「ハンマー戦略とダンス戦略」続編3:検査と接触者追跡の方法

Tomohisa Kato
Tomas Pueyo
Published in
66 min readMay 4, 2020

コロナウイルスのパート3:ダンス戦略を学ぶ

図26.a: 人海戦術に頼った追跡調査

(著者 Tomas Pueyoの許可のもと、記事How to do Testing and Contact Tracing”を翻訳。共訳者: Yoko Imafuku, takashi.sawayama, @akjac17, @Soichi_Tatsumi, @golfamdeine01, @eduhousejapan, @kato_ )

以前の記事「コロナウィルス: なぜ今すぐ行動しなければならないのか(英文、未邦訳)」、「ハンマー戦略とダンス戦略(英文邦訳)」そして「多くのうちの一つ(英文、未邦訳)は、6千万以上のPVを集め、40以上の言語に翻訳されています。この記事は、経済の再開に向けた4回シリーズの記事「ダンス戦略を学ぶ」の第3部です。第1部(英文邦訳)、第2部(英文邦訳)。

概要

検査や接触者追跡など、いくつかのことを正しく行うことで経済を再開することができます。症状のあるすべての人とその接触者を検査する必要があります。その結果、検査の陽性率はせいぜい3%でなくてはなりません。可能な限り多くの感染者とその接触者の70%から90%を特定し、隔離もしくは検疫する必要があります。もしこの全てを本当に迅速に(1日かそこら以内で)行うことが出来たなら、おそらく感染拡大を十分制御できるでしょう。そのためには多くの人を雇い、先端技術も使わなくてはなりません。先端技術はある程度プライバシーの犠牲を伴いますが、極めて妥当なものです。現在構築されている多くのBluetooth 接触者追跡アプリは驚異的な技術の塊ですが、根本的な変化がない限り役に立ちそうにありません。

現在多くの国々がハンマー戦略、すなわち、経済を停止させ、きびしい社会的距離を保つなどの措置を同時にとり、痛みに耐えています。何百万人もの人が職、収入、貯蓄、事業、そして自由を失っています。その経済コストは悲惨なものです。経済活動を再開するために何をすれば良いか見極めようと各国は必死に模索しています。

ありがたいことに、4つの対策を組み合わせることで、感染拡大を劇的に減らすことができます。これらの対策は経済活動を止めるよりもとても安くすみます。もし多くの国が現在ハンマーの重さに耐えているとするならば、これらの対策は、全ての人々を同時に打ちのめすのではなく、メスで慎重に感染者を摘出するものなのです。

これら4つの対策は、お互いに相互補完しあうものです。どれも単独では効果を発揮しません。:

  • 検査し、感染している人を見つけます
  • 隔離し、他人への感染を防ぎます
  • 接触者を追跡し、感染者が接触した人を把握します
  • 検疫し、接触者が他人にうつすのを防ぎます

検査と接触者の追跡は諜報活動であり、隔離と検疫は戦闘行為です。ここでは前者(検査と接触者の追跡)について詳しく説明し、後者については次に説明します。

図20: 検査、接触者の追跡、隔離、検疫

検査

何週間も前から話題の中心になっています。ほとんどの国で、人々は検査の欠如を批判していますが、どのくらいの検査が必要かを質問をする人はほとんどいません。

それぞれの国が必要な検査の量はどれくらいでしょうか?

それは国とその国が何をしようとしているのかに依存します。国には2つのタイプがあります。

最初に、アメリカ、スペイン、イギリス、フランスなどの国では、感染拡大が制御不能になっています。こうした国では危機を制御する準備ができていなかったため、経済を封鎖し、人々が感染するのを防ぐための一連の非常に重い措置となるハンマー戦略を適用しました。これは流行を止める方法です。これらの国ではハンマー戦略で感染拡大を制限するので、大量の人々を検査することは現時点では必要ありません。隔離し治療するために、病気にかかっているか病気になりそうな人(例えば、医療従事者)のみを検査する必要があります。これらの国のほとんどは、ここで赤またはオレンジ色で示した国です。

