2016 年の WordPress

Shinichi Nishikawa
13 min readJan 12, 2016

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以下は、Human MadeNoel Tock さんによるブログ記事 WordPress in 2016 を許可を得て、随時質問をしながら翻訳したものです。

Noel Tock

一年前、2015年の WordPress という記事を公開しました。振り返ってみて、実現されるスピードはさまざまでありながらも、そこで書いた予言の大部分が、正確であったことを嬉しく思います。ここで読むことができます

2015年は、WordPress とそのエコシステムにとって、またしても大きな年となりました。世界中のすべてのウェブサイトのうち、WordPress が使われているサイトの割合が 25% を超え、WordPress 自体にもレスポンシブイメージREST API の導入が成されました。周辺のエコシステムも力強く成長し、たとえば Automattic による WooCommerce の買収、30万ドルくらいであったと言われていますが、こうした出来事を私たちは目撃しました。WordPress.org 上にある4万以上のプラグインは10億回以上ダウンロードされる結果となり、ピークを迎えたとさえ言えるほどです。WordPress の勢いに疑問の余地はありません。

では、次は? 2016年にエネルギーを集中させるべきことは何かということについて書いていきます。コメントやフィードバックやさらなる予測を歓迎します。

Javascript のスピードはそんなに速くない

“Learn Javascript, deeply.”

これは、Matt Mallenweg が WordCamp US で行った基調講演 State of the Word で発言してから、みんなが口にするようになった言葉です。とてもよいアドバイスではあります。ただし、Javascript の世界は広大であり、正しい入り口を見つける必要があります。Human Made では、REST APIReact のような Javascript のフロントエンドフレームワークのペアこそが多くのウェブサイトと Progressive Web Apps (プログレッシブ・エンハンスメントを前提にした、モダンブラウザで動くウェブアプリ )の未来であると考えています。

ただ一方で、こうした作り方は比較的小さなサイトやサービスにとってはまだ適しておらず、そして大部分の WordPress がこうした中小規模のサイトであるのです。例として、 A Day of REST のウェブサイトを見てみましょう。この冬、私たちはこのサイトを REST API/React を利用して作りオープンソース化しました

(訳者注: A Day of REST は REST API に特化した WordPress のイベントであり、その主催は Human Made。)

よくあるサイトのようでありながら、慣れ親しんだやり方とは異なっているため、日々の開発時に行われた会話はいつもとは様子が違っていました。

Ryan McCue: リファラの統計が取れてないと思う。
Petya: うん。Noel も facebook のキャンペーンコードの追加を頼んでたけど優先順位が高いものがもっとあるからね。
feelingrestful テーマっていうのは、普通のWordPressサイトだったら私や Siobhan にできてるはずの簡単なこと、たとえばコンバージョンタグのこととかが、そんなに簡単にできるわけじゃないってことね。
Ryacn McCue: REST API の未来へようこそ(๑´ڡ`๑)てへぺろ

(訳者注: Ryan McCue は REST API のリードデベロッパーの一人で Human Made の一員。Petya、Siobhan はコミュニティーリーダーであり、ここではサイトの更新もするスタッフとして理解してください)

冗談は置いておきつつも、REST API を使ってテーマの制作することと、現状でみなさんが WordPress を利用している方法との間には、大きな隔たりがあります。たとえば Yoast SEO プラグインをインストールしたとしても、OGPタグやメタタグは何も出力されません。追加の作業が必要になるのです。これでは、フリーランサーや、中規模のウェブサイトを提供する会社にとって、持続可能性がありません。

だからといって、Javascript を学び始めることを避けるべきではありません。React は純粋にビジュアルレイヤーのためもので(かつ、Backbone や Angular ほど完全でもない)、REST API と一緒に使いはじめるものとして、よいスタート地点となるでしょう。React にはイライラすることもありますが、試すべき教材もたくさんありますし、大枠を理解するためのリソースもあります。

こうした前提のうえで、今、Javascript は非常に重要です。REST API を使わないとしても、実用可能な知識は必須です。ウェブサイトはもはや静的なものではなく、生きて動くカンバスなのです。ユーザーの動きによってウェブサイトの状況が大きく変わるときでも、フローが途切れることはありません。ユーザーはウェブサイトに繊細な反応を期待していますし、その動き方は、ただユーザーを指定の場所に導くだけではなく、何が起こっているのかを理解できるような形であるべきです。( slideToggle とかそういうことを言っているのではありませんよ)。vanilla Javascript や jQuery で、ときに Veclocity.js のようなライブラリと組み合わされて実装される Microinteractions はこれまで以上に重要性を増しているのです。

さらなる指針が必要であれば、Zac Gordon の JavaScript WP Master Course や Remkus による Learning JavaScript in WordPress, Deeply へ進みましょう。Human Made について言えば、REST API を利用して複数のプロジェクト、たとえば、 NomadbaseFrontKit for WordPress、P2 の代替となる新プロダクトなどに取り組んでいます。

WordPress ”組み立て工”の減少

2012年に、WP Candy (訳者注: 以前人気のあったWP関連メディア)のために Happytables についての記事を寄稿したのですが、その中で web assembler (ウェブサイトを組み立てる人)が増加するだろうと書きました。これは、仕事、あるいは趣味として、サーバーのパッケージと有料テーマ、それにプラグインを組み合わせ、ウェブデザインと称して販売することを指します。過去にも言った通り、もちろんこれは悪いことではなく、必要なことです。あらゆる価格帯でこうしたものを提供するサービスプロバイダーが必要とされるのです。

