2.1.3 デジタルレジテントとクリエイティブ・コミュニティ

オホーツク島
5 min readFeb 1, 2017

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本項では、このような、デジタルレジデントによるインターネット上のクリエイティブ・コミュニティが、どのように形成・活性化していくのか、また従来のローカルコミュニティ、およびローカルメディアがインターネットを通じて行ってきた取り組みとはどのように異なるのか述べる。

本論文においてクリエイティブ・クラスの論から引用する重要な点として、前述の「場所の重要性」によってコミュニティが発生するという現象、およびコミュニティによって更に場所が活性化し、クリエイティブ・クラスがさらに集合するという再帰的な現象を挙げる。

まず前提として、クリエイティブ・クラスには集合したいという欲求があるが、その状況が整いにくい、という現状がある。フロリダ(2002/2012)は、クリエイティブ・クラスの人々には自身をクリエイティブにしてくれる組織や環境への共通した強い願望があるが、一方で個人主義的でまとまりがない、という問題を指摘している。つまり、クリエイティブ・クラスが増加しつつある現代において、彼らが関係を持ちたいと考えるクリエイティブな組織や環境には一定の需要があり、その形成は価値を生み出しうる行為であると考えられる。

では、そのような組織や環境はどのように形成できるのか。コミュニティを形成する際に重要である「場」の形成について考える。

WIRED創刊編集長のケヴィン・ケリー(1998)は、情報通信手段等の革新的な進歩により、有形で物質的なものに依存する「ハード」の世界の重要性が相対的に下がり、メディア/ソフトウェア/サービスなど「ソフト」の世界の重要性が相対的に上がる、と述べているが、フロリダはこれを否定し、上記のような価値観を認める環境を中心としたクリエイティブ・クラスが求めるものが揃っている都市のような地理的な条件が、かえって重要になってきている、と述べている。ヒースとポター(2005)もこれを引用し、クリエイティブ・クラスは同好の士が多数集まった「クール・コミュニティ」に住みたいと考える傾向にある、と述べている(注:ただしヒースとポターは、この傾向に従ってクールな地域とそうでない地域で格差は広がっていくため、資本主義を助長するばかりであるとしてこの傾向の行き過ぎを批判している)。つまり、クリエイティブ・クラスが集合する場所にクリエイティブ・クラスは集合するのである。

また別の観点から、情報社会学評論家の丸田一(2007)は、情報化による地域づくりを「地域情報化」と呼び、そこに都市計画の観点を当てはめ、Web空間を「人間生活の主要な場」の一つであるとみなしている。またアメリカの数学者デービッド・リードが提唱した「リードの法則」を引用し、ネットワークの参加人数が多いほど高い効果を発揮するのは「集団形成型」のネットワークであるため、集団形成を図りやすいインターネットを活用すべきである、と述べている。

こうした、現実のコミュニティの延長として、インターネットが「場」として機能するようになる、という議論は、1970年代前半にアメリカ・カリフォルニア州バークレーに設置されたCommunity Memoryを起源として、電子掲示板やSNSが台頭した2000年代、そしてfacebookが世界で約18億人(注:2016年10月時点)に使用されている現在に至るまで、あらゆる形で盛んに行われている。

しかし本研究では、先に述べたように、デジタルレジデントは現実のコミュニティとインターネット上のコミュニティを区別しない傾向にあることから、インターネット上のコミュニティを「現実(オフライン)のコミュニティの延長」として扱うのではなく、「現実のコミュニティと対等のもの」として扱う。

これらをもとに、本研究における目的を整理する。

まずフロリダとリフキンの論に則り、クリエイティブ・クラスが集合する条件を整え、そして協働型コモンズの形成を意識した上で、インターネット上にデジタルレジデントを中心としたクリエイティブ・コミュニティを形成することを目指す。特に今回は、特定の地域に関連してその場を機能させることを狙う。これは現実のコミュニティの延長としてのインターネット上の場ではなく、インターネット上から場を形成することにより、現実のコミュニティに影響を及ぼすことを意図するものである。

それによって、特定の地域に何らかの形で関わりを持ちたいと思っている人が、いま住んでいる地域に関係なく、自分が貢献したい地域に継続的に関わることができるようになる、と考える。そして将来的には、インターネットから始まったコミュニティが、その地域に従来なかった創造力(クリエイティビティ)=問題解決能力をもたらすようになり、その地域において「第三の柱」たりうる影響力を持つようになる、ということを最終的な目標としている。

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