図14: 検査の陽性率

ただし、オレンジまたは赤の国がダンス戦略に入る前に、準備ができている必要があります。つまり、検査を大幅に増やして、緑で示された2番目のタイプの国々に近づく必要があります。

これら2番目のタイプの国々には、台湾、ベトナム、韓国などが含まれます。彼らはまた、患者の診断の目的で検査をしますが、検査には別の狙いもあります。感染者の接触者を追跡し彼らに症状がなかったとしても検査します。更に、感染している可能性はあるがまだ自覚症状がない人をも広く検査します。

図22: 検査の優先度の概念図

左上;より検査の優先度の高い人々 より陽性になる可能性が高い、より高い検査陽性率
左中;より少ない検査数では,より選択的な検査にな理,より高い陽性率を示すだろう
右(上から);
他の理由によって排除されない強い症状を持つ人のみ検査
強い症状を持つ全ての人を追加
弱い症状を持つ全ての人を追加
全ての追跡された接触者と渡航者を追加
ランダムに選ばれた人を追加
全員検査
全員を毎週検査
下;検査した人口の割合
出典;Tomas Pueyo による解析

渡航者や追跡された接触者の集団を付加的に検査するには、症状のある人を検査するだけではなく、さらに多くの検査が必要です。そのため、全検査中の約1%〜3%しか感染者しか見つけられないのです。感染拡大を制御出来たすべての先進国ではそうしたレベルの検査の陽性率になっています。

図21 検査がコロナウイルスの感染拡大の制御とどう関連するか

緑で囲まれた国々は感染拡大を抑制し、多くの検査を行いました。赤で囲まれた国は両方とも失敗しました。ここには2種類の外れ値しかありません。一つは青で囲まれたアイスランドで、多くの検査が行​​われていますが、感染者数も多くいます.非常に特徴的な国で、国民のランダム検査を実施するなど多くの特異性を持つ離島です。もう一つのグループは灰色で囲まれています。これらの国では検査があまり行われていませんが、人口百万人当たりの感染もほとんどありません。それには多くの理由が考えられます。大規模な人口を抱えるが故の感染拡大の遅れや、早期のハンマー戦略の適用、大規模感染に向かっている最中、などです。

ほとんどの先進国では、検査結果が悪化しているほど、感染拡大状況も悪化しています。赤い丸で囲まれた国のグループでは、ほとんど検査は行われず、壊滅的な大規模感染が起きた一方で、左下の国では多数の検査が行われて、少数の発症しかありませんでした。危機を最もうまく管理している国は多くの検査を行い陽性率が約3%程度になるようであり、他の国も彼らに従うべきです。

シンガポールとドイツは興味深いケースです。以前の陽​​性率は3%弱でしたが、最近の大規模感染により、8%に上昇しました。願わくば、これは容量の問題ではなく、検査を希望するすべての人を検査できるということで、つまりただより多くの陽性者数を見つけているだけであることを望みます。しかしそれは、大規模感染が検査能力を圧倒し、すべての陽性ケースを特定して隔離することを困難にし、大規模感染の阻止を難しくすることを示すかもしれません。

政府は十分な検査をいつ実施できるかを予測したいと考えていますが、検査数と感染者数の両方が常に変化しているため困難であり、多くの検査を行うことでより多くの感染者が分かるため、実際、感染者数は検査数の影響も受けるのです。では、十分な検査が行​​われる時期をどのように予測することができるのでしょうか?

