生物学 第2版 — 第8章 光合成 —

Japanese translation of “Biology 2e”

Better Late Than Never
49 min readOct 5, 2019

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8 | 光合成

図8.1 | この世界地図は、クロロフィルaの濃度によって決定される地球の光合成活動の分布を示しています。陸上では陸生植物からの、そして海洋地域内では植物プランクトンからのクロロフィルがはっきりとわかります。(credit: modification of work by SeaWiFS Project, NASA/Goddard Space Flight Center and ORBIMAGE)

この章の概要

8.1:光合成の概要
8.2:光合成の光依存反応
8.3:光エネルギーを使って有機分子を作る

はじめに

細菌から人間まで、あらゆる生物の代謝プロセスはエネルギーを必要とします。このエネルギーを得るために、多くの生物は食べることによって、すなわち他の生物を摂取することによって貯蔵されたエネルギーにアクセスします。しかし、食品に貯蔵されたエネルギーはどこから生じるのでしょうか。このエネルギーのすべては光合成へとさかのぼることができます。

8.1 | 光合成の概要

この節が終わるまでに、あなたは次のことができるようになります:
•光合成の他の生物に対する重要性を説明する
•光合成に関わる主な構造を記述する
•光合成の基質と生成物を特定する

光合成は地球上のすべての生命にとって不可欠なものです。植物と動物の両方ともがそれに依存しています。光合成は太陽光に起源をもつエネルギーを捉えることができ、それをすべての生物がその代謝に力を与えるために使用する化学的化合物(炭水化物)へと変換する唯一の生物学的プロセスです。それはまた、多くの生物にとって必要な酸素の源でもあります。簡単に言えば、太陽光のエネルギーは電子を活性化するために「捕らえられ」、そのエネルギーは糖分子の共有結合に貯蔵されます。これらの共有結合はどれくらい安定しており、長続きするでしょうか?石炭や石油製品の燃焼によって現在取り出されたエネルギーは、石炭紀の間の3億5000万年前から2億年前に光合成によって捕らえられ貯蔵された太陽光エネルギーを表しています。

植物、藻類、およびシアノバクテリアと呼ばれる細菌のグループは、光合成を行うことのできる唯一の生物です(図8.2)。それらは自らの食物を作り出すために光を使うので、光独立栄養生物(文字通りには、「光を使って自給するもの」)と呼ばれます。動物、菌類、および他のほとんどの細菌などのその他の生物は、従属栄養生物(「他のものを食物とするもの」)と呼ばれます。なぜなら、それらはそのエネルギー需要のために光合成生物によって産生される糖に頼らなければならないためです。3つ目の非常に興味深い細菌群は、太陽光のエネルギーを使うのではなく、無機化合物からエネルギーを取り出すことによって糖を合成します。このため、それらは化学独立栄養生物と呼ばれます。

図8.2 | (a)植物、(b)藻類、および(c)シアノバクテリアを含む光独立栄養生物は、太陽光をエネルギー源として使用する光合成によって有機化合物を合成します。シアノバクテリアおよびプランクトン性藻類は、水中の非常に大きな領域にわたって成長することがあり、時には完全に表面を覆ってしまいます。(d)深海の噴出孔において、これらの(e)好熱性細菌のような化学独立栄養生物は、無機化合物からエネルギーを捕らえて有機化合物を生成します。噴出孔を取り巻く生態系には、細菌からエネルギーを引き出すチューブワーム、甲殻類、タコなど、多種多様な動物がいます。(credit a: modification of work by Steve Hillebrand, U.S. Fish and Wildlife Service; credit b: modification of work by “eutrophication&hypoxia”/Flickr; credit c: modification of work by NASA; credit d: University of Washington, NOAA; credit e: modification of work by Mark Amend, West Coast and Polar Regions Undersea Research Center, UAF, NOAA)

光合成の重要性は、それが太陽光のエネルギーを捕らえることができるということだけではありません。結局のところ、寒い日に自分の体に日光を当てるトカゲは、行動性体温調節と呼ばれるプロセスで体を温めるために太陽のエネルギーを使用することができます。これとは対照的に、光合成は、太陽放射からのエネルギー(光合成の「光」の部分)を炭水化物分子の炭素-炭素結合内のエネルギー(光合成の「合成」の部分)へと貯蔵する方法として発展したために、重要なのです。これらの炭水化物は、従属栄養生物が呼吸を介し​​てATPの合成に力を与えるために使用するエネルギー源です。したがって、光合成は地球の生態系の99%に力を与えています。オオカミのような頂点捕食者が鹿を餌食にするときには(図8.3)、このオオカミは、太陽の表面での核反応から可視光、光合成、植生、鹿、そしてついにはオオカミへと至るエネルギー経路の終端にいます。

図8.3 | 光合成によって炭水化物分子に蓄えられたエネルギーは食物連鎖を通過します。これらの鹿を食べる捕食者は、鹿が消費した光合成をする植物に由来するエネルギーの一部を受け取ります。(credit: modification of work by Steve VanRiper, U.S. Fish and Wildlife Service)

光合成の主な構造と要約

光合成は、特定の波長の可視光線、二酸化炭素(これはエネルギーが低いです)、および水を基質として必要とする多段階のプロセスです(図8.4)。このプロセスが完了すると、酸素を放出し、グリセルアルデヒド-3-リン酸(GA3P)とともに、後でグルコース、スクロース、または他の数十種類の糖分子のいずれかに変換できる単純な炭水化物分子(高エネルギー)が生成されます。これらの糖分子には、すべての生物が生き残るために必要なエネルギーとエネルギーを持つ炭素とが含まれています。

図8.4 | 光合成は太陽エネルギー、二酸化炭素、水を使ってエネルギーを貯蔵する炭水化物を生産します。酸素は光合成の廃棄生成物として発生します。

以下は光合成の化学式です(図8.5)。

図8.5 | 光合成の基本方程式は一見簡単なように見えます。実際には、このプロセスは中間反応物および中間生成物を含む多くのステップで行われます。細胞内の主なエネルギー源であるグルコースは、2つの三炭素GA3Pから作られています。

方程式は単純に見えますが、光合成の間に行われる多くのステップは実際にはかなり複雑です。どのようにして光独立栄養生物が太陽光を食物に変えるかの詳細を学ぶ前に、関係する構造に慣れておくことが重要です。

基本的な光合成の構造

植物では、光合成は一般に葉の中で起こり、葉は細胞のいくつかの層からなります。光合成の過程は、葉肉と呼ばれる中間層で起こります。二酸化炭素と酸素のガス交換は、気孔と呼ばれる小さな調節された開口部を介して行われ、これはガス交換と水分平衡の調整にも役割を果たします。気孔は典型的には葉の下面に位置し、これは葉の上面の高温による水分損失を最小限に抑えるのに役立ちます。それぞれの気孔は、浸透圧変化に応答して膨潤または収縮することによって気孔の開閉を調節する孔辺細胞によって挟まれています。

