映画をご覧になったのなら是非原作も(2)
前回の続きです。
脚本家はアメリカ人
映画版『エル ELLE』は当初ハリウッドで制作を考えていたこともあって、脚本はアメリカ人のデイヴィッド・バークが書いたものを、フランス語の翻訳者(原作者フィリップ・ジャンではなく、映画や戯曲の翻訳を多く手がけているハロルド・マニング)がフランス語に翻訳しなおしたという形になっています。
したがいまして、映画で登場するせりふはほとんどオリジナルです。とはいえ、原作からうまく汲み取って気が利いているように感じました。
さて、2017年セザール脚色賞ノミネートにあたってのインタビュー動画です。Skype使って英語で対談しています。
原題の “Oh…” という言葉は、フランス語では「おっと」「あら」とかいう意味になります。映画協会のインタビュアーさんが、かわいらしいジェスチャー付きで、フランス語のOhとは英語でいうOh!というニュアンスではなくてOops!といった感じだと。なお、私も彼と同様、当初『O嬢の物語(L’histoire d’O)』にもひっかけているのかなと思ってましたが、インタビュアーさんはそれは違うと一蹴していましたね。
これまでも、「頭のおかしな母親」の脚本を書いて持っていったら、実話を元にした作品を書くよう頼まれたので、「自分の母親の話だ」ととぼけたら、シリアスな事件ものを書いてもらうのに雇ったのに、と言われて却下されたとか、「ホワイト・トラッシュ」を描くような映画は制作できないとか言われたとか、面白おかしく「自分のキャリアというかノンキャリア」の話を話しています。ざっとこれまでの彼の作品の一覧を見ましたが、他の映画はあまり知られていないようです。犯罪映画が多いのは、そういう仕事しか来なかったから、と。
『エル ELLE』の何に一番感動したかといえば、違う言語でせりふが語られているのにもかかわらず、これまでやってきたどの仕事よりも自分が書いたものが忠実に再現されていたことだそうです。アメリカの場合、俳優が脚本のせりふをその通りに言ってくれることはない、と。
『エル ELLE』 は図らずも彼の出世作になりました。夢はフランスに渡って、フランスの映画の脚本を担当したい、とおっしゃってますね。
原作は7月6日発売です。よろしくお願いします。
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