SXSW Online 2021からみるこれからの世界<前半>

Marin Fukao
MILLENNIALSTIMES
Published in
Apr 16, 2021

2021年3月16日~20日に異例のオンライン開催されたSXSWにマッキャンミレニアルズのチームから4人が参加し、社内レポートを実施しました。私たちの視点でみたSXSW Online 2021について、Millennials Timesでは前半・後半に分けてシェアしていきます。

本レポートの発表者(SXSW 2021 Report by McCann Millennials 資料より抜粋)

2020年は中止、2021年はオンライン開催に切りかえたSXSW

SXSW Online: First Look

今年は全プログラムをオンラインに切り替えての開催となりました。

SXSWを楽しむためのプラットフォームが用意され、見たい配信をスケジューリングしたり、オンラインならではの特徴として参加者/登壇者/出展者とつながることができました。さらに今年はXRで参加者との交流もすることができるコンテンツも。ミレニアルズのチームではXRで参加しませんでしたが、参加していた人たちはバーチャル空間のオースティンの街中を探索できました。

Conferenceテーマは7つ

SXSW 2021 Report by McCann Millennials 資料より抜粋

カンファレンスでは大きくテーマが7つ掲げられていました。

コロナウィルスが依然として世界中で猛威をふるうなか、今この状況の中でどのようにビジネス、アートを発展していくのか、浮き彫りになりつつある社会問題、環境問題について語られるセッションが多い印象でした。

230もあるセッションのある中、私たちが注目した3つのジャンルのコンテンツ簡単に紹介します。

1.トレンドから読み取る今後の未来

SXSW 2021 Report by McCann Millennials 資料より抜粋

まずは、SXSWでは毎年恒例となっているAmy Webb氏による最新トレンドテクノロジーを紹介するセッション(Amy Webb Launches 2021 Emerging Tech Trend Report)と、AIがデザインとメディアにもたらす未来についてのセッション(Creative Machines:AI & The Future of Design and Media

Amy Webb2005年からSXSWに参加しており、毎年新しい技術トレンドのレポートを無料で公開しています。

2021 Tech Trends Report | The Future Today Institute

発表の中で特に印象的だったのは「YOT」という言葉。You of Things、つまり“あなた自身がデバイスのハブになる時代だ”という意味です。

私たちはいまスマートフォンを通じてネットワークにアクセスするのが当たり前と思っていますが、実はスマートフォンの売上げ台数は米国、世界で2018年以降下がっています。その代わりに登場したのがウェアラブルデバイス。特にARグラスやリングはAmazon、Apple、Facebookなども参戦しながらこの1,2年で普及し裾野を広げているのです。

Amazonは生産性の悪い社員を通報するリストバンドのシステムをつくりました。

Wrist Watching: Amazon Patents System To Track, Guide Employees’ Hands | WBUR News

OOLERという目覚まし時計は、ベッドの中の温度を調整し、熱で人を起こすことができるシステムです。

OOLER: Bed Cooling System — Temperature Control For Bed — ChiliSleep™

TOTOのWellness Toiletは便器の中にセンサーが入っており、用を足すと分析をしてくれて健康診断に行かなくてもよい未来が来るといわれています。

TOTO、ウェルネストイレを発表 座るだけで体の状態をモニタリング | Webマガジン「AXIS」 | デザインのWebメディア (axismag.jp)

Lumenは息を吹きかけると、心拍数や体の動き、呼吸をトラッキングしてその日の代謝、ストレス、食生活についてアドバイスをしてくれる優れたデバイスです。

Lumen: Hack your metabolism

これらは体を通してデバイスとリンクされ、体がハブになることからYOTと呼ばれています。

2020年、コロナウィルス蔓延という突然の出来事に対応し、その結果トレンドや最新テクノロジーも増えました。

SXSW 2021 Report by McCann Millennials 資料より抜粋

しかし、これらすべてのYOTはGAFA, Baidu, Alibaba, Tencent など彼らのクラウドとコネクトし、知らないうちにアップデートされていきます。自分たちの体についての情報が彼らに送られているということです。

上記の写真の3Dプリンタは、DNAをプリントできるもので、亡くなった方を生き返らせることができてしまうと言われています。

Amyは、ペースメーカーをハッキングするすることができる時代になったいま、テクノロジーと倫理について考える必要が出てきていると注意喚起しました。

次に、AIがもたらす未来についてのセッションを紹介します。このセッションではトレンドエージェンシーsignal and cipherのCEO兼futuristの Ian Beacraftさんがこれからの10年で、デジタル体験とリアル体験の境界線がぼやけていくと予測を発表していました。

SAMUSUNGが開発したNEONは、いわゆる「人工人間」。

実在しない人物を写真などを元に作り出せるので、全く違う性格の自分をつくり出し、リアルの世界だけでなく、同時にいくつものバーチャルな世界(メタバース)で存在できてしまう世の中が迫っているのだそうです。

