れた種において類似の表現型が独立して進化します。たとえば、飛翔はコウモリと昆虫の両方で進化してきました。そしてそれらは両方とも飛翔への適応である羽と呼ばれる構造を持っています。しかしながら、コウモリと昆虫の羽は、まったく異なる元の構造から進化してきました。私たちはこの現象を収斂進化と呼んでおり、そこでは共通の祖先を共有しない種において同様の形質が独立して進化します。この2つの種は飛翔という同じ機能に到達しましたが、お互いから別個にそうなりました。

これらの物理的変化は非常に長い期間をかけて発生し、進化がどのように発生するかを説明するのに役立ちます。自然選択は個々の生物に作用し、それが次に種全体を形作ることができます。自然選択は単一の世代では1つの個体に対して働くかもしれませんが、種全体の遺伝子型が進化するには数千年から数百万年かかることがあります。地球上の生命が変化し、そして変化し続けているのは、これらの長い期間にわたってのものなのです。

進化の証拠

進化の証拠は説得力があり、広範なものです。生物系の組織化のあらゆるレベルを見るときに、生物学者は過去と現在の進化のしるしを目にします。ダーウィンは、彼の著書 「種の起源について」の大部分を進化論と一致する自然界のパターンの特定に捧げており、そして、ダーウィン以来、私たちの理解はより明確でより広くなりました。

化石

化石は、過去の生物が今日のものと同じではないという確かな証拠を提供し、そして化石は進化の進行を示します。科学者は化石の年齢を決定し、世界中からの化石を分類して、さまざまな生物が互いに対していつごろに住んでいたかを決定します。得られた化石記録は過去の物語を伝え、数百万年にわたる形態の進化を示しています(図18.6)。たとえば、科学者たちは人間と馬の進化を示す非常に詳細な記録をよみがえらせています(図18.6)。クジラのひれは鳥類や哺乳類の付属器官と同様の形態を共有しており(図18.7)、これらの種が共通の祖先を共有することを示します。

図18.6 | この(a)展示では、ヒト科の化石は最も古いもの(一番下)から最も新しいもの(一番上)の順に並べられています。ヒト科が進化するにつれて、頭蓋骨の形状は変化しました。芸術家の絵画による(b)ウマ属の絶滅種は、これらの古代の種が現代の馬(Equus ferus)に似ているが大きさは異なることを明らかにしています。

解剖学および発生学

進化のもう1つのタイプの証拠は同じ基本的な形態を共有する生物の構造の存在です。たとえば、人間、犬、鳥、クジラの付属器官の骨はす​​べて、共通の祖先の付属器官に由来するため、全体的に同じ構造を共有しています(図18.7)。時間が経つにつれて、進化はそれぞれの種で骨の形状や大きさの変化をもたらしましたが、それらは同じ全体的なレイアウトを維持しています。科学者はこれらの同義の部分を相同構造と呼んでいます。

図18.7 | これらの付属器官の似た構成は、これらの生物が共通の祖先を共有していることを示しています。

生物の中には、明確な機能をまったく持たず、過去の共通の祖先から残存した部分であるように見える構造もあります。私たちはこれらの機能を持たず使用されていない構造のことを痕跡構造と呼びます。痕跡構造の他の例は、飛べない鳥の羽、いくつかのサボテンの葉、そしてクジラの後ろ足の骨です。

学習へのリンク

このインタラクティブなサイト(http://openstaxcollege.org/l/bone_structures)にアクセスして、どの骨の構造が相同でどの構造が相似かを推測するとともに、これらの概念を説明するための進化的適応の例を見てください。

進化のもう1つの証拠は、似たような環境を共有する生物における形態の収斂です。たとえば、北極圏で暮らすホッキョクギツネやライチョウなどの無関係な動物の種は、雪や氷に溶け込むように冬の間には白くなるような季節性の表現型を持つように選択されています(図18.8)。これらの類似性は、共通の祖先のせいではなく、似たような選択圧力(捕食者がそれらを見られないという利点)のせいで起こります。

図18.8 | (a)ホッキョクギツネの白い冬の毛皮と(b)ライチョウの羽毛は、環境への適応です。(credit a: modification of work by Keith Morehouse)

発生学、すなわちある生物の成体の形態への発達の解剖学的構造の研究もまた、現在では広く多様な生物のグループ間の関連性の証拠を提供しています。胚の中での微細な突然変異は、胚の形成において保存される傾向がある程に大きな結果を成体に対してもたらすことがあります。結果として、いくつかのグループで存在しない構造は、しばしばその胚の形態では現れているが、それらが成体または幼若の形態に達すると消えます。たとえば、人間を含む全ての脊椎動物の胚は、それらの発達初期のある時点で鰓裂および尾を示します。これらは陸生のグループの成体では消えますが、魚類や一部の両生類などの水生のグループの成体の形態はそれらを維持しています。人間を含むヒト科の胚は、発生時に尾の構造を持っており、生まれた時には失います。

生物地理学

地球上での生物の地理的分布は、地質学的時間にわたる構造プレートの動きに関連付けた進化によって最もよく説明できるようなパターンに従います。超大陸パンゲアの分裂(約2億年前)より前に進化した幅広いグループは、世界中に分布しています。分裂以降に進化したグループは、超大陸ローラシアから形成された北部のいくつかの大陸にある独特の動植物相、および超大陸ゴンドワナから形成された南部のいくつかの大陸にある独特の動植物相のように、この惑星の地域の中で独自に現れます。南部の超大陸ゴンドワナが分裂する以前には、オーストラリア、南部アフリカ、南アメリカに存在するヤマモガシ科の植物の一群が最も優勢でした。

オーストラリアにおける有袋類の多様化と他の哺乳類の不在はオーストラリアの長い孤立を反映しています。オーストラリアには豊富な固有種(他の場所では見られない種)があります。これは、水の広がりによる隔離が種の移動を妨げる島の典型です。時間が経つにつれて、これらの種は、本土に存在するかもしれない祖先とは非常に異なって見える新しい種に進化的に分岐します。オーストラリアの有袋類、ガラパゴスのフィンチ、そしてハワイ諸島の多くの種はすべて、それらの起源に対して1つの点で独特ですが、それでもそれらは本土の祖先の種と遠い関係を示しています。

分子生物学

解剖学的構造と同様に、生命の分子構造は変化を伴う系統を反映しています。DNAの普遍性は、すべての生命の1つの共通の祖先の証拠を反映しています。リボソーム成分および膜構造など他の点では保存的な構造において、生命の中の遺伝コード、DNA複製、および発現が根本的に分割されていることは、主要な構造上の相違に反映されています。一般に、生物のグループの関連性は、それらのDNA配列の類似性、つまり私たちが共通の祖先からの系統と多様化から予想するパターンに反映されています。

