生物学 第2版 — 第34章 動物の栄養摂取と消化器系 —

Japanese translation of “Biology 2e”

Better Late Than Never
60 min readOct 18, 2019

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34 | 動物の栄養摂取と消化器系

図34.1 | 人間にとって、果物と野菜はバランスの取れた食事を維持するのに重要です。(credit: modification of work by Julie Rybarczyk)

この章の概要

34.1:消化器系
34.2:栄養摂取とエネルギー生産
34.3:消化器系のプロセス
34.4:消化器系の調節

はじめに

すべての生物は生き残るために栄養素を必要とします。植物は光合成のプロセスを通じて細胞機能に必要な分子を得ることができますが、ほとんどの動物は他の生物を消費することによってその栄養素を得ます。細胞レベルでは、動物の機能に必要な生体分子はアミノ酸、脂質分子、ヌクレオチド、および単糖です。しかしながら、消費される食物はタンパク質、脂肪、そして複雑な炭水化物からなります。動物はこれらの高分子を、新しい分子・細胞・組織を組み立てるなどの細胞機能を維持するために必要な、単純な分子へと変換しなければなりません。摂取された食物の必要な栄養素への変換は、消化と吸収を含む多段階プロセスです。消化の間に、食物粒子はより小さな成分に分解されて、その後に、それらは体によって吸収されます。

人間の栄養摂取における課題の1つは、食物摂取、貯蔵、そしてエネルギー消費の間のバランスを保つことです。不均衡は健康に重大な影響を及ぼすことがあります。たとえば、あまりエネルギーを消費しないときに多く食べ過ぎると肥満につながり、それが2型糖尿病や心血管疾患などの病気を発症するリスクを高めるでしょう。最近の肥満および関連疾患の増加は、健康を維持する上で食事および栄養の役割を理解することをいっそう重要にしています。

34.1 | 消化器系

この節が終わるまでに、あなたは次のことができるようになります:
•消化と吸収のプロセスを説明する
•さまざまな種類の消化器系を比較対照する
•体内で食品の処理に関わる器官の特殊な機能を説明する
•食物を消化し栄養素を吸収するために器官が連携する方法を記述する

動物は他の生物を摂取することから栄養を得ます。その食生活に応じて、動物は次のカテゴリーに分類することができます:植物を食べるもの(草食動物)、肉を食べるもの(肉食動物)、および植物と動物の両方を食べるもの(雑食動物)です。食物中に存在する栄養素と高分子は、すぐに細胞に利用可能なものではありません。細胞機能にとって栄養素と有機分子を利用しやすくするために、動物の体内で食物を改変する多くのプロセスがあります。動物が形態および機能の複雑さにおいて進化するにつれて、それらの消化器系もまた動物のさまざまな食事の必要性に適応するように進化してきました。

草食動物、雑食動物、および肉食動物

草食動物は、その主な食料源が植物に基づいている動物のことです。図34.2に示されるように、草食動物の例には、鹿、コアラ、およびいくつかの鳥類の種のような脊椎動物、ならびにコオロギやイモムシのような無脊椎動物が含まれます。これらの動物は大量の植物性の物質を扱うことができる消化器系を進化させてきました。草食動物はさらに、果食動物(果実を食べるもの)、穀食動物(種子を食べるもの)、蜜食動物(蜜を吸うもの)、および葉食動物(葉を食べるもの)に分類することができます。

図34.2 | この(a)ミュールジカおよび(b)オオカバマダラの幼虫のような草食動物は、主に植物性の物質を食べます。(credit a: modification of work by Bill Ebbesen; credit b: modification of work by Doug Bowman)

肉食動物は他の動物を食べる動物です。肉食動物(carnivore)という単語はラテン語に由来し、文字通りには「肉を食べるもの」を意味します。図34.3aに示されるライオンやトラのような野生のネコ、そしてヘビやサメなどが脊椎動物の肉食動物の例です。無脊椎動物の肉食動物には、ヒトデ、クモ、および図34.3bに示されるテントウムシが含まれます。偏性の肉食動物は、その栄養素を得るために完全に動物の肉に頼るものです。偏性の肉食動物の例は、ライオンやチーターなどのネコ科のメンバーです。通性の肉食動物は、動物の食物に加えて非動物の食物も食べるものです。通性の肉食動物と雑食動物とを区別する明確な線はないということに注意してください。イヌは通性の肉食動物と見なされるでしょう。

図34.3 | (a)ライオンのような肉食動物は主に肉を食べます。(b)テントウムシも、アブラムシと呼ばれる小さな虫を摂取する肉食動物です。(credit a: modification of work by Kevin Pluck; credit b: modification of work by Jon Sullivan)

雑食動物は植物由来と動物由来の食物の両方を食べる動物です。ラテン語では、雑食動物(omnivore)はすべてを食べることを意味します。人間、クマ(図34.4aに示されています)、およびニワトリが脊椎動物の雑食動物の例です。無脊椎動物の雑食動物には、ゴキブリやザリガニが含まれます(図34.4bに示されています)。

図34.4 | (a)クマと(b)ザリガニのような雑食動物は、植物性と動物性の両方の食物を食べます。(credit a: modification of work by Dave Menke; credit b: modification of work by Jon Sullivan)

無脊椎動物の消化器系

動物は、それらが摂取するさまざまな食物の消化を助けるために、さまざまな種類の消化器系を進化させてきました。最も単純な例は胃水管腔のものであり、それは消化のために1つの開口部しか有していない生物において見られます。扁形動物門(扁形動物)、有櫛動物門(またはクシクラゲ)、および刺胞動物門(サンゴ、クラゲ、イソギンチャク)は、このタイプの消化を使用します。図34.5aに示されるように、胃水管腔は、典型的には、「口」および「肛門」として機能するただ1つの開口部を有する盲管または空洞です。摂取された物質は口に入り、そして中空の管状の空洞を通過します。空洞内の細胞は食物を分解する消化酵素を分泌します。食物粒子は胃水管腔を裏打ちする細胞によって飲み込まれます。

図34.5bに示される消化管は、より高度な系です。それは一方の端部に口があり、もう一方の端部に肛門がある1本の管で構成されています。ミミズは消化管を持つ動物の一例です。食物が口から摂取されると、それは食道を通り抜け、素嚢と呼ばれる器官に貯蔵されます。そして、食物は砂嚢に入り、そこでかき回されて消化されます。食物は砂嚢から腸を通り抜け、栄養素は吸収され、そして廃棄物は排泄物と呼ばれる糞便として肛門を通して除去されます。

図34.5 | (a)このポリプ型のヒドラとクラゲ型のクラゲに示されているように、胃水管腔には単一の開口部があり、そこを通じて食物が摂取され廃棄物が排泄されます。(b)消化管には2つの開口部があります。それは、この線形動物に示されているように、食物を摂取するための口と、廃棄物を排泄するための肛門です。

脊椎動物の消化器系

脊椎動物はその食事の必要性に適応するためにより複雑な消化器系を進化させました。いくつかの動物は単一の胃を持っていますが、他の動物は多室の胃を持っています。鳥類は、咀嚼されていない食べ物を食べるのに適した消化器系を発達させました。

単胃:1つの室を持つ胃

単胃(monogastric:モノガストリック)という言葉が示唆するように、このタイプの消化器系は1つの(「モノ」)胃室(「ガストリック」)からなります。図34.6a、bに示されるように、人間と多くの動物は単胃の消化器系を持っています。消化のプロセスは口と食物の摂取から始まります。歯は咀嚼(かみ砕き)、すなわち物理的に食物をより小さな粒子に分解するのに重要な役割を果たします。唾液中に存在する酵素も食物を化学的に分解し始めます。食道は、口と胃をつなぐ長い管です。蠕動運動、すなわち平滑筋の波のような収縮を使用して、食道の筋肉は食物を胃に向かって押し出します。胃の中で酵素の作用をスピードアップするために、胃はpH1.5~2.5の間の値を持つ非常に酸性の環境となっています。胃の中の酵素を含む胃液は、食物粒子に作用して消化のプロセスを続けます。食物のさらなる分解は小腸の中で起こり、そこでは肝臓、小腸、および膵臓によって産生される酵素が消化のプロセスを続けます。栄養素は、小腸の壁を裏打ちする上皮細胞を横切って血流に吸収されます。廃棄物は大腸に運ばれ、そこで水分が吸収され、より乾燥した廃棄物は糞便へと圧縮されます。それは直腸を通して排泄されるまで保管されます。

