生物学 第2版 — 第24章 菌類 —
Japanese translation of “Biology 2e”
OpenStax のサイトで公開されている教科書“ Biology 2e”の翻訳です。こちらのページから各章へ移動できます。
24 | 菌類
この章の概要
24.1:菌類の特徴
24.2:菌類の分類
24.3:菌類の生態
24.4:菌類寄生生物と病原体
24.5:人間の生活における菌類の重要性
はじめに
菌類(fungus)という単語は、キノコを表すラテン語の単語から来ています。確かに、おなじみのキノコは、多くの種類の菌類が使用する生殖構造です。しかしながら、キノコをまったく作り出さない菌類の種も多くあります。典型的な菌類細胞は、真核生物であることから、真核と多くの膜で包まれた細胞小器官を含んでいます。菌界は、総称して真菌類と呼ばれる非常に多様な生物を含んでいます。科学者らは約10万種の菌類を同定しましたが、これは地球上に存在するであろう150万種の菌類のほんの一部にすぎません。食用キノコ、酵母、黒カビ、および抗生物質ペニシリンの生産者であるペニシリウム・ノタトゥム(Penicillium notatum)はすべて、真核生物ドメインに属する菌界のメンバーです。
かつては植物のような生物と考えられていた菌類は、植物よりも動物と密接に関連しています。菌類は光合成ができません。それらはエネルギーと炭素の源として複雑な有機化合物を使用するので従属栄養性です。菌類は他のいくつかの形質を動物と共有しています。それらの細胞壁は、節足動物の外骨格に見られるキチンで構成されています。菌類は、動物の髪の毛や皮膚にも見られるメラニンを含む多くの色素を生成します。動物と同様に、菌類も炭水化物をグリコーゲンとして保存します。しかしながら菌類は、細菌と同様に、細胞表面全体で栄養素を吸収し、分解者として働き、有機物質を単純な分子に分解することによって栄養素をリサイクルするのを助けます。
菌類の生物の中には無性的にのみ増殖するものもあれば、無性生殖と有性生殖の両方で世代交代を行うものもあります。大部分の菌類は多数の胞子を産生します。胞子は有糸分裂を経て多細胞の一倍体個体を形成することができる一倍体細胞です。
菌類はしばしば他の生物と相互作用し、有益なまたは相利共生的な群集を形成します。たとえば、ほとんどの陸生植物は菌類と共生関係を形成します。植物の根は菌根を形成する菌類の地下部分とつながっています。菌根を通して、菌類と植物は栄養分と水を交換し、両方の種の生存を大いに助けます。あるいは、地衣類は、菌類とその光合成パートナー(通常は藻)との間の群集です。
菌類も植物や動物に深刻な感染を引き起こします。たとえば、菌類オフィオストマ・ウルミ(Ophiostoma ulmi)によって引き起こされるニレ立ち枯れ病は、樹木の維管束系に感染することによって多くの在来種のニレを破壊する、特に壊滅的な種類の菌類感染症です。ニレキクイムシは媒介生物として働き、木から木へとこの病気を伝染させます。この菌類は1900年代に偶然に持ち込まれ、アメリカ大陸全体でニレの木の多くを枯らしました。ヨーロッパやアジアのニレの多くはアメリカのニレよりもニレ立ち枯れ病にかかりにくいです。
人間では、菌類感染症は一般に治療が難しいと考えられています。細菌とは異なり、菌類は真核生物なので、伝統的な抗生物質療法に反応しません。菌類感染症は、免疫系が弱っている個人にとって致命的となる可能性があります。
菌類は多くの商業的用途を有します。食品業界では、製パン、醸造、チーズとワインの製造に酵母を使用しています。多くの工業用化合物は菌類の発酵の副生成物です。菌類は、多くの市販の酵素や抗生物質の源です。
24.1 | 菌類の特徴
この節が終わるまでに、あなたは次のことができるようになります:
•菌類の特徴を列挙する
•菌糸体の組成を記述する
•菌類の栄養様式を記述する
•菌類の有性生殖および無性生殖を説明する
人間は先史時代から酵母やキノコを使ってきましたが、最近まで、菌類の生物学はあまり理解されていませんでした。実際のところ、20世紀半ばまで、多くの科学者は菌類を植物として分類していたのです!菌類は、植物と同様に、ほとんどが固着性であり、その場所に根ざしているように見えます。それらは植物に似た茎のような構造を持っているとともに、土の中に根のような菌類の菌糸体も持っています。さらに、それらの栄養様式はよくわかっていませんでした。菌類の生物学の分野における進歩は、菌類学:菌類の科学的研究の結果でした。化石の証拠によると、菌類は先カンブリア時代に現れました。およそ4億5000万年前のことです。菌類ゲノムの分子生物学的分析は、菌類が植物より動物のほうにより密接に関連していることを実証しています。いくつかの現在の系統分類学的系統発生の下では、それらは単一の共通の祖先を共有するのではなく、特徴を共有する生物の多系統グループであり続けています。
キャリアへのつながり
菌類学者
菌類学者は菌類を研究する生物学者です。歴史的に、菌類学は微生物学の一部門であり、そして多くの菌類学者は微生物学の学位を取得して彼らのキャリアを始めています。菌類学者になるためには、生物科学の学士号(できれば微生物学を専攻する)と菌類学の修士号が最低限必要です。菌類学者は、分類学および菌類ゲノミクス、分子生物学および細胞生物学、植物病理学、バイオテクノロジー、または生化学を専門とすることができます。一部の医療微生物学者は、真菌症と呼ばれる菌類によって引き起こされる感染症の研究に集中しています。菌類学者は動物学者や植物病理学者と協力して、壊滅的なクリ胴枯れ病、世界中の多くの地域でのカエル個体群の謎の減少、またはアメリカ東部で多くのコウモリを殺した白鼻症候群と呼ばれる致命的な流行病などの困難な菌類感染症を特定および管理します。
政府機関は、作物、国立公園、および国有林の健康状態を監視するために、研究科学者および技術者として菌類学者を雇います。菌類学者は、民間部門では、化学的および生物学的な制御製品あるいは新しい農産物を開発する会社や疾病管理サービスを提供する会社によっても雇用されています。アルコールの発酵および多くの重要な食品の調製において菌類が果たす重要な役割のために、菌類の生理機能をよく理解している科学者たちは日常的に食品技術業界で働いています。ワイン学(ワイン製造の科学)は、ブドウの品種と土壌の組成に関する知識だけでなく、さまざまなワイン製造地域で繁栄している野生酵母の特性に関する確かな理解にも依存しています。特定のブドウ栽培地域から単離された酵母株を購入することが可能です。フランスの偉大な化学者および微生物学者のルイ・パスツールは、粗末な醸造業者の酵母に取り組むことで彼の重要な発見の多くをなし、そして発酵の過程を発見しました。
細胞構造および機能
菌類は真核生物であり、そのため、複雑な細胞組織を有します。真核生物として、菌類細胞は膜に包まれた核を含みます。他の真核細胞で見られるように、核内のDNAはヒストンタンパク質の周りに巻き付いています。数種類の菌類は、細菌のプラスミド(DNAのループ)に相当する付随的なゲノム構造を持っています。しかしながら、ある細菌と別の細菌との間で起こる遺伝情報の水平伝播は、菌類ではめったに起こりません。菌類細胞はまた、ミトコンドリア、および小胞体やゴルジ装置を含む複雑な内膜系を含みます。
植物細胞とは異なり、菌類細胞は葉緑体やクロロフィルを持っていません。多くの菌類は、赤から緑、そして黒までの範囲にわたる他の細胞色素から生じる鮮やかな色を示します。有毒なベニテングタケ(Amanita muscaria)(フライアガリックとも呼ばれます)は、白い斑点のある真っ赤な色のかさで識別できます(図24.2)。菌類の色素は細胞壁に関連しており、紫外線放射に対して保護的な役割を果たします。いくつかの菌類の色素は人間に有毒です。
植物細胞と同様に、菌類細胞は厚い細胞壁を有します。菌類の細胞壁の硬質な層は、キチンおよびグルカンと呼ばれる複雑な多糖類を含みます。昆虫などの節足動物の外骨格にも見られるキチン(N−アセチル−D−グルコサミン)は、菌類の細胞壁に構造的強度を与えます。この壁は、細胞を乾燥や一部の捕食者から保護します。菌類は、その構造がエルゴステロール(動物の細胞膜に見られるコレステロールを置き換えるステロイド分子)によって安定化されていることを除いて、他の真核生物のものと同様の原形質膜を有します。菌界のほとんどのメンバーは非運動性です。しかしながら、原始的なツボカビ門の胞子と配偶子は鞭毛を作り出します。
成長
