メディアを用いて、継続的に活動を行っていくための場を制作することの意味について述べる。
一般の人々が自由にアクセスでき、人が集い、発信が行われ、継続的に注目される場を作ることによって、新たな出会いが生まれ、新たに連絡をしたり、相談をしたり、協力を依頼したり、助けを求めたりできるような関係が生まれる。こうした関係は、前述の橋渡し型の社会関係資本(弱い紐帯)にあたる。またフロリダ(2002/2012)は、クリエイティブ・クラス形成のために重要な要素のひとつとしてこの「弱い絆」を挙げている。この関係のネットワークにより、前項で述べたように、これまで個人でできなかったこと・つくれなかったものが、共通の目的意識を持った他人の力を借りることによりできる・つくれるようになるためである。
また、アメリカの代表的なメイカースペースのひとつである「TechShop」CEOのマーク・ハッチ(2013)は、この世界でまだ利用されていない最大の資源は、クリエイティブ・クラスの暇な時間と創造性とお小遣いであるとし、またクリエイティブ・クラスが少数のクリエイティブな都市に集合することも引用した上で、こうした人々がリソースを有効に活用し、街が活発なクリエイティブクラスターを育てるための場の重要性を述べている。
このように、コミュニティをつくり、創造性を高めていくために、誰もがアクセス可能な場が重要であるということがいえる。第二章で詳しく述べるが、ここでの場は、集会所やイベントスペースのような物理的な場だけでなく、SNSなどを中心としたインターネット上の交流スペースなども含まれる、ということが言われている。本研究においては従来のものとはややアプローチを変えながらこのインターネット上の場に着目し、そこからオフラインの場、オフラインのコミュニティにどれだけ影響を及ぼすことができるかを念頭に取り組みを進めていく。