図34.6 | (a)人間、および(b)ウサギなどの草食動物は単胃の消化器系を持っています。しかしながら、ウサギでは小腸と盲腸が拡大して植物物質を消化する時間を長くすることが可能です。拡大された器官は栄養素の吸収のためにより広い表面積を提供します。ウサギは自分の食物を2回消化します。最初に食物が消化器系を通過するとき、それは盲腸に集まり、それからそれは盲腸糞と呼ばれる柔らかい糞便として通り抜けます。ウサギは盲腸糞をさらに消化するためにこれらを再摂取します。

鳥類

食物から栄養を得ることに関して、鳥類は特別な課題に直面しています。鳥類は歯を持っていないため、図34.7に示されているそれらの消化器系は咀嚼されていない食物を処理することができなければなりません。鳥類は、種子や昆虫から果実やナッツに至るまで、その食生活の中での広範な多様性を反映したさまざまなくちばしの種類を進化させてきました。ほとんどの鳥類は空を飛ぶので、効率的に食物を処理して体重を低く抑えるために、それらの代謝率は高くなっています。鳥類の胃には2つの室があります:食物が胃に​​入る前に胃液が生産されて食物が消化される前胃と、食物が貯蔵され、浸され、機械的に粉砕される砂嚢です。未消化の物質は、時には吐き戻されるような食物ペレットを形成します。化学的消化および吸収の大部分は腸内で起こり、廃棄物は排泄腔を通して排出されます。

図34.7 | 鳥類の食道には、食物を保管する素嚢と呼ばれる小さな袋があります。食物は素嚢から前胃と呼ばれる2つの胃のうち最初の胃に入ります。そこには食物を分解する消化液が含まれています。前胃から、食物は砂嚢と呼ばれる2番目の胃に入り、そこでは食物がすりつぶされます。いくつかの鳥類は、石や砂利を飲み込み、それを砂嚢の中に溜めて、粉砕プロセスを助けます。鳥類は尿と糞便を排出するための別々の開口部を持っていません。その代わりに、腎臓からの尿酸が大腸に分泌され、消化プロセスからの排泄物と合わされます。この廃棄物は、排泄腔と呼ばれる開口部から排出されます。

進化へのつながり

鳥類の適応

鳥類は非常に効率的で単純化された消化器系を持っています。最近の化石証拠は、他の陸上動物からの鳥類の進化的分岐は、消化器系の合理化と単純化によって特徴付けられることを示しています。他の多くの動物とは異なり、鳥類はその食物を噛むための歯を持っていません。それらは、唇の代わりに鋭く先のとがったくちばしを持っています。角のようなくちばし、顎の欠如、そして鳥類の小さい舌は、それらの恐竜の祖先にまでさかのぼることができます。これらの変化の出現は鳥類の食事に種子が含まれたことと同時に起こったようです。種子を食べる鳥類は、種子をつかむために形作られたくちばしと、仕事を分担することのできる2つの区画に分けられた胃を持っています。鳥類は空を飛ぶために軽いままでいる必要があるため、それらの代謝率は非常に高いです。それは鳥類がその食物を非常に速く消化し、そして頻繁に食事をする必要があることを意味します。これを植物質の消化に非常に長い時間をかける反芻動物と対照してみてください。

反芻動物

反芻動物は主にウシ、ヒツジ、ヤギのような草食動物で、その全体的な食事は大量の粗飼料や食物繊維を食べることからなります。反芻動物は、膨大な量のセルロースを消化するのを助ける消化器系を進化させてきました。反芻動物の口の興味深い特徴は、それらが上顎切歯を持っていないということです。反芻動物はその下顎の歯、舌、および唇を使って食物を引き裂いて咀嚼します。食物は口から食道へ、そして胃へと移動します。

図34.8に示されるように、大量の植物物質を消化するのを助けるために、反芻動物の胃は多室の器官となっています。胃の4つの区画は、第一胃、網胃、葉胃、および第四胃と呼ばれます。これらの室は、セルロースを分解し、摂取された食物を発酵させる多くの微生物を含んでいます。第四胃は「真の」胃であり、胃液が分泌される単胃の胃腔と同等のものです。4つの区画の胃室は、より大きな空間と、反芻動物が植物物質を消化するのに必要な微生物のサポートとを提供します。発酵プロセスは、胃室内に大量のガスを生成し、これは排出されなければなりません。他の動物と同様に、小腸は栄養素の吸収に重要な役割を果たしており、大腸は廃棄物の排除に役立ちます。

図34.8 | ヤギやウシなどの反芻動物には4つの胃があります。最初の2つの胃、第一胃と網胃は、セルロース繊維を消化することができる原核生物と原生生物を含みます。反芻動物は、網胃から食い戻しを逆流させ、それを咀嚼し、そして第三の胃、すなわち葉胃へと飲み込み、そこで水分を除去します。それから食い戻しは4番目の胃である第四胃に移動し、そこで反芻動物によって産生される酵素によって消化されます。

疑似反芻動物

ラクダやアルパカなどの一部の動物は疑似反芻動物です。それらはたくさんの植物物質と粗飼料を食べます。植物の細胞壁はポリマーの糖分子であるセルロースを含むため、植物物質の消化は容易ではありません。これらの動物の消化酵素はセルロースを分解できませんが、消化器系に存在する微生物は分解できます。したがって、消化器系は大量の粗飼料を処理し、セルロースを分解することができなければなりません。疑似反芻動物は消化器系に3つの室の胃を持っています。しかしながら、それらの盲腸 — 植物物質の消化に必要な多くの微生物を含む大腸の初めの袋状器官 — は大きく、粗飼料が発酵され消化される場所です。これらの動物は第一胃を持っていませんが、葉胃、第四胃、および網胃を持っています。

消化器系の部分

脊椎動物の消化器系は、生物を支える栄養成分へと食物を変換するのを促進するように設計されています。

口腔

図34.9に示されるように、口腔(口)が食物の消化器系への入り口です。摂取された食物は咀嚼、すなわち歯の噛み砕く動作によってより小さな粒子へと砕かれます。すべての哺乳動物は歯を持っていて、食物を噛むことができます。

消化の広範な化学プロセスは口の中で始まります。食物が咀嚼されていると、唾液腺によって産生される唾液が食物と混ざります。唾液は多くの動物の口の中で生成される水のような物質です。唾液を分泌する3つの主要な腺 — 耳下腺、顎下腺、および舌下腺があります。唾液には、食物を湿らせ、食物のpHを緩衝する粘液が含まれています。唾液には、免疫グロブリンとリゾチームも含まれています。これらは、一部の細菌の増殖を抑制することによって虫歯を減らす抗細菌作用があります。唾液には、食物中のデンプンをマルトースと呼ばれる二糖類に変換するプロセスを開始する唾液アミラーゼと呼ばれる酵素も含まれています。リパーゼと呼ばれる別の酵素は、舌の中の細胞によって産生されます。リパーゼはトリグリセリドを分解することができる酵素の一種です。舌リパーゼは食物中の脂肪成分の分解を開始します。歯と唾液によってもたらされる咀嚼および湿潤作用は、嚥下のために食物を食物塊と呼ばれるかたまりへと準備します。舌は飲み込むのに役立ちます — 食物塊を口から咽頭に移動させます。咽頭は2つの通路に通じています:肺に通じる気管と、胃に通じる食道です。気管には声門と呼ばれる開口部があり、これは喉頭蓋と呼ばれる軟骨性の弁で覆われています。飲み込むときには、喉頭蓋が声門を閉じ、食物は気管ではなく食道に入ります。この配置は、食物が気管に入らないようにすることを可能にします。

図34.9 | 食物の消化は(a)口腔内で始まります。食物は歯によって咀嚼され、(b)唾液腺から分泌される唾液によって湿らされます。唾液中の酵素はデンプンや脂肪を消化し始めます。結果として得られた食物塊は、舌の助けを借りて、嚥下によって食道内へと移動されます。(credit: modification of work by the National Cancer Institute)

食道

食道は口と胃をつなぐ管状器官です。噛んで柔らかくなった食物は、飲み込まれた後に食道を通過します。図34.10に示されるように、食道の平滑筋は蠕動運動と呼ばれる一連の波のような動きをして、食物を胃の方へ押し出します。蠕動の波は一方向性です — それは口から胃に食物を移動させ、逆の動きは不可能です。食道の蠕動運動は不随意反射です。それは飲み込む行為に応じて起こります。