菌類の栄養体は、単細胞または多細胞の葉状体です。単細胞の菌類は酵母と呼ばれます。多細胞の菌類は糸状の菌糸を作り出します。二型性菌類は、環境条件に応じて単細胞状態から多細胞状態に変化することができます。パン酵母のサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)およびカンジダの種(一般的な菌類感染症である鵝口瘡の病原体)は、単細胞の菌類の例です(図24.3)。
ほとんどの菌類は多細胞生物です。それらは2つの異なる形態学的段階を示します:生長期と生殖期です。生長期は、菌糸のもつれからなり、一方で生殖期はより目立つことがあります。菌糸の塊は菌糸体です(図24.4)。それは、表面上、土壌中または腐敗物質中、液体中、さらには生体組織上でも成長することができます。個々の菌糸は顕微鏡で観察しなければなりませんが、菌類の菌糸体は非常に大きくなることがあります。一部の種では本当に「巨大菌類」であるものもあります。巨大なオニナラタケ(Armillaria solidipes)(ハニーマッシュルームとも呼ばれます)は地球上で最大の生物であるとみなされており、オレゴン州東部の土壌の地下で2000エーカー以上にわたって広がっています。それは少なくとも2400歳であると推定されています。
ほとんどの菌類の菌糸は、隔壁と呼ばれる端部の壁によって別々の細胞に分けられています(図24.5a、c)。大部分の菌類の門では、隔壁の小さな穴により菌糸に沿って細胞から細胞への栄養素および小分子の急速な流れが可能になっています。それらは穿孔隔壁と記述されます。パンカビ(接合菌門に属します)の菌糸は、隔壁で区切られていません。その代わりに、それらは多くの核(多核)を含む大きな細胞によって形成され、この配置は多核体菌糸として記述されます(図24.5b)。
菌類は、湿っていてわずかに酸性の環境で繁栄し、光の有無にかかわらず成長することができます。それらは酸素の必要量が異なります。ほとんどの菌類は偏性好気性生物であり、生き残るためには酸素が必要です。牛の第一胃に存在するツボカビ門のメンバーのような他の種は、酸素がその代謝を混乱させたりそれらを殺したりするので嫌気呼吸のみを使用するという点で、偏性嫌気性生物です。酵母はその中間で、通性嫌気性生物です。これは、好気呼吸を用いて酸素の存在下で最もよく成長するが、酸素が利用できないときは嫌気呼吸を用いて生き残ることができることを意味します。酵母発酵から生産されたアルコールはワインやビールの生産に使われます。
栄養
動物と同様に、菌類は従属栄養生物です。それらは、いくつかの細菌や大部分の植物のように大気から二酸化炭素を固定するのではなく、炭素源として複雑な有機化合物を使用します。さらに、菌類は大気中の窒素を固定しません。それらは動物のように食事からそれを得なければなりません。しかしながら、食物を摂取してからそれを特化した器官によって内部で消化するほとんどの動物とは異なり、菌類はこれらの手順を逆の順序で実行します。消化は摂取に先行します。まず、外酵素が菌糸から運び出され、そこで環境中の栄養素を処理します。そして、この外部消化によって生成されたより小さな分子は、菌糸体の大きな表面領域を通して吸収されます。動物細胞と同様に、貯蔵される多糖類はグリコーゲン(分岐状多糖類)であり、植物に見られるようなアミロペクチン(よりまばらに分岐した多糖類)およびアミロース(直線状多糖類)ではありません。
菌類は主に腐生生物(腐生菌は同義語です)、すなわち腐敗する有機物から栄養素を引き出す生物です。それらは主に植物に由来する死んでいるか分解している有機物からその栄養素を得ます。菌類の外酵素は、枯れ木のセルロースおよびリグニンなどの不溶性化合物を、容易に吸収可能なグルコース分子に分解することができます。炭素、窒素、その他の元素は環境中に放出されます。それらの多様な代謝経路のために、菌類は重要な生態学的役割を果たし、そして化学的に損傷を受けた生態系のバイオレメディエーションにおける潜在的なツールとして研究されています。たとえば、ある種の菌類は、ディーゼル油および多環芳香族炭化水素(PAH)を分解するために使用することができます。他の種はカドミウムや鉛などの重金属を吸収します。
いくつかの菌類は寄生性であり、植物または動物に感染します。黒穂病とニレ立ち枯れ病は植物に影響を及ぼす一方で、水虫とカンジダ症(鵝口瘡)は人間にとって医学的に重要な菌類感染症です。窒素が乏しい環境では、いくつかの菌類は線虫(小さな非分節の回虫)の捕食に頼っています。実際、菌類のアルツロボトリスの種は、線虫を捕獲するためのいくつかのメカニズムを持っています。1つのメカニズムは、菌糸のネットワーク内で輪を狭めることを含みます。この輪は線虫に触れると膨らみ、それをしっかりと握ります。菌類はその後、吸器と呼ばれる特殊な菌糸を伸ばすことにより、虫の組織を貫通します。多くの寄生性菌類は吸器を有し、これらの構造は宿主の組織を貫通し、宿主の体内で消化酵素を放出し、そして消化された栄養分を吸収します。
生殖
菌類は、有性的および/または無性的に生殖します。完全菌類は有性的にも無性的にも生殖しますが、いわゆる不完全菌類は(有糸分裂により)無性的にのみ生殖します。
有性生殖および無性生殖の両方において、菌類は風に乗って浮遊するかまたは動物に乗せてもらうことによって親生物から分散する胞子を産生します。菌類の胞子は、植物の種子よりも小さくて軽いです。たとえば、ジャイアントパフボール(オニフスベの一種)のキノコは、破裂するように開いて、細かい粒子状の塵のように見えるものからなる巨大な雲の中で何兆もの胞子を放出します。放出する胞子を大量にすれば、成長を支えるような環境に着地する可能性が高まります(図24.6)。
無性生殖
菌類は、分裂、出芽、または胞子の生成によって無性生殖します。菌糸の断片は新しいコロニーを成長させることができます。酵母の体細胞は芽を形成します。出芽(細胞質分裂の拡張型)の間に、細胞の側面にバルジ(ふくらみ)が形成され、核は有糸分裂的に分裂し、そして芽は最終的に自身を母細胞から引き離します(図24.7)。
無性生殖の最も一般的な様式は無性胞子の形成によるものであり、これは単一の個々の葉状体によって(有糸分裂を通じて)産生され、親の葉状体と遺伝的に同一のものです(図24.8)。胞子は菌類がそれらの分布を拡大し、そして新しい環境にコロニーを形成することを可能にします。それらは、胞子嚢と呼ばれる特別な生殖嚢の外側または内側のいずれかで、親の葉状体から放出されることがあります。
無性胞子には多くの種類があります。分生子胞子は、菌糸の先端または側面から直接放出される単細胞または多細胞胞子です。他の無性胞子は、胞子として放出される単一細胞を形成するための菌糸の分裂に由来します。これらのうちのいくつかは断片を囲む厚い壁を持っています。さらに他のものは栄養体の親細胞から発芽します。分生子胞子とは対照的に、胞子嚢胞子は胞子嚢から直接産生されます(図24.9)。
有性生殖
有性生殖は、菌類の個体群に遺伝的変動をもたらします。菌類では、有性生殖はしばしば敵対的な環境条件に反応して起こります。有性生殖の間に、2つの接合型が作り出されます。両方の接合型が同じ菌糸体に存在する場合、それは自家和合性(または自家受精性)と呼ばれます。自家不和合性の菌糸体は、有性的に生殖するために2つの異なる、しかし適合する菌糸体を必要とします。
菌類の有性生殖には多くのバリエーションがありますが、そのすべては次の3つの段階を含みます(図24.8)。第1に、細胞質融合(プラズモガミー:文字通りには、「細胞質の結婚または結合」)の間に、2つの一倍体細胞が融合し、2つの一倍体核が単一細胞内に共存する二核段階に至ります。核融合(カリオガミー:「核の結婚」)の間に、一倍体核は融合して二倍体接合子核を形成します。最後に、減数分裂が配偶子嚢の器官で起こり、異なる接合型の配偶子が生成されます。この段階で、胞子は環境へと広まります。
学習へのリンク
ウィスコンシンオンラインからのこのインタラクティブなサイト(http://openstaxcollege.org/l/fungi_kingdom)にアクセスして、菌類の特徴を確認してください。
24.2 | 菌類の分類
この節が終わるまでに、あなたは次のことができるようになります:
•現在の分類に従って菌類を識別し、それらを5つの主要な門に分類する
•それぞれの門を主要な代表的な種と生殖のパターンに関して記述する
菌界は、有性生殖の様式にしたがって、または分子データを使用して確立された5つの主要な門を含みます。有性的な周期を伴わずに生殖する無関連の多系統菌類は、表面的には類似しているように見えるため、かつては便宜上、「形式門」と呼ばれた6番目のグループ不完全菌門に入れられました。しかしながら、ほとんどの菌類学者はこのやり方をやめました。分子生物学および18S rRNA(リボソームRNA)の配列決定における急速な進歩は、菌類のさまざまなカテゴリーの間で新規かつ異なる関係性を示し続けています。
