5.2 post-truth時代を生きる

オホーツク島
4 min readFeb 5, 2017

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2017年1月時点での話題としては、日本国内においては、2016年末にDeNAのキュレーションメディア「WELQ」を始めとする、健康問題や最悪命にも関わる信憑性の低い情報の流布、それを管理するプラットフォームの倫理観の低さが大きな話題になった。また世界的には、主に2016年11月に実施されたアメリカ大統領選挙において、ウソの情報にも関わらず様々な人が問題意識を抱えているためSNSを通じてよく拡散されるニュース記事「フェイクニュース(fake news)」、およびそうした記事を量産するウェブサイトが大きな話題となり、政治的な正しさや客観的な事実(Political Collectness)よりも感情に訴えかけることが重視される風潮が「post-truth」として取り沙汰されるようになった。アメリカのウェブメディアであるBuzzFeed(2016)は、旧ユーゴスラヴィアのマケドニアで10代の若者が100以上のフェイクニュースサイトを立ち上げ、月に5,000ドル、多いときは1日に3,000ドルの広告収入を上げていたことを明らかにしている。ヒラリーよりもトランプを支持する記事がよくシェアされることに気づいたフェイクニュース運営者たちは、意図的にトランプを支持する記事を量産し、それが下馬評を大きく覆したトランプの当選に繋がったと見る動きもある。非常に広い意味で捉えれば、インターネット上のメディアによって形成されたある意味でのコミュニティが、結果として現実のコミュニティに影響を及ぼした例としても捉えられるだろう。

筆者に深く関係するところでは、2016年初頭、故郷である北海道遠軽町内の複数の駅が廃駅になる際に、そのうちのひとつである旧白滝駅の1人の定期利用者である女子高生が注目され、「1人の女子高生のために運用され、卒業とともに役目を終える駅」という美談として様々なキュレーションメディア(例1/例2/例3)で記事化され、「まるで宮崎駿映画のようだ」としてアメリカイギリスインドなど海外のメディアなどでも多数取り上げられた。しかし実際は、同時に閉鎖される上白滝駅、下白滝駅でも同様に利用中の高校生がおり、この女子高生の卒業を待って閉鎖されるという美談ではなく、単にJR北海道の財政事情が重なっただけである、ということをシンガポールサウジアラビアのニュースサイトが伝えている。

このように、主にウェブメディアが持つページビュー至上主義、またそれがもたらす悪い面が取り沙汰されてばかりであるが、それでも筆者は、メディア、特にウェブメディアが持つ良い力を信じたいと考えている。ごくローカルな動きではあるが、4.1の事後調査でも見られたように、こうしたメディアがあることによって、地域にこれまでになかった動きが生まれ、促進されつつあることは確実であり、複数人から継続的な活動が期待されている。ここで政治的な正しさや客観的な事実に寄ったことばかりを発信するのでなく、できる限り親しみやすい形でアプローチを重ね、ときには説教くさくない形で本当に考えるべきことを提示する。そうしたことは、筆者も含めたメディアの発信者たちが、時にコンプレックスを抱きがちな「何者でもない感覚」を持ち合わせるからこそできることだ、と筆者は考えている。

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