図34.10 | 食道は蠕動運動によって口から胃へ食物を移動させます。

括約筋と呼ばれる輪状の筋肉が消化器系の中に弁を形成します。胃-食道括約筋は食道の胃側の端部に位置しています。嚥下および食物の食物塊によって加えられる圧力に応じて、この括約筋が開き、食物塊が胃に入ります。嚥下作用がないときは、この括約筋は閉じられ、胃の内容物が食道まで上がるのを防ぎます。多くの動物は真の括約筋を持っています。しかしながら、人間には真の括約筋がありませんが、嚥下作用がないときは食道は閉じたままです。酸性の消化液が食道に抜け出すと、酸の逆流すなわち「胸やけ」が起こります。

図34.11に示されるように、消化の大部分は胃で起こります。胃は、胃の消化液を分泌する嚢状器官です。胃の中のpHは1.5から2.5の間です。この強酸性環境は、食物の化学的分解および栄養素の抽出に必要とされます。空の時には、胃はかなり小さい器官です。しかしながら、胃は食物でいっぱいにされたときには、その休息時のサイズの最大20倍まで拡大することができます。この特性は、食物が入手可能なときに食べる必要がある動物にとって特に役立ちます。

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図34.11 | 人間の胃は、ほとんどのタンパク質が消化されるような非常に酸性の環境を持っています。(credit: modification of work by Mariana Ruiz Villareal)

消化器系についての次の記述のうち、間違っているものはどれですか?
a.糜粥は胃で作られる食物と消化液の混合物である。
b.食物は小腸より先に大腸に入る。
c.小腸では、糜粥は脂肪を乳化する胆汁と混ざる。
d.胃は幽門括約筋によって小腸から隔てられている。

胃は反芻動物以外の動物におけるタンパク質消化の主要な部位でもあります。タンパク質消化は、胃室内でペプシンと呼ばれる酵素によって仲介されます。ペプシンはペプシノーゲンと呼ばれる不活性型で胃の主細胞から分泌されます。ペプシンはペプチド結合を切断し、タンパク質をより小さなポリペプチドに裂開します。それはまた、より多くのペプシノーゲンを活性化するのを助け、さらに多くのペプシンを生成する正のフィードバックメカニズムを開始します。別の細胞型 — 壁細胞 — は水素イオンと塩化物イオンを分泌し、それらは内腔で結合して塩酸(胃液の主たる酸性成分)を形成します。塩酸は不活性なペプシノーゲンをペプシンに変換するのを助けます。強酸性環境はまた、食物中の多くの微生物を殺し、酵素のペプシンの作用と組み合わさって、食物中のタンパク質の加水分解をもたらします。化学的消化は胃のかき回す運動によって促進されます。平滑筋の収縮および弛緩は、約20分ごとに胃の内容物を混合します。部分的に消化された食物と胃液の混合物は、糜粥と呼ばれます。糜粥は胃から小腸へ受け渡されます。さらなるタンパク質消化が小腸で行われます。胃内容排出は食事後2~6時間以内に起こります。一度に少量の糜粥だけが小腸に放出されます。胃から小腸への糜粥の移動は、幽門括約筋によって調節されます。

タンパク質やいくつかの脂肪を消化するときは、胃の裏打ちがペプシンによって消化されるのを防がなければなりません。胃の裏打ちがどのように保護されているかを記述するときに考慮するべき2つの点があります。第1に、前述のように、酵素のペプシンは不活性形態で合成されます。ペプシノーゲンはペプシンと同じ酵素機能を持たないので、これは主細胞を保護します。第2に、胃には消化液の作用から下層の組織を保護するような厚い粘液の裏打ちがあります。この粘液層が断裂すると、胃に潰瘍が形成されます。潰瘍とは、粘液層が断裂して再形成に失敗したときに、細菌(Helicobacter pylori)によって引き起こされる器官内または器官上の開放創傷です。

小腸

糜粥は胃から小腸に移動します。小腸はタンパク質、脂肪、炭水化物の消化が完了する器官です。小腸は、絨毛と呼ばれる指のような突起を含む高度に折り畳まれた表面を有する長い管状の器官です。それぞれの絨毛の頂端面には、微絨毛と呼ばれる多くの微視的な突起があります。図34.12に示されているこれらの構造は、内腔側に上皮細胞とともに並んでおり、栄養素が消化された食品から吸収され、反対側で血流に吸収されるのを可能にします。絨毛と微絨毛は、それらの多くのひだでもって腸の表面積を増加させ、そして栄養素の吸収効率を増やします。血中に吸収された栄養素は、肝臓につながる肝門静脈に運ばれます。そこでは、肝臓が体の他の部分への栄養素の分配を調節して、薬物、アルコール、そしていくつかの病原体を含む有毒物質を取り除きます。

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図34.12 | 絨毛は小腸の裏打ちにあるひだで、栄養素の吸収を促進するために表面積を増やします。

小腸についての次の記述のうち、間違っているものはどれですか?
a.小腸の内側を裏打ちする吸収細胞は微絨毛(表面積を増加させ、食物の吸収を助ける小さな突起)を有する。
b.小腸の内側には絨毛と呼ばれるひだがたくさんある。
c.微絨毛はリンパ管とともに血管と並んでいる。
d.小腸の内側は内腔と呼ばれる。

人間の小腸の長さは6メートルを超え、3つの部分に分かれています:十二指腸、空腸、および回腸です。小腸の「C字型」の固定された部分は十二指腸と呼ばれ、図34.11に示されています。十二指腸は、糜粥が胃から十二指腸に移動することを可能にするように開く幽門括約筋によって胃から分離されています。十二指腸では、糜粥は、糜粥の酸性度を中和し、緩衝剤として作用する重炭酸塩に富むアルカリ性溶液中で膵液と混合されます。膵液にはいくつかの消化酵素も含まれています。膵臓、肝臓、および胆嚢からの消化液、ならびに腸壁自体の腺細胞からの消化液が十二指腸に入ります。胆汁は肝臓で産生され、貯蔵されて胆嚢で濃縮されます。胆汁には脂質を乳化する胆汁酸塩が含まれている一方で、膵臓ではデンプン、二糖類、タンパク質、脂肪を異化する酵素が生成されます。これらの消化液は、糜粥の中の食品粒子をグルコース、トリグリセリド、およびアミノ酸に分解します。十二指腸では食物のいくつかの化学的消化が起こります。脂肪酸の吸収も十二指腸で起こります。

小腸の2番目の部分は空腸と呼ばれ、図34.11に示されています。ここでは、栄養素の加水分解が続けられる一方で、ほとんどの炭水化物とアミノ酸が腸の裏打ちを通して吸収されます。化学的消化と栄養素の吸収の大部分は空腸で起こります。

やはり図34.11に示されている回腸は小腸の最後の部分であり、ここでは胆汁酸塩とビタミンが血流に吸収されます。未消化の食物は、筋肉の蠕動運動によって回腸から結腸に送られます。回盲弁において回腸が終わり、大腸が始まります。虫垂(「虫のような付属物」)が回盲弁の場所に位置しています。人間の虫垂は酵素を分泌せず、免疫において重要な役割を果たしていません。

大腸

図34.13に示される大腸は、未消化の食物物質から水分を再吸収し、廃棄物を処理します。人間の大腸は、小腸と比較して長さがはるかに短いですが直径は大きいです。大腸には盲腸、結腸、直腸の3つの部分があります。盲腸は回腸を結腸に接合するとともに、廃棄物のための収容袋となります。結腸には、消化過程を助ける多くの細菌、すなわち「腸内フローラ」があります。結腸は、上行結腸、横行結腸、下行結腸、S状結腸の4つの領域に分けられます。結腸の主な機能は、未消化の食物から水分と無機塩を抽出し、廃棄物を保管することです。肉食性の哺乳動物は、その食生活のために、草食性の哺乳動物と比較してより短い大腸を有します。

図34.13 | 大腸は未消化の食物から水分を再吸収し、排出されるまで廃棄物を保管します。

直腸と肛門

図34.13に示されるように、直腸は大腸の末端部分です。直腸の主な役割は排便まで糞便を保存することです。排泄物は排泄中の蠕動運動を利用して推進されます。肛門は消化管の遠端の開口部であり、廃棄物質の出口です。直腸と肛門の間の2つの括約筋は、排泄を制御します。内側の括約筋は不随意であり、外側の括約筋は随意です。

副器官

上記の器官は、食物が通過する消化管の器官です。副器官は、食物を栄養素に異化させる分泌物(酵素)を加える器官です。副器官には、唾液腺、肝臓、膵臓、胆嚢などが含まれます。肝臓、膵臓、および胆嚢は、消費される食物に応じてホルモンによって調節されます。

肝臓は人間における最大の内部器官で、脂肪の消化と血液の解毒に非常に重要な役割を果たしています。肝臓は胆汁(十二指腸における食物の脂肪成分の分解に必要な消化液)を生成します。また肝臓は、ビタミンや脂肪を処理し、多くの血漿タンパク質を合成します。