菌類の5つの正当な門は、ツボカビ門(ツボカビ)、接合菌門(接合菌)、子嚢菌門(嚢菌)、担子菌門(棒菌)および最近記述されたグロムス門です(図24.10)。
ツボカビ門:ツボカビ
ツボカビ門の唯一の綱はツボカビ綱です。ツボカビは最も単純で原始的な真菌類です。進化の記録は、最初の認識可能なツボカビが、先カンブリア時代の後期、5億年以上前に現れたことを示しています。すべての菌類と同様に、ツボカビはその細胞壁にキチンを持っていますが、ツボカビの1つのグループは細胞壁にセルロースとキチンの両方を持っています。ほとんどのツボカビは単細胞です。しかしながら、いくつかは多細胞生物と菌糸を形成し、それらは細胞間に隔壁を持ちません(多核性)。ツボカビは、鞭毛を保持している唯一の菌類です。それらは配偶子と、単一の鞭毛の助けを借りて泳ぐ二倍体の遊走子との両方を生成します。ツボカビの独特な特徴は、雄と雌の両方の配偶子が鞭毛を帯びていることです。
ツボカビの生態学的な生息地と細胞構造は、原生生物と多くの共通点があります。ツボカビは通常、水中環境に住んでいますが、陸上に生息する種もあります。ある種は植物、昆虫、または両生類の寄生生物として繁殖し(図24.11)、他の種は腐生生物です。ツボカビの種カワリミズカビは実験生物としてよく特徴付けられています。その生殖周期は無性と有性の両方の段階を含みます。カワリミズカビは、胞子嚢内で二倍体または一倍体の鞭毛を持つ遊走子を産生します。
接合菌門:接合菌
接合菌綱は、接合菌門に属する比較的小さな菌類のグループです。それらは、よく知られているパンのカビであるクモノスカビ(Rhizopus stolonifer)を含み、これはパン、果物、野菜の表面に急速に繁殖します。ほとんどの種は腐生生物であり、腐敗しつつある有機物に生息しています。いくつかは寄生生物であり、特に昆虫に寄生します。接合菌綱はかなりの商業的役割を果たします。たとえば、クモノスカビのいくつかの種の代謝産物は半合成ステロイドホルモンの合成における中間体です。
接合菌綱は、その生物が生長期にあるときに核が一倍体であるような多核体菌糸の葉状体を有します。この菌類は通常、胞子嚢胞子を産生することにより無性生殖します(図24.12)。パンカビの黒い先端は黒い胞子が詰まった膨れ上がった胞子嚢です(図24.13)。胞子が適切な基質に着地すると、それらは発芽して新しい菌糸体を生成します。有性生殖は、環境条件が悪くなると始まります。菌糸から配偶子嚢が産生され融合するためには、2つの対立する接合株(+型および-型)が近接していなければならず、これが核融合につながります。それぞれの接合胞子はいくつかの二倍体核を含むことができます。発達中の二倍体接合胞子は、乾燥および他の危険からそれらを保護する厚い覆いを有します。環境条件が良好になるまで、それらは休眠状態になります。接合胞子が発芽すると、それは減数分裂を経て一倍体胞子を生成し、それが今度は新しい生物へと成長します。菌類におけるこの有性生殖の形態は接合と呼ばれ(それは細菌および原生生物における接合とは著しく異なりますが)、「接合菌」という名前を生み出しました。
子嚢菌門:嚢菌
既知の菌類の大部分は子嚢菌門に属します。これは、一倍体子嚢胞子を含む嚢状構造である子嚢の形成を特徴とします。糸状の子嚢菌は、穿孔隔壁で分けられた菌糸を産生し、ある細胞から別の細胞への細胞質の流動を可能にします。無性生殖および有性生殖にそれぞれ使用される分生子および子嚢は、通常は閉塞した(穴の開いていない)隔壁によって栄養体の菌糸から分離されています。多くの子嚢菌は商業的に重要です。製パン、醸造、ワインの発酵に使われる酵母のように、そして直接にトリュフやアミガサタケのような珍味の食材として、人類にとって有益な役割を果たすものもあります。ニホンコウジカビ(Aspergillus oryzae)は米を発酵させて酒を生産するのに使われます。他の子嚢菌は、人間を含む植物や動物に寄生します。たとえば、真菌性肺炎は、免疫系が弱められているエイズ患者に対して重大な脅威をもたらします。子嚢菌は、作物に直接感染してそれを破壊するだけではありません。それらは作物を消費に適さないものにするような有毒な二次代謝産物も生産します。
無性生殖は頻繁に起こり、一倍体分生子胞子を放出する分生子柄の生成を伴います(図24.14)。有性生殖は、2つのタイプの接合株のいずれかからの特別な菌糸の発達から始まります(図24.14)。「雄」株は造精器を作り出し、「雌」株は造嚢器を発達させます。受精時には、核融合なしに、造精器と造嚢器が細胞質融合で結合します。特別な二核性の造嚢(嚢を作り出す)菌糸がこの二核共存体から発生し、そこではそれぞれの細胞が核のペアを持っています:1つは「雄」株からのもの、そして1つは「雌」株からのものです。それぞれの子嚢において、2つの一倍体核が核融合で融合します。何千もの子嚢が子嚢果と呼ばれる子実体を満たしています。それぞれの子嚢の二倍体核は減数分裂により一倍体核を生じ、そして胞子壁がそれぞれの核の周囲に形成されます。それぞれの子嚢の中の胞子は単一の二倍体核の減数分裂産物を含みます。子嚢胞子はその後放出され、発芽し、そして菌糸を形成します。菌糸は環境中にちらばり、そして新しい菌糸体を始めます(図24.15)。
ビジュアルコネクション
次の記述のうち、正しいものはどれですか?
a.子嚢果内に形成される二核性の子嚢は、核融合、減数分裂、および有糸分裂を経て、8個の子嚢胞子を形成する。
b.子嚢果内に形成される二倍体の子嚢は、核融合、減数分裂、および有糸分裂を経て、8個の子嚢胞子を形成する。
c.子嚢果内に形成される一倍体接合子は、核融合、減数分裂、および有糸分裂を経て、8個の子嚢胞子を形成する。
d.子嚢果内に形成される二核性の子嚢は、細胞質融合、減数分裂、および有糸分裂を経て、8個の子嚢胞子を形成する。
担子菌門:棒菌
担子菌門の菌類は、菌糸の膨れ上がった末端細胞である担子器と呼ばれるその棍棒状の子実体によって、光学顕微鏡下で容易に認識できます。これらの菌類の生殖器官である担子器はよく見かけるキノコの中に含まれていて、雨の後の野外やスーパーマーケットの棚でよく見かけるもので、そしてあなたの庭の芝生の上で成長しています(図24.16)。これらのキノコをつくる担子菌は、かさの下側にえら状の構造が存在するため、「えら菌(ギル・ファンジ)」と呼ばれることがあります。このえらは実際には担子器が生じる圧縮された菌糸です。このグループには、小さな棚のようして木の樹皮にまとわりつく多孔菌(棚菌)も含まれます。加えて、担子菌門は、重要な植物病原体である黒穂菌やさび菌を含みます。ほとんどの食用菌類は担子菌門に属します。しかしながら、いくつかの担子菌は食べられず、致命的な毒素を産生します。たとえば、クリプトコッカス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)は深刻な呼吸器疾患を引き起こします。悪名高い「死のかさキノコ(デス・キャップ・マッシュルーム)」タマゴテングタケ(Amanita phalloides)は、前の節の冒頭で見たベニテングタケと関係があります。
担子菌の生活環には世代交代が含まれます(図24.17)。大部分の菌類は、それらの生活環の大部分を通して一倍体ですが、担子菌は一倍体および二核性の菌糸体の両方を産生し、二核性の段階が一般的です。(注:核は胞子産生の直前まで融合しないまま残るため、二核性の段階は厳密に言えば二倍体ではありません。)担子菌では、有性胞子は無性胞子よりも一般的です。有性胞子は、棍棒状の担子器に形成され、担子胞子と呼ばれます。担子器では、2つの異なる接合株の核が融合し(核融合)、二倍体接合子が生じ、それが次に減数分裂を行います。一倍体核は、担子器に付着した4つの異なるチャンバーに移動し、次いで担子胞子になります。
それぞれの担子胞子は発芽して単核性の一倍体菌糸を生成します。結果として生じる菌糸体は、一次菌糸体と呼ばれます。異なる接合株の菌糸体は、組み合わさって、2つの異なる接合株の一倍体核を含む二次菌糸体を生成することができます。これが担子菌の生活環で一般的な二核性の段階です。したがって、この菌糸体中のそれぞれの細胞は2つの一倍体核を有し、それらは担子器の形成までは融合しないでしょう。最終的に、二次菌糸体は担子器果(地面から突き出る子実体)を生成します。これが、私たちがキノコと考えるものです。担子器果は、そのかさの下のえらに発達中の担子器をつけています。
ビジュアルコネクション
次の記述のうち、正しいものはどれですか?
