1.1.3 「第三の柱」の可能性、集団活動によるボトムアップの可能性

オホーツク島
3 min readJan 31, 2017

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そうした我々の目先に広がる絶望と幸福の中で、我々に可能なこととは何か考える。

ミンツバーグ(2015)は、資本主義と社会主義の二項対立から脱するためには、企業でも政府でもない「第三の柱」、つまり「政府や投資家に所有されていないすべての団体」によるセクター(ミンツバーグは「政府セクター(Public Sector)」「民間セクター(Private Sector)」と対比して「多元セクター(Plural Sector)」と呼んでいる)を形成し、社会がバランスを保つためには、この3つのセクターすべてが力をもつ必要があると述べている。

出典『私たちはどこまで資本主義に従うのか 市場経済には「第三の柱」が必要である』池村千秋訳 ダイヤモンド社 2015

しかし、現代の日本において、特に地方においては、企業でも行政でもない団体が存在感を示すことは非常に難しい。簡単に言うと、独自の活動を行っている企業でも行政でもない個人・団体は「変な人」「変な団体」であるとみなされることが多く、周囲の人々から支持を受けることは容易ではないからである。後述する本研究の事前調査において、北海道網走市に住む30代女性は、地域の大学が主催した地元で活動する個人が集まるセミナーにおいて、いずれの参加者も、怪しげな新興宗教だと思われることがあるなど、地域から白い目を向けられているという現実がある、と話していた。

そういった状況の中でも、企業でも行政でもない、あるいは形態上そのようなものであっても従来とは違う形を作ろうとしている、いわゆる「ボトムアップ」がうまくいっているような事例として、徳島県神山町(NPO法人グリーンバレー)、島根県海士町(株式会社巡の輪)、岡山県西粟倉村(百年の森林構想)などが挙げられる。

このような、2014年9月に総理大臣記者会見で発表されたいわゆる「地方創生」で注目されているような地域は、少数の活発な人材が長期的に活動していく中で、その活動が少しずつ様々なメディアに取り上げられ、徐々にその存在感が世の中に現れ、活発な人材がさらにその地域に集まるようになるという傾向が見られる。これはアメリカ人社会学者のリチャード・フロリダ(2002/2012)が述べている「クリエイティブ・クラス」という考え方と、その層に属する人々が集まる傾向に非常に近いといえる。

これらを踏まえて考えると、日本に暮らす若者として、我々がこの絶望と幸福に包まれた状況においてできることとして、企業でも行政でもない「第三の柱」を形成すること、それを目指していくことが考えられる。そしてこの「クリエイティブ・クラス」を元にした考え方は、「第三の柱」形成のための重要な要素のひとつである可能性がある。

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