膵臓は消化液を分泌するもう1つの重要な腺です。胃で産生される糜粥は、本質的に酸性度が高いです。膵液は高いレベルの重炭酸塩(酸性の糜粥を中和するアルカリ)を含んでいます。さらに、膵液はタンパク質と炭水化物の消化に必要な多種多様な酵素を含んでいます。

胆嚢は、胆汁を保存し、胆汁酸塩を濃縮することによって肝臓を助ける小さな器官です。脂肪酸を含む糜粥が十二指腸に入ると、胆汁が胆嚢から十二指腸に分泌されます。

34.2 | 栄養摂取とエネルギー生産

この節が終わるまでに、あなたは次のことができるようになります:
•なぜ動物の食事はバランスが取れているべきなのか、そして体の必要性を満たしているべきなのかを説明する
•食物の主成分を定義する
•動物の体では合成することができない、細胞機能に必要な必須栄養素を記述する
•食事と消化を通じてエネルギーがどのように生成されるかを説明する
•過剰な炭水化物やエネルギーが体内にどのように蓄えられているかを記述する

私たちの惑星上の動物の生命の多様性を考えると、動物の食事も大幅に異なるだろうことは驚くべきことではありません。動物の食事は、成長、維持、生殖に必要なDNAやその他の複雑な分子を構築するのに必要な材料の供給源です。これらのプロセスをまとめて生合成と呼びます。食事は細胞内のATP産生のための材料の供給源でもあります。細胞機能に必要なミネラルとビタミンを供給するために、食事はバランスが取れていなければなりません。

食物の必要条件

動物の食事の基本的な必要条件とは何でしょうか?動物の食事はバランスがとれているべきであり、そして身体機能に必要な栄養素と、健康と生殖能力に必要な構造と調節を維持するのに必要なミネラルとビタミンを提供するべきです。人間に対するこれらの必要条件は図34.14に図示されています。

図34.14 | 人間の場合、バランスの取れた食事には果物、野菜、穀物、タンパク質が含まれます。(credit: USDA)

学習へのリンク

あなたが自分の体の食物の必要条件を確実に満たす際における第一歩は、食品グループとそれらが提供する栄養素についての認識です。それぞれの食品グループと1日の推奨摂取量についてより詳しく学ぶためには、米国農務省のこのインタラクティブなサイト(http://openstaxcollege.org/l/food_groups)を参照してください。

日常へのつながり

「Let’s Move!(運動しよう!)」キャンペーン

肥満はますます流行しており、米国では子供の肥満率が急速に高まっています。小児期の肥満と闘い、子供たちが健康的な人生のスタートを切れるようにするために、大統領夫人のミシェル・オバマはLet’s Move!キャンペーンを始めました。このキャンペーンの目的は、健康的な栄養を提供し、将来の世代に活動的なライフスタイルを奨励することについて、親と保護者を教育することです。このプログラムは、子供が健康的な食品(より多くの果物、野菜、全粒穀物)にアクセスできるようにし、加工食品から消費するカロリーを少なくするために、親、教師、医療提供者を含むコミュニティー全体を巻き込むことを目的としています。もう1つの目標は、子供たちが身体活動をするようにすることです。テレビ視聴の増加およびビデオゲームのような動きの少ない趣味により、座りがちなライフスタイルが標準となっています。詳細については、https://letsmove.obamawhitehouse.archives.gov (http://openstax.org/l/Letsmove)を参照してください。

有機的な前駆体

細胞材料および組織を構築するのに必要な有機分子は食物から来なければなりません。炭水化物または糖は、動物の体内の有機炭素の主な供給源です。消化の間に、消化可能な炭水化物は最終的にグルコースに分解され、代謝経路を通じてエネルギーを提供するために使用されます。多糖類を含む複雑な炭水化物は、生化学的修飾によってグルコースに分解されます。しかしながら、人間は酵素のセルラーゼを生産せず、そして多糖類のセルロースからグルコースをもたらす能力を欠いています。人間では、これらの分子は大腸や健康な結腸を通して廃棄物を移動させるのに必要な繊維を提供します。人間の腸の腸内フローラは、これらの植物繊維からいくらかの栄養素を引き出すことができます。体内の余分な糖はグリコーゲンに変換され、後で使用するために肝臓と筋肉に保存されます。グリコーゲンの貯蔵物は、長距離走などの長時間の運動に対して燃料を与え、食料不足の間にエネルギーを供給するために使用されます。過剰なグリコーゲンは脂肪に変換することができ、それは断熱およびエネルギー貯蔵のために哺乳動物の皮膚の下層に貯蔵されます。過剰な消化可能な炭水化物は、飢饉を乗り切るとともに運動性を助けるために、哺乳動物によって貯蔵されます。

もう1つの重要な必要条件は窒素です。タンパク質異化作用は有機窒素源を提供します。アミノ酸はタンパク質の基礎的要素であり、タンパク質分解は細胞機能に使用されるアミノ酸を提供します。これらに由来する炭素および窒素は、ヌクレオチド、核酸、タンパク質、細胞、および組織のための基礎的要素になります。過剰な窒素は有毒であるため排出されなければなりません。脂肪は食物に風味を与え、満腹感や膨満感を促進します。1グラムの脂肪には9キロカロリーが含まれているため、脂肪食品は重要なエネルギー源でもあります。脂肪は脂溶性ビタミンの吸収と脂溶性ホルモンの産生を助けるために食事において必要とされます。

必須栄養素

動物の体は有機的な前駆体から機能に必要な多くの分子を合成することができますが、食物から摂取される必要があるいくつかの栄養素があります。これらの栄養素は必須栄養素と呼ばれます。これは、必須栄養素は体によって作り出すことができず、食事によって取り込まなければならないことを意味します。

ω-3 α-リノレン酸とω-6リノール酸は、いくつかの膜のリン脂質を作るのに必要な必須脂肪酸です。ビタミンは、多くの酵素が機能するために少量が必要とされるもう1つの種類の必須有機分子であり、このため、補酵素であると考えられています。表34.1および表34.2に概説されているように、ビタミンの欠如または低いレベルは健康に劇的な影響を与えることがあります。脂溶性と水溶性の両方のビタミンを食物から得なければなりません。表34.3に記載されているミネラルは、食物から得なければならない無機必須栄養素です。それらの多くの機能の中で、ミネラルは構造と調節を助け、補因子であると考えられています。特定のアミノ酸も体によって合成することができず、食物から調達しなければなりません。これらのアミノ酸は「必須」アミノ酸です。人体は必要な20個のアミノ酸のうち11個しか合成することができません。残りは食物から得なければなりません。必須アミノ酸は表34.4に記載されています。

表34.1
表34.2
図34.15 | 健康的な食事には、必須栄養素の必要性を確実に満たすためのさまざまな食物を含めるべきです。(credit: Keith Weller, USDA ARS)
表34.3
表34.4

食物エネルギーとATP

動物はエネルギーを獲得し恒常性を維持するために食物を必要とします。恒常性とは、環境への外的変化に直面しても安定した内部環境を維持するような、ある系における能力のことです。たとえば、人間の通常の体温は37°C(98.6°F)です。人間は、外気温が暑いときも寒いときもこの温度を維持します。この体温を維持するためにはエネルギーがかかり、動物は食物からこのエネルギーを得ます。

動物にとっての主なエネルギー源は炭水化物、主にグルコースです。グルコースは体の燃料と呼ばれています。動物の食事における消化可能な炭水化物は、一連の異化化学反応を通してグルコース分子に変換されます。

アデノシン三リン酸(ATP)は、細胞内の主要なエネルギー通貨です。ATPはリン酸エステル結合にエネルギーを蓄えます。ATPは、ホスホジエステル結合が破壊されたときにエネルギーを放出し、そして、ATPはADPおよびリン酸基に変換されます。ATPは、細胞の細胞質およびミトコンドリアにおける酸化反応によって産生され、そこでは炭水化物、タンパク質、および脂肪は、まとめて細胞呼吸と呼ばれる一連の代謝反応を行います。たとえば、解糖は、グルコースがピルビン酸に変換され、その化学ポテンシャルエネルギーの一部がNADHとATPに伝達される一連の反応です。

ATPはすべての細胞機能に必要とされます。それは細胞や組織に必要な有機分子を作るのに使われます。ATPは筋肉の収縮と神経系における電気的シグナルの伝達のためのエネルギーを提供します。ATPの量が身体の必要量を超えて利用可能であるとき、肝臓は過剰なATPと過剰なグルコースを使って、グリコーゲンと呼ばれる分子を産生します。グリコーゲンはグルコースのポリマー形態であり、肝臓と骨格筋の細胞に貯蔵されています。血糖値が下がると、肝臓はグリコーゲンの貯蔵庫からグルコースを放出します。骨格筋は激しい運動中にグリコーゲンをグルコースに変換します。グルコースと過剰なATPをグリコーゲンと過剰なエネルギーの貯蔵に変換するプロセスは、動物が運動性、食料不足、そして飢餓に対処するのを助ける上で進化的に重要なステップです。

日常へのつながり

肥満

肥満は、米国における主要な健康問題であり、肥満およびそれが引き起こし得る疾患(2型糖尿病、結腸および乳房のがん、ならびに心血管疾患など)を減少させることへの注目が高まっています。摂取された食物はどのように肥満に寄与するのでしょうか?