a.担子器はキノコをつくる菌の子実体であり、それは4つの担子器果を形成する。
b.細胞質融合の段階の結果は4個の担子胞子である。
c.核融合は菌糸体の形成を直接もたらす。
d.担子器果とはキノコをつくる菌の子実体である。
無性の子嚢菌門および担子菌門
不完全菌(有性段階を示さないもの)は、以前は不完全菌門という形式門で分類されていました。これは、現在の常に発展途上の生物の分類ではもはや使われていない無効な分類群です。不完全菌はかつて分類のための分類群でしたが、最近の分子解析ではこのグループに分類されるメンバーのいくつかは子嚢菌門(図24.18)または担子菌門に属していることが示されました。このグループのいくつかのメンバーはまだ適切に分類されていないので、それらは他の菌類の分類群のメンバーと比較してあまりうまく記述されていません。ほとんどの不完全菌は陸上に生息していますが、いくつかの水生生物の例外があります。それらは、ふわふわした外観を持つ目に見える菌糸体を形成し、一般的にカビとして知られています。
このグループの菌類は人間の日常生活に大きな影響を与えます。食品業界はいくつかのチーズを熟成させるためにそれらに頼っています。ロックフォールチーズの青い筋とカマンベールの白い皮は、菌類の増殖の結果です。抗生物質ペニシリンはもともと過剰増殖したペトリ皿上で発見され、その上ではペニシリウム菌のコロニーがそれを囲む細菌の増殖を殺していました。このグループの他の菌類は、寄生生物(植物と人間の両方に感染する)として直接に、またはコウジカビ属の菌類によって放出されるアフラトキシンに見られるように強力な毒性化合物の生産者として、深刻な病気を引き起こします。
グロムス門
グロムス門は、約230種からなる新しく確立された門であり、そのすべては木の根との密接な関係に関与しています。化石記録は、木とその根の共生生物が長い進化の歴史を共有していることを示しています。このファミリーのほぼ全てのメンバーがアーバスキュラー菌根を形成するようです。これは、根の細胞と相互作用する菌糸であって、植物が炭水化物の形で炭素源とエネルギーを菌類へと供給し、菌類が土壌から必須ミネラルを植物へと供給するという相互に有益な関係を形成するものです。例外は、内部共生生物としてシアノバクテリアのネンジュモを受け入れているゲオシフォン・ピュリフォルミス(Geosiphon pyriformis)です。
グロムス菌は、有性生殖せず、植物の根の存在なしには生き残れません。それらは、接合菌のような多核体菌糸を持っていますが、接合胞子を形成しません。DNA分析は、すべてのグロムス菌がおそらく共通の祖先に由来し、それらを単系統の系統にしていることを示しています。
24.3 | 菌類の生態
この節が終わるまでに、あなたは次のことができるようになります:
•さまざまな生態系における菌類の役割を記述する
•菌類と植物の根および光合成生物との相利共生的な関係を記述する
•いくつかの菌類と昆虫の間の有益な関係を記述する
菌類は、生態系の絶えず変化する「バランス(平衡)」において重要な役割を果たしています。それらは地球上のほとんどの生息地でコロニーを作り、暗く湿った条件を好みます。地衣類を生み出すための藻類のような光合成生物との最も成功した共存のおかげで、それらはツンドラのような一見すると厳しい環境で繁栄することができます。それらの生物群集内では、菌類は大きな動物や背の高い木ほど目につくものではありません。それらは細菌のように主要な分解者として舞台裏で作用します。その汎用性の高い代謝により菌類は有機物を分解しますが、その有機物は菌類がなければリサイクルされないでしょう。
生息地
菌類は主に有機物を供給する湿った涼しい環境に関連していますが、それらは海水から人間の皮膚や粘膜まで、驚くほど多様な生息地に定着しています。ツボカビは主に水中環境で発見されています。胞子が吸い込まれると肺炎を引き起こすコクシジオイデス・イミティス(Coccidioides immitis)などの他の菌類は、アメリカ合衆国南西部の乾燥した砂質の土壌で繁栄します。サンゴ礁に寄生する菌類は海に住んでいます。しかしながら、菌界の大部分のメンバーは林床で成長します。そこは、暗く湿った環境で植物や動物からの腐敗した破片が豊富にあります。このような環境では、菌類は分解者やリサイクル者として大きな役割を果たし、他の界のメンバーに栄養分を補給して、それらが生きることを可能にします。
分解者とリサイクル者
食物網は有機物を分解する生物がいなければ不完全です(図24.19)。窒素やリンなどのいくつかの元素は、生物学的な系によって大量に必要とされていますが、それらは環境中に豊富ではありません。菌類の作用はこれらの元素を腐敗物質から放出し、それらを他の生物に利用可能にします。多くの生息地に少量が存在する微量元素は成長に不可欠であり、もし菌類や細菌がその代謝活性によってそれらを環境に戻さなければ、腐った有機物に拘束されたままになるでしょう。
菌類が多数の大きくて不溶性の分子を分解する能力は、それらの栄養様式によるものです。先に見たように、消化は摂取に先立ちます。菌類は、栄養素を消化するためにさまざまな外酵素を生産します。この酵素は基質中に放出されるか、菌類の細胞壁の外側にくっついたままになります。大きな分子は小さな分子に分解され、それらは細胞膜に埋め込まれたタンパク質担体のシステムによって細胞内に輸送されます。小分子および酵素の動きは水の存在に依存するので、活発な成長は環境中の比較的高い割合の水分に依存します。
菌類は腐生生物として、同じ生息地を共有する動物や植物のための持続可能な生態系を維持するのに役立ちます。栄養分を環境に補給することに加えて、菌類は有益な方法で、そして時には有害な方法で他の生物と直接相互作用します(図24.20)。
相利共生的関係
共生は、ともに生きる2つの生物間の生態学的相互作用です。この定義は相互作用の種類や質については記述していません。この関係性の両方のメンバーが利益を得るとき、その共生関係は相利共生と呼ばれます。菌類は、シアノバクテリア、藻類、植物、および動物を含む多くの種類の生物と相利共生的な関係を形成しています。
菌類/植物の相利共生
菌類と植物との間の最も顕著な関係性の1つは菌根の確立です。菌根(マイコライザ)は、ギリシャ語で菌類を意味する単語myco(マイコ)と根を意味する単語rhizo(リゾ)に由来するもので、維管束植物の根とそれらの共生菌類の間の相利共生的な関係における菌類のパートナーを指します。すべての維管束植物種の90%近くが菌根パートナーを持っています。菌根関係において、菌類の菌糸体は、その菌糸の広範なネットワークおよび土壌と接触している広い表面積を使用して、土壌から植物へと水およびミネラルを導きます。引き換えに、植物は菌類の代謝を促進するために光合成の産物を供給します。
菌根にはいくつかの基本的なタイプがあります。外生菌根(「外側の」菌根)は、(菌鞘と呼ばれる)鞘として根を覆っている菌類に依存しています。菌糸は菌鞘から根の中まで成長し、ハルティヒネットと呼ばれる菌糸のネットワークで根の細胞の外層を覆います(図24.21)。菌類のパートナーは、子嚢菌門、担子菌門または接合菌門に属することがあります。内生菌根(「内側の」菌根)は、アーバスキュラー菌根とも呼ばれ、菌が根の内側で樹枝状体(アーバスキュール:ラテン語の「小さな木」から)と呼ばれる分岐構造で成長するときに生み出されます。内生菌根の関係の菌類パートナーはすべてグロムス門に属します。菌類の樹枝状体は、根の細胞の細胞壁と原形質膜との間に侵入し、菌類と宿主植物との間の代謝交換の部位となります(図24.21bおよび図24.22b)。ランは菌根の3番目のタイプに依存しています。ランは、発芽と成長を維持するための貯蔵物を多くは持たない、非常に小さな空中浮遊する種子を通常は生産する着生植物です。その種子は菌根のパートナー(通常は担子菌門)なしでは発芽しません。種子中の栄養素が枯渇した後、菌類の共生生物は必要な炭水化物とミネラルを提供することによってランの成長をサポートします。いくつかのランはそれらの生活環を通じて菌根性であり続けています。
ビジュアルコネクション
もし共生菌が土壌に存在しない場合、これは植物の成長にどのような影響があると思いますか?