DNA配列はまた、進化のメカニズムのいくつかに光を当ててきました。たとえば、タンパク質の新しい機能の進化は、遺伝子複製において、突然変異、選択、またはドリフト(偶然に起因するある個体群の遺伝子プールの変化)によって1つめのコピーを自由に変更することが可能であるとともに、2つ目のコピーは機能的なタンパク質を産生し続けるような事象の後に通常起こることが明らかになっています。

進化についての誤解

ダーウィンが最初にそれを提案したとき、進化の理論はいくらかの論争を引き起こしましたが、生物学者、特に若い生物学者たちは、「種の起源について」の出版の後の20年以内にほとんど普遍的にそれを受け入れました。それにもかかわらず、進化の理論は難しい概念であり、それがどのように機能するかについての誤解がたくさんあります。

学習へのリンク

このサイト(http://openstaxcollege.org/l/misconceptions)は、進化の理論に関連した主な誤解のいくつかを扱ってます。

進化は単なる1つの理論である

進化の理論の批判者たちは、「理論」という言葉の日常的な用法と、科学者がその言葉を使う方法とを意図的に混同することにより、その重要性を否定しています。科学では、私たちは「理論」のことを、自然界の一連の観察に対する徹底的にテストされ検証された説明の集まりであると理解しています。科学者たちは原子の理論、重力の理論、そして相対性理論を手にしていて、それぞれは世界についての理解された事実を記述しています。同じように、進化の理論は生物の世界についての事実を記述しています。そのようなものとして、科学における理論は、科学者によるそれを疑うための多大な努力を乗り越えてきました。対照的に、一般的な用語での「理論」は、推測または示唆された説明を意味する言葉です。この意味は、「仮説」という科学的概念のほうにより似ています。進化の批判者がそれは「単なる1つの理論」であると言っているとき、彼らはそれを裏付ける証拠がほとんどなく、それはいまだに厳密なテストを受けている最中であるということをほのめかしています。これは誤った特徴付けです。

個体が進化する

進化とは、特定の対立遺伝子を有する個体による差異のある繁殖に起因する、個体群の遺伝的構成の経時的な(特に世代を超えた)変化のことです。個体は、明らかに一生の間に変化しますが、これは発達であり、誕生時にその個体が獲得した遺伝子のセットによってプログラムされて、その個体の環境と協調したような変化を含みます。ある特性の進化について考えるときは、個体群における特性の平均値の経時変化を考えるのがおそらく最善です。たとえば、ガラパゴス諸島のガラパゴスフィンチで自然選択がくちばしサイズの変化をもたらす場合、これはフィンチの個々のくちばしが変化しているという意味ではありません。もしある時に個体群内のすべての個体のくちばしの平均サイズを測定して、それから数年後にその個体群内で同じものを測定するならば、この平均値は進化の結果として異なるものとなるでしょう。いくつかの個体は一回目の測定から二回目の測定まで生き残っていたとしても、それらは依然として同じサイズのくちばしを持っているでしょう。しかしながら、くちばしの平均の大きさの変化に貢献する多くの新しい個体がいるでしょう。

進化は生命の起源を説明する

進化に生命の起源の説明が含まれているということはよくある誤解です。逆に、この理論の批判者の中には、それが生命の起源を説明できないと信じている人もいます。この理論は生命の起源を説明しようと試みるものではありません。進化の理論は、個体群が時間とともにどのように変化するのか、そして生命がどのように種の起源を多様化させるのかを説明しています。それは、生命を定義する最初の細胞の起源を含む、生命の始まりに光を当てるものではありません。重要なこととして、生物学者は、地球上の生命の存在によって、地球上の生命に至る事象が繰り返される可能性が排除されると考えています。なぜなら、中間段階がすぐに既存の生物にとって食物になってしまうであろうからです。

しかしながら、いったん遺伝のメカニズムが細胞内または細胞の前身内のいずれかでDNAのような分子の形で整ったならば、これらの実体は自然選択の原則に従うでしょう。より効果的に繁殖できるものは、非効率的に繁殖するものを犠牲にして、その頻度を増すでしょう。進化は生命の起源を説明するものではありませんが、かつて生命以前の実体が特定の特性を獲得したときに動作したプロセスのいくつかについては、言うべきことがいくつかあるのかもしれません。

生物は目的をもって進化する

「生物は環境の変化に応じて進化する」などの言明はごく一般的ですが、そのような言明は2つのタイプの誤解につながる可能性があります。第1に、その記述を、個々の生物が進化することを意味するとは解釈しないでください。この記述は、「ある個体群は環境の変化に応じて進化する」を簡略化したものです。しかしながら、2番目の誤解は、その記述が、進化はどういうわけか意図的であることを意味していると解釈することによって生じています。環境が変化すると、個体群内のいくつかの個体、つまり特定の表現型を持つ個体が恩恵を受け、それに比例して他の表現型よりも多くの子孫を生み出します。もしその特性が遺伝的に決定されるならば、これは個体群の中で変化をもたらします。

また、自然選択が機能する変動はすでに個体群の中にあり、環境の変化に応じて生じてくるものではないことを理解することも重要です。たとえば、細菌の集団に抗生物質を加えると、時間の経過とともに、抗生物質に耐性のある細菌の集団が選択されます。遺伝子が引き起こすこの耐性は、抗生物質を加えたために突然変異によって生じたものではありません。耐性遺伝子は細菌の遺伝子プールの中にすでに存在していました(おそらく低頻度であったでしょうが)。耐性遺伝子を持たない細菌の細胞を殺す抗生物質は、耐性のある個体を強く選択します。なぜなら、それらは生き残って分裂する唯一の個体だからです。実験は、抗生物質耐性のための突然変異が抗生物質の結果としては生じないことを証明しています。

より大きな意味では、進化は目標を指向するものではありません。種は時間とともに「より良く」なることはありません。それらは単に、特定の時間における特定の環境での繁殖を最大化するような適応によって、変化する環境を追跡しているだけです。進化には、より速く、より大きく、より複雑に、さらにはより賢明な種を作り出すという目的はありません(一般的な会話ではこの種の言葉がありふれていますが)。ある種の中でどのような特性が進化するかは、存在する変動と環境との関数であり、それらは両方とも方向性を持たないようなやり方で常に変化しています。ある時に1つの環境に適応する形質は、将来のある時点で致命的になるかもしれません。これは昆虫と人間とに等しく当てはまります。