すべての独立栄養真核生物において、光合成は葉緑体と呼ばれる細胞小器官の内部で行われます。植物の場合、葉緑体含有細胞はほとんど葉肉に存在します。葉緑体は、(外膜と内膜からなる)二重膜エンベロープを有し、先祖的には古代の自由生活性シアノバクテリアに由来します。葉緑体内にはチラコイドと呼ばれる積み重ねられた円盤形の構造があります。チラコイド膜に埋め込まれているのは、クロロフィル(光と植物物質との間の初期相互作用を担う色素(光を吸収する分子))と、そして電子伝達鎖を構成する多数のタンパク質です。チラコイド膜はチラコイド内腔と呼ばれる内部空間を囲みます。図8.6に示されるように、チラコイドの積み重ねはグラナと呼ばれ、グラナを囲む液体で満たされた空間はストロマ(stroma)または「ベッド」と呼ばれます(葉の表皮の開口部である気孔(stoma)または「口」と混同しないでください)。

ビジュアルコネクション

図8.6 | 光合成は、外膜と内膜を持つ葉緑体の中で行われます。グラナと呼ばれるチラコイドの積み重ねが第3の膜層を形成します。

暑く乾燥した日には、植物の孔辺細胞は水を節約するために気孔を閉じます。これは光合成にどのような影響を与えるでしょうか?

光合成の2つの部分

光合成は、光依存反応と光非依存反応という2つの連続した段階で行われます。光依存反応では、太陽光からのエネルギーがクロロフィルに吸収され、そのエネルギーが貯蔵される化学エネルギーに変換されます。光非依存反応では、光依存反応の間に取り入れられた化学エネルギーが、二酸化炭素からの糖分子の組み立てを駆動します。したがって、光非依存反応は反応物として光を使用しませんが、それらは機能するために光依存反応の生成物を必要とします。しかしながら、それに加えて、光非依存反応のいくつかの酵素は光によって活性化されます。光依存反応はエネルギーを一時的に蓄えるために特定の分子を利用します。これらはエネルギー担体と呼ばれます。光依存反応から光非依存反応へとエネルギーを移動させるエネルギー担体は、エネルギーが豊富であるために、「満杯」であると考えることができます。このエネルギーが解放された後、「空」のエネルギー担体はさらにエネルギーを得るために光依存反応に戻ります。図8.7は、光依存反応および光非依存反応が起こる葉緑体内部の構成要素を示しています。

図8.7 | 光合成は、光依存反応とカルヴィン回路という2段階で行われます。チラコイド膜で起こる光依存反応は、ATPとNADPHを作るために光エネルギーを使います。ストロマで起こるカルヴィン回路は、CO₂からGA3Pを製造するためにこれらの化合物に由来するエネルギーを使用します。

学習へのリンク

光合成についてより詳しく学ぶためには、このリンク(http://openstaxcollege.org/l/photosynthesis)をクリックしてください。

日常へのつながり

食料品店での光合成

図8.8 | 人間が消費する食物は光合成に由来します。(credit: Associação Brasileira de Supermercados)

米国の主要な食料品店は、乳製品、肉、農産物、パン、シリアルなどといった売り場で構成されています。それぞれの通路(図8.8)には、客が購入して消費するための、数千とまではいかないにしても数百もの異なる製品が並べられています。

そこには多種多様なものがありますが、それぞれの商品は元をたどれば究極的には光合成へとつながっています。肉と乳製品は、動物が植物を基礎にした食物を食べていたために、つながっています。パン、シリアル、パスタは、ほとんどが光合成依存性植物の種子であるデンプン質の穀物から作られています。デザートや飲み物はどうでしょうか?これらの製品はすべて糖を含んでいます — スクロースは植物性の製品で、二糖類の炭水化物分子であり、光合成から直接作られています。そして、多くの品目はそれほど明確には植物由来ではありません。たとえば、紙製品は一般に植物性の製品であり、多くのプラスチック(製品としても包装としても豊富にあるもの)は「藻類」(単細胞の植物様生物と、シアノバクテリア)に由来します。スパイス売り場のほとんどすべてのスパイスと香料は、何らかの植物の葉、根、樹皮、花、果実、または茎から作られました。結局のところ、光合成は人が消費するあらゆる食事とあらゆる食物に関係しています。

8.2 | 光合成の光依存反応

この節が終わるまでに、あなたは次のことができるようになります:
•植物がどのようにして太陽光からエネルギーを吸収するかを説明する
•光の短い波長と長い波長について記述する
•光合成が植物内のどこでどのように行われるのかを記述する

食料を作るために光エネルギーをどのように使うことができるでしょうか?人が明かりのスイッチをつけると、電気エネルギーは光エネルギーになります。他のあらゆる形態の運動エネルギーと同様に、光もまた空間を伝わり、形態を変化させ、仕事をするために利用されることができます。光合成の場合、光エネルギーは化学エネルギーに変換されます。光独立栄養生物は、これを使って基本的な炭水化物分子を構築します(図8.9)。しかしながら、独立栄養生物は、特定の波長の太陽光だけを使用します。

図8.9 | 光独立栄養生物は太陽からの特定の波長の可視光エネルギーを捉え、それを食物分子を作るのに使われる化学エネルギーに変換することができます。(credit: Gerry Atwell)

光エネルギーとは何でしょうか?

太陽は莫大な量の電磁放射線(非常に短いガンマ線から非常に長い電波までのスペクトルの太陽エネルギー)を放出します。人間はこのエネルギーのごく一部しか見ることができず、これを私たちは「可視光」と呼びます。太陽エネルギーが伝わる方法は波として記述されます。科学者は、波の波長、つまり波の連続した頂点の間の距離を測定することによって波のエネルギー量を決定することができます(短い波長は長い波長よりも強力です)。したがって、単一の波は、山から山まで、または谷から谷までなどといった、連続する2点から測定されます(図8.10)。

図8.10 | 単一の波の波長とは、波に沿った同じ位置の2つの連続する点(2つの山または2つの谷)の間の距離です。

可視光は、太陽や他の星から放出される多くの種類の電磁放射のうちの1つにすぎません。科学者は電磁スペクトルの中で太陽からのさまざまな種類の放射エネルギーを区別します。電磁スペクトルとは、放射のすべての可能な周波数の範囲のことです(図8.11)。波長間の差は、それらによって運ばれるエネルギーの量に関係します。

