アフリカでのセッションをファシリテーションしてみて | T4NT Handover Report 4

Code for AustraliaとアフリカのCivic Techの組織であるOpen upとTech for Non-tech(T4NT)のプログラムについて学ぶ中で気が付いたことや学んだことを書きます。

Nao Myoshu
Code for Japan
12 min readMay 26, 2019

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この記事では
・実際に提供してみて感じたT4NTの価値
について紹介します。

T4NT Handoverプログラム4日目はOpenUpとCode for Japanによるプログラムの提供です。

Technical Facilitatorとして、エンジニア歴10年のOpenUpのエンジニアLungaと、元公務員で現在はOpenUpでプロジェクトマネージャを務めるAdrian、

筆者である私は主に全体のタイムキーピングとグループワークの進行/ファシリテーションを担当します。

参加者はActivate, CapetownTV などNGO関係者や企業のIT部門のメンバーなど様々。

セッションはオリジナルのコンテンツに基づく、5つのテーマ
・IT技術についての基礎的なレクチャー
・Jagan(専門用語)の学び方についてのグループワーク
・Web開発についてのレクチャー
・開発者とのチームビルディングについてのレクチャー
・開発者によるデモ

で実施します。Code for Australiaのチームはオブザーバーとして見学です。

実際に提供してみて感じたT4NTの価値

エンジニアがプレゼンテーションをするチャンス

Tachical Facilitatorをアサインすることには、Civic-Tech組織の技術者が公の場で話すチャンスを作るという目的もあります。

コミュニティの活動については、PRのメンバーが話すことは多くあると思います。一方で技術者はどちらかといえば個人のプロジェクトの作業に集中しており、その内容を公の場で話すという機会が実はあまりなかったりします。

Tech FacilitatorをするLungaさんも人前でプレゼンテーションをすること自体あまりありませんでした。

T4NTで話す機会を設けることで、エンジニア自身がプロジェクトについて公に発信するという機会創出の意味合いもあります。

プレゼンテーションの資料はCode for Ausが過去のT4NT実施で改善を重ねてきたデザインされたスライドを使えるので、知識があれば問題なくプレゼンテーションを行うことができます。

Technical facilitatorであるLungaはデモとして、地図上でのビジュアライズのプロジェクトを紹介します。

Opendataとして公開されている国勢調査のデータをクレンジングして、地図上にピンとしてデータを表すまでのプロセスについて話します。

技術的な話にとどまらず、
例えば、データの検証時に、データが誤っていた際、その場で手動で直してしまわずに、クライアントに報告してデータの作成時にどのような原因があったのかを追求し、次回の統計調査時に改善するための話をしたこと。

または、クライアントの理不尽な要求で、エンジニアの作業時間を無視したプロジェクトの進行にならないためのクライアントも巻き込んだアジャイルの開発の現場について。

その他にも、行き当たりばったりなソフトウェアアーキテクチャと、余裕のないソフトウェア開発が引き起こすTechnical Depth(技術的負債)など、発注者が注意すべきポイントについて話します。

開発者とのチームビルディングについて

Technical Facilitator、Adrianによ「開発者とのチームビルディングについて」のレクチャーは特に人気でした。

彼自身のバックグラウンドとして元公務員であり、OpenUpに入ってからのエンジニアとのコミュニケーションの経験をもとに話されるエンジニアとの付き合い方はとても説得力があります。

会場からの声としては、プロジェクトマネジメントに関する理論的なレクチャーだけではなくアクティビティも是非したいという要望多く挙がっていたことが印象的でした。

話はそれますが、
レクチャーの最中、アフリカ人のオーディエンスはセッションに対する参加姿勢がかなり積極的でした。

質疑応答では、質問が終わらない。笑

それも一人からの質問が長く続くというよりも、自分の理解度を上げるためのほとんど全員からの質問が続きます。

そのため時間を区切って切り上げるのか、当初の予定よりも質疑応答で会場の熱気が上がっているその場を大切にするべきか悩むことが多くある会場でした。

まとめ

T4NTは単縦なプログラム提供にとどまらず、その価値は様々な機会創出にあると思います。

社会貢献度の高い組織を運営していく上では、賛同者とのつながりを欠かすことはできませんが、一方で関係を維持することはとても難しいです。

「なかなか機会を見つけることができないけれどいつか、また何かの仕事で」、という繋がりの場合、T4NTを提供することをきっかけとすることができます。

Civic Tech組織の場合、評判を聞いて好印象なものの実際に何をしている団体なのかがわからず、一歩を踏み出せないクライアント候補もあるかと思います。

双方のことを知らずに、いきなりクライアントとベンダーという立場で始めるのではなく、プログラムを通して、Civic Techコミュニティについて、または一緒に働くとはどういうことかを知ってもらうことができます。