18.2 | 新しい種の形成

この節が終わるまでに、あなたは次のことができるようになります:
•種を定義し、科学者がどのようにして種を異なるものとして識別するかを記述する
•種分化につながる遺伝的変数を記述する
•接合前および接合後の生殖的障壁を特定する
•異所的種分化および同所的種分化を説明する
•適応放散について記述する

地球上のすべての生命はさまざまな遺伝的類似性を共有していますが、特定の生物だけが、有性生殖によって遺伝情報を組み合わせ、その後正常に繁殖することができる子孫を持ちます。科学者はそのような生物のことを同じ生物種のメンバーと呼んでいます。

種と繁殖能力

種とは、交配して、繁殖力のある生存可能な子孫を生み出す個々の生物のグループです。この定義によれば、ある種が他のものと区別されるのは、自然界において、それぞれの種の個体の間での交配によっては繁殖可能な子孫を生み出すことが不可能なときです。

同じ種のメンバーは、そのDNAから発達する外部と内部の両方の特徴を共有します。人々とその家族のように、2つの生物が共有する関係が密になればなるほど、彼らが共通して持つDNAがより多くなります。人々のDNAは、いとこや祖父母のDNAよりも、父親や母親のDNAにより似ている可能性が高いです。同一の種の生物は最高レベルのDNAの整列を有しているため、繁殖の成功につながるような特徴と行動を共有しています。

種の外観は、交配できる、またはできない能力を示唆することにおいて誤解を招く可能性があります。たとえば、犬(Canis lupus familiaris)は大きさ、体型、毛皮などの表現型の違いを示していますが、ほとんどの犬は交配すること、そして、成長して性的に繁殖することができるような生存可能な子犬を生み出すことができます(図18.9)。

図18.9 | (a)プードルと(b)コッカー・スパニエルは、繁殖して(c)コカプーとして知られる品種を作り出すことができます。(credit a: modification of work by Sally Eller, Tom Reese; credit b: modification of work by Jeremy McWilliams; credit c: modification of work by Kathleen Conklin)

他の場合では、同じ種のメンバーではないものの、個体が似ているように見えるかもしれません。たとえば、白頭ワシ(Haliaeetus leucocephalus)とサンショクウミワシ(Haliaeetus vocifer)はどちらも鳥でありワシですが、それぞれ別の種のグループに属します(図18.10)。もし人間が白頭ワシの卵子にサンショクウミワシの精子を入れて人工的に介入して受精させ、ひよこが孵化した場合でも、雑種(2種間の交雑)と呼ばれるその子孫はおそらく不妊、すなわち成熟した後でも正常に繁殖することができないでしょう。異なる種は発達時に活性になる異なる遺伝子を持っているかもしれません。したがって、2つの異なる方向のセットを持つ生存可能な子孫が発達することは不可能かもしれません。したがって、たとえ雑種形成が起こったとしても、2つの種は依然として別々のままです。

図18.10 | (a)サンショクウミワシは(b)白頭ワシの外観と似ていますが、2羽の鳥は異なる種のメンバーです。(credit a: modification of work by Nigel Wedge; credit b: modification of work by U.S. Fish and Wildlife Service)

種の個体群は遺伝子プールを共有しています。遺伝子プールとは、種の中のすべての遺伝子変異のコレクションのことです。繰り返しになりますが、生物のグループや個体群の中での変化の根拠は遺伝的なものでなければなりません。なぜなら、これが形質を共有し伝達する唯一の方法だからです。ある種内で変動が起こると、それらは2つの主要な経路に沿ったときだけ次世代に受け渡されます:それは無性生殖または有性生殖です。もし生殖する細胞が変化した形質を保有するならば、その変化は無性的に単純に受け継がれるでしょう。変化した形質が有性生殖によって受け継がれるためには、精子や卵子細胞などの配偶子が、変化した形質を持っていなければなりません。言い換えれば、有性生殖する生物は体細胞にいくつかの遺伝的変化を経験することがありますが、これらの変化が精子または卵子細胞で起こらなければ、変化した形質は決して次世代に到達しないでしょう。遺伝する形質だけが進化することができます。したがって、生殖は、遺伝的変化が個体群または種に根付くために最も重要な役割を果たします。要するに、生物は子孫に新しい形質を渡すために互いに繁殖することができなければなりません。

種分化

有性生殖する生物に有効な種の生物学的定義とは、実際にまたは潜在的に同系交配する個体のグループです。この規則には例外があります。多くの種が、雑種の子を生むことが可能であり、そしてしばしば自然に発生するかもしれないほど十分に似ています。しかし、種の大部分においては、この規則は一般的に成り立ちます。類似した種の間の雑種が自然に存在することは、それらが単一の同系交配する種から派生した可能性があることを示唆しており、そして種分化のプロセスがまだ完了していない可能性があります。

地球上の生命の並外れた多様性を考えると、種分化のためのメカニズムがなければなりません。種分化とは、1つの元の種から2つの種が形成されることです。ダーウィンはこの過程を分岐する事象と捉え、その過程を「種の起源について」の中の唯一の図において示しました(図18.11a)。この図とゾウの進化図(図18.11)とを比較してください。これは、ある種が時間とともに変化するにつれて分岐していき、個体群が生き残るかあるいは生物が絶滅するまで、繰り返し複数の新しい種を形成することを示しています。

図18.11 | ダーウィンの「種の起源について」の中の唯一の図解は、(a)生物学的多様性につながる種分化の事象を示す図です。この図は、今日の種の関係を示す系統図との類似点を示しています。(b)現代のゾウは、3500万年~5000万年前にエジプトに住んでいた種パレオマストドンから進化しました。

種分化が起こるためには、2つの新しい個体群が1つの元の個体群から形成されなければならず、それらは2つの新しい個体群からの個体が交配するのが不可能となるように進化しなければなりません。生物学者は、これが起こり得るメカニズムを2つの広いカテゴリーに分類することを提案しています。異所的(アロパトリック:アロ- = 「他の」、 -パトリック = 「故郷」)種分化は、個体群が親の種から地理的に分離することとそれに続く進化を含みます。同所的(シンパトリック:シン- = 「同じ」、 -パトリック = 「故郷」)種分化は、1つの場所に残っている親の種内で起こる種分化を含みます。

生物学者は種分化の事象を、1つの祖先種が2つの子孫種に分裂することと考えています。2つより多く種が一度に形成されないことの理由は、それがさほどありそうもないということ、そして私たちが複数の事象を時間的に近いところで発生する単一の分裂として概念化できるということを除いては、ありません。