図21.a 韓国における感染者数と検査数 2020年4月20日時点

このグラフでは、毎日の新しい感染者数赤い線で、毎日の新しい検査数緑の線で示されています。両者は比較できるようにスケーリングされています。上記で見たように、感染拡大を制御した国の経験は、少なくとも3%の陽性率を目標にする必要があることを示しています。つまり、感染者数の33倍以上の検査が必要です。したがって、右側の軸の検査数軸は左側の軸の感染者数の33倍にしてあります。これにより、十分な検査を実施できているかどうかを簡単に確認できます。

韓国では、大規模感染が実際に起きたときに、突然、感染者数が検査数に対して多すぎになり、公式の感染者数数(レッドゾーン)に対する信頼が失われました。しかし、数週間のうちに、彼らは再びグリーンゾーンに入るのに十分な検査を実施することができました。現在、彼らは毎日、求められる3%の閾値以上に多くの検査を行っています。その数値は1%程度です。

イタリアの数値と比較してみましょう。

図21.b イタリアにおける感染者数と検査数 2020年4月20日時点

ご覧のように、イタリアは日々の検査の数を常に増やしていますが、それでも状況の程度を知るには十分ではありません。ただし、このグラフを使用すると、その閾値をいつ超えるかという感覚を持つことができます。検査が増え続ける一方で感染者数が減少し続ける場合、それらは数週間で閾値に達する可能性があります。

さらにいくつかの国の事例をご紹介します。

図21.b その他の国の感染者数と検査数 2020年4月26日時点

明瞭かつ十分な毎日の検査数が分かる国が非常に少ないため、少数の紹介にとどまります。毎日の数字がない国もあれば、検査数の単位が分からない国もあります。検査人数なのか、検査キット数なのか、国によって、いくつの検査キットがあるのか。台湾のデータは検査キット数ですが1人に対していくつの検査キット数を使っているのか分かりません。ただし、赤の線は緑の線に比べて十分に低いため、1人あたり2回の検査だとしても、赤の線が緑の線より下に保たれます。特に、効率を上げることができる巧妙な検査戦略を使用している場合はなおさらです。

これらのグラフは、ほとんどの国が十分な検査数からどれだけ離れているかを明確に示しています。

十分な検査を行うと、ダンス戦略をとる時期に入ることができます。感染者を隔離し、その接触者を検疫することにより、感染拡大を管理できます。これにより、感染している人や感染の可能性が高い人をすばやく特定し、他の人に感染するのを防ぐことができます。その結果、全員を拘束して自由を制限することなく、住民を保護できます。人々は外に出ることができ、経済を再起動することができます。そのため、より多くの検査を実施し、3%の人だけが陽性となるまで検査を増やすことが非常に重要です。

もし十分な検査を行わないなら、感染者がどこにいるかわからなくて隔離せず、ロックダウンせざるを得なくなります。

検査が限られている限り、国は最初に誰を検査するかも決定する必要があります。少ない数の検査にどのように優先順位を付ければ良いでしょう?

検査の優先順位

前にも言いましたが、最初に検査するのは症状のある人たちで、通常は病院や診察室で、誰を治療して隔離するかを知るために検査します。これは、ハンマー戦略期に大半の国が行うことです。

ダンス戦略の準備ができている国では、症状のある人を検査したら、まだ症状のない人を検査し始める必要があります。これを可能にするのが、接触者追跡です。病気になっている可能性のある人を見つけ、検査するのです。

以前の投稿を読んだら、このグラフを見たことがあるでしょう。

図15.a: コロナウィルス感染者は他の人をどのように感染させる?

青地: 発症前: 感染のうち45%は発症前の感染者から
緑地: 症状有: 感染のうち40%は発症中の感染者から
赤地: 環境: 感染のうち10%は環境から
橙地: 無症状 感染のうち5%は発症しない感染者から

思い出してほしいのですが、このグラフはサイエンス誌に掲載されたオックスフォード大学の素晴らしい論文から引用しています。コロナウイルスが人から人へとどのように広がるのかを特定するために非常に大きな労力を払っています。横軸は最初の感染からの日数を示し、縦軸はある特定の日に感染させる一日あたりの人数をキャリアの状態ごとに示しています。たとえば、感染後5日目に、キャリアは平均してほぼ0.4人に感染させます。そのほとんどは、すでに症状が出ているか、まもなく発症する(したがって、発症前と呼ばれる)人々から直接もたらされます。環境(おそらく物体の表面)を通した感染は少数であり、無症候性キャリアからの感染はさらに少数です。