T4NTを受講することで、組織の一部のメンバーが表にでるだけではなく、開発者を含めたチーム全員を知ってもらうことになります。

そうすることでコミュニティ、そしてメンバーの姿勢や雰囲気を知ってもらい、信頼関係を築くことができます。

他にも例えば、つながりのある企業に、スポンサーとして会場を提供してもらうことで、関係性を築くきっかけになります。

振り返ってみれば、実はこのHandoverのプロジェクト自体もCode forのコミュニティが繋がる機会として役に立っていました。

全体を通して

T4NTのプログラムは「Web開発プロジェクトにおいて、プロジェクトオーナーが必要なアウトプットを得るために知っておくべきこと」についてのレクチャーであることが一貫していました。

情報通信技術についてのレクチャーでは歴史について学び、Web開発についてのレクチャーでは自分のニーズにあったソリューションが何であるかを知り、最後にはプロジェクトにかかわる開発者の仕事と働き方を学ぶことで相手の立場にたったコミュニケーションについて学びます。

テクノロジーがこれだけ進歩した世の中で、その技術を無視することはできなくなりました。しかし一方ではソーシャルセクターでは一般の民間企業で当たり前に使われているようなツールであっても、様々な制約の下まだまだ導入が進んでいないのは世界的に共通しています。

わからないからITベンダーに任してしまう、その結果不要なコストをかけてしまうのではなく、例えばT4NTのようなプログラムが世の中に広がることで、各地のCivic-techコミュニティとつながりを築き、より良いものが世の中に生み出されていけば良いです。

T4NTのプログラムは世界で広がるためにフォーマットがデザインされているため、誰でもどこでもTechnical FacilitatorとFacilitatorと会場があれば実施できるように準備されています。

もちろんそのままのコンテンツのままで導入とはいかないため、日本に適応させるための準備は必要です。

しかし、今回のExchange Programmeを通して、T4NTのプログラムが国を渡り展開されていくことをロールモデルに、各国で培われた教育プログラムやノウハウがCivic Techのネットワークで広がることができれば素晴らしいと思いました。

T4NTについては引き続き日本での応用方法を考えていきたいと思います。

そして、日本が言語の壁で引き離されてしまわないように、引き続き橋渡しとして少しでも貢献したいと思っています。

番外編:LEGOを使ったアクティビティ

左から、キャッシュを車に例えたもの、Githubを本棚に例えたもの、構造であるHTMLとデザインを定義するCSSをそれぞれLEGOで表現。

TFNTのアクティビティの一つであるJagonのワークはLEGOを使ったバージョンもあります。

単語の概念をLEGOを使うことでビジュアル化します。

一見言葉で説明する他のJargonのワークよりもハードルが高そうで、実際にやってみるまでは少し不安でした。

いざワークとなってみると、
手を動かすことでお昼終わりの眠気覚ましにもなりますし、一緒に作ることでチームワークを高めることにもつながりますし、物として形になるのが楽しく記録としても良いです。

この中で特に印象的だったのが、Cache(キャッシュ)の車による例えです。

車2台で説明するのは、
キャッシュを持つ前の普通の状態と、キャッシュを持つことでインターネット上での体験が便利になることをアップグレードされた車で早く移動できるという例えでした。

このキャッシュはレクチャーの途中で出てきた単語でした。
その際は、知っているようだけれど知らない単語という感じであまりとてあげられることはありませんでした。

しかし、午後のワークで取り上げられ概念が説明されたことで、
「キャッシュはどのようなときに保存されるのか」
「Cookieとどのように違うのか」など、実際のシチューエーションに落としこまれで話が具体的になり、参加者の理解も深まったように感じました。

まさにLEGOを使ったストリーテリングでした。

番外編2:振り返りのアクティビティ

自分の中での内容に関する振り返りと、運営に対する振り返りについて、各自がノートに書いて、それぞれ発表します。

運営に対する振り返りは4つの視点で行います。
Environment, Pace, Topic, Interactivity

事後アンケートではなく、アクティビティの一つとしてその場で共有してフィードバックを集めます。

コメントとしては、
「今まで学ぶ機会がなかったテックに対する全体像が見えた」前向きな意見や、

一方で「ペースが早い」「内容が多すぎる」など、持っている知識の違いや興味関心によって感じる時間の長さが異なるようなフィードバックも個人の不満として持ち帰るのではなく、会場で共有することができました。

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