2.2.1 地域コミュニティとメディア

オホーツク島
6 min readFeb 1, 2017

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2.2 コミュニティとメディアの事例

本項では、特定の地域に関するクリエイティブ・コミュニティをインターネット上に形成するにあたり、従来存在してきた地域コミュニティとメディア、インターネット上のコミュニティとメディアの関係を、それぞれ先行事例を中心に掘り下げる。

なお、本研究において「コミュニティ」とは「何らかの形で結束する・まとまりを持つ人々の集団」と定義し、「メディア」とは広義に「情報を伝達する媒体」と定義する。

2.2.1 地域コミュニティとメディア

ここでは「地域コミュニティ」について、総務省の定義をもとに「共通の生活地域(通学地域、勤務地域を含む)の集団によるコミュニティ」を指すものとする。

その定義に従えば、地域コミュニティとは基本的にその地域に住んでいる人を対象としていることになると考えられる。しかし近年は「二拠点居住」という言葉の流行にも見られるように、2つあるいはそれ以上の拠点を往来して生活を行うというライフスタイルも現れ始めており、必ずしもその地域「のみ」に拠点を置いて生活している人とは限らなくなってきている。

既存の地域コミュニティの形成や活性化に資するメディアとして、いわゆる「ローカルメディア」と呼ばれるものが挙げられる。編集者の影山裕樹(2016)は、ローカルメディアとは、フリーペーパー、雑誌、新聞、テレビなど、地域で発行されるさまざまな情報発信媒体としている。誰かが企画して地域コミュニティに馴染んでいったメディア、地域に新たなコミュニティを形成したメディア、地域コミュニティから必要があって立ち上ってきたメディアなど、形態は様々なものが考えられる。

社会学者の浅岡隆裕(2007)は、地域メディアの諸類系について、「地域」と「メディア」の類型に着目して表2のように整理している。

表2 現在(筆者注:2007年)の地域メディアの諸類型(出典:田村紀雄、白水繁彦『現代地域メディア論』日本評論社 2007)

最も一般的な地域メディアは、特定の地域住民を対象としたもので、フリーペーパーやウェブサイトなどが挙げられる。これらは表の左上に当たるものである。先行事例として特筆すべきものとしては、地域の主婦3人が企画したローカルなメディアでありながら、従来存在しなかった地域のくくり方、捉え方を提案し、ついにはその地域を指す一般的な用語として定着するまでに至った「谷中・根津・千駄木」(通称:「谷根千」)などが挙げられる。メディアを制作する一方で、住民同士で集まって「井戸端学校」という勉強会も開かれており、メディアとともに住民たちによる地域活動が根付き、地域コミュニティとメディアが相互に活性化した事例であると考えられる。

また拠点は対象としているローカルにはないにもかかわらず、ローカルなプレイヤーとタッグを組んでいるメディアもまた地域メディアとして捉えることができる。これは表の分類における左下部分、「機能的共通性に基づく社会的単位」における「コミュニケーション・メディア」であると考えられる。issue+designの「COMMUNITY TRAVEL GUIDE」や、NPO法人離島経済新聞社の「離島経済新聞」、NPO法人「日本で最も美しい村」連合の「『日本で最も美しい村』連合 機関紙」などがその例として挙げられる。もう少し広く捉えると「ソトコト」「colocal」「greenz」「ジモコロ」など、地方で暮らすライフスタイルに関するメディアもそれに近いものとして見ることができる。

「地理的範囲をともなった社会的単位」における「スペース・メディア」(表の右上)としては、地域の人々が集う場所として様々な形態が考えられる。公共施設の他に、個人が経営している喫茶店や飲食店、コワーキングスペースなども挙げられるだろう。地域の飲食店に足繁く通うことで地域のキーマンと交流が生まれ、それによって地域での活動が潤滑に行えるようになるという話を、筆者は特定の地域で活動する複数の人から聞いたことがある。

これらを踏まえて考えると、「機能的共通性に基づく社会性単位」としての地域に関わる「スペース・メディア」(表の右下)として機能するものとして、SNSのグループ機能などが挙げられるだろう。2007年にもそうした機能をもつSNSは存在していたが、現在国境を超えてリアルタイムに非常に多くの人が同じSNSに接続しており、グループの誰もが投稿を行い議論が発生する状態において、SNSはコミュニケーションからスペースの役割も持つようになったと言えるのではないだろうか。

しかしこれらの境目はどんどん曖昧になってきている。例えば地域のフリーペーパーにおいても、特定の地域の人に見てもらうために、TwitterやInstagramなど世界中のどこからでも閲覧可能なSNSサービスを利用したり、逆に地域の外の人に見てもらうためにあえて特定の地域にフォーカスしたり、情報伝達を行うためのコミュニケーション・メディア的な場でありながら、情報共有や議論を行うスペース・メディア的な場でもありうるなど、表のグリッドには収まらないものも多数生まれてきている。

また現在は各種SNSの普及などにより、こういったメディアの多くは個人レベルで制作されているものが増え続けていると見られる。筆者の北海道オホーツク海側地域における取材においても、ほぼ1人で制作しているもの、1人が企画し数名の仲間とともに制作をしているものなどが既に存在している。発信手段が非常に多岐に及び、いずれも簡易に高度な制作が行えるようになっている現代において、個人発信とメディア制作の垣根は非常に曖昧なものになりつつあるだろう。

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