脂肪食品はカロリー密度が高いため、炭水化物やタンパク質よりも単位質量あたりのカロリーが多くなります。炭水化物1グラムには4キロカロリーがあり、タンパク質1グラムには4キロカロリーがあり、脂肪1グラムには9キロカロリーがあります。動物は、そのより高いエネルギー含有量のために脂質が豊富な食物を探す傾向があります。

空腹(「食べる時間だ」)および満腹(「食べることを止める時間だ」)のシグナルは、脳の視床下部領域で制御されています。脂肪酸が豊富な食品は、炭水化物だけが豊富な食品よりも満腹感を促進する傾向があります。

過剰な炭水化物とATPは、グリコーゲンを合成するために肝臓によって使われます。解糖中に生成されるピルビン酸は、脂肪酸を合成するために使用されます。体内に必要以上のグルコースが存在する場合、結果として生じる過剰なピルビン酸は、最終的に体内で脂肪酸の合成をもたらすような分子に変換されます。これらの脂肪酸は脂肪細胞 — 哺乳類の体内の脂肪の細胞(主な役割は後で使用するために脂肪を貯蔵すること) — に貯蔵されます。

いくつかの動物は肥満の恩恵を受けていることに注意しておくことが重要です。ホッキョクグマとアザラシは、断熱のためと、北極圏の冬の間に体温を失わないようにするために、体脂肪を必要とします。食物が不足しているとき、貯蔵された体脂肪は恒常性を維持するためのエネルギーを提供します。脂肪は哺乳類の飢餓を防ぎ、食物が毎日手に入らないときにエネルギーを利用できるようにします。脂肪は、狩猟がうまくいったり大量の食べ物が入手可能になったときに保存されます。

34.3 | 消化器系のプロセス

この節が終わるまでに、あなたは次のことができるようになります:
•消化プロセスを記述する
•消化と吸収に関わるステップを詳述する
•排泄を定義する
•吸収における小腸と大腸の両方の役割を説明する

食物から栄養とエネルギーを得ることは多段階のプロセスです。真の動物にとって、最初のステップは摂取、すなわち食物を取り込む行為です。この後には、消化、吸収、そして排泄が続きます。以下の節では、これらの各ステップについて詳しく議論していきます。

摂取

そのままの食物に含まれる大きな分子は細胞膜を通過できません。動物が栄養素と有機分子を利用することができるように、食物はより小さな粒子に分割される必要があります。このプロセスの最初のステップは摂取です。摂取は口から食物を取り込むプロセスです。脊椎動物では、歯、唾液、および舌が咀嚼(食物を食物塊にします)において重要な役割を果たします。食物が機械的に分割されている間に、唾液中の酵素も食物を化学的に処理し始めます。これらのプロセスの組み合わさった作用によって食物は、大きな粒子から、飲み込むことができて食道の全長にわたって移動することができる柔らかい塊へと変わります。

消化と吸収

消化は、食物を機械的および化学的に分解して小さな有機断片にすることです。高分子を、消化上皮を横切る吸収に適した大きさのより小さな断片へと分解することが重要です。タンパク質、多糖類、脂質の大きくて複雑な分子は、消化上皮細胞によって吸収できるようになる前に、単糖などのより単純な粒子に縮小されていなければなりません。さまざまな器官が消化プロセスにおいて特定の役割を果たしています。動物の食事には炭水化物、タンパク質、脂肪、そして栄養素の平衡のためのビタミンと無機成分が必要とされます。これらの各成分がどのように消化されるのかは、次の項目で説明します。

炭水化物

炭水化物の消化は口から始まります。唾液酵素のアミラーゼは食物のデンプンを二糖類であるマルトースへと分解し始めます。食物の食物塊が食道を通って胃に移動するときには、炭水化物の顕著な消化は起こりません。食道は消化酵素を生成しませんが、潤滑のために粘液を生成します。胃の中の酸性環境はアミラーゼ酵素の作用を止めます。

炭水化物の消化の次のステップは十二指腸で起こります。胃からの糜粥が十二指腸に入り、膵臓、肝臓、および胆嚢からの消化分泌液と混ざることを思い出してください。膵液にはアミラーゼも含まれています。アミラーゼは、デンプンとグリコーゲンを二糖類のマルトースに分解し続けます。この二糖類は、マルターゼ、スクラーゼ、およびラクターゼと呼ばれる酵素によって単糖に分解されます。これらの酵素は、小腸壁の刷子縁にも存在します。マルターゼはマルトースをグルコースに分解します。スクロースおよびラクトースなどの他の二糖類は、それぞれスクラーゼおよびラクターゼによって分解されます。スクラーゼはスクロース(または「食卓の砂糖」)をグルコースとフルクトースに分解し、ラクターゼはラクトース(または「乳糖」)をグルコースとガラクトースに分解します。このようにして生産された単糖(グルコース)は吸収され、そしてエネルギーを利用するために代謝経路で使用することができます。単糖類は腸の上皮を横切って血流へと運ばれ、体内のさまざまな細胞に運ばれます。炭水化物の消化のステップは図34.16と表34.5にまとめられています。

図34.16 | 炭水化物の消化はいくつかの酵素によって行われます。デンプンとグリコーゲンは、アミラーゼとマルターゼによってグルコースへと分解されます。スクロース(食卓の砂糖)とラクトース(乳糖)は、それぞれスクラーゼとラクターゼによって分解されます。
表34.5

タンパク質

タンパク質消化の大部分は胃で起こります。酵素のペプシンは、完全なタンパク質を4~9個のアミノ酸の短鎖であるペプチドに分解することによって、タンパク質の消化において重要な役割を果たします。十二指腸では、他の酵素(トリプシン、エラスターゼ、およびキモトリプシン)がペプチドに作用して、それらをより小さなペプチドへと縮小します。トリプシン、エラスターゼ、カルボキシペプチダーゼ、およびキモトリプシンは膵臓によって産生され、十二指腸に放出され、そこでそれらは糜粥に作用します。ペプチドを単一アミノ酸へとさらに分解することは、ペプチダーゼと呼ばれる酵素(ペプチドを分解するもの)によって補助されます。具体的には、カルボキシペプチダーゼ、ジペプチダーゼ、およびアミノペプチダーゼは、ペプチドを遊離アミノ酸に縮小するのに重要な役割を果たします。このアミノ酸は小腸を通して血流に吸収されます。タンパク質消化のステップは図34.17と表34.6にまとめられています。

図34.17 | タンパク質消化は、胃から始まり腸を通して続く多段階のプロセスです。
表34.6

脂質

脂質の消化は、舌リパーゼおよび胃リパーゼの助けを借りて胃の中で始まります。しかしながら、大部分の脂質の消化は、膵リパーゼのために小腸で起こります。糜粥が十二指腸に入ると、ホルモン反応が胆汁の放出を引き起こします。胆汁は肝臓で産生され、胆嚢に貯蔵されています。胆汁は乳化によって脂質、主にトリグリセリドの消化を助けます。乳化は、大きな脂肪球がいくつかの小さな脂肪球に分解されるプロセスです。これらの小さな小球は、大きな凝集体を形成するというよりもむしろ糜粥に広く分散しています。脂質は疎水性物質です:水の存在下では、それらは水への露出を最小にするために小球を形成するように凝集するでしょう。胆汁には胆汁酸塩が含まれています。胆汁酸塩は両親媒性、つまり、疎水性部分と親水性部分が含まれています。したがって、胆汁酸塩の一方の側は親水性部分で水と接し、他方の側は疎水性部分で脂質と接することができます。そうすることによって、胆汁酸塩は大きな脂肪球を小さな脂肪球に乳化します。