菌類-植物の相利共生の他の例には、内生菌、すなわち宿主植物を傷つけずに組織の内部に生息する菌類が含まれます。内生菌は、草食動物を寄せ付けなかったり、または微生物による感染、干ばつ、または土壌中の重金属などの環境ストレス要因に対する耐性を付与するような毒素を放出します。
進化へのつながり
陸上植物と菌根の共進化
私たちが見てきたように、菌根は維管束植物の根と菌類の間で共進化した相互に有益な共生関係の菌類パートナーです。よく支持された理論は、菌類が植物の根のシステムの進化の助けとなり、被子植物の成功に貢献したと提案しています。最も祖先の植物であり、陸上で生き残って適応した最初の植物と考えられているコケ植物(蘚類や苔類)は、真の根のシステムではなく単純な仮根を持つため、乾燥地では生き残れません。しかしながら、いくつかのコケ植物はアーバスキュラー菌根を持っており、いくつかは持っていません。
真の根は祖先の維管束植物で最初に出現しました。その根から細い延長部分のシステムを発達させた維管束植物は、菌類パートナーとの接触面積が蘚類や苔類の仮根よりも大きかったので、非維管束植物よりも選択的な利点を有していたはずです。最初の真の根は、維管束植物が地面でより多くの水と栄養素を得ることを可能にしたでしょう。
化石記録は、菌類が祖先の淡水植物の乾燥地への進出に実際に先行していたことを示しています。陸上での菌類と光合成生物との間の最初の関係性には、コケのような植物および内生植物が含まれていました。根が植物に出現する前にこれらの初期の関係性が発達しました。両方のパートナーのための内生植物と仮根の相互作用の利点は、次第に今日の菌根へとつながりました:今日の維管束植物の約90%は、その根圏で菌類と関係性を有しています。
菌根に関与する菌類は、祖先の菌類の多くの特徴を示します。それらは単純な胞子を産生し、多様性をほとんど示さず、有性生殖周期を有さず、そして菌根の関係性の外では生きることができません。植物はその関係性から利益を得ました。なぜなら、菌根が植物を新しい生息地へと移動させ、栄養素の摂取を増加させることを可能にし、それによって、共生関係を確立しなかった植物よりも非常に大きな選択的優位性が与えられたからです。
地衣類
地衣類は、さまざまな範囲の色や質感を示し(図24.23)、最も独特かつ不利な生息地でも生き残ることができます。それらは岩、墓石、樹皮、そして植物の根が突き抜けることができないツンドラの地面を覆っています。地衣類は、完全に乾燥した状態になったときには長期間の干ばつに耐えることができ、その後に水が再び利用可能になると急速に活性化します。
学習へのリンク
オレゴン州立大学のこのサイト(http://openstaxcollege.org/l/lichenland)を使って、地衣類の世界を探検してみてください。
地衣類は単一の生物ではなく、むしろ菌類(通常、子嚢菌門または担子菌門のメンバー)が光合成生物(真核生物の藻または原核生物のシアノバクテリア)との物理的および生理学的関係で生活する相利共生の別の素晴らしい例であることに注意しておくことが重要です。(図24.24)。一般に、菌類も光合成生物も共生関係からはずれて単独では生き残れません。葉状体と呼ばれる地衣類の本体は、光合成性のパートナーの周りに巻きつけられた菌糸で形成されています。光合成生物は炭水化物の形で炭素とエネルギーを供給します。シアノバクテリアの中には、さらに大気から窒素を固定し、窒素化合物をこの関係性に提供するものもあります。見返りに、菌類はミネラルを供給し、また、その菌糸体の中に藻類を入れることで乾燥や過度の光から保護します。菌類はまた、地衣類をその基質に付着させます。
地衣類の葉状体は非常にゆっくり成長し、その直径は年に数ミリメートル拡大します。菌類と藻の両方が、粉芽(菌糸体に囲まれた藻類細胞の集まり)と呼ばれる散布単位の形成に関与しています。粉芽は風と水によって散布され、新しい地衣類を形成します。
地衣類は大気汚染、特に異常なレベルの窒素化合物や硫黄化合物に極端に敏感です。アメリカ合衆国森林局と国立公園局は、ある地域の地衣類の個体群の相対的な豊富さと健康状態を測定することによって、大気の質を監視することができます。地衣類は多くの生態学的役割を果たします。カリブーとトナカイは地衣類を食べ、そして、それらは菌糸体の中に隠れる小さい無脊椎動物のための覆いを提供します。織物の生産では、織工は合成染料の出現まで何世紀にもわたって地衣類を使用して羊毛を染色していました。リトマス紙に使用される染料も地衣類から抽出されたものです。
学習へのリンク
地衣類は空気の質を監視するために使用されています。米国森林局からのこのサイト(http://openstaxcollege.org/l/lichen_monitrng)で詳細を読んでください。
菌類/動物の相利共生
菌類は、節足動物門(キチン質の外骨格を有する関節性の脚を持つ無脊椎動物)の中の多数の昆虫と相利共生関係を進化させてきました。節足動物は捕食者および病原体からの保護のために菌類に依存している一方、菌類は栄養素と、胞子を新しい環境に広める方法を獲得します。担子菌の種とカイガラムシの種の間の関係性はその一例です。この菌類の菌糸体はこの昆虫のコロニーを覆いそして保護します。カイガラムシは、寄生植物から菌類への栄養素の流れを促進します。
2つ目の例では、中央アメリカと南アメリカのハキリアリは文字通り農業に従事する菌類です。それらは植物から葉の円盤を切り取り、それを地下の農園に積み上げます(図24.25)。菌類はこれらの円盤の農園で培養され、アリが分解することができない葉のセルロースを消化します。より小さな糖分子が生産されて菌類によって消費されると、その菌類は今度はアリの食事になります。この昆虫はまた、競合する菌類を捕食しながら、その農園を巡回しています。アリも菌類もこの相利共生的な関係から利益を得ています。菌類は葉の安定した供給と競争からの自由を受け取る一方で、アリは自らが培養する菌類を食べています。
菌食生物
動物は元の場所からかなりの距離まで菌類の胞子を持っていくことがあるため、動物による散布はいくつかの菌類にとって重要です。菌類の胞子は動物の胃腸管内で完全に分解されることはめったになく、それらが排泄物へと行ったときには多くが発芽することができます。いくつかの「糞生菌類」は、実際にそれらの生活環を完了するためには草食動物の消化器系を通過する必要があります。黒いトリュフ — 傑出した美食の珍味 — は地下の子嚢菌の子実体です。ほとんどすべてのトリュフは外生菌根であり、通常は木と密接に関連して見られます。動物はトリュフを食べて胞子を分散させます。イタリアとフランスでは、トリュフハンターはトリュフの匂いを嗅ぐために雌の豚を使用します(この菌類は雄の豚が産生するフェロモンに密接に関連する揮発性化合物を放出するため、雌の豚はトリュフに惹かれます)。
24.4 | 菌類寄生生物と病原体
この節が終わるまでに、あなたは次のことができるようになります:
•植物の菌類寄生生物と病原体を記述する
•人間におけるさまざまな種類の菌類感染症を記述する
•菌類細胞と動物細胞の類似性によって抗菌類療法が妨げられる理由を説明する
寄生とは、関係性の一方のメンバーが他方を犠牲にして利益を得る共生関係を表しています。寄生生物も病原体も宿主に害を与えます。しかしながら、病原体は病気(宿主組織または生理機能への損傷)を引き起こす一方で、寄生生物は通常そうはしませんが、しかし、栄養素または他の資源をめぐる競争によって深刻な損傷および死を引き起こす可能性があります。一方のメンバーが他方のメンバーに影響を与えずに利益を得るときには、片利共生が起こります。
植物寄生生物と病原体
十分に高品質な作物の生産は人間の存在にとって不可欠です。残念なことに、植物の病害は人間の農業の歴史を通して多くの作物を台無しにし、時には広範囲の飢饉を生み出しました。多くの植物病原体は、組織の崩壊および宿主の最終的な死を引き起こす菌類です(図24.26)。植物組織を直接破壊することに加えて、いくつかの植物病原体は、宿主植物をさらに損傷し殺すことがある強力な毒素を産生することによって作物を台無しにします。菌類はまた、食品をだめにして貯蔵作物を腐敗させる原因でもあります。たとえば、菌類の麦角菌(Claviceps purpurea)は麦角(穀物(特にライ麦)の病気)を引き起こします。この菌類は穀物の収量を減らしますが、人間や動物に対する麦角のアルカロイド毒素の影響のほうがはるかに甚大です。動物では、この病気は麦角中毒と呼ばれています。最も一般的な徴候と症状は、けいれん、幻覚、壊疽、および牛の乳量減少です。麦角の活性成分はリセルグ酸で、これは薬物のLSDの前駆物質です。黒穂病、さび病、およびうどんこ病またはべと病は、作物に影響を与える一般的な菌類病原体の他の例です。
アフラトキシンは、コウジカビ属の菌類によって放出される毒性で発がん性のある化合物です。ナッツや穀物の収穫はたびたびアフラトキシンによって汚染され、農産物の大規模な回収につながります。これは時には生産者を破産させ、そして発展途上国の食糧不足を引き起こします。
動物と人間の寄生生物と病原体