図8.11 | 太陽は電磁放射の形でエネルギーを放出します。この放射は異なる波長で存在し、それぞれが独自の特性エネルギーを持っています。可視光を含むすべての電磁放射は、その波長によって特徴付けられます。

それぞれの種類の電磁放射線は特定の波長で伝わります。波長が長いほど、それが運ぶエネルギーは少なくなります。短くて狭い波が最も大きなエネルギーを運びます。これは非論理的に思えるかもしれませんが、動いている重いロープの一部分という観点から考えてみてください。ロープを長くて広い波で動かすには、人はさほど努力することはありません。ロープを短くて狭い波で動かすには、人はかなり多くのエネルギーを加える必要があります。

電磁スペクトル(図8.11)は、X線や紫外線(UV)など、太陽から発生するいくつかの種類の電磁放射を示しています。より高いエネルギーの波は組織を貫通し、細胞とDNAを損傷する可能性があります。これは、なぜX線と紫外線の両方が生物にとって有害なのかを説明してくれます。

光の吸収

色素が特定の波長の可視光を吸収すると、光エネルギーが光合成のプロセスを開始します。人間の網膜にあるものでも葉緑体のチラコイドにあるものでも、有機色素は吸収できるエネルギーレベル範囲が狭いです。赤色光によって表されるエネルギーレベルより低いエネルギーレベルは、軌道電子を励起(量子)状態に上げるには不十分です。青色光よりも高いエネルギーレベルは、ブリーチングと呼ばれるプロセスで、分子を物理的に引き裂きます。私たちの網膜色素は、700nmから400nmの間の波長の光、つまり可視光と呼ばれるスペクトルしか「見る」(吸収する)ことができません。同じ理由で、植物では、色素分子は700nmから400nmの波長範囲の光だけを吸収します。植物生理学者は、この範囲を植物にとっての光合成有効放射と呼びます。

人間が白色光として見る可視光は、実際にはさまざまな色の虹の中に存在します。プリズムや水滴などの特定の物体は、白色光を分散させて人間の目に見えるような色を表示します。電磁スペクトルの可視光部分はさまざまな色の虹を示し、紫と青はより短い波長を持ち、それゆえより高いエネルギーを持ちます。赤に向かうスペクトルの反対側になると、波長は長くなり、エネルギーは低くなります(図8.12)。

図8.12 | 可視光の色は同じ量のエネルギーを運んでいるわけではありません。紫は最も短い波長を有しており、そのため最も大きなエネルギーを運びます。一方、赤は最も長い波長を有しており、最も少ない量のエネルギーを運びます。(credit: modification of work by NASA)

色素を理解する

さまざまな種類の色素が存在し、それぞれが可視光の特定の波長(色)のみを吸収します。色素は吸収できない波長を反射または透過するため、反射または透過した光の色が混ざったような色を呈します。

クロロフィルとカロテノイドは、植物と藻類に見られる光合成色素の2つの主要な分類です。それぞれの分類は複数の種類の色素分子を有しています。5つの主要なクロロフィルがあります:クロロフィルa、b、cおよびdとバクテリオクロロフィルと呼ばれる原核生物に見られる関連した分子です。クロロフィルaとクロロフィルbは高等植物の葉緑体に見られ、以下の議論の焦点となります。

カロテノイドは、数十種類のさまざまな形態をしており、はるかに大きなグループの色素です。トマトの赤色(リコピン)、トウモロコシの黄色(ゼアキサンチン)、オレンジの皮の橙色(β-カロテン)など、果実に含まれるカロテノイドは、種子を蒔いてくれるものを引き付ける広告として使用されます。光合成において、カロテノイドは過剰なエネルギーを処理するための非常に効率的な分子である光合成色素として機能します。葉が太陽の光にさらされると、光依存反応は膨大な量のエネルギーを処理することが必要となります。もしそのエネルギーが適切に処理されていないと、それは大きなダメージを与える可能性があります。したがって、多くのカロテノイドがチラコイド膜に存在し、余分なエネルギーを吸収し、そのエネルギーを熱として安全に放散します。

それぞれのタイプの色素は、それが可視光から吸収する波長の特定のパターンによって識別することができます。これは吸収スペクトルと呼ばれています。図8.13のグラフは、クロロフィルa、クロロフィルb、およびβ-カロテンと呼ばれる一種のカロテノイド色素(青と緑の光を吸収します)の吸収スペクトルを示しています。それぞれの色素がどのような明確な頂点と谷のセットを有し、非常に特殊な吸収パターンを示しているかに注目してください。クロロフィルaは可視スペクトルの両端(青と赤)からの波長を吸収しますが、緑は吸収しません。緑色が反射または透過するので、クロロフィルは緑色に見えます。カロテノイドは、短波長の青色領域を吸収し、より長い波長の黄色、赤色、およびオレンジ色を反射します。

図8.13 | (a)クロロフィルa、(b)クロロフィルb、および(c)β-カロテンはチラコイド膜に見られる疎水性有機色素です。クロロフィルaとbは、赤い四角で示された部分を除いて同一であり、葉の緑色の原因となっています。β-カロテンはニンジンのオレンジ色の原因です。それぞれの色素は(d)固有の吸光度スペクトルを有します。

多くの光合成生物は色素の混合物を有しており、そしてそれらの色素を使用することによって、その生物はより広い範囲の波長からエネルギーを吸収することができます。すべての光合成生物が太陽光に完全にアクセスできるわけではありません。いくつかの生物は水中で成長し、そこでは光の強さと質は減少し深さとともに変化します。他の生物は光を求めて競争しながら成長します。熱帯雨林の地面の上の植物は、背の高い木がほとんどの日光を吸収し、残りの日射を散乱させてしまうので、通り抜けてくる光を少しでも吸収できなければなりません(図8.14)。

図8.14 | 通常は日陰で成長するような植物は、クロロフィル色素の相対濃度を変えることによって低レベルの光に適応しています。(credit: Jason Hollinger)

光合成生物を研究するとき、科学者は吸収スペクトルを生成することによって存在する色素の種類を決定することができます。分光光度計と呼ばれる機器は、物質がどの光の波長を吸収することができるかを区別することができます。分光光度計は透過光を測定し、それから吸収を計算します。葉から色素を抽出し、これらのサンプルを分光光度計に入れることによって、科学者は生物がどの光の波長を吸収できるかを特定することができます。植物色素を同定するためのさらなる方法には、固相および移動相に対するそれらの相対的親和性によって色素を分離するさまざまな種類のクロマトグラフィーが含まれます。

光依存反応はどのように機能するか

光依存反応の全体としての機能は、太陽エネルギーをNADPHとATPの形の化学エネルギーに変換することです。この化学エネルギーは光非依存反応を支え、糖分子の組み立てに力を与えます。光依存反応が図8.15に示されています。タンパク質複合体と色素分子は一緒に作用してNADPHとATPを生成します。光化学系の番号は、電子の移動の順番ではなく、それらが発見された順番に由来します。