なぜ乳化は脂質の消化にとって重要なのでしょうか?膵液はリパーゼと呼ばれる酵素(脂質を分解する酵素)を含んでいます。もし糜粥中の脂質が凝集して大きな脂肪球になると、リパーゼが作用するのに利用できる脂質の表面積が非常に小さくなり、脂質の消化が不完全になります。エマルジョンを形成することによって、胆汁酸塩は脂質の利用可能な表面積を何倍にも増加させます。図34.18で詳しく説明されているように、膵リパーゼは脂質に対してより効率的に作用し、それらを消化することができます。リパーゼは脂質を脂肪酸とグリセリドに分解します。これらの分子は細胞の原形質膜を通過して腸の裏打ちの上皮細胞に入ることができます。胆汁酸塩は、長鎖脂肪酸とモノグリセリドを取り囲み、ミセルと呼ばれる小さな球を形成します。ミセルは小腸の吸収細胞の刷子縁に入り、そこでは、長鎖脂肪酸およびモノグリセリドがミセルから離れて吸収細胞内に拡散するとともにミセルを糜粥に残したままにします。長鎖脂肪酸およびモノグリセリドは吸収細胞内で再結合してトリグリセリドを形成し、これは凝集して小球になり、タンパク質で被覆されるようになります。これらの大きな球はカイロミクロンと呼ばれます。カイロミクロンは、トリグリセリド、コレステロール、および他の脂質を含み、その表面にタンパク質を有します。表面はまた、リン脂質の親水性リン酸基の「頭部」からなります。それらは一緒になって、脂質を水にさらすことなくカイロミクロンが水性環境の中で動くことを可能にします。カイロミクロンは、エキソサイトーシスを介して吸収細胞を離れます。カイロミクロンはリンパ管に入り、次に鎖骨下静脈から血液に入ります。

図34.18 | 脂質は消化され、小腸に吸収されます。

ビタミン

ビタミンは水溶性または脂溶性のいずれかです。脂溶性ビタミンは脂質と同じ方法で吸収されます。脂溶性ビタミンの吸収を助けるために、食物中である程度の量の脂質を摂取することが重要です。水溶性ビタミンは腸から直接血流に吸収されます。

学習へのリンク

このウェブサイト(http://openstaxcollege.org/l/digest_enzymes)には、タンパク質、脂肪、炭水化物の消化の概要があります。

ビジュアルコネクション

図34.19 | 食物の機械的および化学的消化は、口の中から始まり直腸の中で終わるまで、多くの段階で行われます。

消化プロセスについての以下の記述のうち、正しいものはどれですか?
a.口の中のアミラーゼ、マルターゼ、およびラクターゼが炭水化物を消化する。
b.胃の中のトリプシンとリパーゼがタンパク質を消化する。
c.胆汁が小腸で脂質を乳化する。
d.小腸まで食物は吸収されない。

排泄

消化の最後のステップは、未消化の食物の内容物と廃棄物を排泄することです。未消化の食物物質は結腸に入り、そこで大部分の水が再吸収されます。結腸は消化プロセスを助ける「腸内フローラ」と呼ばれる微生物フローラの本拠地でもあることを思い出してください。半固形廃棄物は筋肉の蠕動運動によって結腸を通って移動し、直腸に貯蔵されます。直腸が糞便物質の貯蔵に反応して拡張するにつれて、直腸は排泄を促すために必要な神経シグナルを誘発します。固形廃棄物は直腸の蠕動運動を使用して肛門を通して排泄されます。

排泄に伴う一般的な問題

下痢や便秘は、消化に影響を与える最も一般的な健康上の懸念の一部です。便秘は、結腸内で水分が過剰に除去されるために糞便が硬化した状態です。対照的に、もし十分な水分が糞便から除去されない場合、それは下痢を引き起こします。コレラを引き起こすものを含む多くの細菌は、結腸での水分の再吸収に関与するタンパク質に影響を及ぼし、過度の下痢を引き起こします。

嘔吐

嘔吐、または吐き出すことは、口を通じた強制的な排除による食物の排泄です。それは多くの場合、消化管に影響を与える刺激物(ウイルス、細菌、感情、光景、食中毒などを含みますがこれらに限定されません)への反応です。食物のこの強制的な排除は、胃の筋肉によって引き起こされる強い収縮によるものです。嘔吐のプロセスは延髄によって調節されています。

34.4 | 消化器系の調節

この節が終わるまでに、あなたは次のことができるようになります:
•消化プロセスにおける神経調節の役割について議論する
•ホルモンがどのように消化を調節するのかを説明する

脳は空腹感と満腹感の制御センターです。消化器系の機能は神経およびホルモンの反応を通じて調節されています。

食物に対する神経反応

図34.20に示されているような食物の匂い、視覚、または思考に対する応答の中で、最初の反応は唾液の分泌によるものです。唾液腺は、消化に備えて食物のために引き起こされる自律神経系による刺激に反応して、より多くの唾液を分泌します。同時に、胃が食物を消化するために塩酸を生成し始めます。食道や消化管の他の器官の蠕動運動は脳の制御下にあることを思い出してください。脳はこれらの筋肉を動かす準備をします。胃がいっぱいになると、満腹感を検出する脳の部分が膨満感のシグナルを出します。胃の制御には3つの重複する段階 — 頭相、胃相、腸相 — があり、それぞれが多くの酵素を必要とするとともに、同様な神経制御下にあります。

図34.20 | 食べ物の皿を見ると口の中では唾液の分泌が引き起こされ、胃の中ではHClが生成されます。(credit: Kelly Bailey)

消化の諸相

食物への反応は食物が口に入る前から始まります。摂取の第1段階は、頭相と呼ばれ、食物によって与えられる刺激に対する神経反応によって制御されます。視覚、感覚、匂いなど、あらゆる面で神経反応が引き起こされ、唾液と胃液の分泌が起こります。頭相における胃液および唾液の分泌はまた、食物についての思考のために起こることもあります。もしも今、あなたがチョコレートやクリスピーポテトチップスについて考えるならば、唾液分泌の増加はその思考に対する頭相の反応です。中枢神経系は食物を受け取るために胃を準備します。

食物が胃に到着すると胃相が始まります。それは、頭相の間に与えられた刺激の上に成り立っています。胃酸や酵素は摂取された物質を処理します。胃相は、(1)胃の膨張、(2)胃内容物のpHの低下、および(3)未消化物質の存在によって刺激されます。この段階は、局所的反応、ホルモン反応および神経反応からなります。これらの反応は分泌および強い収縮を刺激します。

小腸に糜粥が入り、消化管での分泌を誘発すると、腸相が始まります。この段階は胃内容排出の速度を制御します。胃内容排出に加えて、糜粥が小腸に入ると、それは腸管、膵臓、肝臓、および胆嚢の活動を調整する他のホルモン的および神経的な事象を引き起こします。

食物に対するホルモン反応

内分泌系は、体内のさまざまな腺の反応と適切な時期におけるホルモンの放出を制御します。

ホルモン制御下にある重要な要素の1つは胃の酸性環境です。胃相の間に、ホルモンのガストリンが、タンパク質の存在に反応して胃のG細胞によって分泌されます。ガストリンは、胃酸、すなわちタンパク質の消化を助ける塩酸(HCl)の放出を促進します。しかしながら、胃が空になると、酸性環境を維持する必要がなくなり、ソマトスタチンと呼ばれるホルモンが塩酸の放出を止めます。これは負のフィードバックメカニズムによって制御されます。

十二指腸では、肝臓、膵臓、および胆嚢からの消化用分泌物が、腸相の間の糜粥の消化に重要な役割を果たしています。酸性の糜粥を中和するために、セクレチンと呼ばれるホルモンが膵臓を刺激してアルカリ性の重炭酸塩溶液を作り、それを十二指腸に届けます。セクレチンはコレシストキニン(CCK)と呼ばれる別のホルモンと連携して作用します。CCKは膵臓を刺激して必要な膵液を作り出すだけでなく、胆嚢を刺激して十二指腸に胆汁を放出させます。

学習へのリンク

内分泌系の詳細についてより詳しく学ぶためには、このウェブサイト(http://openstaxcollege.org/l/enteric_endo)にアクセスしてください。文章を確認して、内分泌系で制御がどのように実行されるかのアニメーションを見てください。

別のレベルのホルモン制御は食物の組成に反応して起こります。脂質の多い食物は消化するのに長い時間がかかります。胃抑制ペプチドと呼ばれるホルモンが小腸から分泌され、腸の蠕動運動を遅らせて脂肪のある食物をより長い時間をかけて消化し吸収することを可能にします。

