フローレンスという保育・子育て支援のNPOを退職しました
この3月で、フローレンスという保育・子育て支援のNPOを退職しました。
僕は元々、マナボという教育系のスタートアップを経営していました。
そこを1年前に退職し、フルタイムの社会人インターン(業務委託)としてフローレンスに入社。予定通り1年間での卒業です。
そしてこれから、保育×ITのスタートアップを新しく始めます。
この記事は下記のような構成になっています。
- 取り組んだ主な業務4つ
- この1年で得られた主な収穫4つ
- これからどんな事業をやるのか
- ユーザーインタビュー協力者を募集中
- 受託案件を募集中
取り組んだ主な業務4つ
こども宅食プロジェクト (2017/4–12)
学ぶための社会人インターンとはいえ、最初から「教えてください!」を前面に出して働くというのは気持ち悪いもの。
そこでまずは経験を活かして貢献せねばと、新規事業の立ち上げにも携わってきました。それが「こども宅食」です。
現在、日本の子どもの7人に1人、ひとり親家庭では2人に1人が貧困状態(母子世帯なら年収173万円未満の水準)にあります。
こうした子どもたちは様々な機会が制限されてしまいます。それによる社会的な損失は42兆円にも上るという試算も。
官民6団体が共同運営するこども宅食は、食品支援を切り口に、彼らのためのセーフティネット構築を目指し始まりました。
活動の原資はふるさと納税を使ったクラウドファンディングで調達。返礼品がないので、純粋な寄付と言って良いでしょう。
フローレンスは全体推進・寄付獲得・支援体制の構築を担当。廣田は寄付獲得の責任者を務めました。
そしてありがたいことに、担当した2017/7/20 –2017/ 12/31の期間に目標の4倍近い7,800万円ものご寄付を頂きました。
ざっと調べた所、これはリターン・返礼品無しの寄付型のCFにおいては国内で史上最高額のようです。
フローレンスが過去に実施したCFの実績(約1,500万円、約3,000万円)も、大幅に越えることが出来ました。
そして寄付獲得の一貫で広報にも力を入れ、80件以上のメディア露出を獲得。
記者の方50名近くをお招きして厚労省で記者会見をやったり、NHKで20分間の特集を組んで頂いたりしました。
また一緒に事業を立ち上げた文京区役所の皆さんとは価値観が異なる事もあり、当初は本当によくぶつかりあいました。
しかし粘り強く丁寧に取り組み、最後には「一緒に働けて良かった」と厚い信頼を寄せて頂けるまでになりました。
これほど意義深い取り組みの第一歩に貢献出来た事は、とても誇らしいです。
企画自体の素晴らしさ、運営6団体の実績や信用、周囲の多大な協力なしには、この結果はありませんでした。感謝!
障害児保育事業部 (2017/4–6, 8–10)
少し前まで日本には、障害がある子どもが利用できるフルタイムの保育サービスはほぼ存在しませんでした。
結果、障害児の母親の常勤雇用率は健常児と比べ約1/7。医療費による家計圧迫もあり、経済的にも厳しくなりがちです。
この問題に取り組むのが障害児保育の事業部。施設型:ヘレン、訪問型:アニーという2つのサービスを展開しています。
ここでは主に利用者向けのマーケティングを担当。下記のような業務に取り組みました。
- 施設型と訪問型のマーケティングプロセスを統合
- ランディングページの刷新
- 経営陣と入園対応担当者を繋ぐ入園パイプライン管理の仕組み作り
みらいの保育園事業部 (2017/10–2018/3)
待機児童問題、保育所の福祉的な役割の増大、必要な学びや育ちの変化など、保育園業界は変革を迫られています。
この事業部は、小規模認可保育所、認可保育所、一時保育所など20園弱を運営。未来の保育を体現しようとしています。
僕は保育士資格を取得し、複数園で週1日勤務。法的な保育士配置基準に寄与しつつ、子ども達に寄り添いました。
また卒業にあたって、勤務していたある園の園長先生からは下記のようなコメントを頂きました。
身長185cmの大きな身体は、子どもたちにとってはちょっと怖い。
ちょっと怖いから遠巻きに見ている子もいます。
それでも、食事がゆっくりな子に最後まで声を掛けて介助してくれたり、寂しくて泣く子を一日中抱っこしてくれたりと、粘り強く優しくかかわってくれるので子どもたちも段々とリラックス。
たつ先生をソファ代わりにずっと座っている子どももいました。
大きいって ”怖い” じゃなくて、”安心” なんだって、自分の力で証明したたつ先生でした。
嬉しい、超嬉しい!(歓喜)
病児保育事業部(及び迎える育む部) (2017/4–2018/3)
病気の子どもはリスクがあり保育園では預かれません。しかし父母が会社を休んで看病できる日数にも限界があります。
フローレンスの病児保育は、朝8時までの予約でご自宅に保育スタッフを100%派遣。共済型の料金体系が特徴です。
この事業部では下記のような業務に取り組みました。