その当時、同じような形で、デジタルカメラの登場によって写真の業界に衝撃が起きていました。アマチュアが一夜にして”プロ”になり、価格破壊を起こし、それまで活動してきた写真家たちを苛立たせていました。結果、それは世界にとってよかったことであり、そして、これと同様のことがウェブデザインの世界にも起こったのです(ところで、デジタルカメラを使う写真家の方々は、今度はスマホのカメラが気に入らないようです)。

ところが業界が発展していくにつれて、クライアントは、web assembler のもとから、2つの極へと離れていきました。

ひとつめは、Squarespace、Wix、Shopfy などのウェブサイトビルダーと呼ばれる、よりよいソリューションへと。これらのサービスは現在かなり成熟しています。レストラン用のウェブサイトビルダーである Happytables (訳者注: Happytables は彼ら Human Made のプロダクト)との競合性が増していっていることには、私たちももちろん気がついていました。ウェブサイトビルダーは、そのUX、機能、価格が一体となり、ユーザーが必要とするものをすぐに作ることができる楽しいプラットフォームになっていったのです。

クライアントが向かうもう一極は、プロセスと価格競争力の改善を行い、持続可能なビジネスを展開できるように成長したフリーランサーと制作会社です。技術的なレベルも上がっており、その技術の成長は、安くて使い捨てのウェブサイトをボンボン作るようなスタイルではなく、継続的な支援契約を実現できる方向への成長でした。つまるところ、ウェブサイトとは一度作ってリリースして終わりになるものではないのです。おおまかな下書きを書き上げたのにすぎず、本当の成功へ向けて行われる改善は、サイトのローンチの日からスタートするのです。

レンタルサーバーや有料テーマ、プラグインを組み合わせてウェブデザインと称するようなやり方は、この業界が成長していく時期には価値のあるものでしたが、そろそろこの(組み立てるだけの)ゲームも終わるべき時期に来ており、消滅のリスクのただなかにあります。これは、なんらかの証拠があるわけではなく、この10年間の私の観察に基づくものです。

ページのパターン

WordPress がいまだに内包しているものに、sidebar.php という興味深いテンプレートがあります。このファイルは、受け取り手に2つの間違った思い込みを抱かせています。1) このようなファイルが必要だという思い込み、2) サイドバー的なものがビジュアル上必要なんだという誤解。私が使っている Underscores というスターターテーマにさえもこのファイルがあります。これは古いアプローチです。

ここ数年、ひとつの完璧なページをデザインするのではなくて、モジュラー化していくというアプローチへのシフトを、私たちは見てきました。スターバックスはスタイルガイドを一般化させ、Bootstrap がリリースされ、Atomic Design にまでたどり着きました。すべて、コンポーネントの考え方へ向かっています(自身のプロジェクトで Polymer を導入したことはまだないのですが)。私たちが使っているツールも、モジュールのアプローチへと大きく動いています(SCSS のベストプラクティスにせよ、React のコンポーネントにしても)。私たちがすべきことは、このマインドセットを WordPress のエコシステムにも、もっと広げていくということです。

コミュニティーの中央集権化

2015年は、WordCamp Europe の成功にインスピレーションを受けた WordCamp US が初めて開催された年でした。こうした WordCamp 中の WordCamp の開催、それにともなって新しく設けられようとしているWordCamp 専用の法的な主体、Meetup.com に開設された統合アカウント、これらは WordPress ファウンデーションの周辺にあるコミュニティーの中央集権化を大きく推進させるものです(これは昨年、正しく予言ができませんでした)。

個人的な意見ですが、誰にでもアクセスできて、オープンソースのマインドを持つイベントが行われること、そのマインドを共有する人間やコミュニティが大事な “big idea” であり、WordPress はそれを媒介するものであると感じています。従って、理想を言うのであれば、meetup.com のグループのような細かいところまで、ファウンデーションが所有権を持ち、関わりを深めていくことを支持しません。もちろん、その動機について理解はするものの。

大規模な WordCamp の開催も加速していくことでしょう。2016年、WCUSWCEU のいずれにおいても、参加者が2000人を超え、前年の参加者数を大きく上回ることが予想できます。それは、2017年、2018年のさらなる成長の土台となり、来たる WordCamp Africa や WordCamp Asia といった次の大陸規模の WordCamp 開催へのドアを開いていくことになります。地球規模の WordCamp の開催は、5年規模の時間がかかることだと思います。こうした 「WordCamp の中の WordCamp」 について私が興奮を覚えるのは、こうしたイベントが、開発、デザイン、ビジネスといった分野からの、エコシステムの多様なインフルエンサーが集う場になっているということです。こうした WordCamp から生まれる次の、WordPress に立脚した新しいアイディアやスタートアップはどんなものになるのでしょうか?(これまでに、たしかに、数えきれないほど起こってきたことです)

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ここで触れなかった重要な事はまだたくさんあるでしょう。シンプルに、今私の頭のなかにあるものについて書きました。あなたの考えを聞かせてください。

この来たる年に期待をしています。私たちが作ることになるすべてのもの、大きなコミュニティーイベントとそこで出会う、顔も知らないすべての人たち。WordPress にとって偉大な年となる今年、そこに参加しているすべての人々。すべてのみなさんにとって良き年になるように願います。

ここまで読んでいただいたみなさんに、A Day of REST の 50% OFF のためのクーポンコード( restatease )を差し上げます。残りは5つ。ゲットしてください。

写真は、WordCamp US と WordCamp Tokyo で撮影されました。

翻訳者: 西川伸一

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