前回の記事では筆者から見たEthereumの現状を概説しました。
今回の記事では将来Ethereumへの実装が計画ないし提案されている改善に焦点を当て、今後の展望を紹介します。
The Merge
The Mergeと呼ばれるアップグレードにより、EthereumはProof of Work(PoW)からProof of Stake(PoS)へと移行します。The Mergeは2022年Q2に予定されています。
従来のEthereumチェーンをExecution Layer(EL)、ステーキングが行われているBeacon ChainをConsensus Layer(CL)とし、それらを統合(Merge)するのがThe Mergeです。
The MergeによりPoWは廃止されるため、Ethereumの環境への負荷を懸念する声は和らぐものと思われます。
Danksharding / Blob-Carrying Transactions
Ethereumは現在Rollupを中心としたL2でのスケーリングを目指しており、それを踏まえL1をよりRollup-friendlyにする提案がDankshardingおよびblob-carrying transactionsです。
Dankshardingではcalldataをシャーディングする新しいトランザクションタイプを導入します。calldataとはトランザクションに含まれるデータ領域で、Rollupでは多くのデータをcalldataに書き込むため、これをシャーディングすることでRollupをより低コストにできます。
blob-carrying transactionsはこの新しいトランザクションタイプをシャーディング導入以前から使えるようにする提案と言えます。シャーディング導入前は一定期間後にノードが削除できる安価なデータ領域とし、シャーディング導入後も同じ形式のトランザクションを使えるようにして互換性を保ちます。
Account Abstraction
Account Abstraction(以下AA)とは秘密鍵に紐づくアカウント(EOA:Externally-Owned Account)以外がトランザクションを発行できるようにするもので、EthereumのUXを大きく改善しうる概念です。
最新の提案であるEIP-4337はトランザクションの実行をトラストレスに委任する仕組みを定義したもので、コンセンサスレイヤーの変更なしにエンドユーザーにとってのAAを達成できるため、実現可能性がぐっと高まりました。
トランザクションの実行をトラストレスに委任できるということは、以下のような特徴を持つウォレットを作れるということです。
- 秘密鍵を管理する必要がない
- ガス代を事業者が肩代わりする
- ガス代をETHではなく任意のトークンで払える
AAの歴史や詳細な仕様を知りたい方には以下の記事がお勧めです。
おわりに
現在提示されている改善案から筆者が想像する数年後のEthereumの姿は以下のようなものです。
- L1はRollupやDAO等の大口ユーザーの決済処理に特化し、一般のユーザーはL2を使用する
- L1・L2ともにほぼすべてのウォレットがAAに基づくコントラクトウォレットになる
未来のことは誰にもわかりませんが、ブロックチェーンエンジニアとしては未来を想像しワクワクしながらものづくりに取り組みたいと思います。