異所的種分化

地理的に連続した個体群は比較的均質な遺伝子プールを持っています。個体が移動して新しい場所にいる個体と交配することができるため、遺伝子流動、つまり種の範囲にわたる対立遺伝子の移動は比較的自由です。したがって、分布の一端における対立遺伝子の頻度は、他端における対立遺伝子の頻度と同様になるでしょう。個体群が地理的に不連続になると、それは対立遺伝子の自由な流れを妨げます。その分離がある期間続くと、2つの個体群は異なる軌道に沿って進化することができます。そして、多数の遺伝子座におけるそれらの対立遺伝子の頻度は、新しい対立遺伝子がそれぞれの個体群における突然変異によって独立して生じるにつれて、次第に異なっていきます。典型的には、気候、資源、捕食者、そして2つの個体群の競争相手などの環境条件は異なり、それぞれのグループで異なる適応を好むように自然選択を引き起こします。

異所的種分化につながる個体群の分離は、さまざまな方法で発生する可能性があります:新しい分岐を形成する川、新しい谷を形成する浸食、戻ることができないような新しい場所に移動する生物のグループ、または海に浮かんで島に流れ着いた種子。個体群を分離するのに必要な地理的分離の性質は、その生物の生物学とその拡散の可能性に完全に依存します。空を飛ぶ昆虫の2つの個体群が近くの別々の渓谷に居住していたとすると、それぞれの個体群の個体は飛び交うことで遺伝子流動を継続する可能性があります。しかしながら、もし新しい湖が2つのげっ歯類の個体群を分けた場合、遺伝子流動が継続する可能性は低いでしょう。そのため、種分化が発生する可能性が高くなります。

生物学者は、異所的なプロセスを2つのカテゴリーに分類します:分散と分断分布です。分散はある種のいくつかのメンバーが新しい地理的地域に移動するときであり、そして分断分布は物理的に生物を分裂するような自然な状況が起こるときです。

科学者たちは、異所的種分化が起こっている多くの事例を記録してきました。たとえば、アメリカ合衆国の西海岸に沿って、2つの別々のマダラフクロウの種が存在します。北マダラフクロウは、その近縁種である南部に生息するメキシコマダラフクロウとは遺伝的および表現型的な違いがあります(図18.12)。

図18.12 | 北マダラフクロウとメキシコマダラフクロウは、気候や生態系が異なる地理的に離れた場所に生息しています。このフクロウは異所的種分化の一例です。(credit “northern spotted owl”: modification of work by John and Karen Hollingsworth; credit “Mexican spotted owl”: modification of work by Bill Radke)

さらに、科学者たちは、かつて同じ種であった2つのグループ間の距離が遠いほど、種分化が発生する可能性が高いことを発見しました。これは論理的に見えます。なぜなら、距離が遠くなるにつれて、近接した場所よりもさまざまな環境要因の共通点が少なくなるであろうからです。2つのフクロウについて考えてみましょう。北部では、気候は南部よりも涼しいです。それぞれの生態系における生物の種類や、それらの行動や習慣は異なります。また、南部のフクロウの狩猟習慣や獲物の選択は、北部のフクロウとは異なります。これらの違いは、フクロウの進化する差異につながることがあり、種分化が発生する可能性が高くなります。

適応放散

場合によっては、1つの種の個体群が地域全体に分散し、それぞれが異なるニッチまたは孤立した生息地を見つけます。時間が経つにつれて、それらの新しいライフスタイルのさまざまな要求は、単一の種に由来する複数の種分化の事象へとつながります。私たちはこれを適応放散と呼びます。なぜなら、多くの適応が単一の起点から進化し、種をいくつかの新しいものに放散させるからです。ハワイ諸島のような島々の群島は、水域がそれぞれの島を囲んでおり、多くの生物にとって地理的な孤立へとつながるため、適応放散の事象に理想的な背景を提供します。ハワイミツスイは、適応放散の一例を示しています。創始者である単一の種から、図18.13の6つを含む、数多くの種が進化してきました。

図18.13 | ミツスイの鳥は適応放散を示しています。1つの元の種の鳥から、それぞれが独自の特徴を持った複数の他の種が進化しました。

図18.13のそれぞれの種のくちばしの違いに注目してください。それぞれの新しい生息地における特定の食料源に基づく自然選択に対応した進化は、その特定の食料源に適した異なるくちばしの進化をもたらしました。種子を食べる鳥は固いナッツを壊すのに適しているより太くて強いくちばしを持っています。花蜜を食べる鳥は花に差し込んで蜜に到達するための長いくちばしを持っています。昆虫を食べる鳥は昆虫を突き刺すのに適した刀のようなくちばしを持っています。ダーウィンのフィンチは群島での適応放散のもう1つの例です。

学習へのリンク

このインタラクティブなサイト(http://openstaxcollege.org/l/bird_evolution)をクリックして進むことで、500万年前から今日に至るまで島の鳥が進化的な段階を経てどのように進化したかを確認してください。

同所的種分化

同じ生息地で生活し繁殖し続ける個体を分離するような物理的な障壁がない場合、分岐は起こるでしょうか?答えはイエスです。私たちは同じ空間内での種分化のプロセスを同所的と呼びます。接頭辞「シン」は同じということを意味するため、「異所的(アロパトリック)」が「他の故郷」を意味するのに対して、「同所的(シンパトリック)」とは「同じ故郷」を意味します。科学者たちは多くのメカニズムを提案し研究してきました。

同所的種分化の1つの形態は、細胞分裂中の深刻な染色体異常から始まる可能性があります。通常の細胞分裂事象では、染色体は複製し、対になり、そして分離して、それぞれの新しい細胞が同数の染色体を有するようになります。しかしながら、時には、対が分離し、最終的な細胞産物が多すぎるまたは少なすぎる個々の染色体を有することがあります。私たちはこの状態を異数性と呼びます(図18.14)。

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図18.14 | 異数性は、減数分裂中の不分離のために配偶子が多すぎるまたは少なすぎる染色体を有する場合に生じます。この例では、結果として得られる子孫は2n+1または2n-1個の染色体を持つことになります。

2n+1個の染色体を持つ子孫と2n-1個の染色体を持つ子孫のどちらが最も生き残る可能性がありますか?

