ソフトウェアエンジニアのUSビザ

ソフトウェアエンジニアによる、ソフトウェアエンジニアのための、アメリカ就労ビザガイド

アメリカ就職に失敗したはなし」で盛り上がっているアメリカ就労ビザ話。学歴がないとダメとか、修士以上がイイとか、いろんな意見が出てますが、ここらではっきりさせときます。

Demystifying U.S. Visa!

H-1B

まずは、アメリカ就労ビザの花形「H-1Bビザ」。

ざっくり言うと以下のとおり。

  • 企業にスポンサーになってもらう必要がある
  • 条件がある
  • 毎年4月から申請開始、10月から働ける
  • 申請者が多すぎるので抽選になる
  • 転職できる

H-1Bの条件

ソフトウェアエンジニアとしてH-1Bを申請してもらいましょう。条件を満たしているかどうか、次のフローチャートで確認できます。

見てのとおり、学歴は必須条件ではありません。

実際には、移民弁護士と膝を突き合わせて、成績表を眺めながら、コンピュータ・サイエンスの単位として使えるものをピックアップしていく作業が必要ですが、大雑把な傾向としては次のとおり。

  • 四年制大学をコンピュータ・サイエンス学科で卒業している → 条件クリア
  • 日本の四年制大学を卒業している → 職歴6年で条件クリア
  • 学歴がない → 職歴12年で条件クリア

ここでいう「職歴」とは、ソフトウェアエンジニアとしての「職歴」です。他の職業では、コンピュータ・サイエンスの単位として換算することはできません(似ている職業であれば、移民弁護士の腕次第でどうにかなる場合があります)。

ところで、なぜコンピュータ・サイエンスの単位が必要なのでしょうか? それは、ソフトウェアエンジニアという職業には、コンピュータ・サイエンスのBachelor’s degreeが必要、と運用ルールで決まっているからです。H-1Bビザは、Bachelor’s degreeが必要になるくらい特殊技能が必要な職業のための就労ビザですから。

ソフトウェアエンジニア職歴3年=コンピュータ・サイエンス学歴1年。これも共通ルールとして換算できるように運用されています。

なお、「アメリカで」コンピュータ・サイエンスのMasterを取っていれば、H-1B advanced degree exemptionにより「抽選が有利」になり、STEM extensionにより「3年間OPT」で働けます。

「アメリカで」と強調したように、日本の大学院で修士をとっても、H-1Bビザ的には何ら変化ありません。

(12/20追記: OPT自体はアメリカのBachelor’s degreeでもあるはずですが、advanced degree exemptionがないはずです)

H-1Bのスケジュール

H-1Bビザは、申請できる時期と、承認後働ける時期が決まっています。毎年、4月から申請開始、10月から労働開始。ただし申請数があまりにも多すぎるため、最近の運用としては、申請を受け付ける期間は1週間だけです。

このスケジュールにより、何が起こりえるかというと、就職活動が1ヶ月遅れただけで、入社が1年ずれます。

オファーから7ヶ月で入社するパターン

  • 2018年3月にオファー
  • 2018年4月にH-1B申請
  • 2018年10月に入社

オファーから1年6ヶ月で入社するパターン

  • 2018年4月にオファー
  • 2019年4月にH-1B申請 (2018年4月のH-1B申請終了済みなので翌年)
  • 2019年10月に入社

つまり、4月のH-1B申請が間に合うように、就職活動を本格化させるのがオススメ、ということになります(H-1Bビザは、企業にスポンサーになってもらう必要があるため、企業からオファーをもらう必要があります)。

H-1Bの抽選

先述どおり、申請数があまりにも多すぎるため、最近の運用としては、申請を受け付ける期間は1週間で、かつ、受理される申請は抽選で決まります。2017年4月のH-1B申請数は、199,000です。

うち承認されるH-1B申請は、65,000です。

33%の当選率です。

この確率を上げる方法は1つしかありません。アメリカでコンピュータ・サイエンスのMaster以上を取ることです。アメリカでMaster以上を取ることで、master’s advanced degree cap exemptionにより、当選確率が上がります。どのくらい上がるかは公表されてないので不明ですが、概算で12ポイント上昇くらいでしょうか(199,000中advanced degreeが150,000いると仮定した場合)。

(20000 / 150000) + (1–20000 / 150000) * (65000 / (199000–20000)) = 45%

アメリカでコンピュータ・サイエンスのMaster以上を取ることは、H-1Bビザ当選確率を上げる以外にも、とてもとてもお得なことがあります。STEM OPT extensionです。F-1学生ビザのためのoptional practical trainingで、かつコンピュータ・サイエンスはSTEM分野なので、F-1ビザを持つ学生は卒業後3年間アメリカで働けるのです。OPTを使って3年間アメリカで働きながら、H-1Bビザを申請し続けてもらうのです。45%の当選確率を3回繰り返すわけですから、ほぼ確実といえます。

「アメリカでコンピュータ・サイエンスのMasterを取る」ことが、いかに重要なことか、わかっていただけたでしょうか。

ただし、学費(数百万円)と時間(Masterコース通常2年間)が必要です。

H-1Bの転職

一旦H-1Bビザが承認されれば、あなたは自由です。他の会社に転職できます。ここでいう「転職」は職業はソフトウェアエンジニアのまま、他の会社に入社することです。ただ完全に自由ではなく、決められた最低賃金をこえたオファーをもらう必要があったり、地域が限られたり、多少制限もあります。いずれにせよ、レイオフされても他の会社からオファーをもらえば帰国する必要はないってことです。

O-1A

日本でコンピュータ・サイエンスの修士/博士を持ってる場合、O-1Aビザを検討しましょう。詳しくは https://www.jinmei.org/blog/2008/10/19/474

あえてH-1Bフローに混ぜると、以下のようになります。

L-1BとE-2

H-1Bビザの抽選は嫌だし、アメリカの大学院に行ける自信 or お金 or 時間がない。Extraordinaryな実績もない。大丈夫。その場合、自由度を犠牲にして、L-1BビザとE-2ビザを狙います。細かい条件がありますが、大雑把に書くと以下のとおりです。

L-1B

  • その会社のアメリカ国外オフィスで1年間以上働いていることが条件
  • 転職できない

E-2

  • その会社の重要人物、もしくは特殊技能の持ち主であることが条件
  • 転職できなくもない

どの程度の特殊技能が必要なのか、それは、その会社によりますし、移民弁護士の腕に大きく依存します。

L-1Bビザのわかりやすい例は、Google JapanもしくはAmazon Japanに入社する。1年間日本オフィスでソフトウェアエンジニアとして働き、L-1Bビザを申請。承認後渡米し、アメリカ本社に転籍。アメリカオフィスでソフトウェアエンジニアとして労働開始。

E-2ビザのわかりやすい例は、日本のスタートアップに入社し、E-2ビザ申請。アメリカ業務拡大に乗じて渡米。アメリカオフィスでソフトウェアエンジニアとして労働開始。

L-1Bビザの場合、レイオフされるとどうにもなりません。学生になってF-1ビザを申請する、Bビザでしのぐ、などもあるようですが、基本的にアメリカから退去するしかありません。

E-2ビザの場合、レイオフされても、他の日本企業にE-2ビザをtransferすることで国外退去を避ける方法があります。

結論

May the Force be with you! ( → 続編 )