検査と接触者の追跡は諜報活動であり、隔離と検疫は戦闘行為です。

症状のある人を検査して隔離するだけの場合、R(実効再生産数)は最大でも40%しか減らすことはできません。現在の感染拡大のようにRが2.5または3の場合、その程度ではRを1未満にすることはできません。

しかし、症状のある人との接触者も追跡して検査すれば、発症前の人々も把握できるようになり、感染を最大85%削減できます。

要するに、症状のある人とその人と接触したすべての人の両方に対して多くの検査を実施する必要があります。

しかし、検査が即時に全て行えてもその方法ではRを85%削減することしかできません。実際には、ある程度時間がかかります。ではその影響はどの程度でしょうか?

検査における速度の重要性

検査工程が十分に迅速でなかったり検査の難易度や費用が高すぎる場合、検査が間に合わなかったり結果が得られるまでに時間がかかりすぎたりします。その結果、発症者を隔離する前にある程度の割合で感染が発生します。

図15.b:検査速度の重要性

(図の緑字部分)平均して感染5日後、つまり症状が出始めてから数日経ったタイミングで初めて感染しているということを補足できる場合、患者が症状を示している間の伝播の一部しか減らすことはできません。

(図の赤字部分)発症者の検査が遅いと赤く塗りつぶした部分の伝播を見逃してしまします。

追跡された接触者にも同じ概念が当てはまります。感染から接触者を追跡し検疫または隔離するまでに平均で3日かかるとすると、多くの感染者を見逃すことになります。

図15.c:検査と接触者の追跡の重要性

(図の赤字部分)接触者の検査が遅いと隔離や検疫は赤く塗りつぶした部分の伝播をすべて見逃してしまいます。

ここで重要な3つの要因が見られます。

  1. 特定して隔離した感染者の数
  2. 追跡して検疫した接触者の数
  3. 1と2を両方行う速さ

これら3つの要因の重要度はどのように比較したらよいでしょうか?最初に、即時検査を実施し接触者を追跡したとしましょう。

図16.a:コロナウイルスの感染拡大を即時検査と即時追跡によって阻止する方法

(縦軸は接触者の検疫に成功した割合、横軸は隔離に成功した感染者の割合)

(赤字)「発症してすぐに60%の患者を隔離し、接触者のうち50%よりやや多い人数を他の人に感染させる前に追跡できた場合、感染拡大を制御することが可能です」

(黒字)感染の拡大と縮小の分岐線

上述したオックスフォード大学の論文から抽出したこのグラフは、特定する必要のある感染者とその接触者の数を示しているため、それらの人々を検疫または隔離して、感染拡大の伝播速度を低下させることができます。

感染拡大は赤/オレンジのゾーンで拡大し緑のゾーンで縮小します。境界は黒い線で、点線は不確実性を表す信頼区間です。境界線上の任意の点は、流行を制御するのに十分であるはずです。したがって、たとえば、赤い×印の位置に注目すると、他の人を感染させる前に症状のある患者の60%を即時検疫し、50%より多い接触者を即座に追跡して、隔離または検疫することができれば流行を制御できることが分かります。

難しそうに思えますね。しかし良いニュースとしては、うまくやれば、この対策だけで感染拡大を止めることができるということです。しかしたとえうまくいかなかったとしても感染拡大の阻止には貢献します。たとえば、感染者の50%とその接触者の30%を隔離すると、緑の領域に近づきます。それは良いことです。これをマスクの着用などの他の手段と組み合わせると、ハンマー戦略を使用することなく、感染拡大の制御に近づくことができます。

このグラフが前提としているもう1つのことは、感染と検査または接触者の追跡の間に遅延がないことです。しかし、現実世界では遅延は避けられません。ではその遅延はどの程度の影響をもたらすでしょうか?