倍数性とは、細胞または生物が余分な染色体のセットを持っている状態のことです。科学者は、倍数性状態の個体の生殖的隔離につながる可能性がある2つの主要なタイプの倍数性を同定しました。生殖的隔離とは交配する能力がないことです。場合によっては、倍数体の個体は、自身の種に由来する染色体の2つかそれ以上の完全なセットを持つことがあります。私たちはこの状態を同質倍数性(オートポリプロイディ)と呼びます(図18.15)。接頭辞「オート」は「自身」を意味します。したがって、この用語は自分自身の種に由来する複数の染色体のことを意味します。倍数性は、染色体が分離するのではなく、全ての染色体が1つの細胞に移動するという減数分裂の誤りから生じます。

図18.15 | 有糸分裂の後に細胞質分裂が起こらない場合に同質倍数性が生じます。

たとえば、もし2n=6の植物種が二倍体でもある同質倍数性配偶子を生産する場合(それらはn=3であるべきですが2n=6だったとき)、この配偶子はいまや本来持っているべき染色体の2倍の染色体を持っています。これらの新しい配偶子はこの植物種が作り出す通常の配偶子と適合しないでしょう。しかしながら、それらは、自家受粉するか、または同じ二倍体数を持つ配偶子を有する他の同質倍数性植物と繁殖することができるでしょう。このように、同所性種分化は、私たちが四倍体と呼ぶ4nの子孫を形成することによって迅速に起こることがあります。これらの個体はすぐにこの新しい種類のものでのみ繁殖することができますが、祖先の種のものとは繁殖できないでしょう。

他の倍数性の形態は、2つの異なる種の個体が繁殖して、生存可能な子孫を形成するときに起こります。私たちはそれを異質倍数性(アロポリプロイディ)と呼びます。接頭辞「アロ」は「他の」を意味します(異所的(アロパトリック)を思い出してください)。したがって、異質倍数体は2つの異なる種からの配偶子が結合したときに発生します。図18.16は、異数倍数体を形成することができる1つの可能な方法を示しています。生存し繁殖する能力のある雑種が生まれるまでには、2世代間、または2回の繁殖行動が必要であることに注意してください。

図18.16 | 異質倍数性は、2つの種が交配して生存可能な子孫を産むときに生じます。この例では、ある種からの通常の配偶子が別の種からの倍数性配偶子と融合します。生存可能な子孫を生み出すためには2回の交配が必要です。

小麦、綿、およびタバコの植物の栽培形態はすべて異質倍数体です。倍数性は動物で時折起こりますが、それは植物で最も一般的に起こります。(私たちがここで説明するいずれかのタイプの染色体異常を持つ動物は、生き残って正常な子孫を作り出すことはまずありません。)研究者は、研究されたすべての植物種の半数以上が倍数性を通じて進化した種に関連をたどることができるのを発見しました。植物におけるこのような高い割合の倍数性から、一部の科学者は、このメカニズムが誤りとしてよりも適応として起こると仮定しています。

生殖的隔離

十分な時間があれば、個体群間の遺伝的および表現型の相違は、生殖を左右する性質に影響を及ぼします:もし2つの個体群の個体が一緒にされた場合、交配は起こりにくいでしょうが、もし交配が起こった時には、子孫は生存可能でないか不妊となるでしょう。多種多様な性質が、2つの個体群の生殖的隔離(交配する能力)に影響を与える可能性があります。

生殖的隔離はさまざまな方法で起こりえます。科学者たちはそれらを2つのグループに分類しています:接合前の障壁と接合後の障壁です。接合子とは、受精卵であることを思い出してください。これは、有性的に生殖する生物の発達の最初の細胞です。したがって、接合前障壁とは、生殖が行われるのを妨げるメカニズムです。これには、生物が生殖を試みるときに受精を妨げる障壁が含まれます。接合子の形成後には、接合後障壁が生じます。これには、胚形成期を生き延びることができない生物および不妊として生まれる生物が含まれます。

いくつかの種類の接合前障壁は生殖を完全に妨げます。多くの生物は一年の特定の時期に、しばしば年に一度しか繁殖しません。私たちが時間的隔離と呼ぶ繁殖スケジュールの違いは、生殖的隔離の一形態として作用することができます。たとえば、同じ地域に2つのカエル種が生息していますが、片方は1月から3月までの間に繁殖し、もう一方は3月から5月までの間に繁殖します(図18.17)。

図18.17 | これら2つの関連するカエルの種は時間的な生殖隔離を示しています。(a)ラナ・オーロラ(Rana aurora)は、(b)ラナ・ボイリイ(Rana boylii)よりも年の早い時期に繁殖します。(credit a: modification of work by Mark R. Jennings, USFWS; credit b: modification of work by Alessandro Catenazzi)

場合によっては、ある種の個体群が新しい生息地に移動したり移動させられたりして、同じ種の他の個体群と重複しない場所に住むようになります。私たちはこのような状況のことを生息地隔離と呼びます。親の種との繁殖は止まり、そしていまや生殖的にも遺伝的にも独立した新しいグループが存在することになります。たとえば、洪水の後に分割されたコオロギの個体群は、もはや相互に交流することができません。時間が経つと、自然選択の力、突然変異、および遺伝的浮動により、2つのグループが分岐するでしょう(図18.18)。

図18.18 | 2つの個体群が異なる生息地を占有している場合に種分化が生じることがあります。生息地は遠く離れている必要はありません。コオロギの(a)グリラス・ペンシルヴァニカス(Gryllus pennsylvanicus)は砂質土を好み、コオロギの(b)グリラス・ファーマス(Gryllus firmus)はローム質土を好みます。この2つの種はごく接近して生息することができますが、それらの異なる土壌の好みのために、それらは遺伝的に隔離されました。

特定の行動の有無によって繁殖が妨げられると、行動的隔離が起こります。たとえば、雄のホタルは雌を引き付けるために特定の光パターンを使います。さまざまなホタルの種はそれぞれの光を違った方法で提示します。もしある種の雄が別の種の雌を引き付けようとした場合、その雌は光のパターンを認識せず、雄と交尾しないでしょう。

他の接合前障壁は、配偶子細胞(卵子と精子)の違いが受精の妨げになるときに機能します。私たちはこれを配偶子障壁と呼びます。同様に、ある場合では、密接に関連した生物が交配しようと試みますが、それらの生殖構造は単に適合しません。たとえば、異なる種のイトトンボの雄は異なる形の生殖器官を持っています。もしある種が別の種の雌と交配しようとした場合、それらの体の部分は単に一緒に適合しません(図18.19)。

図18.19 | 雄の生殖器官の形状は、雄のイトトンボの種によって異なり、その種の雌とのみ一致します。生殖器官の不適合性はいくつもの種を生殖的に隔離されたままにします。

植物において、ある種類の受粉媒介者を引き付けることを目的とした特定の構造は、同時に、異なる受粉媒介者が花粉に接近するのを防止します。動物が蜜にたどり着くために通らなければならないトンネルは、長さと直径の点で大きく異なることがあり、それは植物が異なる種と他家受粉することを妨げます(図18.20)。

