70社弱の出資先の振り返りの結果見えてきた伸びるスタートアップの共通点

Shuhei Matsubara
8 min readOct 5, 2017

コロプラネクストでは計70社弱の出資先をサポートさせていただいている。シード期に投資をするファンド、VRに特化した投資をするファンド、そして対象を限定せずに投資をするファンドを持つCVCとして、創業初期の会社からミドル/レイターの会社まで、広くモニタリングさせていただいている。その70社弱の支援先を2日間かけて、一気に分析/共有し、そこから見えてくる「伸びているスタートアップの共通点」を抽出してみたのである。

見ていったポイントは下記の三点

・投資前の前提
・現状(前提とのポジティブ/ネガティブなずれ)
・そこから得られる教訓

1社5〜10分、計10時間程度かけて振り返りを行った結果見えてきたポイントは非常に示唆に富むものだった。
「起業家の特徴」「事業/戦略の特徴」、そして番外編として「投資家として得られた教訓」について以下にそのポイントを列挙していく。

起業家の特徴

①起業家が野心的かつ謙虚である。

伸びているスタートアップの起業家は等しく野心的である。野心的であるがゆえに、自分たちの追求するゴールの達成に向けて一直線に進んでいるし、かつ、そのスピードが著しく早い。
その一方で非常に謙虚で素直。誰に対しても分け隔てなく接し、かつ、多方面からのアドバイスへの感度が高い。
この「野心」と「謙虚」という、ある種両極端とも言える特徴を兼ね備えている起業家の会社の伸びは著しい。

②今及び数年後の市場の需給をしっかりと理解している

目指している市場の「今」と「数年後」について、しっかりと仮説を持っており、かつ、その仮設の中でどのポジションを取るべきかを冷静に見極めている。「人々のニーズ」だけでなく、「供給者」の理屈まで目を配り、そのバランスの中にチャンスを見出している。今時点での自分たちの「あるべきポジション」と、数年後時点での「あるべきポジション」についてしっかりとした仮説を持っているとも言える。

③自分及び自分の非常に近い人が欲しているものを提供している

これはあらゆるところで言われている話でもあるが、その事業を始めたきっかけの深い部分に「自身のニーズ」があるスタートアップは成長が早い。「自分しか知らない」もしくは「自分だからこそ気づけた」ような事業の種はやっぱり同様の課題を抱える顧客への刺さり方が深い。一方で、これは後の項目でも述べるが、そこに経営者としての目線をどれだけ盛り込めるかがポイントにもなる。

④腹をくくっている

投資家サイドが偉そうに言うのもはばかられるが、やっぱりうまくいっているスタートアップは腹をくくっている。覚悟が違う。①の野心の部分とも共通するが、腹をくくって勝負している起業家は強い。

⑤経歴、バックグラウンド、年齢、学歴は絶対条件ではない

その人の過去は、会社の伸びにそこまで大きく関係しない。それよりも上記4ポイントのほうが重要である。でも数字への感度は高い方がいい。

事業/戦略の特徴

⑥資産を地道に積み上げた会社は強い

いかに地道に自社の資産を積み上げていくか。こつこつストックを積み上げている会社は強い。何がその会社にとっての資産で、その資産の積み重ねがどういった優位性につながっていくのか、ここの定義は重要である。逆にフローへの投資は再現性がどうしても弱い。「スケールしないことをしよう」はまさにその通りで、伸びているスタートアップは、結果としてこつこつと資産を積み上げてきた会社。潜る時期を経て資産を積み重ねてきた会社は強い。

⑦「技術が強みの会社」こそ戦略が大事

「技術が強み」の会社はそれ自体が非常に魅力的。一方で、その後の戦略に目が行かなくなりがちである。特許取得を含めた技術優位性を高めることに注力する一方で、いかにスピード感を持って「事業として」伸ばしていくか。「技術が強みの会社」こそ「戦略」が大事ということも、当たり前だが重要な真実。