図16.b:検査の成功率、接触者の追跡の成功率、および遅延の日数ごとのコロナウイルスの感染拡大を阻止する方法

(1番目のグラフ)3日遅れ:隔離および接触者の検疫まで3日(人力による接触者の追跡)
(2番目のグラフ)2日遅れ:隔離および接触者の検疫まで2日
(3番目のグラフ)1日遅れ:隔離および接触者の検疫まで1日
(4番目のグラフ、図16.aと同じ)遅延無し:隔離および接触者の検疫に遅延無し(即時に接触者を追跡)

右端のグラフは図16.aと同じものです。他の3つのグラフは、発症した感染者および発症前の感染者の隔離までに1日、2日、または3日の遅延がある場合に何が起こるかを示しています。

右端から左端に向かってグラフを見てみましょう。これらのグラフが見せてくれていることは「感染者隔離して検疫するまでに3日の遅れがあるならば、流行を止めることはひどく難しいでしょう。」ということです。他の対策も流行阻止に寄与しますが、このような日数の遅延がある状況ではほとんど役に立ちません。

2番目のグラフは、次のように述べています。「隔離と検疫の両方に2日間の遅延がある場合、この措置だけで感染拡大を阻止するには感染者の少なくとも70%〜90%を隔離し、接触者の少なくとも70%〜90%を追跡できる必要があります」

別の言い方をすれば、迅速かつ効率的に人々を検査し、発症者を隔離し、接触者を隔離して検疫できるとしたら、経済停止することなく、感染拡大を制御できるということです。これらの対策は非常に迅速かつ極めて効率的に行う必要があります。そうしないと、この対策だけでは感染拡大を制御することはできないでしょう。

この一連の対策を適切に実行しないと、感染拡大を制御することは非常に困難であり、何らかの奇跡的な対策を見つけるか、集団免疫を獲得するか、あるいはもう一度ハンマー戦略を適用するしかなくなり、それには経済的な費用と大量死が伴います。

以上が、国々ができるだけ早く有効な検査を多数実施することが非常に重要である理由です。量と速度の両方が必要とされます。

韓国のドライブスルー検査と電話ボックス検査は1つのモデルを提供しています。人々が検査を受けやすくなればなるほど、より多くの人々が迅速に検査を受けられるようになり、より効果的に感染拡大を制御できるようになります。

一部の国では、常に全員を検査することを検討しています。たとえば、米国の人口のほとんど、仮に3億3千万人中の3億人が毎週検査されていると想像してみてください。このような検査により国はいつでも発症者全員を把握し、そしておそらくは彼らによる感染拡大を制御するでしょう。、。しかし毎週3億回の検査の実施は、今ははるかに遠いように思われ、費用もかかるでしょう。1年で150億回を超える検査です。では、規模の経済により1回の検査が非常に安価になると仮定すると(1回20ドルとしましょう)、合計で3,000億ドルとなり、2兆ドルの刺激策の15%に過ぎないとは言え非常に高額です。

これは非常に高額であり、今日では現実的ではありません。しかし、より多くの人々を検査する効率的な方法があれば、計算が変わる可能性があります。

いくつかの方法あります。たとえば、この論文では、感染者がほとんどいない場合(つまり、有病率が低い場合)、一度に多数の人を巧妙に検査し、必要な検査数を8分の1に減らすことが可能です。大量検査のコストを3,000億ドルから400億ドル未満に削減することは、大きな改善となるでしょう。ドイツ、オーストリア、イスラエル、米国など、多くの国がすでにそれを行っています。

別の非常に有望なアプローチは下水検査です。

Bruce King氏のツイート:二分探索を用いた下水検査による迅速なCOVID-19の排除に関するスレッド
☑各都市、町、田舎のコミュニティからCOVID-19を迅速に排除
☑ロックダウンの必要性を避ける
☑実施中のロックダウンの短縮
☑COVID-19の第n波の脅威を終わらせる

