マズローのZ理論
「欲求5段階説」で著名なマズローは、
晩年になって「自己実現」する人を2種類に分けた。
一つは、明らかに健康であるが、
超越体験をほとんどあるいはまったくしない人々。
一つは、超越的体験が大変重要であり、
それが生きる中心にさえなっている人々。
超越的な人々は、
存在の領域を意識しており、存在の次元、
すなわち、目的や本質的な価値の次元で生きている。
「自己実現」という狭い箱から出るのだ!
ここに新たなライフキャリアデザインの
大いなる方向性も見いだすことができる。
さらには、世界観や自己に関する考え方を変えるような
啓示や洞察、認識を伴う神秘的体験を持っている。
マズローが晩年に書き遺した
自己超越・Z理論のメモ書きを以下に記す。
一、超越者にとって、思考経験や高原体験は、人生における最も重要な事柄、輝かしい瞬間、生の証、人生の最も貴重な一面になっている。
二、超越者たちは、容易に、また正常かつ事前な調子で、無意識的に、存在の言語(永遠の相のもとにおける、詩人や神秘族、先覚者、深い信仰を持った人々の言語)を話す
三、彼らの認知は、統合的で神聖である。(すべてのものを永遠の相のもとに認知することができる)
四、意識的に、高次欲求に動機付けられるところが大きい。
五、彼らは、どういうわけか、初対面においてさえ、お互いを認め合い、
ほとんど出会った瞬間から親密になり相互に理解しあうようである。
六、美に対して敏感に反応する。
七、彼らは、健康な、あるいは、実際的な自己実現者(彼らもやはり同じ意味で全体的ではあるが)よりも、さらに世界を全体的に見ている。
八、自然な、シナジーへの傾向、すなわち精神内、人間間、文化内、国際間のシナジーへの傾向
九、自我、自己および同一性を容易に超越している。
十、愛らしいばかりでなく、畏敬の念を起こさせ、「この世のものとは思えない」「聖者のような」「恐れ多い」感じを多く与える
十一、超越者は、健康な自己実現者よりも、改革者や、新しい事柄の発見者になることが多い。
十二、健康で幸福な人よりも、恍惚的、夢想的になることができ、一段と高い次元の「幸福」(彼らの体験を表すには弱すぎる言葉)を経験する。しかし一面、人々の愚かさや自ら招く敗北、盲目性、相互の残酷さ、視野の狭さによりもたらされる宇宙的な悲しみに、心を向けがちである。
十三、実際に劣っている人に対して、その客観的認識の一方、すべての人がかけがえのない、平等で、比較のできない神聖さをもつということの認識が両立している
十四、知識の増加が神秘性や畏怖の増加とプラスの相関にある。
十五、超越者は、他の自己実現者よりも、貴人や変人を恐れる度合いが少ない
十六、超越者は、大きな全体論的意味、つまり、「すべては天から」という、神のようなオリンピア的意味において、悪の必然性や必要性を理解しており、その意味で「悪と融和す」べきことも理論より導き出される。
十七、別の逆説として、自分自身を、才能の運搬者、超人的なものを伝達する道具、いわば偉大な知性や技能や指導性、能率の、一時保管者とみなす傾向が強い。
十八、超越者は、原理的にいって有神論的な意味、あるいは無神論的な意味のいずれにおいても、非常に「宗教的」であり「精神的」である。
十九、自我や自己や同一性を容易に超越し、自己実現以上に進むことができる
二十、あるがままを多く体験し、水たまりや、窓枠を滴り落ちる雨の雫や、皮膚の滑らかさや、芋虫の動きに魅せられる子供のように、物事に心を奪われることが多い。
二一、いくぶんか道徳的な傾向をもつ。対象に手を加え、改善や干渉するよりも、ただじっと見つめ、観察する。
二二、全面的な、心の底からの葛藤のない、愛情、受容、豊かな表現。
二三、とくに金銭以外の多くの種類の報酬があること。シコ経験や認知を可能にしやすい仕事を積極的に求めること。
二四、通常の自己実現者が、シェルドンの中胚葉型であることが多いのに対して、
超越者はやや外胚葉型の傾向がある。
『意識の深層と超越』より抜粋