図18.20 | いくつかの花は特定の受粉媒介者を引き付けるように進化しました。(a)ジギタリスの幅の広い花はミツバチによる受粉に適していますが、(b)アメリカノウゼンカズラの長い、チューブ状の花はハチドリによる受粉に適しています。

受精が起こり接合子が形成されると、接合後障壁が繁殖を妨げることがあります。雑種個体は多くの場合、子宮内で正常に形成することができず、単純に胚形成段階を超えて生き残ることはありません。私たちはこれを雑種死滅と呼びます。なぜなら、雑種生物は単純に生存可能ではないからです。別の接合後の状況では、生殖は不妊の雑種の誕生および成長につながります。したがって、その生物は自分自身の子孫を繁殖することはできません。私たちはこれを雑種不稔性と呼びます。

種分化に対する生息地の影響

同所的種分化は倍数性以外の方法でも起こることがあります。たとえば、湖に生息する魚の種を考えてみましょう。個体群が大きくなるにつれて、食べ物をめぐる競争が激化します。食べ物を見つけるという圧力の下で、これらの魚のあるグループが他の魚が使用していなかった別の資源を発見し、それを食べていくという遺伝的柔軟性を持っていたとします。この新しい食料源が湖の別の深さにあったとしたらどうなるでしょうか?時間が経つにつれて、2番目の食料源を食べている魚たちは他の魚よりもお互いの間でもっと交流するようになるでしょう。したがって、それらは一緒に繁殖もするでしょう。これらの魚の子孫は、おそらく彼らの両親のようにふるまうことになります。すなわち、同じ場所で餌を食べて生活し、元の個体群とは別れたままです。この魚のグループが最初の個体群から分離されたまま残り続ける場合、それらの間により多くの遺伝的差異が蓄積するにつれて、結果的に同所的種分化が起こることがあります。

このシナリオは、生殖的隔離をもたらす他のものと同様に、自然の中で実際に機能します。そのような場所の1つはアフリカのビクトリア湖であり、ここは魚のシクリッドの同所的種分化で有名です。研究者たちはこれらの魚の中で何百もの同所的種分化の​​出来事を発見してきました。そしてそれは多くの回数が起こっただけでなく短期間のうちに起こったものでもありました。図18.21は、ニカラグアの魚のシクリッドの個体群におけるこの種の種分化を示しています。この場所では、2種類のシクリッドが同じ地理的な場所に住んでいますが、さまざまな食物を食べることができるように形態が異なるようになっています。

図18.21 | ニカラグアのアポヤケ湖の魚のシクリッドは同所的種分化の​​証拠を示しています。火口湖であるアポヤケ湖は1800年前にできたものですが、遺伝的な証拠からは、わずか100年前には単一のシクリッドの魚の個体群が湖に生息していたことがわかっています。それにもかかわらず、現在は湖には異なる形態と食生活を持つ2つの個体群が存在し、科学者たちはこれらの個体群は種分化の初期段階にあるのかもしれないと考えています。

18.3 | 再結合率と種分化率

この節が終わるまでに、あなたは次のことができるようになります:
•雑種地帯における種進化の経路を記述する
•種分化率に関する2つの主要な理論を説明する

種分化は一連の進化的な時間にわたって起こるので、新しい種が発生するときには、密接に関連した種が交流し続ける移行期間があります。

再結合

種分化後、2つの種が再結合したり、無期限に相互交流を続けたりすることがあります。個々の生物は、それらが交配することが可能であるようなあらゆる近くの個体と交配するでしょう。私たちは、密接に関連した2つの種が相互に交流し合って繁殖し、雑種を形成する場所のことを雑種地帯と呼びます。時間が経つにつれて、雑種地帯は雑種の適応度および生殖的障壁に応じて変化することがあります(図18.22)。もし雑種が両親よりうまく適応していないならば、種分化の強化が起こります。そして、彼らがもはや交配して生存可能な子孫を生み出すことができなくなるまで種は分岐し続けます。生殖的障壁が弱まると、融合が起こり、2つの種が1つになります。もし雑種が適応していて繁殖することができるならば、障壁は変わらずに残ります:安定性が生じ、そして雑種形成が続きます。

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図18.22 | 種分化が起こった後、2つの別々だが密接に関連した種が雑種地帯と呼ばれる地域で子孫を作り続けることがあります。生殖的障壁および雑種の相対的な適応度に応じて、強化、融合、または安定性が生じることがあります。

もし2つの種が異なる食事を食べていたものの一方の食料源が排除され、両方の種が同じ食物を食べることを余儀なくされた場合、この雑種地帯にはどのような変化が最も起こりそうですか?

雑種は、親よりも適応的でない、親よりも適応的である、またはほぼ同じのいずれかです。通常雑種はあまり適応的でない傾向があります。したがって、そのような繁殖は時間とともに減少し、私たちが強化と呼ぶ過程で2つの種をさらに分岐するように動かします。科学者たちは、雑種の低い成功率が元の種分化を強化するために、この用語を使っています。もし雑種が親と同程度またはそれ以上に適応的である場合、2つの種は融合して1つの種になることがあります(図18.23)。科学者たちはまた、2つの種が別々のままであるが、いくつかの個体を生み出すように相互に交流し続けるときがあることも観察しています。科学者たちはこれを安定性として分類しています。なぜなら、正味において実際の変化は起きていないからです。

種分化の異なる率

世界中の科学者たちが、生きている生物種と化石記録で見つかった生物の両方の観察結果を文書化しながら種分化を研究しています。彼らの考え方が具体化し、研究が生命の進化についての新しい詳細を明らかにするにつれて、彼らは種分化率を説明するのを助けるためにモデルを開発しています。種分化がどれだけ素早く起こるかに関しては、私たちは漸進的種分化モデルと断続平衡モデルという2つの最近のパターンを観察することができます。

漸進的種分化モデルでは、種は時間をかけて漸進的に小さな段階で分岐します。断続平衡モデルでは、新しい種は親の種から素早く変化し、その後長期間にわたってほとんど変化しないまま残ります(図18.23)。それは断続した、または周期的な変化から始まり、その後は均衡を保つために、私たちは、この素早い変化のモデルを断続平衡と呼びます。断続平衡はより速いテンポを示唆しますが、それは必ずしも漸進主義を排除するものではありません。

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図18.23 | (a)漸進的種分化では、形質が徐々に変化するにつれて、種はゆっくりとした着実なペースで分岐します。(b)断続平衡では、種は急速に分岐し、その後は長期間変化しないまま残ります。