下水検査の考え方は、どの程度のコロナウイルスが下水に含まれているかを測定することができるというものです。この測定により感染者の人数を大まかに知ることができます。そして、ウイルスの出どころとなる建物が見つかるまで上流に向かって下水を検査していきます。続いてその建物にいる人全員を検査し、感染者を隔離します。

要約すれば:

  • 感染した人々をできるだけ早く特定するために、多く検査が必要です。
  • 成功した国の事例のように、検査の陽性率がわずか3%に止まるような十分な検査数が必要です。
  • 感染者を即座に隔離して、彼らが感染させる人の数を減らすことができるように、極めて早く検査する必要もあります。
  • 以上が戦いの半分です。残りの半分は、まだ症状が出ていない感染者を特定するためすべての接触者を検査することです。感染症の45%は彼らから来ています。
  • 同様に、発症前に感染させてしまう期間を短縮するために、その接触者追跡を迅速に実行します。て、発症前の感染期間を短縮します。
  • 効率的に検査を行う方法があり、一回の検査で複数の人を検査します。
  • 下水検査など、他にも有望な手法があります。
  • 完璧な世界では、いつでも誰でも検査できます。私たちはそこに着くかもしれませんが、とりあえずそれは高価で難しいように見えます。
  • その間、検査する人に優先順位を付ける必要があります。まず、症状のある人、次に、そのすべての接触者です。

これにより、接触者追跡が可能になります。

注:血清学的検査およびその他の検査の詳細については、別の機会で取り上げます。

この節では、@ Genevieve Geeの検査に関する研究から考え方とデータを多く引用しています。特に、陽性率を追跡するという考えは彼女のものです。

接触者追跡

これは、記事全体の中で際立って内容の充実した節になります。これは意図的なもので、掛け金は非常に高いです。先ほど見たように、良好な接触者追跡は、伝播を削減するのみならず、経済を安全に再開するためにハンマー戦略からダンス戦略に移動するのに極めて重要です。しかしながらこれは非常に複雑で多くのプライバシーの問題を提起しています。

ただ、この問題に取り組む前に接触者を追跡することの正確な意味理解する必要があります。

感染した人をボブと呼びましょう。出来る限り多くの彼の接触者を、できるだけ早く特定したいと考えます。重要なのは彼が出会ったすべての人ではなく、感染した可能性のある人です。

そのために、接触者追跡チームが必要です。

2020年4月16日木曜日、アンカレッジ保健省とアンカレッジ学区の看護師のチームが、アンカレッジのダウンタウンにある保健局の会議室でCOVID-19の接触者の調査と監視に取り組む様子。写真:ADN 所属Loren Holmes、Anrenrage Daily News

接触者追跡担当にはいくつかの機能があります。最初に、彼らは感染したボブのような人々のリストを与えられます。彼らはボブにインタビューして、彼が過去2週間にわたって行ったすべての場所と、彼が一緒にいた人を把握します。ボブは人間なので、信頼できないことがよくあります。忘れてしまったり、具合が悪かったり、混乱していたり、悲しんでいたり、非協力的だったり、またはこれらのすべてかもしれません。したがって、接触者追跡担当も先端技術を使用して支援します。おそらく、韓国において、追跡担当が携帯GPSデータ、クレジットカードの支出データ、そしてCCTV映像を使用したことや、他には、接触者追跡アプリの出力を使用する例が挙げられるでしょう。

これらすべての情報を使用して、感染した可能性の高い順に並べられたボブの接触者のリストをまとめます。次に、これらの接触者すべてに電話します。感染の可能性と政府のルールに応じて、検査を受けるか、自己検疫するか、単に症状を確認するように指示します。彼らはできるだけ多くの接触者をできるだけ早く見つけようとしています。

しかし、何が接触者とみなされる要素で、どれくらいの接触者を追跡する必要があり、その追跡はどれだけ急ぐ必要があるのでしょうか?

接触者とみなされる要素は何か?