⑧人員計画(キャッシュフロー計画)は大事

「どうお金をマネジメントしていくか」は非常に大事。特に創業初期の投資で多くを占めるのが人件費。人員計画が怠惰な会社は、財務面でも事業面でも苦労しているし、会社が安定しない。特に初期に関しては「最小限の”最適な”人を、必要なポジションに充足している」会社がやっぱりうまくいっている。一方で無鉄砲な採用が成功した事例は見られなかったので、やっぱり人員計画は大事。

⑨リーンスタートアップである

仮説検証を回すスピードが早く、その結果得られた知見に対して素直な会社は強い。結果と数字に素直なことはやっぱり強い。伸びているスタートアップは等しく仮説検証を”回しまくっている”。

⑩経営ができるチームである

上述の「起業家の特徴」では、野心的かつ謙虚、そして「自分が必要とする」ものを提供する起業家が強いと述べたが、それだけではやっぱりキツい。チームに経営者がいることが重要だし、あくまで「経営」という目線を持って事業を運営することが必要である。もちろん社長自身がそうである必要が必ずしもあるわけではない。経営できるチームであることが重要なのである。

列挙していったらポイントが10個にもなってしまったが、本当に重要な真実である。コロプラネクストのポートフォリオには多領域、多分野、多ラウンドの会社が並ぶが、うまくいっているポイントを抽象化してみるとフェーズにかかわらず意外と共通点が多い。

「野心的かつ謙虚に」、「自分がやる理由のある」事業に「腹をくくって」取り組む。今と数年先の未来の市場を正確に理解し、戦略的にコツコツと資産を積み上げていく。

ここに運の要素が加わることで、「伸びるスタートアップ」が確立されていくのでしょう。

結果論、および後づけなのでは?という懸念もあるものの、結果として上記のような要素が見えてくるという事実には謙虚に向き合うべき。

歴の浅いVCの強みは成功事例に縛られないことであり、常に教訓をアップデートできるところ。ここの磨き上げと、変化への気づきを大事にすることで、「出資先数が多い」という強みを存分に活かしていきたいところ。

ちなみに、投資家としての教訓も多々見えてきたのが今回の収穫。ブログに書くべきではない内容も多々あるため、ここには2つだけポイントを記述するが、定期的な振り返りは本当に大事。

(番外編)投資家として得られた教訓

⑪「受け身」の投資は良くない。腹落ちした状態でなければ投資はしない。

「◯◯がいいと言っていたから」、「◯◯も投資するから」といった理由で投資してはいけない。「投資する理由」を探しに行くような投資はやっぱりやるべきではない。腹をくくっていないし、覚悟なき投資は双方にとってよくない。投資するための投資はしない。

⑫「戦略投資」は現場をしっかりと巻き込んだ上で実施

コロプラネクストはCVCである。その為、当然戦略的つながりを見込んだ投資も検討に上がる。一方で、戦略的つながりを実行するのは当事者たる現場同士。現場を本格的に巻き込むことをせずに戦略投資を実行してもやっぱりうまくいかない。現場ヒアリング時の「よさそうだね、おもしろそうだね」レベルを鵜呑みにすることなく、その一歩先、二歩先まで踏み込む必要がある。シナジー投資がうまくいっている事例は等しくそれができていたもの。これはスタートアップ側も、CVC側も等しく気をつけるべき重要な真実である。

ここにコロプラネクストとしての振り返りと教訓を列挙したが、この学びは常にアップデートされるべきものだし、機会があれば他のVCさんともディスカッションしてみたいところ。(というか他のVCさんからも学ばせていただきたいところ)。

先週書いた「シリーズAに到達するスタートアップの特徴」というブログもだいぶ多くの方に読んでいただけているので、ご興味のある方はこちらも是非!

以上。

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Shuhei Matsubara

新卒ではキーエンスで中部地区の自動車メーカー攻略に従事し、その後、コロプラネクスト社でVC業務を経験。2018年6月にA1A株式会社を創業いたしました。