菌類は、人間を含む動物にさまざまなやり方で影響を与えます。真菌症は、菌類の増殖および浸潤による感染および直接的な損傷から生じる菌類の疾患です。菌類は組織にコロニーを形成して破壊することによって動物を直接攻撃します。マイコトキシン症は、菌類の毒素(マイコトキシン)で汚染された食品による人間(および他の動物)の中毒です。キノコ中毒は、毒キノコにおいて予め形成された毒素の摂取を具体的に説明してくれます。さらに、カビや胞子に対して過敏症を示す人は、強くて危険なアレルギー反応を起こす可能性があります。菌類の感染症は一般的に治療が非常に困難です。なぜなら、細菌とは違って、菌類は真核生物であるからです。抗生物質は原核細胞のみを標的としますが、菌類を殺す化合物は真核生物の宿主の動物にも害を与えます。
多くの菌類の感染症は表在性です。つまり、それらは動物の皮膚上に発生します。それらは皮膚真菌症と呼ばれ、壊滅的な影響を与えることがあります。たとえば、近年の世界のカエル個体群の減少は、(一部は)ツボカビ菌のカエルツボカビ(Batrachochytrium dendrobatidis)によって引き起こされています。この致命的な菌類はカエルの皮膚に感染し、両生類の生存に不可欠な皮膚でのガス交換をおそらく妨げます。同様に、米国では100万匹以上のコウモリが、コウモリの口の周りに白い輪が現れる白鼻症候群によって死にました。それは、寒い場所を好む菌類シュードジムノアスカス・デストラクタンス(Pseudogymnoascus destructans)が、コウモリの冬眠する洞窟で致命的な胞子を広めたことによって引き起こされました。菌学者たちは、その広がりを防ぐためにP.デストラクタンスの伝染、メカニズム、制御を研究しています。
表皮、毛髪、および爪の表在性真菌症を引き起こす菌類が、下の組織に広がることはめったにありません(図24.27)。これらの菌類はしばしば、「皮膚糸状菌(デルマトファイト)」(皮膚を意味するデルミスと、植物を意味するファイトというギリシャ語の単語から来ています)と誤称されますが、それらは植物ではありません。皮膚糸状菌は、それらが皮膚に引き起こす赤い輪のために「輪癬(白癬)」とも呼ばれます。それらはケラチン(髪、皮膚、および爪に見られるタンパク質)を分解する細胞外酵素を分泌して、水虫やいんきんたむしなどの症状を引き起こします。これらの症状は通常、市販の局所用クリームやパウダーで治療され、そして簡単に取り除かれます。より持続性の表在性真菌症では、処方薬の経口薬が必要な場合があります。
全身性真菌症は内部器官に広がるものであり、最も一般的には呼吸器系を通って体内に入ります。たとえば、コクシジオイデス症(しばしば渓谷熱と呼ばれます)はアメリカ合衆国南西部でよく見られますが、ワシントン州ほどの北部でも見られます。この菌類は、ほこりの中に存在しています。ひとたび吸入すると、胞子は肺で発達し、結核の症状と同様の症状を引き起こします。ヒストプラスマ症は、二型性の菌類ヒストプラズマ・カプスラーツム(Histoplasma capsulatum)によって引き起こされます。人間の宿主の中では、ヒストプラズマは酵母として増殖し、肺感染症を引き起こし、そしてまれな症例では、脳および脊髄の膜の腫脹を引き起こします。これらや他の多くの菌類性の疾患の治療は、重篤な副作用を有する抗菌類薬の使用を必要とします。
日和見真菌症は、すべての環境で一般的な、または通常の生物相の一部であるような菌類の感染症です。それらは主に弱った免疫系を持っている個体に影響を与えます。エイズ末期の患者は、生命を脅かすことのある日和見真菌症に苦しみます。周囲の環境のpH、人の免疫防御、または細菌の通常の個体群が変化すると、自然の生物相の一般的なメンバーである酵母のカンジダの種が抑制が利かないまま成長し、膣や口腔(口内鵝口瘡)に感染することがあります。
有毒なキノコを食べたときにはキノコ中毒が起こることがあります。キノコ狩りの季節には、多くの人が死亡します。菌類の多くの食用の子実体は非常に有毒な親戚に似ています。そしてアマチュアのキノコの狩り手は、慎重にその収穫物を調べて、疑わしい起源のキノコを食べるのを避けるように警告されます。「大胆なキノコの狩り手や年を取ったキノコの狩り手はいるが、大胆で年を取ったキノコの狩り手はいない」という格言は残念ながら真実です。
科学的方法へのつながり
ニレ立ち枯れ病
質問:ニレ立ち枯れ病に耐性のある木は抗菌類化合物を分泌しているのでしょうか?
仮説:この質問に取り組む仮説を構築します。
背景:ニレ立ち枯れ病は、北米のニレの多くの種に影響を与える菌類の感染症です。この菌類は木の維管束系に感染し、それが植物内の水の流れを遮断し、干ばつによるストレスに似た状況を作ります。この菌類は1930年代初頭に偶然にアメリカ合衆国に導入されて、それは大陸全体でアメリカニレの木の多くを間引きました。それは菌類のオフィオストマ・ウルミ(Ophiostoma ulmi)によって引き起こされます。ニレキクイムシは媒介動物として機能し、木から木へとこの病気を伝染させます。多くのヨーロッパとアジアのニレはアメリカのニレよりもこの病気にかかりにくいです。
仮説を検証する:この仮説を検証しようする研究者は次のことを行うことができます。菌類の成長を支える培地を含むいくつかのペトリ皿にオフィオストマの菌糸体の断片を植菌します。この病気に感染しやすいアメリカニレの品種と耐性のあるヨーロッパおよびアジアニレの品種の維管束組織から(金属パンチで)いくつかの円盤を切り取ります。植物組織なしで菌糸体を植菌した対照ペトリプレートを含めて、培地および培養条件が菌類の増殖に干渉しないことを確認します。陽性対照として、菌糸体を植菌したペトリ皿に既知の殺菌剤を染み込ませた紙の円盤を加えます。
菌類の成長と皿の表面上で菌糸体が拡散するのを可能にするために、設定された日数の間プレートを培養します。組織試料と殺菌剤の統制用の円盤の周囲の透明化した領域(もしあるならば)の直径を記録します。
次の表に観察結果を記録してください。
データを分析して結果を報告する:蒸留水と殺菌剤の効果を比較してください。これらは実験の設定を検証する陰性対照と陽性対照です。殺菌剤は、菌類の増殖が抑制されている透明な領域に囲まれているでしょう。異なるニレの種の間に違いはありますか?
結論を出す:殺菌剤から予想されるような抗菌作用はありましたか?この結果は仮説を支持しますか?もしそうでない場合、これはどのように説明できますか?いくつかの可能な説明があります。
24.5 | 人間の生活における菌類の重要性
この節が終わるまでに、あなたは次のことができるようになります:
•環境のバランスに対する菌類の重要性を記述する
•農業および食品や飲料の調製における菌類の役割を要約する
•化学および製薬業界における菌類の重要性を記述する
•モデル生物としての菌類の役割について議論する
私たちはしばしば菌類のことを病気を引き起こし、食物を腐らせる生物と考えていますが、それらは人間の生活にとって多くのレベルで死活的に重要なものです。私たちが見てきたように、菌類は生態系の栄養素循環の一部であるため、人間の集団の福利に対して大きな規模で影響を与えます。それらは他の生態系の役割もあります。菌類は、動物に対する病原体として有害な害虫の個体群を制御するのに役立ちます。これらの菌類は、それが攻撃する昆虫に対して非常に特異的であり、動物や植物には感染しません。菌類は現在、潜在的な微生物殺虫剤として調査中であり、いくつかはすでに市場に出ています。たとえば、菌類のボーベリア・バッシアナ(Beauveria bassiana)は、アオナガタマムシ(トネリコの木を食べる甲虫)の最近の広がりに対抗する見込みのある生物農薬として試験されています。それはミシガン州、イリノイ州、インディアナ州、オハイオ州、ウェストバージニア州、メリーランド州で発売されています(図24.28)。
菌類と植物の根の間の菌根の関係は農地の生産性にとって不可欠です。根系の菌類パートナーがいなければ、木や草の80~90%は生き残れないでしょう。菌根菌の接種剤は、土壌改良剤として園芸用品店から入手可能であり、有機農業の支持者によって奨励されています。
私たちはまた、いくつかの種類の菌類を食べます。キノコは人間の食生活で顕著に姿を現します。アミガサタケ、シイタケ、アンズタケ、およびトリュフは珍味と見なされています(図24.29)。牧草地の質素なキノコであるハラタケ(Agaricus campestris)は多くの料理に登場します。ペニシリウム属のカビは多くのチーズを熟成させます。それらはフランスのロックフォールの洞窟のような自然環境に由来し、そこでは青い筋とチーズの刺激的な味の原因となるカビを捕まえるために羊乳チーズのホールが積み重ねられています。
発酵 — ビールを生産する穀物の発酵とワインを生産する果物の発酵 — は、ほとんどの文化で人間が数千年もの間実践してきた古代の技術です。野生の酵母は環境から獲得され、嫌気性条件下で糖をCO₂とエチルアルコールに発酵させるために使用されます。今では、さまざまなワイン生産地域から野生酵母の分離株を購入することが可能です。ルイ・パスツールは、1850年代後半にフランスの醸造業界のために、信頼できる醸造用の酵母の株サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)を開発することに尽力しました。これはバイオテクノロジー特許の最初の例の1つです。