ほとんどの人は約2週間のみ感染性を持つと考えられるので、注意するのはボブが過去数週間に接触した可能性がある人のみです。それ以前にボブが感染していた可能性は低く、もし感染していても接触者が感染している可能性はほとんどありません。

この2週間以内に、感染する可能性のある人のみを特定したいと考えています。ボブの家族は全員、非常に感染の可能性が高いです。逆に、彼が5 m(~15 ft)離れて通りですれ違った人々を強く気にする必要はありません。

「誰もが真似できるダンス戦略のステップの基礎」で見たように、人が互いに近づいたり、話したり、咳をしたり、長い間歌ったりするような閉じ込められた環境では、感染ははるかに起こりやすくなります。

国々はこれを規則にします。たとえば、2メートル以内で一緒に15分以上過ごしたかどうか、ボブの接触者を調査します。これは妥当に聞こえますが、実際に行われる追跡はそれよりはるかに曖昧です。向かい合って座って1時間食事を分け合った人はリスクが高いとして監視され、調査員によって数時間ごとに調べられる検疫に行くように求められる一方で、食料品店で同じ列に並んでいた人は単に細心の注意を払い、彼女の症状を頻繁に確認することを求められる程度です。

どれくらいの接触者を追跡する必要があるか?

以前に、接触者の少なくとも60%を追跡し、それらをすぐに検疫/隔離して、R(実効再生産数、一人のコロナウイルスのキャリアが引き起こす新たな感染者の数)を大幅に削減したいと考えていました。しかし、その論文では、確定したR0を2.5と想定していました(R0は、誰も免疫がなく、何の対策も講じられない状態での再生産数)。もしこれが違っていたらどうなるでしょう?

その点について考察しているのがこの論文です。異なるR0を用いて、Rを1未満にするために追跡する必要のある接触者の割合を見積もっています。下図の各線は、1.5(赤い線)、2.5(灰色の線)、および3.5(茶色の線)の異なるR0を示します。

図23:感染率(実効再生産数)を1.0以下にするために接触者をどの程度の割合、追跡調査する必要があるか?

横軸は接触者のうち追跡された比率を示し、縦軸はRへの影響を示します。

一番上の茶色の線をR0 = 3.5としてみましょう。何もしなければ、感染率は3に近くなります。1人が他の3人に感染させます(この論分では感染者の一部隔離を想定しているため3.5にはなっていません)。そしてより多くの接触者が追跡および検疫されるにつれて、Rは低下していきます。

接触者のおおよそ90%が追跡された段階でこの茶色の線が「1」の点線の下に行くことがわかります。つまり、この伝染病の蔓延を食い止めるためには、接触者の90%を追跡し、感染しないようにする必要があります。それをうまくやれば、この措置だけでも感染拡大を止めることができます。しかし、ありがたいことに、完全に実行できなくても、この対策はある程度役に立ちます。

茶色の線の周りに領域はこれらの計算はまだ完全ではないことを示しています。データが不足しているため、ある程度推測する必要があります。接触者の90%を追跡しても、R = 1.5または0.5に到達するだけかもしれません。わかりません。しかし、それは明らかにRを大幅に低下させます。

もし、R0 = 3.5ではなく、R0 = 2.5(灰色の線)の場合を見てみると、感染者の70%を特定するだけで伝染病の流行を食い止めることができます。

これらの数値を念頭に置いて考えてください。これら全データに基づき接触者の70%から90%を可能な限り早く追跡することで、流行の蔓延を減らすうえで可能な限り大きなインパクトを与えたいと考えています。

ある論文によると、これは感染者一人につき約20〜30の接触者を追跡することに相当します。

追跡担当者は何人必要ですか?

これはジョンズホプキンスがそれについて考えている方法です:

図24:10万人当たり必要な追跡担当者数

このジョンズホプキンス計画によれば、米国では100,000人の接触者追跡担当が必要です。他の計算ではその数は300,000人となります。数値の幅が非常に広いですが、これは上記グラフの幅が非常に広いためです。武漢とニュージーランドは10倍も違います。これはどうしてでしょうか?