- ご家庭に派遣する保育スタッフを決定する朝晩のマッチング業務
- 保育スタッフの給与改定のシミュレーション
- 保育スタッフの採用マーケティング
この1年で得られた主な収穫4つ
前半の2つは入社時から目標としていたもの、後半の2つは想定外の収穫です。
1. 保育領域を知ることが出来た
保育領域での事業立上げにあたり、業界や現場の実態を知る事が一番の目標でした。狙い通り達成できたように思います。
- 保育の業界全体
- フローレンスの展開する各事業
- 実際の保育現場でのオペレーション
- 保育業界のボトルネックである保育スタッフの採用市場
上記について、実際の経験ベースの肌感覚をもって、その構造・実情・各種パラメータなどを捉えられるようになりました。
この1年の経験がなければ、見当違いな試行錯誤を繰り返していたでしょう。それを一足飛びにする学びを得られました。
とはいえ、1年では学びの深さに限界があります。そこで頼りになるのが、在職中に出来たプロ達との繋がりです。
同期入社の保育スタッフから、各事業の責任者まで、退職後も何かあったら気軽に相談できる関係を築けました。
また代表の駒さんとも、8ヶ月にわたりこども宅食チームで濃い時間を過ごした事もあり、とても良い関係を築けました。
保育業界の有識者・先輩経営者として、これほど心強い存在はありません。
また実はこれから始めようとしている事業は、フローレンスでの1年間に得たインサイトから着想に至ったものです。
正直いって1年前は「創業を1年後ろ倒すのは遠回りになってしまうんじゃ…」という不安も少しありました。
ですが蓋を開けてみると、むしろ大幅なショートカットが出来たなと思っています。
2. 働き方改革は業績をあげる確信を持てた
サブ的なものですが「子育てと仕事を両立できる先進的な働き方の実態を知りたい」というのも目標にしていました。
「子育てとキャリアを両立できる社会」を作りたいなら、まずは自社こそがそういう組織でないと説得力がありません。
原則として残業禁止ながら、売上20億円/純利益率5%/年3割成長のフローレンス。その秘訣を組織の内側から垣間見たい。
そんな狙いもきちんと達成できたように思います。
そしてフローレンスの組織の在り方をみて、働き方改革は業績を上げるのだという確信を持つようになりました。
現在、ITスタートアップ界隈では「長時間労働しない奴は悪だ」と言わんばかりの空気感が幅を利かせています。
実際、創業期のマナボでは週に100時間働いていたこともあります。友人の会社もそういう所が多かった。
しかし次のスタートアップではある程度の規模(10 – 20人?)になったら「基本は1日8時間労働」という経営をするつもりです。
マナボとフローレンスの両方を経験した上で、それが勝つ為に必要な事だと思うからです。
3. フローレンスの社会の変え方を目の当たりにした
ここから先はフローレンス入社時は想定していなかったものについてです。
僕は約10年前から、一貫して「世の中を変える」ことに強い憧れを抱き、アイセックやmanaboに取り組んできました。
そしてこの1年でフローレンスの社会の変え方を知り、とても感銘を受けました。
一般的に、こうした公的セクターに対する働きかけとITスタートアップは遠い領域というイメージがあるかもしれません。
が、少し前なら楽天の医薬品ネット通販問題、最近なら仮想通貨など、事業成長と共に政治/行政が絡む事例は多いです。
僕がこれから始める事業も、いつかそのレイヤーでの戦いが出来るくらいの規模感に出来たら良いなと思います。
4. 神様からの宿題をやりきった確信を得た
僕は元々、共同創業したスタートアップの取締役からの降格を、3年前に経験しています。
原因は色々ありますが、主なものは自分の力不足。当時の僕は下記のような知的戦闘力の基礎が不足していました。
- 期待値コントロールによる信頼構築力
- 工数見積もり力
- 根回し力/社内調整力
- 自己管理能力
しかし最近ふと、あれほど弱みとしていた部分が、いつの間にか別人のように改善している事に気付きました。
かつて自分に言い聞かせていた反省の言葉を若手社員に懇々と説いていたのには、我ながら笑ってしまった事も。
フローレンスでの1年間も含め、マナボでの役員降格から後の次のような経験が、この変化をもたらしたのだと思います。
- 降格後にマナボでいち従業員として勤務し続けた2年間に弱みに向き合い続けた事
- 結婚生活や妻の親族とのお付き合い
- 人生初の出来上がった組織(フローレンス)への就職というチャレンジ
- こども宅食で文京区役所の皆さんと協働するため試行錯誤した経験
- メンターやロールモデルの皆さんからの学び
3年前の役員降格後、ある先輩経営者から言われた「神様の宿題から逃げるな」という言葉があります。
挫折から逃げずに乗り越えて初めて、次の宿題に取り組めるようになるよ。
いま逃げたら、いつまでも同じ宿題をやり続けることになるんじゃない?