消化器系のホルモン制御を理解することは、進行中の研究の重要な分野です。科学者たちは消化過程におけるそれぞれのホルモンの役割を探求し、これらのホルモンを標的とする方法を開発しています。その進歩によって、肥満の蔓延と戦うのに役立つかもしれない知識につながるかもしれません。

重要用語

消化管:口と肛門のある管状の消化器系

アミノペプチダーゼ:ペプチドを単一のアミノ酸に分解するプロテアーゼ。小腸の刷子縁から分泌される

肛門:廃棄物の出口

胆汁:肝臓によって産生される消化液。脂質の消化にとって重要

食物塊:咀嚼作用および唾液による湿潤から生じる食物の塊

カルボキシペプチダーゼ:ペプチドを単一のアミノ酸に分解するプロテアーゼ。小腸の刷子縁から分泌される

肉食動物:動物の肉を摂取する動物

頭相:食物によって与えられる刺激に対する神経反応によって制御される消化の第1段階

コレシストキニン:胆嚢の収縮を刺激して胆汁を放出させるホルモン

カイロミクロン:小さな脂肪球

糜粥:部分的に消化された食物と胃液の混合物

キモトリプシン:膵臓のプロテアーゼ

消化:食物を機械的および化学的に分解して小さな有機断片にする

ジペプチダーゼ:ペプチドを単一のアミノ酸に分解するプロテアーゼ。小腸の刷子縁から分泌される

十二指腸:炭水化物や脂肪の消化の大部分が発生する小腸の最初の部分

エラスターゼ:膵臓のプロテアーゼ

内分泌系:体内のさまざまな腺の反応と適切な時期のホルモンの放出を制御する系

食道:口と胃をつなぐ管状の器官

必須栄養素:体内で合成できない栄養素。食物から得なければならない

胆嚢:胆汁を保存および濃縮する器官

胃抑制ペプチド:脂肪酸と糖の存在下で小腸によって分泌されるホルモン。それはまた、食物が小腸に入る速度を遅くするために酸の生産と蠕動運動を抑制する

胃相:食物が胃に入ると始まる消化段階。胃酸および酵素が摂取された物質を処理する

ガストリン:胃の中の塩酸分泌を刺激するホルモン

胃水管腔:単一の開口部からなる消化器系

砂嚢:食物をすりつぶす筋肉器官

草食動物:厳密に植物性の食事を摂取する動物

回腸:小腸の最後の部分。小腸を大腸につなぐ。B-12の吸収にとって重要

摂取:食物を取り入れる行為

腸相:消化の第3段階。糜粥が小腸に入って消化性分泌を引き起こし、胃内容排出の速度を制御するときに始まる

空腸:小腸の第2の部分

ラクターゼ:ラクトースをグルコースとガラクトースに分解する酵素

大腸:未消化の物質から水分を再吸収し、廃棄物を処理する消化器系の器官

リパーゼ:脂質を化学的に分解する酵素

肝臓:消化のための胆汁を産生し、ビタミンや脂質を処理する器官

マルターゼ:マルトースをグルコースに分解する酵素

ミネラル:体内で重要な役割を果たす無機の基本的分子

単胃:単室の胃からなる消化器系

雑食動物:植物と動物の両方を摂取する動物

膵臓:消化液を分泌する腺

ペプシン:タンパク質消化を主な役割とする、胃に見られる酵素

ペプシノーゲン:ペプシンの不活性型

蠕動運動:筋肉組織の波状の運動

前胃:鳥類の胃の腺部分

直腸:排泄まで糞便が貯留されている身体の領域

粗飼料:エネルギーが少なく繊維が多い食物の成分

反芻動物:4つの区画に分けられる胃を持つ動物

唾液アミラーゼ:炭水化物をマルトースに変換する、唾液の中に見られる酵素

セクレチン:小腸の中で重炭酸ナトリウムの分泌を刺激するホルモン

小腸:タンパク質、脂肪、炭水化物の消化が完了する器官

ソマトスタチン:胃が空になったときに酸の分泌を止めるために放出されるホルモン

括約筋:消化管全体の物質の動きを制御する筋肉の帯

胃:酸性の消化液を含む嚢状器官

スクラーゼ:スクロースをグルコースとフルクトースに分解する酵素

トリプシン:タンパク質を分解する膵臓のプロテアーゼ

絨毛:小腸の内側表面上の襞で、吸収面積を増加させる役割を持つ

ビタミン:生命を維持するために少量が必要とされる有機物質

この章のまとめ

34.1 | 消化器系

さまざまな動物が、その食事の必要性を満たすために特化されたさまざまな種類の消化器系を進化させてきました。人間や他の多くの動物は、単一の室の胃を伴う単胃消化器系を持っています。鳥類は、食物が小さな断片に粉砕される砂嚢を含む消化器系を進化させてきました。これはそれらが咀嚼することができないことを補うものです。大量の植物物質を消費する反芻動物は、粗飼料を消化する多室の胃を持っています。疑似反芻動物は反芻動物と同様の消化プロセスを持っていますが、4つの区画に分けられた胃を持っていません。食物を処理することには、摂取(食べること)、消化(高分子の機械的および酵素的分解)、吸収(栄養素の細胞内取り込み)、および排泄(糞便としての未消化廃棄物の除去)を含みます。

多くの器官が食物を消化し栄養素を吸収するために一緒に働きます。口は摂取の部位であり、食物の機械的分解と化学的分解の両方が始まる場所です。唾液には炭水化物を分解するアミラーゼと呼ばれる酵素が含まれています。食物塊は胃への蠕動運動によって食道を通って移動します。胃は極端に酸性の環境です。ペプシンと呼ばれる酵素は胃の中でタンパク質を消化します。小腸では、さらなる消化と吸収が起こります。大腸は未消化の食物から水分を再吸収し、排泄まで廃棄物を貯蔵します。

34.2 | 栄養摂取とエネルギー生産

動物の食事はバランスが取れていて体の必要性を満たすべきです。炭水化物、タンパク質、脂肪は食物の主要成分です。いくつかの必須栄養素は細胞機能に必要とされますが、動物の体によっては生成できません。これらはビタミン、ミネラル、いくつかの脂肪酸、そしていくつかのアミノ酸を含みます。必要量を超えた食物の摂取は、グリコーゲンとして肝臓や筋肉細胞、そして脂肪細胞に蓄えられます。過剰な脂肪貯蔵は肥満や深刻な健康上の問題につながることがあります。ATPは細胞のエネルギー通貨であり、代謝経路から得られます。過剰な炭水化物とエネルギーはグリコーゲンとして体内に蓄えられます。

34.3 | 消化器系のプロセス

消化は、食物が口の中へ取り込まれる摂取から始まります。消化と吸収は、炭水化物、タンパク質、脂質の消化に重要な役割を果たす特殊な酵素を使った一連のステップで行われます。排泄とは、未消化の食物成分や廃棄物を体から除去することです。大部分の吸収は小腸で起こりますが、大腸は小腸の吸収プロセスの後に残っている水分の最終的な除去を担っています。大腸を裏打ちする細胞は、いくつかのビタミンとともに、残りの塩分や水分も吸収します。大腸(結腸)は糞便が形成される場所でもあります。

34.4 | 消化器系の調節

脳と内分泌系は消化プロセスを制御します。脳は空腹感と満腹感の反応を制御します。内分泌系は、消化管における食物の消化に必要なホルモンと酵素の放出を制御します。

ビジュアルコネクション問題

1.図34.11 | 消化器系についての次の記述のうち、間違っているものはどれですか?
a.糜粥は胃で作られる食物と消化液の混合物である。
b.食物は小腸より先に大腸に入る。
c.小腸では、糜粥は脂肪を乳化する胆汁と混ざる。
d.胃は幽門括約筋によって小腸から隔てられている。

2.図34.12 | 小腸についての次の記述のうち、間違っているものはどれですか?
a.小腸の内側を裏打ちする吸収細胞は微絨毛(表面積を増加させ、食物の吸収を助ける小さな突起)を有する。
b.小腸の内側には絨毛と呼ばれるひだがたくさんある。
c.微絨毛はリンパ管とともに血管と並んでいる。
d.小腸の内側は内腔と呼ばれる。

3.図34.19 | 消化プロセスについての以下の記述のうち、正しいものはどれですか?
a.口の中のアミラーゼ、マルターゼ、およびラクターゼが炭水化物を消化する。
b.胃の中のトリプシンとリパーゼがタンパク質を消化する。
c.胆汁が小腸で脂質を乳化する。
d.小腸まで食物は吸収されない。