また、Wompは3Dデザインを声によってAIが造ってくれるサービスです。実在するサービスで音声だけで私たちの想い描いたキャラクターや形、デザインをAIが作り出してくれ、デザインスキルが無くても簡単にクリエイティブになれるツール。

womp 3D for all

AIに仕事が奪われるのでなく、効率よくAIと共存する社会が現実的になり、リアルとバーチャルの世界が入り混じり、両方の世界で私たちの自由は広がっていきそうです。

2.これからの環境問題対策

SXSW 2021 Report by McCann Millennials 資料より抜粋

今年のSXSWでは食、テクノロジー、法律、などさまざまなセッションで環境問題解決方法について議論されていました。今回はその中でも興味深かったセッションをご紹介します。

1つ目のセッションでは、Aquaculture, Food Systems and Climate Changeのセッションです。これからの時代に必要なブルーエコノミーという考え方の可能性と、海藻の養殖について語られました。

SXSW 2021 Report by McCann Millennials 資料より抜粋

セッションに登壇したSarah Redmondは、海藻は他の海洋植物よりも、何倍も速いスピードで育つため効率よく二酸化炭素を吸収してくれて、さらに人間の食べ物にもなる海の中のミラクルフードだと紹介しました。

さらに、海は産業革命以来人間が排出した炭素の30%以上を吸収しておりそしてまたこの30%の炭素が大気中に再放出されてしまっているため、海水内で炭素を吸収させることが今必要不可欠なことなんだと主張していました。

SXSW 2021 Report by McCann Millennials 資料より抜粋

いままでは「海の資源を使わないことで海を守る」という考え方が主流でしたが、「海の生き物を育てて海を守る」というブルーエコノミーの考え方がこれからより重要になってくるようです。

次のNewYork Timesのセッションでは、「私たち人間は気候変動を止めるために 必要なすべてのツールをすべてもっているのか?」というテーマでディベートが行われました。

SXSW 2021 Report by McCann Millennials 資料より抜粋

2つのチームがそれぞれの観点からの主張を発表しました。人間はすでに必要なツールをもっていると主張したチームは、自然電力へのシフト、企業の製造過程の改善、循環型農業の取り入れ、植林や森林の再生、植え付けなどは今もっているツールで実現可能だと訴え、人間が気候変動を止めるためにはもっとツールが必要だと主張したチームは、政治家や一般人の知識向上、先進国のテクノロジーへのアクセス、サステイナブルビジネスへの投資、気候変動の法律・取り締まりがまだ必要であると訴えました。

審査員たちが出した答えは、いま私たちに一番必要なツールは「Solidality(団結力)」。

最新のテクノロジーやツールがあったとしても、人々の意識が変わらなければ社会を動かすことができないと結論づけました。

3.ソーシャルメディアの課題

最後にご紹介するのはソーシャルメディア関連の課題について、Unravelling the Social Dilemmaのセッションと、The Health Trust Gap and How to Fix Itのセッションです。

SXSW 2021 Report by McCann Millennials 資料より抜粋

最初のセッションでは、ソーシャルメディアを取り巻く複雑な問題を掘り下げ、その問題に対する可能な解決策を提案しました。

SXSW 2021 Report by McCann Millennials 資料より抜粋

今のソーシャルメディアの成熟度は子どもレベルであり、そのためソーシャルメディアを取り巻くさまざまな問題が発生してしまっているのが現実です。

ただし、ソーシャルメディアはユーモアがあり生活に潤いを持たせる場所であったこと、ビジネスを成長させることもできること、Black Lives MatterやMe tooのようにユーザーのニーズに合わせてユーザー自身がネットワークがつくれるメディアでもありました。

ソーシャルメディアを良い方向で活用するためには、社会にルールや規範があるように、ユーザーが境界線を越えた時のメカニズムが必要であり、それを動かすのはこのセッションを見ている「個人」なのかもしれないと呼びかけました。

健康の信頼性とのギャップについて発信者側から注意すべきことについてのセクションでは、代理店としてもどのような姿勢で消費者とコミュニケーションを取るべきか参考になりました。

Addressing the Health Trust Gap — Lifeology

過去の健康に関する実験の歴史から、アメリカでは健康の信頼性が欠如されトラウマを生んでしまっています。

女優のKristen Bellは「女優として情報を広める前に、ダブルチェックを必ず行なっている。自分の生の声を新聞に伝えるつもりはなく、CDCやWHO専門家や科学者に情報をダブルチェックしてもらうことから始める」と発信していました。

情報のダブルチェックについて感じるのは、日本でもTwitterが昨年よりまだ読んでいない記事をRTしようとすると警告をしてくるようになりました。これは誤った情報を拡散しないために効果的だと思いますし、SNSでインフルエンサーの声が大きくなっている今、インフルエンサーの情報をだけを信頼するのではなく、1次情報を確認する癖をつけなくてはいけないと感じました。

後半へ

後半では広告代理店という立場で参加し何を得たか、シェアしたいと思います。

長文でしたがここまで読んでくれてありがとうございます!

後半はこちら↓
SXSW Online 2021からみるこれからの世界<後半>

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