Amazonがもたらす購買の無意識化。Techによる自動化の先に、豊かさはあるのか?

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2018年11月に開催された第2回「LivingTech カンファレンス」。『POST2020』をテーマに掲げ、2020年から5年後の社会を考えるトークセッションが展開されました。人口減少、少子高齢化、過剰供給……。社会課題について交わされた13セッションの中から、「顧客志向から生まれるスマートホーム戦略」と題して行われたセッション(全8回)の4回目をお届けします。

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登壇者情報

  • 前田 宏 氏 /アマゾンジャパン合同会社 消費財事業本部 統括事業本部長 バイスプレジデント
  • 柳田 晃嗣 氏 /アマゾンジャパン合同会社 Alexaビジネス本部 本部長
  • 山下 智弘 氏 /リノベる株式会社 代表取締役
  • 塚本 信二 氏 /米DUFL 共同創業者, リノベる株式会社 社外取締役 /モデレータ

パートナー情報

本セッションはリノベる株式会社様にサポートいただきました。

消費者の購買行動は、どう変わってきているか?

塚本 続いて前田さんにお聞きしたいです。

2000年からずっと日本で展開をされていて、顧客視点に立ってニーズを吸い上げつくっていらっしゃるもの、ないしはサービスとして立ち上げるものが多いと思うんです。

消費者の動向自体が、買い方もそうですし探し方もそうなんですけども、どういった形で変わっているのかを少し紐解いていただきたいです。

前田 そうですね、消費者の購買行動の変化、ここにいわゆる技術なりデジタルが深く関わってきているわけなんですけれども、皆さんから見て左側がいわゆるショッピング。

例えばAmazonが1995年にアメリカでスタートしていますけれども、その前はいわゆるショッピングは週末にスーパーマーケットやホームセンター、あるいは日本であればコンビニに行って必要なものを買うのがショッピング、買いものと言われていたものです。

買いもの、ショッピングは大きく2つに大別できると思います。

例えば女性に限らないのかもしれませんが、趣味がショッピング、買いものという方がいらっしゃると思います。

それは自分のために自分の好きなものを、洋服であったりあるいはアクセサリーといったものを、お店に行って実際に商品を比較してみながら買いものをするとか、男性でいえば自分の趣味のものなどを週末に専門店に行って買いものをすると。

もう一つ、例えば家のお水がなくなったからお水を買わなきゃいけないとか、あるいは洗剤がなくなったから洗剤を買わなきゃいけないとか、あるいはお子さんがいる方はおむつがなくなったからおむつを買わなきゃいけない。

こちらは買わなくてはいけない、いわゆるショッピングの中でも労働に分類されるショッピングなわけですね。だからできるのであればなるべく時間を使わずに、だけど必要なものを買いたいと。

ショッピングは本当に大きくこの2つです。

私は消費財を担当していて、消費財の多くは、労働に分類されるそういった商品をたくさん売っているんですね。

2000年にAmazonが日本でスタートして、まずそれをわざわざお店に行かなくても自宅でコンピューターを使って注文をし、自宅まで届けてもらうネットショッピングがスタートしました。

そして2010年前ぐらいからは、もう家のコンピューターを開けなくてもほとんどの皆さんが持っているスマートフォンを使って、通勤中でも会社のお昼休みでも、必要なものを買うことができるようになりました。

スマートフォンは画面が小さいですから、大型のテレビや洋服はなかなか買わないんですね。どちらかというと、先ほど言ったように洗剤とか水とか繰り返し買うもの。

だからよく使われている機能としては「購入履歴から買う」とか、「前に買ったものから選ぶ」とか、そういうボタンから入っていって買うことが多いわけです。

人を「しなければならないこと」から解放する

(スライドにある)真ん中の上、これは洗剤ですね。

Dash Buttonは私どもが2年前に、IoTの一つのデバイスとしてお客さまにご提供したものです。Dash Button本体の販売価格は500円なんですけれども、1回ボタンを押して洗剤を買っていただくと、500円をまたお客さまにお戻しすると。正味タダです。

これを洗濯機の近くに貼っていただいて、もちろん自分が使っているブランドの洗剤のボタン、それがメーカーさんからちゃんとDash Buttonとして提供されていれば、そのDash Buttonを買って洗濯機の近くに貼って押していただければ、洗剤が切れそうになったときにすぐにスマホを見なくても洗剤が家に届く、というものを発売しました。

塚本 Amazon Dash Buttonは、いま何種類ぐらいあるんですか?