図8.15 | 光化学系は1)集光性複合体と2)反応中心からなります。集光性複合体の中の色素は、反応中心の中の2つの特別なクロロフィルa分子に光エネルギーを渡します。この光はクロロフィル対から電子を励起し、それが初期電子受容体に渡されます。それから、励起された電子は置き換えられなければなりません。(a)光化学系IIでは、電子は水の分解から生じ、それは廃棄生成物として酸素を放出します。(b)光化学系Iでは、電子は下記の葉緑体の電子伝達鎖から生じます。

光エネルギーを化学エネルギーに変換する実際のステップは、光化学系と呼ばれる多タンパク質複合体で行われ、そのうち2つのタイプがチラコイド膜に埋め込まれています:光化学系II(PSII)と光化学系I(PSI)です(図8.16)。この2つの複合体は、それらが酸化するもの(つまり、低エネルギーの電子供給源)と、それらが還元するもの(エネルギーが与えられた電子を送達する場所)に基づいて区別されます。

どちらの光化学系も同じ基本構造を持っています。クロロフィル分子が結合している多数のアンテナタンパク質が、光化学の起こる反応中心を囲んでいます。それぞれの光化学系は、太陽光からのエネルギーを反応中心へと渡す集光性複合体の働きによって支えられています。それは、カロテノイドのような他の色素と、300から400のクロロフィルaおよびb分子の混合物とを含む複数のアンテナタンパク質からなります。クロロフィルのいずれかによって単一の光子または特定の量または光の「パケット」が吸収されると、その分子は励起状態に押しやられます。要するに、光エネルギーは今や生物学的分子によって捉えられていますが、まだ有用な形態では貯蔵されていません。このエネルギーはクロロフィルからクロロフィルへと伝達され、最終的に(約100万分の1秒後)、反応中心へと届けられます。ここまでは、電子ではなくエネルギーのみが分子間を移動しています。

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図8.16 | 光化学系II(PSII)の反応中心では、太陽光からのエネルギーを使って水から電子を取り出します。この電子は葉緑体の電子伝達鎖を通って光化学系I(PSI)に移動し、PSIはNADP⁺をNADPHに還元します。電子伝達鎖は、チラコイド膜を横切って陽子を内腔に移動させます。同時に、水の分割によって内腔に陽子が加えられ、そしてNADPHの還元はストロマから陽子を除去します。正味の結果は、チラコイド内腔内の低いpHと、ストロマ内の高いpHです。ATPシンターゼはこの電気化学的勾配を用いてATPを作ります。

葉緑体の電子伝達鎖にとって初期の電子の源となるのは何ですか?
a.水
b.酸素
c.二酸化炭素
d.NADPH

反応中心は特別な性質を持つ一対のクロロフィルa分子を含みます。これらの2つのクロロフィルは励起時に酸化されます。それらは実際には光活性化と呼ばれるプロセスで電子を引き渡すことができます。光合成中のこのステップで、反応中心において光エネルギーが励起電子に変換されます。その後のすべてのステップは、カルヴィン回路への送達のためにエネルギー担体のNADPH上にその電子を取り込むことが含まれます。カルヴィン回路では、電子は長期保存のために炭水化物の形で炭素に預けられます。PSIIおよびPSIは、光合成電子伝達鎖の2つの主要成分であり、そこにはシトクロム複合体も含まれます。2つのタンパク質複合体から構成される酵素であるシトクロム複合体は、担体分子のプラストキノン(Pq)からタンパク質のプラストシアニン(Pc)へと電子を移動させ、それによってチラコイド膜を通過する陽子の移動とPSIIからPSIへの電子の移動の両方を可能にします。

PSIIの反応中心(P680と呼ばれます)は、その高エネルギー電子を一度に1つずつ初期電子受容体に、そして電子伝達鎖を通じて(Pqからシトクロム複合体、そしてプラストシアニンを通して)PSIへと届けます。P680の失われた電子は、水から低エネルギーの電子を引き出すことによって置き換えられます。したがって、光合成のこの段階では水が「分割」され、PSIIはそれぞれの光活性化の後に再び還元されます。1つのH₂O分子を分割すると、2つの電子、2つの水素原子、および1つの酸素原子が放出されます。しかしながら、二原子のO₂ガスを1分子の分だけ形成するために、2つの水分子を分割することが必要とされます。酸素の約10%が酸化的リン酸化を支えるために葉のミトコンドリアによって使われます。残りは大気へと発出し、そこで好気性生物による呼吸を支えるために使われます。

電子がPSIIとPSIの間にあるタンパク質を通過すると、それらはエネルギーを失います。このエネルギーは、水素原子を膜のストロマ側からチラコイド内腔へと移動させるのに使用されます。それらの水素原子と、水を分割することによって生成されたものは、チラコイド内腔に蓄積し、後のステップでATPを合成するために使用されます。電子はPSIに到達する前にエネルギーを失っているので、それらはPSIによって再度エネルギーを与えられなければならず、したがって、別の光子がPSIアンテナによって吸収されます。そのエネルギーはPSIの反応中心(P700と呼ばれます)へと伝えられます。P700は酸化され、高エネルギー電子をNADP⁺に送り、NADPHを形成します。このように、PSIIはATPを作るための陽子勾配を作り出すためにエネルギーを捕らえ、そしてPSIはNADP⁺をNADPHに還元するためにエネルギーを捕らえます。2つの光化学系は、部分的には、NADPHの生産がATPの生産とほぼ等しくなることを確実にするために協調して機能します。葉緑体の絶えず変化するエネルギー需要に正確に一致するようにその比率を微調整するための他のメカニズムが存在します。

エネルギー担体の生成:ATP

細胞呼吸中のミトコンドリアの膜間腔のように、チラコイド内腔の内側での水素イオンの蓄積は濃度勾配を作り出します。細胞呼吸の電子伝達鎖と同様に、水素イオンの高濃度(チラコイド内腔内)から低濃度(ストロマ内)への受動拡散を利用してATPが生成されます。このイオンはエネルギーを蓄積しています。なぜなら拡散のためと、そしてそれらはすべて同じ電荷を有しておりお互いに反発するためです。

水素イオンはこのエネルギーを解放するために、ダムの穴を通じて噴出するのと同様に、あらゆる開口部をへ向けて突進するでしょう。チラコイドにおいて、その開口部とは、ATPシンターゼと呼ばれる特殊なタンパク質チャネルを通る通過のことです。水素イオンの流れによって放出されたエネルギーは、ATPシンターゼが3番目のリン酸基をADPに結合させることを可能にし、それがATPの分子を形成します(図8.16)。ATPシンターゼを通る水素イオンの流れは、化学浸透と呼ばれます。なぜなら、このイオンがチラコイドの半透性構造を通って高濃度の領域から低濃度の領域に移動するためです。