レビュー問題

4.次のうち、疑似反芻動物はどれですか?
a.ウシ
b.ブタ
c.カラス
d.ウマ

5.次の記述のうち、正しくないものはどれですか?
a.粗飼料は消化するのに長い時間がかかる。
b.鳥類は、長距離を飛ぶことができるように一度に大量に食べる。
c.ウシは上歯を持っていない。
d.疑似反芻動物では、粗飼料は盲腸で消化される。

6.糜粥の酸性は________によって中和されます。
a.水酸化カリウム
b.水酸化ナトリウム
c.重炭酸塩
d.酢

7.肝臓からの消化液は、________に届けられます。
a.胃
b.肝臓
c.十二指腸
d.結腸

8.ある科学者が新種の動物を解剖しました。もしその動物の消化器系が伸長した小腸を伴う単一の胃を持っている場合、解剖された標本はどの動物に密接に関連しているでしょうか?
a.ライオン
b.カンジキウサギ
c.ミミズ
d.ワシ

9.次の記述のうち、正しくないものはどれですか?
a.必須栄養素は体によって合成することができる。
b.ビタミンは身体機能のために少量が必要とされる。
c.いくつかのアミノ酸は体によって合成することができるが、他のアミノ酸は食事から得る必要がある。
d.ビタミンには、脂溶性と水溶性の2つのカテゴリーがある。

10.次のうち、水溶性ビタミンはどれですか?
a.ビタミンA
b.ビタミンE
c.ビタミンK
d.ビタミンC

11.体にとっての主な燃料は何ですか?
a.炭水化物
b.脂質
c.タンパク質
d.グリコーゲン

12.過剰なグルコースは________として貯蔵されます。
a.脂肪
b.グルカゴン
c.グリコーゲン
d.それは体に貯蔵されない

13.多くの長距離ランナーは大事なレースの前日に「カーボロード」します。この摂食戦略はランナーにどのように利点をもたらしますか?
a.炭水化物はインスリンの放出を引き起こす。
b.過剰な炭水化物は、より高いカロリー密度を持つ脂肪に変換される。
c.炭水化物からのグルコースは、筋肉が夜のうちに過剰なATPを作ることを可能にする。
d.余分な炭水化物はグリコーゲンとして筋肉に貯えられる。

14.タンパク質の消化の大部分はどこで行われますか?
a.胃
b.十二指腸
c.口
d.空腸

15.リパーゼは________を分解する酵素です。
a.二糖類
b.脂質
c.タンパク質
d.セルロース

16.次の条件のうち、便秘を起こす可能性が最も高いものはどれですか?
a.細菌感染
b.脱水
c.潰瘍
d.過剰なセルロースの摂取

17.どのホルモンが胆嚢からの胆汁の放出を制御しますか?
a.ペプシン
b.アミラーゼ
c.CCK
d.ガストリン

18.どのホルモンが胃の中での酸の分泌を止めますか?
a.ガストリン
b.ソマトスタチン
c.胃抑制ペプチド
d.CCK

19.有名な条件付け実験の中で、パブロフはベルが鳴ったことに反応して犬がよだれを垂らし始めたことを実証しました。彼は消化プロセスのどの部分を刺激しましたか?
a.頭相
b.胃相
c.腸相
d.排泄相

クリティカルシンキング問題

20.多胃の消化器系は粗飼料の消化にどのように役立ちますか?

21.歯がない状態で鳥類はどうやって食べ物を消化しますか?

22.消化における副器官の役割は何ですか?

23.絨毛と微絨毛が吸収にどのように役立つかを説明してください。

24.機械的消化を実行する消化器系の2つの構成要素を挙げてください。機械的消化が食品から栄養素を獲得するのにどのように役立つかを記述してください。

25.必須栄養素とは何ですか?

26.よい健康を維持する上でのミネラルの役割は何ですか?

27.なぜ肥満がますます流行しているのかを議論してください。

28.栄養失調がよく見られる国がいくつかあります。栄養失調によって引き起こされるいくつかの健康上の課題とは何でしょうか?

29.あなたが階段を上っていくときに、どのようにして一切れのパンが脚に力を与えるかを一般的に記述してください。

30.1990年代、無脂肪食品が減量を試みる人々の間で人気が高まりました。しかしながら、多くの栄養学者は、現在では、無脂肪食品の流行は人々をより不健康にし、体重を増加させたと結論を下しています。どのようにしてこれが起こった可能性があるのかを記述してください。

31.食事の中のある程度の脂質が、なぜバランスの取れた食事に必要なものなのかを説明してください。

32.腸内微生物叢(腸内の細菌コロニー)は、生物医学的研究における人気のある研究分野となっています。さまざまな腸内微生物叢は、人間の栄養摂取にどのような影響を与える可能性があるでしょうか?

33.多くの哺乳動物は、乳児としては乳を摂取することができたとしても、成体として乳を飲むと調子が悪くなります。この消化不良の原因は何でしょうか?

34.ホルモンがどのようにして消化を調節するのかを記述してください。

35.ホルモンによる消化の調節の喪失が病気につながる可能性がある1つかそれ以上のシナリオを記述してください。

36.ある科学者が、ソマトスタチンの受容体にホルモン結合を妨げるような変異があるモデルを研究しています。この突然変異は消化器系の構造と機能にどのように影響するでしょうか?

解答のヒント

第34章

1 図34.11 B 3 図34.19 C 4 D 6 C 8 B 10 D 12 C 14 A 16 B 18 B 20 多胃の消化器系の動物は、多室の胃を持っています。胃の4つの区画は、第一胃、網胃、葉胃、および第四胃と呼ばれます。これらの室はセルロースを分解し、摂取された食物を発酵させる多くの微生物を含みます。第四胃は「真の」胃であり、胃液が分泌される単胃の胃腔に相当します。4つの区画の胃室は、より大きな空間と、反芻動物が植物物質を消化するのに必要な微生物のサポートとを提供します。22 副器官は、消化と吸収の間に消化液を作り出して腸に届けるのに重要な役割を果たします。具体的には、唾液腺、肝臓、膵臓、および胆嚢が重要な役割を果たしています。これらの器官のいずれかが機能不全になったときには病気を引き起こすことがあります。24 胃と歯の両方が機械的消化を実行します。機械的消化とは、物理的に(化学的にではなく)食物をより小さな成分に分解することです。これは、化学的消化および栄養素の放出のために、より大きな表面積を露出させます。歯は咀嚼に欠かせません。咀嚼は、食べ物の大きな一片を飲み込みやすい小さな断片に分けます。胃の筋肉収縮は食べ物をかき混ぜて、すべての粒子を酸と消化酵素にさらします。26 カリウム、ナトリウム、カルシウムなどのミネラルは、筋肉収縮や神経伝導など、多くの細胞プロセスの機能に必要とされます。ミネラルは微量だけが必要とされますが、食事にミネラルが含まれていないと潜在的に有害になる可能性があります。28 栄養失調(多くの場合、十分なカロリーが得られない、または必須栄養素が不足するという形)は、深刻な結果を招く可能性があります。多くの栄養失調の子供たちは視覚と歯の問題を抱えており、そして何年にもわたって多くの深刻な健康問題を発症するかもしれません。30 脂肪は健康的な食事に欠かせない成分であり、身体が機能するのに必要とされます。脂肪は、脂溶性ビタミンの吸収やいくつかのホルモンの生産を含む多くのプロセスに不可欠です。脂肪はまた空腹感を調節する脳に満腹信号を送ります。その食事に脂肪がなければ、多くの人々は実際にはより多くのカロリーを消費したかもしれず、それは体重増加をもたらしたでしょう。32 腸内微生物叢には、腸内での化学的消化を助けるすべての細菌が含まれています。すべての細菌が同じ高分子消化酵素を持っているわけではないので、その組成を変えることで食物が消化される方法を変えることができます。さらに、腸内微生物叢の変化は、腸内の炎症または他の疾患を引き起こす病原性細菌集団の確立につながることがあります。34 ホルモンは消化や吸収のプロセスの間に胃や腸に分泌されるさまざまな消化酵素を制御します。たとえば、ホルモンのガストリンは食物摂取に応じて胃酸分泌を刺激します。ホルモンのソマトスタチンは胃酸の放出を止めます。36 ソマトスタチンは、糜粥が腸に移動した後に胃の内腔へのHClの放出を阻害するホルモンです。もしソマトスタチンの受容体が機能しない場合、ソマトスタチンは胃壁細胞に酸の分泌を止めるように合図することができません。したがって、酸の分泌は食物が存在しなくても継続し、胃の組織に損傷を与えるかもしれません。しかしながら、胃が無傷のままである限りにおいては、胃の中に酸が常に存在して食物の新しい食物塊を消化するので、その突然変異が消化を遅らせることはないでしょう。

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