次の記述のうち、間違っているものはどれですか?
a.断続平衡は、環境の急激な変化を経験する小さな個体群で最も起こりやすいです。
b.断続平衡は、安定した気候の中で生息する大きな個体群で最も起こりやすいです。
c.漸進的種分化は、安定した気候の中で生息する種で最も起こりやすいです。
d.漸進的種分化と断続平衡は両方とも種の分岐をもたらします。

種分化率の変化に対する主な影響要因は環境条件です。いくつかの条件下では、選択は素早くまたは根本的に起こります。何千年もの間同じ基本的な形態で生きてきたカタツムリの種を考えてみましょう。彼らの化石の層は長い間似ているように見えるでしょう。水位の低下など、環境の変化が起きると、短時間のうちに少数の生物が他の生物から分離され、本質的に1つの大きな個体群と1つの小さな個体群が形成されます。小さな個体群は新しい環境条件に直面しています。その遺伝子プールが急速に非常に小さくなったので、表面化しそして新しい条件を生き残るのを助けるどのような変化も優勢な形態になります。

学習へのリンク

このカタツムリの種分化の物語の続きは、このウェブサイト(http://openstaxcollege.org/l/snails)にアクセスしてください。

重要用語

適応:現在の環境での生存と繁殖を助けるような、生物における遺伝的形質または行動

適応放散:1つの種が他のいくつかの種を形成するために放散するときの種分化

異所的種分化:地理的な分離を介して発生する種分化

異質倍数性:2つの関連しているが別々の種の間で形成された倍数性

異数性:その種にとって余分な染色体を持っているか、または染色体が欠けている細胞の状態

同質倍数性:単一の種内に形成された倍数性

行動的隔離:特定の行動またはその欠如が繁殖の妨げとなる場合に発生する生殖的隔離の種類

収斂進化:生物のグループが独立して類似の形態に進化するプロセス

分散:ある種の少数のメンバーが新しい地理的領域に移動したときに発生する異所的種分化

分岐進化:生物のグループが1つの共通の点から多様な方向に進化するプロセス

配偶子障壁:密接に関連した異なる種の個体が交配するが、それらの配偶子細胞(卵子と精子)の違いにより受精が妨げられるときに生じる接合前障壁

漸進的種分化モデル:時間の経過とともに種が小さな段階で徐々に発散する様子を示すモデル

生息地隔離:種の個体群が新しい生息地に移動してまたは移動させられて、同じ種の他の個体群と重複しないような場所に居住することになったときに生じる生殖的隔離

相同構造:共通の祖先を持つ多様な生物における類似した構造

雑種:同じ種ではない、密接に関連している2つの個体の子孫

雑種地帯:2つの密接に関連した種が相互交流して繁殖し続け、雑種を形成する区域

自然選択:その形質のために環境変化を生き残り、進化的変化をもたらすような、好ましい遺伝的形質を持つ個体の繁殖

接合後障壁:接合子形成後に起こる生殖的隔離のメカニズム

接合前障壁:接合子形成前に起こる生殖的隔離のメカニズム

断続平衡:ある事象によって個体群の小さな一部がその個体群の残りの部分から切り離されるときに発生することがある急速な種分化のモデル

強化:2つの関連する種の間の雑種の適応度が低いために、その2つの種の間での種分化の分岐が継続すること

生殖的隔離:ある種が他の種から生殖的に独立しているときに起こる状況。行動、場所、または生殖的障壁がこれを引き起こすことがある

種分化:新しい種の形成

種:交配して繁殖可能な子孫を作り出す個体群のグループ

同所的種分化:同じ地理的空間で発生する種分化

時間的隔離:生殖的隔離につながる接合前障壁の1つの形態として作用することのできる繁殖スケジュールの違い

変動:ある個体群内の個体間の遺伝的差異

痕跡構造:ある生物に存在はするが明らかな機能はなく、遠い先祖の機能的構造に由来するように見える物理的構造

分断分布:環境中の何かが同じ種の生物を別々のグループに分けるときに起こる異所的種分化

この章のまとめ

18.1 | 進化を理解する

進化とは突然変異を通じた適応の過程であり、それはより望ましい特徴が次世代に受け継がれることを可能にします。時間が経つにつれて、生物はその生存に有益であるような特徴をより多く進化させます。生物が環境の圧力に適応し変化するためには、遺伝的変動が存在しなければなりません。遺伝的変動により、個体は形態と機能の違いを持っ​​ており、それはあるものが他のものよりもある条件をうまく生き残ることを可能にします。これらの生物はその子孫にそれらの有利な形質を受け渡します。最終的には、環境が変化し、かつては望ましいものであった有利な形質が望ましくない特性となり、生物がさらに進化することがあります。進化は、複数の種で類似の形質が進化する収斂であったり、共通の祖先に由来する複数の種で多様な形質が進化する分岐であったりすることがあります。私たちはDNAコードと化石記録によって、そしてまた相同構造と痕跡構造の存在によって進化の証拠を観察することができます。

18.2 | 新しい種の形成

種分化は2つの主な経路に沿って起こります:地理的な分離(異所的種分化)と、共有された生息地内で起こるメカニズムによるもの(同所的種分化)です。どちらの経路も、何らかの形で個体群を生殖的に隔離します。生殖的隔離のメカニズムは密接に関連した種の間の障壁として作用し、それらが遺伝的に独立した種として分岐して存在することを可能にします。接合前障壁は接合子の形成前に繁殖を阻止します。一方、接合後障壁は受精が起こった後に繁殖を妨げます。新しい種が発生するためには、何かが生殖的障壁を突破しなければなりません。同所的種分化は、余分な染色体を持つ配偶子(倍数性)を形成するような減数分裂のエラーによって起こることがあります。同質倍数性は単一の種内で発生します。一方、異質倍数性は密接に関連した種の間で発生します。

18.3 | 再結合率と種分化率

種分化は厳密な区分ではありません:雑種地帯と呼ばれる地域では、密接に関連した種の間の重なりが発生することがあります。生物は他の似た生物と繁殖します。これらの雑種の子孫の適応度は、2つの種の進化の経路に影響を及ぼします。科学者たちは、種分化率について2つのモデルを提案しています。1つのモデルは、ある種が時間の経過とともにゆっくりと変化する様子を示しています。もう1つのモデルは、親世代から新しい種への変化がいかに迅速に起こり得るかを示しています。どちらのモデルも自然選択のパターンに従い続けています。

ビジュアルコネクション問題

1.図18.14 | 2n+1個の染色体を持つ子孫と2n-1個の染色体を持つ子孫のどちらが最も生き残る可能性がありますか?