学習へのリンク

このサイト(http://openstaxcollege.org/l/light_reactions)にアクセスしてアニメーションをクリックすると、葉の中の光合成のプロセスを見ることができます。

8.3 | 光エネルギーを使って有機分子を作る

この節が終わるまでに、あなたは次のことができるようになります:
•カルヴィン回路を記述する
•炭素固定を定義する
•すべての生物のエネルギー循環において光合成がどのように機能するかを説明する

太陽からのエネルギーが化学エネルギーに変換され、一時的にATPおよびNADPH分子に蓄えられた後には、細胞は長期エネルギー貯蔵のための炭水化物分子を構築するのに必要な燃料を有することになります。光依存反応の生成物であるATPとNADPHの寿命は数百万分の1秒の範囲ですが、光非依存反応の生成物(炭水化物や他の形の還元された炭素)はほぼ無期限に存続できます。作られた炭水化物分子は炭素原子の骨格を持つでしょう。しかし、この炭素はどこから来たのでしょうか?それは二酸化炭素、つまり微生物、菌類、植物、そして動物の呼吸の廃棄物である気体から来ています。

カルヴィン回路

植物では、二酸化炭素(CO₂)は気孔を通って葉に入り、そこで細胞間隙を通って葉肉細胞に達するまで短い距離を拡散します。葉肉細胞に入ると、CO₂は葉緑体のストロマ、すなわち光合成の光非依存反応の部位へと拡散します。これらの反応には、実際にはいくつかの名前が付けられています。別の用語であるカルヴィン回路は、それを発見した人にちなんで、そしてこれらの反応が回路として機能するために名付けられました。その発見に関与した他の科学者の名前を含めるためにカルヴィン-ベンソン回路と呼ぶ人もいます。最も古めかしい名前は「暗反応」であり、これは光が直接的には必要とされないためです(図8.17)。しかしながら、暗反応という用語は、この反応が夜間にのみ起こるか、または光と独立していることを誤って暗示しているため、誤解を招く可能性があります。それが、ほとんどの科学者や講師がこの用語をもはや使わなくなった理由です。

図8.17 | 光反応は太陽からのエネルギーを利用して化学結合、ATP、NADPHを生成します。これらのエネルギー運搬分子は、炭素固定が起こるストロマで作られます。

カルヴィン回路の光非依存反応は、3つの基本的な段階にまとめることができます:固定、還元、そして再生です。

段階1:固定

図8.18に示されるように、ストロマにはCO₂に加えて、光非依存反応を開始するための2つの他の成分、すなわちリブロース-1,5-ビスリン酸カルボキシラーゼ/オキシゲナーゼ(RuBisCO)と呼ばれる酵素、およびリブロースビスリン酸(RuBP)の3つの分子が存在します。RuBPは、2つのリン酸基に挟まれた5つの炭素原子を有します。

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図8.18 | カルヴィン回路には3つの段階があります。第1段階では、酵素RuBisCOが二酸化炭素を有機分子3-PGAに取り込みます。第2段階において、この有機分子は、NADPHによって供給される電子を用いて還元されます。第3段階では、この回路を開始する分子であるRuBPが再生され、この回路が継続されます。一度に取り込まれる二酸化炭素分子は1つのみであるため、三炭素のGA3P分子を1つ生産するには3回のサイクル、六炭素のグルコース分子を生産するには6回のサイクルを完了しなければなりません。

次の記述のうち、正しいものはどれですか?
a.光合成では、酸素、二酸化炭素、ATP、およびNADPHが反応物である。GA3Pと水が生成物である。
b.光合成では、クロロフィル、水、および二酸化炭素が反応物である。GA3Pと酸素が生成物である。
c.光合成では、水、二酸化炭素、ATP、NADPHが反応物である。RuBPと酸素が生成物である。
d.光合成では、水と二酸化炭素が反応物である。GA3Pと酸素が生成物である。

RuBisCOは、CO₂とRuBPとの間の反応を触媒します。1つのRuBPと反応する各CO₂分子について、他の化合物3-ホスホグリセリン酸(3−PGA)の2つの分子が形成されます。PGAは3つの炭素と1つのリン酸基を有しています。回路の各周回には、ただ1つのRuBPと1つの二酸化炭素が含まれ、3−PGAの分子2つを形成します。この反応中に炭素原子が移動して新しい結合を形成するので、炭素原子の数は同じままです(3つのCO₂からの炭素原子3個 + 3つのRuBPからの炭素原子15個 = 6つの分子の3−PGAの中の炭素原子18個)。CO₂が無機の形態から有機分子に「固定」されるため、このプロセスは炭素固定と呼ばれます。

段階2:還元

ATPおよびNADPHは、3−PGAの6つの分子をグリセルアルデヒド-3-リン酸(G3P)と呼ばれる化学物質の6つの分子に変換するために使用されます。それは3−PGAによる電子の獲得を含むため、還元反応です。(還元は原子または分子による電子の獲得であることを思い出してください。)ATPとNADPHの両方の6つの分子が使われます。ATPの場合、末端のリン酸原子の喪失とともにエネルギーが放出され、それはADPに変換されます。NADPHの場合、エネルギーと水素原子の両方が失われ、NADP⁺に変換されます。これらの分子は両方とも近くの光依存反応に戻り、再利用され再度エネルギーが与えられます。

段階3:再生

興味深いことに、この時点で、G3P分子のうちの1つだけがカルヴィン回路を離れ、そして植物によって必要とされる他の化合物の形成に寄与するために細胞質に送られます。葉緑体から送り出されたG3Pは3つの炭素原子を持っているので、1つのG3Pを送り出すのに十分な正味の炭素を固定するためには、カルヴィン回路の3回の「周回」が必要です。しかし、各周回は2つのG3Pを作るので、3回の周回は6つのG3Pを作ることになります。1つのG3P分子が送り出され、残りの5つの分子は回路の中に残り、RuBPを再生するために使用されます。これにより、この系はより多くのCO₂を固定する準備をすることができます。これらの再生反応では、さらに3つのATP分子が使用されます。

学習へのリンク

このリンク(http://openstaxcollege.org/l/calvin_cycle)はカルヴィン回路のアニメーションにつながります。段階1、段階2、そして段階3をクリックして、G3PとATPがRuBPを形成するために再生するのを見てください。