菌類の多くの二次代謝産物は商業上非常に重要なものです。抗生物質は、細菌を殺したり増殖を抑制したりするために、菌類によって自然に生成され、自然環境におけるそれらの競合を制限します。ペニシリンやセファロスポリンなどの重要な抗生物質は、菌類から単離されるものです。菌類から単離された価値のある薬には、免疫抑制薬シクロスポリン(臓器移植後の拒絶反応のリスクを減らします)、ステロイドホルモンの前駆体、出血を止めるために使用される麦角アルカロイドが含まれます。シロシビンは、シビレタケ(Psilocybe semilanceata)およびオオワライタケ(Gymnopilus junonius)などの菌類に見られる化合物であり、その幻覚誘発特性のために何千年もの間さまざまな文化において使用されてきました。
菌類は、単純な真核生物であるため、重要なモデル研究生物です。現代の遺伝学における多くの進歩は、パンの赤カビであるアカパンカビ(Neurospora crassa)の使用によって達成されました。さらに、S.セレビシエにおいて最初に発見された多くの重要な遺伝子が、類似のヒト遺伝子を発見する際の出発点として役立ちました。内膜構造およびタンパク質輸送のためにタグを付ける酵素を欠く細菌の大腸菌(Escherichia coli)とは対照的に、酵母細胞は、真核生物として人間の細胞と同様の方法でタンパク質を産生および修飾します。このため酵母は、組換えDNA技術実験で使用するためのはるかに優れた生物となります。細菌と同様に、酵母は培養で容易に増殖し、世代の時間が短く、そして遺伝子改変に適しています。
重要用語
アーバスキュラー菌根:菌類の菌糸が根の細胞に侵入して広範囲なネットワークを形成する菌根の関係性
アーバスキュラー菌根:菌類の菌糸が植物の根の細胞の細胞壁を貫通する(が、細胞膜は貫通しない)ような、グロムス菌が一般的に関与する菌根
子嚢果:子嚢菌の子実体
子嚢菌門(または、嚢菌):子嚢と呼ばれる嚢の中に胞子を貯蔵する菌類の門
担子器果:地面から突き出て担子器をつける子実体
担子菌門(または、棒菌):胞子を含む棍棒状の構造(担子器)を生成する菌類の門
担子器:担子菌の棍棒状の子実体
ツボカビ門(または、ツボカビ):水中に住み、鞭毛を持つ配偶子を産生する菌類の原始的な門
多核性菌糸:隔壁がなく、多くの核を含む単一の菌糸
片利共生:一方のメンバーが恩恵を受ける一方、他方のメンバーは影響を受けない共生関係
不完全菌門:既知の有性生殖周期を有さない菌類(現在は、子嚢菌門および担子菌門という2つの門のメンバー)のかつての形式門
外生菌根菌:根を菌鞘で包み、根の細胞の間に広がるハルティヒネットを持つ菌根菌
外生菌根:菌類の菌糸が植物の根の細胞を貫通しない菌根
通性嫌気性生物:好気呼吸と嫌気呼吸の両方を実行でき、酸素が豊富な環境でも酸素が少ない環境でも生存できる生物
グロムス門:木の根と共生関係を形成する菌類の門
吸器:宿主の組織に侵入し、消化酵素を放出し、および/または宿主から栄養素を吸収する、多くの寄生性菌類の持つ改変された菌糸
自家不和合:個々の菌糸体に1つの接合型しか存在しない場合を記述する
自家和合:菌糸体に両方の接合型が存在する場合を記述する
菌糸:1つかそれ以上の細胞からなる菌類の繊維
核融合:核の融合
地衣類:菌類と光合成藻類または細菌との間の、どちらのパートナーも恩恵を受ける密接な関係性
カビ:毛羽上の外観を持つ目に見える菌糸体のもつれ
菌糸体:菌類の菌糸のかたまり
キノコ中毒:有毒キノコの中の毒素の摂取
菌類学:菌類の科学的研究
菌根:菌類と維管束植物の根との間の相利共生的な関係性
菌根:植物と菌類の間の相利共生的な関係。菌根は、植物に土壌のミネラルを提供する菌類の菌糸と、菌に炭水化物を提供する植物の根との間のつながりである
真菌症:菌類の感染症
マイコトキシン症:食品中に放出された菌類の毒素による中毒
偏性好気性生物:生き残るために好気呼吸を行わなければならない人間などの生物
偏性嫌気性生物:嫌気呼吸のみを行い、しばしば酸素の存在下では生存できない生物
寄生:関係性の一方のメンバーが他方のメンバーを犠牲にして利益を得る共生関係
細胞質融合:細胞質の融合
腐生生物:腐敗している有機物から栄養素を引き出す生物。腐生菌とも言う
隔壁:菌糸間の細胞壁による分断
粉芽:地衣類が散布されることを可能にする藻類細胞と菌糸体の集まり
胞子嚢:胞子を含む生殖用の嚢
胞子:有糸分裂を経て多細胞の一倍体個体を形成することができる一倍体細胞
葉状体:菌類の栄養体
酵母:単細胞の菌類を表すために使用される一般用語
接合菌門(または、接合菌):接合胞子に含まれる接合子を形成する菌類の門
接合胞子:接合菌における接合子を含む厚い細胞壁を有する構造
この章のまとめ
24.1 | 菌類の特徴
菌類は、4億5000万年以上前に陸上に出現した真核生物ですが、明らかにはるかに大きい進化的な歴史を持っています。それらは従属栄養生物であり、クロロフィルのような光合成色素も、葉緑体のような細胞小器官も含んでいません。菌類は腐敗して死んだ物質を食べるので、それらは腐生生物と呼ばれます。菌類は、不可欠な元素を環境に放出する重要な分解者です。外酵素と呼ばれる外部酵素が栄養素を消化し、それは葉状体と呼ばれる菌類の体によって吸収されます。キチンでできた厚い細胞壁が細胞を囲んでいます。菌類は、酵母のように単細胞性であるか、または菌糸体と呼ばれる繊維のネットワークを発達させることができ、それはしばしばカビと呼ばれます。ほとんどの種は、無性生殖および有性生殖周期で増加し、世代交代を呈します。ある菌類のグループでは、有性周期は確認されていません。有性生殖は、細胞質融合(細胞質の融合)、それに続く核融合(核の融合)を伴います。これらの過程に続いて、減数分裂が一倍体胞子を生成します。
24.2 | 菌類の分類
ツボカビ門(ツボカビ)は、菌類の最も先祖のグループと考えられています。それらはほとんど水生生物であり、その配偶子は鞭毛を持つことが知られている唯一の菌類の細胞です。それらは有性的にも無性的にも生殖します。無性胞子は遊走子と呼ばれます。接合菌門(接合菌)は、多数の核を有する非隔壁菌糸を産生します。それらの菌糸は、有性生殖の間に融合し、接合胞子嚢内に接合胞子を生成します。子嚢菌門(嚢菌)は、有性生殖中に子嚢と呼ばれる嚢の中で胞子を形成します。無性生殖は、それらの最も一般的な生殖形態です。担子菌門(棒菌)では、有性段階が優位を占め、棍棒状の担子器を含む派手な子実体を産生し、その中で胞子を形成します。最もよく知られているキノコはこの区分に属します。既知の有性周期を持っていない菌類は、もともと「形式門」である不完全菌門に分類されていましたが、それ以降の比較分子分析によって多くは子嚢菌門と担子菌門に分類されています。グロムス門は、植物の根と密接な関係性(菌根と呼ばれます)を形成します。
24.3 | 菌類の生態
菌類は地球上のほぼすべての環境にコロニーを作ってきましたが、腐敗物質の供給を伴う涼しく、暗く、湿った場所で頻繁に見られます。菌類は有機物を分解する腐生生物です。菌類と他の生物が、多くの成功した相利共生的関係に関与しています。多くの菌類は植物の根と複雑な菌根の関係性を確立します。いくつかのアリは食料の供給源として菌類を栽培します。地衣類は、菌類と光合成生物(通常は藻またはシアノバクテリア)の間の共生関係です。光合成生物は貯蔵された炭水化物からエネルギーを提供する一方で、菌類はミネラルと保護を提供します。菌類を消費する動物の中には、長距離にわたって胞子を広めるのに役立つものもいます。
24.4 | 菌類寄生生物と病原体
菌類は植物や動物と寄生関係を築きます。菌類性の疾患は、作物を破壊し、そして貯蔵中の食物を台無しにすることがあります。菌類によって産生される化合物は、人間や他の動物にとって有毒となることがあります。真菌症は菌類によって引き起こされる感染症です。表在性真菌症は皮膚に影響を与えますが、全身性真菌症は体全体に広がります。菌類はそれらの宿主と同様に真核生物であり、そして分岐分類学的に動物界と密接に関連しているため、菌類の感染症は治癒するのが難しいです。
24.5 | 人間の生活における菌類の重要性
菌類は人間の日常生活にとって重要なものです。菌類は、ほとんどの生態系において重要な分解者です。菌根菌は、ほとんどの植物の成長に不可欠です。菌類は、食物としてはキノコの形で人間の栄養に重要な役割を果たし、またパン、チーズ、アルコール飲料、その他多数の食料品の生産では発酵の材料として使われます。菌類の二次代謝産物は、抗生物質や抗凝固剤などの医薬品として使用されています。菌類は真核生物の遺伝学および代謝の研究のためのモデル生物です。
ビジュアルコネクション問題
1.図24.14 | 次の記述のうち、正しいものはどれですか?
a.子嚢果内に形成される二核性の子嚢は、核融合、減数分裂、および有糸分裂を経て、8個の子嚢胞子を形成する。
b.子嚢果内に形成される二倍体の子嚢は、核融合、減数分裂、および有糸分裂を経て、8個の子嚢胞子を形成する。
c.子嚢果内に形成される一倍体接合子は、核融合、減数分裂、および有糸分裂を経て、8個の子嚢胞子を形成する。
d.子嚢果内に形成される二核性の子嚢は、細胞質融合、減数分裂、および有糸分裂を経て、8個の子嚢胞子を形成する。
2.図24.17 | 次の記述のうち、正しいものはどれですか?
a.担子器はキノコをつくる菌の子実体であり、それは4つの担子器果を形成する。
b.細胞質融合の段階の結果は4個の担子胞子である。
c.核融合は菌糸体の形成を直接もたらす。
d.担子器果とはキノコをつくる菌の子実体である。
3.図24.21 | もし共生菌が土壌に存在しない場合、これは植物の成長にどのような影響があると思いますか?
