LAPRAS CTOを交代します

showwin (Shogo Ito)
9 min readOct 1, 2020

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2020年10月1日よりCTOを辞任して、@rocky (興梠 敬典) にCTOを交代こととなりました。社内的には9月から役割交代をしていて、すでに新体制でゴリゴリ進捗を出していただいています。

このような記事は長くなりがりなので、最初に要点をまとめておきます。お時間がある方は最後までお付き合いください。

概要

私は創業2ヶ月後の2016年11月に創業メンバーとして入社しました。入社当時は社名がLAPRASではなくて、scoutyでした。19年4月に社名変更しています。 私が1人目のエンジニアであったこともあり、2018年7月からCTOを任せられ、約2年強の間やってきたことになります。当時は社員が19名でしたが、今は27人となりうちエンジニアが9人。売上の多くを占めるエンジニアの採用サービスである LAPRAS SCOUT の利用社数もその間に2.5倍になっています。

数字だけを見ると、この間に社員数は10人も増えていないのですが、最近は30人の壁を感じることもあり、きちんとマネジメントをして組織のアラインメントを強めていくことの重要さを感じる場面も多くなってきました。

そのような状況で、これから会社をより一層成長させていくことを考えたときに、自分のマネジメント能力でチーム・組織を引っ張って行くことが会社にとって最適解なのか不安がありました。社内には前職でCTOを経験されている rocky もおり、普段からマネジメントをそつなくこなす姿を見ていたので、彼にCTOを任せたほうがより会社の成長を早められると判断し、最終的にお願いすることとなりました。

何ヶ月も前から相談していた訳ではなく、8月上旬に突然相談して驚かせてしまった部分もあったのですが、9月からの1ヶ月の活躍ぶりからもお任せして良かったなと感じています。

私自身scoutyに入ると決めたときに、scoutyではマネジメントの勉強・経験をして、次のキャリアではもう一度技術者に戻って技術の勉強をしようと考えていました。というのはscouty入社時点で、受託開発の会社で1.5年働いた経験のみで、そのままマネージャー職を続けるには技術的な基礎能力が足りないと思っていたからです。今回CTOを辞任して、今後SREポジションを担当するのですが、もともと考えていた ”次のキャリア” を社内のポジション移動により実現でき、引き続き自分の好きな会社で新しいチャレンジができることを幸せに思っています。

次の2,3年はSREとして成長していきますが、LAPRASの事業の特性的にインフラに高負荷がかかるようなサービスではないので、サービスのエラーレートを下げたりレスポンスの高速化を図ること、高い可用性を保つことでユーザから信頼されるサービスを提供したいと考えています。

LAPRAS SCOUT を使ってエンジニア採用をしているCTOやエンジニアマネージャー、採用担当の方、また LAPRAS を使ってポートフォリオを作って楽しんでくれているエンジニアの方、引き続き自分の身近にいる方たちに満足して使ってもらえるサービスを提供していきたいと思っているのでよろしくお願いします。

サービスの信頼性に不満がある場合には @showwin まで怒りの声をお届けください!

やってきたことの振り返り

ここからもう少し詳細に書いていきます。

  • エンジニア採用
  • 開発プロセスと役割分担
  • マネジメント

の3つについて。

まず、エンジニア採用についてです。ここは自分の得意分野だなと気付けたところであり、一番うまくできたところです。採用活動をフルタイムでやっていたころの記録は6週間に渡って毎週記事を書いていたので、詳細は LAPRAS CTOが採用担当になる のシリーズをご覧ください。

今回CTOを交代してお願いすることができたのも、社内に自分よりも圧倒的に優秀な方がいてくれたおかげであり、rocky が来てくれたのも社内にすでに優秀なエンジニアが多くいたからです。創業当時から代表の島田は自分よりも優秀な人しか採用しないと言っていましたが、そのポリシーを守り続けること、そしてそれを実現するために選考中にきちんとスキルを見極めるプロセスをコストをかけてでも整えてきたことが鍵だったと思います。

私自身scouty入社前に転職活動をしていたのですが、その時に転職者として感じた選考中の不満が多くあり、LAPRASの選考プロセスではその不満をすべて潰した最高のものにしてやる!という思いで設計した部分もプラスに働いている部分が多くあると思います。これについては LAPRAS CTOが考える 採用効率化Tips 5選 のスライドでいくつかの要素を紹介しています。

次に開発プロセスと役割分担についてです。

開発プロセスはエンジニアが3人になった2017年12月頃から現在までスクラムでの開発を続けています。スクラム未経験の状態から勉強を始め、@kajinari さんにも何度か相談に乗ってもらい、開始半年ぐらいで満足がいく開発プロセスを確立できました。(参考: 洗練されていくscoutyのスクラム開発)