進化へのつながり

光合成

光合成の進化の間に、1つの光化学系のみを含み典型的には酸素非発生型(酸素を発生しない)である細菌型の光合成から、2つの光化学系を用いる現代的な酸素発生型(酸素を発生する)の光合成への大きな変化が起こりました。この現代的な酸素発生型光合成は、熱帯雨林の巨大な熱帯植物の葉から小さなシアノバクテリアの細胞まで、多くの生物によって使用されています。そして、この光合成のプロセスと構成要素はほとんど同じまま残っています。光化学系は光を吸収し、電子伝達鎖を使ってエネルギーをATPとNADHの化学エネルギーに変換します。その後の光非依存反応は、このエネルギーで炭水化物分子を組み立てます。

砂漠の極端に乾燥した暑さの中では、植物は水の一滴一滴を節約し、生き残るために使用しなければなりません。CO₂の吸収を可能にするために気孔を開かなければならないので、活発な光合成の間に水が葉から逃げます。砂漠の植物は水を節約し、過酷な状況に対処するためのプロセスを進化させました。CO₂を捕らえて貯蔵するメカニズムにより、植物はより少ない水での生活に適応することができます。サボテン(図8.19)のようないくつかの植物は、一時的な炭素固定/貯蔵プロセスによって夜間に光合成のための材料を準備することができます。その時間では温度がより低いため、その時に気孔を開くことは水を節約することになるためです。日中は、サボテンは捕らえたCO₂を光合成のために使用し、その気孔を閉じたままにしておきます。

図8.19 | 砂漠の厳しい条件のために、これらのサボテンのような植物は光合成の光非依存反応のバリエーションを進化させました。これらのバリエーションは水の使用効率を高め、水とエネルギーの節約に役立ちます。(credit: Piotr Wojtkowski)

エネルギー循環

細菌、植物、動物のいずれの生物であっても、すべての生物は炭水化物やその他の炭素が豊富な有機分子を分解することによってエネルギーにアクセスします。しかし、植物が炭水化物分子を作るならば、なぜ植物はその分子を分解する必要があるのでしょうか?特に、「廃棄生成物」として放出される気体状の有機物(CO₂)が、光合成においてより多くの食物を形成するための基質として作用することが示されているときにはなおさらです。ここで、生物は生命機能を果たすためにエネルギーを必要とすることを思い出してください。さらに、生物は自分自身で食物を作ることも、他の生物を食べることもできますが、どちらにせよ、食物はやはり分解する必要があります。最後に、細胞呼吸と呼ばれる食物を分解するプロセスでは、従属栄養生物は必要なエネルギーを放出し、CO₂気体の形で「廃棄物」を生成します。

しかしながら、本質的には、「廃棄」などというものはありません。物質のすべての原子やエネルギーは保存され、無限に何度も何度も再利用されています。物質は形態を変えたり、1つの種類の分子から別の種類へと移動することもありますが、その構成原子は消えることはありません(図8.20)。

実際には、酸素が光合成において廃棄されているわけでないのと同様に、CO₂は廃棄物の一形態ではありません。どちらも、反​​応の副生成物であり、他の反応に進みます。光合成は光エネルギーを吸収して葉緑体の中で炭水化物を作り、好気的な細胞呼吸は細胞質とミトコンドリアの中で酸素を使って炭水化物を代謝することによってエネルギーを放出します。どちらのプロセスも電子伝達鎖を使用して、他の反応を推進するのに必要なエネルギーを捕らえます。光合成と細胞呼吸という2つの力を生み出すプロセスは、生物学的、循環的に調和をもって機能し、人間が太陽と呼ぶ何百万マイルも離れた燃える星に起源をもつ生命を維持するエネルギーに生物がアクセスすることを可能にします。

図8.20 | 光合成は二酸化炭素を消費し酸素を生成します。好気呼吸は酸素を消費し二酸化炭素を生成します。これら2つのプロセスは、炭素循環において重要な役割を果たしています。(credit: modification of work by Stuart Bassil)

重要用語

吸収スペクトル:特定の物質によって吸収される電磁放射の波長の範囲

アンテナタンパク質:光を直接吸収し、吸収したエネルギーを他の色素分子に伝達する色素分子

カルヴィン回路:ATPとNADPHのエネルギーと還元力を使って大気中の二酸化炭素を炭水化物に変換する光合成の光非依存反応

炭素固定:無機物のCO₂気体を有機化合物に変換するプロセス

カロテノイド:過剰なエネルギーを処理するように機能する光合成色素(黄-橙-赤)

化学独立栄養生物:太陽光の代わりに無機化学物質に由来するエネルギーを使用して有機分子を構築できる生物

クロロフィルa:紫-青色光および赤色光を吸収し、その結果として青緑色を有するクロロフィルの形態。励起されて電子伝達鎖に電子を失うことによって光化学を行う唯一の色素分子

クロロフィルb:青色と赤-橙色の光を吸収し、その結果として黄緑色を帯びた色調を有する補助色素

葉緑体:光合成が起こる細胞小器官

シトクロム複合体:光化学系IIと光化学系Iの間の電子伝達鎖の一部を形成する可逆的に酸化可能で還元可能なタンパク質のグループ

電磁スペクトル:放射のすべての可能な周波数の範囲

電子伝達鎖:PSIIとPSIの間にある、エネルギーを与えられた電子を通過させ、電子によって放出されたエネルギーを利用して水素イオンをそれらの濃度勾配に逆らってチラコイド内腔へと移動させるタンパク質のグループ

グラナ:葉緑体の内側にあるチラコイドの積み重ね

従属栄養生物:有機物質またはその他の生物を消費する生物

集光性複合体:太陽光からそれぞれの光化学系の反応中心へとエネルギーを渡す複合体。300~400個のクロロフィルaとbの分子、およびカロテノイドのような他の色素の混合物を含む複数のアンテナタンパク質からなる

光依存反応:可視光の特定の波長が吸収されて2つのエネルギー運搬分子(ATPとNADPH)を形成する光合成の第1段階

光非依存反応:光合成の第2段階。ATPとNADPHからのエネルギーを利用して、二酸化炭素を使用して炭水化物分子を構築する

葉肉:葉の中にあるクロロフィルが豊富な細胞の中間層

P680:光化学系IIの反応中心

P700:光化学系Iの反応中心

光活性化:吸収された光子のエネルギーを使った反応中心からの電子の放出

光独立栄養生物:太陽光からそれ自身の有機化合物を生産することができる生物

光子:光エネルギーの特定の量または光の「パケット」

光化学系:光エネルギーを吸収して化学エネルギーに変換するために、光合成の光依存反応に使用されるタンパク質、クロロフィル、およびその他の色素のグループ

光化学系I:プラストシアニンからNADP⁺(その過程でNADPHに還元されます)に電子を輸送するために光エネルギーを使用するチラコイド膜に内在する色素およびタンパク質複合体