2.図18.22 | もし2つの種が異なる食事を食べていたものの一方の食料源が排除され、両方の種が同じ食物を食べることを余儀なくされた場合、この雑種地帯にはどのような変化が最も起こりそうですか?

3.図18.23 | 次の記述のうち、間違っているものはどれですか?
a.断続平衡は、環境の急激な変化を経験する小さな個体群で最も起こりやすいです。
b.断続平衡は、安定した気候の中で生息する大きな個体群で最も起こりやすいです。
c.漸進的種分化は、安定した気候の中で生息する種で最も起こりやすいです。
d.漸進的種分化と断続平衡は両方とも種の分岐をもたらします。

レビュー問題

4.チャールズ・ダーウィンとアルフレッド・ウォレスはどの科学的概念を独自に発見しましたか?
a.突然変異
b.自然選択
c.過剰繁殖
d.有性生殖

5.次の状況のうち、どれが自然選択につながるでしょうか?
a.2つの植物の種子が互いに近くの場所で芽吹き、そして、一方は他方よりも大きく成長する。
b.2種類の魚が同じ種類の食物を食べ、そして、一方は他方よりも食物をうまく集めることができる。
c.雄のライオンが雌と交尾する権利を競っており、可能な勝者は1匹だけである。
d.上記のすべて

6.どの記述が表現型の例ですか?
a.あるアヒルが青いくちばしを持っている。
b.ある突然変異が花に起こった。
c.ほとんどのチーターは単独で生活を送っている。
d.aとcの両方

7.収斂進化の例としてもっともありそうなものは、どの状況ですか?
a.イカと人間は類似した目の構造を持っている。
b.蠕虫と蛇はどちらも足なしで動く。
c.いくつかのコウモリや鳥はそれらが飛ぶことを可能にする翼を持っている。
d.上記のすべて

8.異所的種分化につながる可能性が最も高いのは、どの状況ですか?
a.洪水が新しい湖の形成を引き起こす。
b.嵐がいくつかの大きな木の倒れる原因となる。
c.突然変異が新しい形質を発生させる。
d.怪我がある生物に新しい食物源を探させることになる。

9.分散と分断分布の主な違いは何ですか?
a.一方は異所的種分化につながるが、他方は同所的種分化につながる。
b.一方は生物の移動を含み、他方は環境の変化を含む。
c.一方は発生している遺伝子変異に依存し、他方は依存しない。
d.一方は密接に関連した生物を含み、他方は同じ種の個体のみを含む。

10.どの変数が異所的種分化をより早く起こす可能性を高めますか?
a.低い突然変異率
b.分断されたグループ間の長い距離
c.雑種形成の例の増加
d.それぞれの個体群の個体数が同じであること

11.同質倍数体と異質倍数体の主な違いは何ですか?
a.染色体の数
b.染色体の機能性
c.余分な染色体の起源
d.余分な染色体の中の突然変異の数

12.どの生殖の組み合わせが雑種を生み出しますか?
a.地理的に異なる領域の同じ種の個体が生殖するとき
b.同じ生息地を共有する2つの個体が生殖するとき
c.密接に関連した種のメンバーが生殖するとき
d.同じ親の子孫が生殖するとき

13.他のメンバーから生殖的に隔離される種の基礎となる条件はどれですか?
a.それは関連する種と生息地を共有していない。
b.それは単一の生息地の外には存在しない。
c.それは他の種と遺伝情報を交換しない。
d.それはかなりの期間、進化的変化を経験しない。

14.接合前障壁の例でないものは、どの状況ですか?
a.2つの種のカメが、1年の異なる時期に繁殖する。
b.2つの種の花が、異なる受粉媒介者を引き付ける。
c.2つの種の鳥が、異なる求愛の踊りを示す。
d.2つの種の昆虫が、不妊の子孫を産む。

15.雑種子孫の適応度が低いことに基づく種の継続的な分岐を記述するのに用いられる用語はどれですか?
a.強化
b.融合
c.安定性
d.断続平衡

16.断続平衡の一部になる可能性が最も低いのは、種分化のどの要素でしょうか?
a.個体群の分割
b.環境条件の変化
c.全個体間で進行中の遺伝子流動
d.一度に発生する多数の突然変異

クリティカルシンキング問題

17.もしある人が1つの区画に一握りのエンドウマメ植物の種子をまいたならば、この状況で自然選択はどのように機能するでしょうか?

18.科学者はなぜ痕跡構造を進化の証拠と見なすのでしょうか?

19.「理論」の科学的な意味は、一般的な用語の意味とはどう違いますか?

20.猿がマウスより進化しているという記述が間違っている理由を説明してください。

21.なぜ諸島が適応放散が発生するのに理想的な条件を提供するのですか?

22.2つの種の魚が最近同所的種分化を経験しました。それぞれの種の雄は異なる色をしており、雌はそれを通して自身と同じ種からのパートナーを識別して選ぶことができました。しばらくすると、汚染によって湖がとても濁り、雌が色を見分けるのが難しくなりました。このような状況では何が起きるでしょうか?

23.倍数性の個体がかなり素早く種分化を引き起こすのはなぜですか?

24.種分化モデルの両方の率が持つ共通点は何ですか?

25.雑種の繁殖が2つの種を1つに融合させる状況を記述してください。

解答のヒント

第18章

1 図18.14 遺伝物質の喪失はほとんどの場合致命的であるため、2n+1個の染色体を持つ子孫のほうが生存する可能性が高くなります。3 図18.23 B 4 B 6 D 8 A 10 B 12 C 14 D 16 C 17 他の個体とその区画の資源をめぐって競争することを含め、その区画の資源を最も有効に利用できる植物が、自身の種子をより多く作り出し、そして、資源をより有効に利用することを可能にする形質が、次世代の個体群の中で増えるでしょう。19 科学では、理論は、自然の多数の観測について徹底的にテストされ検証された一連の説明です。それは科学における知識の最も強い形式です。これとは対照的に、一般的な用語での理論は、何かについての推測や憶測を意味することがあります。つまり、その理論によって含意される知識が非常に弱いということを意味します。21 1つの種の生物が一緒になって島に到着し、それから諸島の至るところに分散し、それぞれが異なるニッチに落ち着き、競争を減らすために異なる食料資源を利用することがあります。23 新しいnの数をもつ配偶子の形成は、一世代で起こることがあります。2~3世代後、これらの新しい雑種のうちの十分な数のものが、一緒に繁殖することができる新しい種を形成することができます。25 もし雑種の子孫が両親と同程度かそれ以上の適応度であれば、繁殖は両方の種と雑種の間で続き、最終的にはすべての生物が1つの種の傘下に入るでしょう。

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