僕は無宗教ですが、この言葉は本当に刺さったのを思い出します。
大学時代にした大きな失敗。その時は挫折から逃げてしまった為に、マナボで同じ宿題を出されたんだと思います。
これでようやく次の宿題に取り組める。レベルの低い話かもしれませんが、そう確信を持てた事が心底嬉しいです。
以上の4つ以外にも、細かい点をあげれば得られたものにキリはありません。本当に実り多き、充実した1年間でした。
フローレンスの皆さんには、ひたすらに感謝、感謝です。本当にどうもありがとうございました!皆さん大好きです!!
フローレンスは本当に素晴らしい組織だと思います。その1ページに関われたのは一生の誇りです。
子育てを頑張りつつも、裁量をもって意義ある仕事に取り組みたい。そんな方にはピッタリの職場です。
お知り合いの方であれば、内情をお話ししたり、中の人をご紹介したりも可能です。ご興味ある方はお声がけください。
採用情報はこちら↓
また僕は入社以前から寄付会員でもあるのですが、寄付先としても素晴らしい選択肢だと思います。
認定NPOなので税控除もあり、オススメです。検討中の方がいれば是非。
寄付についてはこちら↓
これからどんな事業をやるのか
僕はこれから、保育×ITのスタートアップをはじめます。絶対に譲れない軸は次の3つです。
- (未来の)自分たち家族の深刻な課題を解決する
- 僕がやらないと誰もやらなさそう/出来なさそう
- 世の中を大きく変えられるポテンシャルがある
これらを満たす事業案を考え、ユーザーインタビューや調査を経てボツにし、そこで得た知見を元にピボット案を考え…
フローレンスでの勤務と並行し、そんなプロセスをこれまで何度も何度も繰り返してきました。
最新のイテレーションで作ろうとしている事業は次のようなものです。
これからも作っては壊し作っては壊しを繰り返し、近いうちにサービスインしたいなと思っています。
ご期待ください!
ユーザーインタビュー協力者を募集中
事業の立ち上げに向けて、下記いずれかの条件にあてはまる方にお話を伺いたいと思っています。
23区内どこでも、曜日や時間は問わずご都合良い時に、30–60分ほどお話をお聞かせ頂けないでしょうか。
コーヒー代を当方で負担させて頂くか、ランチご一緒しがてらの場合は気持ちばかりですが簡単な謝礼をご用意します。
ご協力頂ける方がいればこちらのフォームからお気軽にご連絡下さい。
※なお廣田とご面識のある方はFacebookまでご連絡下さい。ご本人はもちろん、ご友人のご紹介も是非お願いしたいです!
a. 子育ても仕事も頑張りたいお母さん
- 保育園or学童に通う子供がいる
- 夫婦ともに子育ても仕事も頑張りたい勤め人である
- 妻側の実家が近くにないor近くても子育てで頼りづらい
b. 子育てがひと段落した主婦の方
- 子供が大学生〜社会人になった
- 現在は専業主婦orパートタイムで働いている
- 週に2–3日くらい無理なく働きたい
c. ベビーシッター経験があるor興味がある大学生/専門学校生
- 23区内にキャンパスor自宅がある
- ベビーシッターのお仕事の経験があるor興味がある
- 女性
d. 働き方改革に取り組む経営者の方
- 自社で働き方改革に取り組んでいる
- 働き方改革をすることを通して業績を上げたい
受託案件を募集中
これから始めるスタートアップでは、資金調達してアクセルを踏むまでは自己資金で走ります。
その間は自社事業と並行し、短期(1-3ヶ月)かつ稼働少なめ(10–30%)にて、コンサル的にお手伝いできる案件を受託します。
例えば、週1のMTG同席(+必要に応じ実務ちょこっと)にて並走するイメージです。
既にフローレンス含め複数社からお受けしていますが、下記のような案件があればお声がけ下さい。
- 中高生向けのEdTech(教育×IT)領域
- 0→1フェーズのスタートアップや新規事業開発
- クラウドファンディングや寄付獲得のマーケティング (ニーズあれば勉強会とかやろうかな…)
- ランディングページ設計
- 保育関連の案件なんでも
- ライターとしての記事執筆(こちらは2万円〜/記事でお受けします)
ご相談は、tatsunori.hirota@gmail.com、Facebook、VisasQのいずれかまでお気軽にどうぞ!