前田 今、約130種類ありますかね。

塚本 ちょうどそのDash Buttonから時計回りで、まさに今日のトピックであるいわゆるハウスホールドに入っていくテクノロジーです。Dash Buttonがあって、その次にEchoがあってという感じですね。

前田 そうですね。今度はもうDash Buttonを押さなくても、先ほども多くの方がスマートスピーカーを使っていらっしゃったので、今度は声で「Alexa、洗剤を注文して」と言うだけで、もちろん値段やお届け日の確認の画面はありますけど、ただもうもちろんコンピューターのキーボードとかを使わずに買いものができる。

そしてその右側、あとで動画でご紹介しますが、さらに進化したものは、例えば洗濯機やコーヒーマシンが自分で必要な洗剤あるいはコーヒーマシンのカプセルを注文してくれるAmazon Dash Replenishment Serviceです。

例えば最近の洗濯機ですと洗剤や柔軟剤をそのまま入れられる製品があります。今の製品は(洗剤が)なくなると「洗剤が減りました」という表示が出るんですね。

Dash Buttonは使っている方が自分でボタンを押す必要があります。

けれども、Dash Replenishmentに対応した洗濯機やコーヒーマシンであれば、それを自動的にアプライアンス(=家電製品)が判別して、使っている人に「じゃあ注文しますか」という確認をして、よければそのまま注文してくれる。

実はアメリカでは量販店で売られているほとんどのプリンターにはその機能がもう入っております。プリンターのインクが減ってきたら自動的にそのメーカーのインクを注文してくれると。

塚本 動画があるのでここで流してみましょうか。

前田 そうですね。

いかがですか。先ほど言った労働に分類されるショッピングが、すぐそこまでこういう技術が来ているんですね。

ご覧いただいてる写真、ペットフードのフィーダーとして実際に商品が出ています。

おそらく近い将来、日本でも出てくるんですけれども、ペットのごはんを自動的にあげます。それがなくなってくると重量を量っていて「それではペットフード、ドッグフードを注文しますか」というのをこのフィーダーが使っている方に教えてくれて、よければそのまま注文できると。

スマートホームの中のスマートアプライアンスとでもいうべきものの、いくつかの事例は本当にすぐそこまで来ている。

塚本 たしかに日々やらなきゃいけない家事、追われるものを、こういったテクノロジーで解決していければ、提供するほうもされるほうもよりよい時間が過ごせるんだろうと思います。

購買の自動化は、住空間の自由度すら高めうる

山下さん、ご自宅は二重扉にしたりテクノロジー漬けだとお聞きしたことがあるんですけど、こういうのって実際ほしいんですか?

山下 僕は、築50年の家に住んでいるんですね。築50年のマンションをリノベーションして住んでいるのですが、室内はいま塚本さんがおっしゃったようにかなりスマートホーム化されていて。

私が家に近づくと勝手にカギも開きますし、エアコンもつくしお風呂もわくと。

でもやはり面倒くさいのが、先ほど前田さんからありましたが、労働に分類される買いものでは夫婦喧嘩になるんですよね。「なんで買ってないの、これ」みたいな話によくなるので、それが防げるだけでも、すごくいい商品だなと思って聞いてました。

塚本 そのためにできた商品じゃないと思いますけど、そういうことも解決できるだろうと。

山下 そうですね。例えば僕たちがトイレを設計するときに、トイレットペーパーの補充するものをどこにどう置くかまで設計するわけなんですよね。

そのときに1袋置いておけば安心な方と、2袋ないと心配な方がもちろんいらっしゃるわけです。

そのために大きなスペースをとらなくてはいけないケースもあるのですが、これがあればそのスペースの無駄は省けるじゃないですか。

だから住宅の設計の仕方自体も変える商品になるんだろうなと思って聞いていました。

柳田 お客さまがやりたいのは、例えばコーヒーであればコーヒーが飲みたいんですよね。コーヒーを飲む行為がお客さまの望みであって、コーヒー豆を買っておくとかそっちじゃないんですよね。

塚本 以前柳田さんがおっしゃっていた「芝を刈るために庭を芝にしているんじゃないんだ」というキーワードが非常に印象深くて、たしかにそういったことをするより、ready(=もう準備されている状態)であれば、それにこしたことはないですよね。

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