2018年夏頃からはホラクラシーというティールな組織体系を取り入れたのですが、ホラクラシーは誰がなにを担当するか役割分担を明らかにし、タスクの優先順位も個々人が決めるという思想を持ったものであり、スクラムの思想とは相反する部分があります。運用1年後に Holacracy と Scrum は共存できるのか という記事を書いていますが、これは未だに自分の中でベストな解答が出ていません。

今思うと、2019年夏時点で1年運用してモヤモヤしている状態だったのであれば、そこでスクラムを一度やめて、カンバン+ホラクラシーでチャレンジしてみる等やり方を変えてみるべきでした。そこで変えられていれば今日までの1年間でまた新たな知見を得られていますからね。。

ホラクラシー+スクラムでも大きく困ることなく開発を進められている状態ですが、そこに甘んじることなくより良い開発プロセスを見つけに行く動きをするべきだったなと今振り返って思います。

次にマネジメントについてです。

エンジニアメンバーは全員私よりも経験豊富で年齢も私より上なため、私が何かを教えるようなティーチングのスタイルよりも、一緒に答えを見つけていくようなコーチングスタイルのマネジメントをするように心がけていました。

私自身技術を使ってものづくりをすることが好きな人間なので、最初はマネジメントは向いておらず、長く続かないのではないかと不安に思う部分もあったのですが、いざやってみると楽しい部分も多くありました。1on1を通じて、メンバーが直面している困難の解法を一緒に考えたり、エンジニアとしてのキャリアを一緒に考えたり、自分が壁打ちすることで何かを掴み先に進んでいくメンバーの様子が見れるのは嬉しい瞬間でした。

一方で独学でコーチングをかじっただけなので、自分自身でもうまくできていないと感じることも多々あり、次回またマネージャーになる際には資格を取りに行くぐらいまで勉強をしてみたいです。

また、対メンバーの個別マネジメントではなく、CTOとして開発組織をどのような組織にしていきたいのか、それをどう経営を結びつけるのかという点は自分の力不足でうまく貢献できませんでした。EMレベルの動きはできるけど、CTOとしては…という部分もあったように思います。

うまくできたこと、できなかったことを列挙してきましたが、これから会社が成長しより大きなエンジニア組織になっていくと、自分が苦手として挙げた部分がより重要になってきます。

苦手な部分を克服して私がCTOを続行する選択肢もありましたが、自分の現時点での興味がそちらよりも技術の方に向いていたこともあり、CTOを交代いただくことにしました。

これからなにやるの

高々2年程度ですが、少しマネジメントをかじってみて、今は3~5人ぐらいの1チームを見るマネージャーのポジションが向いていそうだなと感じており、しばらくはそのポジションに必要なスキルを身につけることに時間を割きたいと思っています。このポジションは自分もある程度手を動かしながらメンバーのマネジメントもしていく立ち位置で、技術力とマネジメント力の両方が問われます。

レイヤーとしてはインフラからバックエンドの開発が好きなので、k8sやDDDなど次の10年でデファクトになっていき、かつアーキテクトとしてチームにレバレッジをかけながら貢献できる分野の知識を習得していくつもりです。

社内では Service Reliability サークル のLead Link(SREチームのリーダー的なポジション)にアサインされているので、しばらくはインフラの面倒をみながらサービスの信頼性を高めていくことを担当します。直近はサービスの信頼性を高めることよりも、新規機能開発の方が優先度が高く、半分ぐらいはソフトウェアエンジニアをやる事になりそうですが、SREに専念できるようになったらエラーレートやレスポンスタイムのサマリをサービスのステータスページで公開したりと、品質も定量的な形でユーザの皆さんにお見せしたいと考えています。(LAPRASには「オープンであれ」「推測より計測」というアクションアジェンダがありますからね!)

LAPRASのアクションアジェンダ

上で言ったような、ビジネス的なKPIにクリティカルには効かないけれども、ユーザやエンジニア視点で面白そうな良いことやってるね!と思われることもやっていきたく、それがブランディングに繋がって良いエンジニアが集まってくれるようになると信じています。

冒頭でも書きましたが、同じ会社にいながら新しいチャレンジができることは幸運なことです。一度上のポジションになると、役職が下がるような異動は心理的ハードルが高くなりがちですが、ホラクラシーがそのハードルを下げてくれた部分もあります。(マネジメントする/される関係はあれど、各々が自分の得意分野をもってそこで裁量をもって活躍するような組織体系です)

私は社会人経験1.5年でのscoutyジョインでしたが、学生起業や私のような経験が浅い若手の起業の場合には、会社のフェーズに合わせてより経験豊富な方に経営ポジションを変わってもらう事は、会社を成長させる上で有効な選択肢の1つなのではと感じます。

また今回のCTO経験を通じて、創業から上場まで、またそれ以降も継続して経営に携わられている方々は改めてすごいな…と感じました。

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showwin (Shogo Ito)

oVice, Inc. Lead SRE / 仕事に関する話はMediumに書いていく