光化学系II:水から電子伝達鎖に電子を輸送するチラコイド膜の中の内在性タンパク質と色素複合体。酸素はPSIIの生成物

色素:光の特定の波長を吸収し、他の波長を反射する(これがその色の原因となります)ことができる分子

初期電子受容体:反応中心からエネルギーを与えられた電子を受け取る、反応中心の中の色素または他の有機分子

反応中心:クロロフィル分子と他の有機分子との複合体で、特別なクロロフィル分子の対と初期電子受容体の周りに集合している。酸化および還元されることができる

還元:原子または分子による電子の獲得

分光光度計:透過光を測定し、吸収を計算することができる機器

気孔:葉と環境との間のガス交換と水分蒸発を調節する開口部。通常は葉の下側にある

ストロマ:光合成の光非依存反応が起こる、葉緑体内部のグラナを囲む液体で満たされた空間

チラコイド:光合成の光依存反応が起こる葉緑体内部の円板状の膜で包まれた構造。チラコイドの積み重ねはグラナと呼ばれる

チラコイド内腔:光が駆動する電子伝達中に陽子が蓄積する、チラコイド膜によって囲まれた水性空間

波長:図で表現した際における波の同じ位置の連続する点(2つの山または2つの谷)の間の距離。放射のエネルギーに反比例する

この章のまとめ

8.1 | 光合成の概要

光合成のプロセスは地球上の生命を変えました。光合成の進化は、太陽からのエネルギーを利用することによって、生物が莫大な量のエネルギーにアクセスすることを可能にしました。光合成のおかげで、生物は十分なエネルギーを手に入れることができ、それによって生物は新しい構造を作り、今日に明らかなような生物多様性を達成することができました。

特定の生物(光独立栄養生物)だけが光合成を行うことができます。それらはクロロフィル(可視スペクトルの特定の波長を吸収し、太陽光からエネルギーを取り込むことができる特殊な色素)の存在を必要とします。光合成は二酸化炭素と水を使って炭水化物分子を組み立て、副生成物として酸素を大気中に放出します。植物や藻類などの真核生物の独立栄養生物は、葉緑体と呼ばれる、光合成が行われデンプンが蓄積する細胞小器官を持っています。シアノバクテリアなどの原核生物では、このプロセスはあまり局在化されておらず、折り畳まれた膜内、原形質膜の延長部分、および細胞質内で起こります。

8.2 | 光合成の光依存反応

光合成の最初の部分(光依存反応)の色素は、太陽光からエネルギーを吸収します。光子が光合成を開始するために光化学系IIのアンテナ色素に衝突します。エネルギーはクロロフィルaを含む反応中心に移動し、次に電子伝達鎖に移動します。電子伝達鎖は水素イオンをチラコイド内部に送り込みます。この作用によって高濃度の水素イオンが蓄積されます。水素イオンは、化学浸透の間にATPシンターゼを通過してATPの分子を形成し、これは光合成の第2段階で糖分子の形成に使用されます。光化学系Iは第2の光子を吸収し、それがNADPH分子の形成をもたらします。この分子は、光非依存反応のための別のエネルギー担体および還元担体となります。

8.3 | 光エネルギーを使って有機分子を作る

光非依存反応(またはカルヴィン回路)は、光合成の最初のステップで形成されたエネルギー担体を使用して、大気からCO₂を取り入れます。酵素のRuBisCOは、CO₂および他の有機化合物RuBPとの反応を触媒します。3回の周回後、三炭素分子のG3Pのうちの1つはこの回路を離れて炭水化物分子の一部になります。残りのG3P分子は、回路にとどまってRuBPに再生され、それは次に、さらなるCO₂と反応する準備を整えます。光合成は細胞呼吸の過程でエネルギー循環を形成します。植物は葉緑体とミトコンドリアの両方を含んでおり、それらが明所と暗所の両方で機能し、必須の代謝産物を相互変換することができるという能力のために、植物は光合成と呼吸の両方に依存しています。

ビジュアルコネクション問題

1.図8.6 | 暑く乾燥した日には、植物の孔辺細胞は水を節約するために気孔を閉じます。これは光合成にどのような影響を与えるでしょうか?

2.図8.16 | 葉緑体の電子伝達鎖にとって初期の電子の源となるのは何ですか?
a.水
b.酸素
c.二酸化炭素
d.NADPH

3.図8.18 | 次の記述のうち、正しいものはどれですか?
a.光合成では、酸素、二酸化炭素、ATP、およびNADPHが反応物である。GA3Pと水が生成物である。
b.光合成では、クロロフィル、水、および二酸化炭素が反応物である。GA3Pと酸素が生成物である。
c.光合成では、水、二酸化炭素、ATP、NADPHが反応物である。RuBPと酸素が生成物である。
d.光合成では、水と二酸化炭素が反応物である。GA3Pと酸素が生成物である。

レビュー問題

4.次の構成要素のうち、植物とシアノバクテリアのどちらによっても光合成を実行するために使用されないものはどれですか?
a.葉緑体
b.クロロフィル
c.二酸化炭素
d.水

5.光合成によって生じる2つの主な生成物はどれですか?
a.酸素と二酸化炭素
b.クロロフィルと酸素
c.糖/炭水化物と酸素
d.糖/炭水化物と二酸化炭素

6.光合成の光非依存反応は、植物細胞のどの区画で起こりますか?
a.チラコイド
b.ストロマ
c.外膜
d.葉肉

7.真核生物におけるチラコイドについての記述で、正しくないものはどれですか?
a.チラコイドは積み重ねられた状態にまとめられる。
b.チラコイドは折り畳まれた膜の迷路として存在する。
c.チラコイドを囲む空間はストロマと呼ばれる。
d.チラコイドはクロロフィルを含む。

8.葉緑体の光非依存性の酵素が、光に反応して自らが活性化するのを妨げるような突然変異を起こした場合の最終的な結果を予測してください。
a.GA3Pの蓄積
b.ATPとNADPHの蓄積
c.水の蓄積
d.二酸化炭素の枯渇

9.光合成中に作られるNADPHとGA3P分子は、どのように似ていますか?
a.どちらも光合成の最終生成物である。
b.どちらも光合成の基質である。
c.どちらも二酸化炭素から生産される。
d.どちらも化学結合の中にエネルギーを蓄える。