レビュー問題
4.菌類の細胞壁に通常見られる多糖類はどれですか?
a.デンプン
b.グリコーゲン
c.キチン
d.セルロース
5.これらの細胞小器官のうち、菌類の細胞には見られないものはどれですか?
a.葉緑体
b.核
c.ミトコンドリア
d.ゴルジ装置
6.菌類の繊維の個々の細胞を分ける壁は、________と呼ばれます。
a.葉状体
b.菌糸
c.菌糸体
d.隔壁
7.有性生殖時には、自家和合性の菌糸体には________が含まれます。
a.すべての隔壁によって分けられた菌糸
b.すべての一倍体核
c.両方の接合型
d.上記のどれでもない
8.完全菌類の生活環は他のどの生物と最も似ていますか?
a.無性的な出芽を行うヒドラ
b.二倍体が優勢なエンドウマメ植物
c.一倍体が優勢な緑藻類
d.二分裂を行う細菌
9.菌類の最も原始的な門は________です。
a.ツボカビ門
b.接合菌門
c.グロムス門
d.子嚢菌門
10.どの門のメンバーが胞子を含む棍棒状の構造を作り出しますか?
a.ツボカビ門
b.担子菌門
c.グロムス門
d.子嚢菌門
11.どの門のメンバーが木の根との成功した共生関係を確立しますか?
a.子嚢菌門
b.不完全菌門
c.担子菌門
d.グロムス門
12.有性的に生殖しない菌類は、かつては________として分類されていました。
a.子嚢菌門
b.不完全菌門
c.担子菌門
d.グロムス門
13.ある科学者が、二倍体接合子を作り出すことによって生殖の間に遺伝的多様性を導入する菌類の新種を発見しました。この新種は、菌類のどの現代の門に属することができませんか?
a.接合菌門
b.グロムス門
c.ツボカビ門
d.不完全菌門
14.菌類と木の根の密接な関係性を表す用語は何ですか?
a.仮根
b.地衣類
c.菌根
d.内生菌
15.なぜ菌類は重要な分解者なのですか?
a.それらは多くの胞子を作り出すから。
b.それらは多くの異なる環境で成長することができるから。
c.それらは菌糸体を作り出すから。
d.それらは分解のプロセスによって炭素および無機ミネラルをリサイクルするから。
16.菌根に関与していないすべての菌類が排除されている生態系を考えてください。これは植物による窒素の摂取にどのように影響するでしょうか?
a.窒素の摂取は増加するだろう。
b.窒素の摂取は変わらないだろう。
c.窒素の摂取は減少するだろう。
d.窒素の摂取は止まるだろう。
17.その胞子を風に放出するために高く上昇するように木を登るものの、木から栄養素も受け取らず、木の福利にも貢献しない菌類は________として記述されます。
a.片利共生生物
b.相利共生生物
c.寄生生物
d.病原体
18.爪や肌に影響を与える菌類感染症は________に分類されます。
a.全身性真菌症
b.キノコ中毒
c.表在性真菌症
d.マイコトキシン症
19.抗菌薬物の標的は、抗生物質や抗ウイルス薬よりもはるかに限られています。なぜでしょうか?
a.菌類よりも細菌やウイルスが多いから。
b.菌類は有性生殖の間にのみ標的にすることができる一方で、細菌およびウイルスはそれらの生存期間の任意の時点で標的にすることができるから。
c.菌類は局所感染症を引き起こし、ウイルスおよび細菌は全身感染症を引き起こすから。
d.人間の細胞は細菌やウイルスよりも菌類の細胞にずっと似ているから。
20.酵母は通性嫌気性生物です。つまり、アルコール発酵は次の場合にのみ起こります:
a.温度が37°Cに近い
b.大気中に酸素が含まれていない
c.糖が細胞に供給される
d.光が細胞に供給される
21.人間のタンパク質を発現するために、酵母細胞が持つ細菌細胞を超える利点とは:
a.酵母細胞は速く成長することである
b.酵母細胞は遺伝子操作が簡単なことである
c.酵母細胞は真核細胞であり、人間の細胞と同様にタンパク質を修飾することである
d.酵母細胞はタンパク質を精製するために容易に溶解できることである
22.菌類の殺虫剤はなぜ食用作物を栽培するための化学的な殺虫剤に代わる魅力的な代替物なのでしょうか?
a.菌類の殺虫剤を人間が摂取しても人間は病気にはならないが、化学的な殺虫剤を摂取すると人間に有害になることがあるから。
b.単一の菌類の殺虫剤は化学的な殺虫剤よりも多種多様な昆虫を殺すから。
c.菌類の殺虫剤は有害な昆虫と植物の病原体の両方を除去することができる一方で、化学的な殺虫剤は昆虫を殺すだけであるから。
d.菌類の殺虫剤は死んだ植物を分解し、土壌の窒素含有量を高める一方で、化学的な殺虫剤は分解者ではないから。
クリティカルシンキング問題
23.生物にとって、無性的にも有性的にも生殖することの進化的な利点は何ですか?
24.細胞壁、葉緑体、原形質膜、食物源、多糖類の貯蔵といった要素を考慮して、植物、動物、菌類を比較してください。植物と動物に対する菌類の類似点と相違点を示すようにしてください。
25.菌糸体の大きな表面積が菌類による栄養素の獲得に必須であるのはなぜですか?
26.担子菌が派手で多肉質の子実体を生成する利点は何ですか?
27.完全菌類の4つのグループ(ツボカビ門、接合菌門、子嚢菌門、および担子菌門)のそれぞれについて、体の構造と特徴を比較し、例を示してください。
28.なぜ光からの保護が、地衣類の光合成パートナーに実際に利益をもたらすのでしょうか?
29.キクイムシはアンブロシア菌の胞子を木に運び、それから穴を開けてこの菌類とともに卵を産みます。新しい幼虫が孵化すると、それらは穴の中で発芽した菌類を食べます。この関係はどのようにして相利共生として分類されるかを説明してください。
30.生態学者はしばしば、劣化した土地を修復するために新しい植物を導入しようとします。乾燥した気候の中では、科学者たちはアーバスキュラー菌根を持つ植物を導入することを勧めます。菌根がない植物と比較して、菌根は植物の生存率をどのように高めるのでしょうか?
31.人間の表在性真菌症が細菌感染を引き起こすことがあるのはなぜですか?
32.赤の女王仮説が、赤いぶどうとボトリティス・シネレア(Botrytis cinerea)との間で絶えず進化している関係をどのように記述するかを説明してください。
33.歴史的には、手作りのパンは空気から野生酵母を捕獲することによって生産されていました。現代の酵母株が開発される前は、多くの生地のかたまりが廃棄されていたため、手作りのパンの生産は時間がかかり骨の折れるものでした。あなたはこの事実を説明することができますか?
34.広範囲の菌類に効果がある殺菌剤で森林のある地域を処理すると、その地域の炭素と窒素の循環はどのように変わるでしょうか?
解答のヒント
第24章
1 図24.14 A 3 図24.21 菌根がなければ、植物は十分な栄養素を吸収することができず、そのため成長が阻害されます。不毛な土壌に菌類の胞子を追加すると、この問題を緩和できます。4 C 6 D 8 C 10 B 12 B 14 C 16 C 18 C 20 B 22 A 23 無性生殖は迅速であり、好ましい条件下では最適です。有性生殖は遺伝的形質の組換えを可能にし、変化した環境により適した新たな適応を発展させる可能性を高めます。25 菌類はその食料源として役立たせるために、その環境の中で腐敗している物質を分解します。消化は外的に起こるため、大きな菌糸体は広い面積にわたって外酵素を分泌することができます。菌類は消化によって放出された小分子を吸収することができなければならないので、大きな表面積を有することは菌類によって捕獲される消化された分子の量を増加させます。27 ツボカビ門(ツボカビ)は、単細胞または多細胞の体の構造を有することがあります。いくつかは、鞭毛を伴う運動性の胞子を持つ水生生物です。その一例はカワリミズカビです。接合菌門(接合菌)は多細胞の体の構造を有します。特徴には、接合胞子および土壌中に存在することが含まれます。その例は、パンや果物のカビです。子嚢菌門(嚢菌)は、単細胞または多細胞の体の構造を有することがあります。特徴は嚢(子嚢)の中の有性胞子です。例としては、パン、ワイン、ビールの生産に使用される酵母があります。担子菌門(棒菌)は多細胞の体を有します。特徴は担子器果(キノコ)の中の有性胞子を含み、それらは主に分解者です。キノコを産生する菌類がその一例です。29 それぞれのパートナーがお互いとの相互作用から利益を得るので、キクイムシと菌類は相利共生的な関係を持っています。キクイムシはその子孫に食物を提供することができる一方で、菌類は新しい木に広がることができます。31 皮膚にコロニーを形成する皮膚糸状菌は、細菌の侵入から組織を保護する死んだ細胞の角質化した層を分解します。ひとたび皮膚の完全性が破られると、細菌は組織のより深い層に入り込み、感染症を引き起こすことがあります。33 生地はしばしば空気中に浮遊する有毒な胞子で汚染されます。パンを着実に作り出すためにパン酵母の信頼できる株を精製したことが、ルイ・パスツールの功績の1つでした。
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