10.次の構造のうち、光化学系の構成要素でないものはどれですか?
a.ATPシンターゼ
b.アンテナ分子
c.反応中心
d.初期電子受容体

11.NADP⁺の1分子を完全にNADPHへと還元するためには、いくつの光子が必要ですか?
a.1個
b.2個
c.4個
d.8個

12.ATP合成のための条件の確立に関連しない複合体はどれですか?
a.光化学系I
b.ATPシンターゼ
c.光化学系II
d.シトクロム複合体

13.NADPHは、光依存反応のどの構成要素から最も直接的に形成されますか?
a.光化学系II
b.光化学系I
c.シトクロム複合体
d.ATPシンターゼ

14.同じ種類の植物を3つ、それぞれ異なる色の光の下に同じ時間だけ照らすことによって栽培します。植物Aは青い光の下で育てられ、植物Bは緑色の光の下で育てられ、植物Cはオレンジ色の光の下で育てられます。この植物が光合成のためにクロロフィルaとクロロフィルbのみを使用すると仮定すると、この植物のもっとも成長しているものからもっとも成長していないものの予測される順序はどれでしょうか?
a.A、C、B
b.A、B、C
c.C、A、B
d.B、A、C

15.クロロフィルbのみを含有する植物を以下の波長の放射に露光します:10nm(X線)、450nm(青色光)、670nm(赤色光)、および800nm(赤外線)。どの植物が光合成のために最も多くのエネルギーを利用しますか?
a.X線を照射した植物
b.青色光を照射した植物
c.赤色光を照射した植物
d.赤外線を照射した植物

16.光非依存反応が起こるためには、どの分子が継続的にカルヴィン回路に入らなければなりませんか?
a.RuBisCO
b.RuBP
c.3-PGA
d.CO₂

17.カルヴィン回路にとって、どのような順序の分子変換が正しいですか?
a.RuBP + G3P → 3-PGA → 糖
b.RuBisCO → CO₂ → RuBP → G3P
c.RuBP + CO₂ → [RuBisCO] 3-PGA → G3P
d.CO₂ → 3-PGA → RuBP →G3P

18.カルヴィン回路は真核細胞のどこで起こりますか?
a.チラコイド膜
b.チラコイド内腔
c.葉緑体のストロマ
d.グラナ

19.どの記述が炭素固定を正しく説明していますか?
a.CO₂から有機化合物への変換
b.3-PGAを形成するためのRuBisCOの使用
c.G3Pからの炭水化物分子の生産
d.G3P分子からのRuBPの形成
e.CO₂を還元するためのATPとNADPHの使用

20.もし二酸化炭素の分子が4つカルヴィン回路に入ると(回路の4回の「周回」)、G3P分子はいくつ生成され、いくつ送り出されますか?
a. 4つのG3Pが生成され、1つのG3Pが送り出される
b. 4つのG3Pが生成され、2つのG3Pが送り出される
c. 8つのG3Pが生成され、1つのG3Pが送り出される
d. 8つのG3Pが生成され、4つのG3Pが送り出される

クリティカルシンキング問題

21.光合成における光反応の全体的な結果とは何ですか?

22.なぜライオンのような肉食動物が生き残るために光合成に依存しているのですか?

23.なぜエネルギー担体は「満杯」または「空」のどちらかと見なされるのですか?

24.イエローストーン国立公園の一区画で日光を遮るような厚い火山灰雲を噴き出す火山の噴火によって、ハイイロオオカミの個体群がどのような影響を受けるかを記述してください。

25.気孔の閉鎖は光合成をどのように制限しますか?

26.光依存反応における光化学系IIから光化学系Iへの電子移動の経路を記述してください。

27.光合成におけるATPとNADPHの役割とは何ですか?

28.ある植物がその光化学系II複合体を排除するような突然変異を持っていたとすると、光合成の最終生成物はどのように、そしてなぜ変化するでしょうか?

29.なぜカルヴィン回路の第3段階が再生段階と呼ばれるのでしょうか?

30.ある細胞が酵素RuBisCOを生産できない場合、光非依存反応のどの部分が影響を受けるでしょうか?

31.光合成の初期生成物であるG3Pを生産するのに、なぜカルヴィン回路の3周回を要するのでしょうか?

32.植物と甲虫を含む封をされたテラリウムを想像してください。それぞれの生物はどのようにして他の生物に資源を提供していますか?もし片方の生物しかテラリウムの中にいないならば、それぞれの生物は生き残ることができますか?それはなぜですか?

33.キリンと木からなる日当たりの良い、閉じた生態系において、エネルギーの流れと栄養素の流れを比較してください。

解答のヒント

第8章

1 図8.6 二酸化炭素(光合成に必要な基質)のレベルはすぐに下がるでしょう。その結果、光合成速度が阻害されます。3 図8.18 D 4 A 6 B 8 B 10 A 12 C 14 A 16 D 18 C 20 C 21 光合成における光反応の結果は、太陽エネルギーから化学エネルギーへの変換です。葉緑体は、仕事(ほとんどが、二酸化炭素からの炭水化物の同化作用的な生産)をするためにこの化学エネルギーを使用できます。23 光依存反応から光非依存反応に移るエネルギー担体は、エネルギーを持ってくるために「満杯」です。エネルギーが放出された後、「空」のエネルギー担体はより多くのエネルギーを得るために光依存反応に戻ります。実際の動きはあまり関与していません。ATPおよびNADPHの両方がストロマで産生され、そこでそれらはまた使用され、そしてADP、Pᵢ、およびNADP⁺に再変換されます。25 気孔は、葉とその周囲の環境との間での気体および水蒸気の交換を調節します。気孔が閉じられると、水分子は葉から逃げることができませんが、葉も環境から新たな二酸化炭素分子を獲得することができません。これは、光非依存反応を、葉の中に貯蔵された二酸化炭素が枯渇するところまでしか継続できないように制限します。27 これらの分子は両方ともエネルギーを運びます。NADPHの場合、それは光非依存反応において炭水化物分子を製造するプロセスに力を与えるために使用される還元力を有しています。29 なぜなら、回路の開始時に必要な分子であるRuBPはG3Pから再生されるためです。31 なぜなら、G3Pは3個の炭素原子を持っており、そして回路の各周回は二酸化炭素の形で1個の炭素原子を取り込むからです。33 この定義された生態系では、エネルギーは太陽から放射され、木の葉のクロロフィルによって吸収されます。葉の中で光合成が起こり、光エネルギーを炭素分子の共有結合の中に貯蔵される化学エネルギーへと変換します。キリンは木の葉を食べ、エネルギーを放出するために炭素分子を消化するでしょう。この同じ生態系では、栄養素は木とキリンの間を循環します。キリンは、その細胞が好気呼吸を行って化学エネルギーを生成するため、酸素を消費して二酸化炭素を放出します。木は光合成の間に放出された二酸化炭素を消費して自身の中に貯蔵される化学エネルギーを作り出し、そして副生成物として酸素を放出します。

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