1人あたりに必要な接触者追跡担当の数のこのギャップは、意味がありません。国が100万人で感染がゼロであり、別の国も100万人で感染が10,000である場合、同じ人数の接触者追跡担当が必要ですか? 答えはNoです。人口は無意味です。

接触者追跡担当を雇うということは彼らの時間を買うことになります。必要な時間は、感染者の数とそれぞれに費やす時間によって異なります。

症例数は国によって異なり、流行の進行状況によっても異なります。感染者一人当たりに必要な時間は、トレーニングとテクノロジーによって異なります。いくつかの例を見て、桁違いに見える数値の規模感を理解してみましょう。

ピーク時には、湖北省には5人の調査員からなるチームが1,800あり、接触者を追跡していました。これは9,000人の調査員となります。公式発表された感染者はピークで約4,000件でした。計算の仮定として、湖北省が封鎖されてから数日後に9,000人の捜査官が雇われ、危機がおさまった約1か月後にはたまった仕事を処理できたとしましょう。

図25:湖北省で接触者追跡作業に要した時間

この2つの日付の間に、9千人の追跡担当者が27日間働いた場合(週末がないと仮定して)、概ね6万3千件の接触者に対応する事が出来たことになります。つまり1件あたり4人日ということになります(1人日とは、1人が1日働くことです。従って4人日というのは、例えば4人が1日働くか、1人が4日間働くということです)。もし雇われた日がもう少し前だったり、作業完了日がもっと後までかかったりした場合には、一件あたりの割合は5から6人日となるかも知れませんが、それ以上にはならないでしょう。

この数字を次の米国保健福祉省の元センター長(オバマ政権時の元CMS局長A. Slavitt氏)の説明と比較してみてください。

「1件の感染者追跡作業には平均して4〜5人で3日間を一般的には要します」

これによると、新規感染者1人当たりのコストは12–15人日となります。

ある国で1日あたり1万人の新規感染者がいると仮定しましょう。そして検査の陽性率が約3%なのでこれが事実であると確信できます(前述の検査のセクションで見たように、3%という数字は実態を表した数値と考えられます)。

もし仮に接触者追跡技術を持っていないと仮定すると、調査員は感染した人々に電話で問い合わせし、その後すべての接触者に電話して1人ずつ調査する必要があります。人々は2日前に誰とランチを食べたのか覚えておらず、2週間前のことは忘れているため、各々の電話での会話は非常に長くなります。それから報告書を作成し、データを分析し、他の症例との関連性など相互チェックする必要があります…

1感染者ごとに15人日かかるとすると、毎日15人日/新規感染者 * 10,000新規感染者 = 150,000人日の仕事が必要になるので、150,000人を雇う必要があります。週末、休日、病気休暇などをカバーする必要がある場合、その数は200,000人程度になる可能性があります。全ての諸経費を含め時給$ 20かかるとすると、年間70億ドルになります。それは結構高額ではありますが、現在の経済活動停止のコストがすればバケツ一杯の水とするとわずか一滴の水の量ぐらいの差があると言ってよいでしょう。

これがもし1日あたりの新規発症者が10,000人ではなく1,000人しかいなかったとしたら、私たちが必要な労働力は1日あたり20,000人にまで低下します。

残念ながら、これらのシナリオはどちらも3日かかります。どちらの場合も1人の感染者につき5人のスタッフが3日かかるからです。しかし、私たちが見たように、時間は重要です。

アンカレッジ学区の看護師Bethany Zimpelmanは、2020年4月16日木曜日にCOVID-19の接触調査と監視チームに取り組んでいます。チームは、自治体とアンカレッジ学区の看護師で構成されています。(Loren Holmes / ADN)アンカレッジデイリーニュース

さて今度は、新規感染者は先ほどと同様1日あたり1,000人と同じ状況ですが、私たちの接触者追跡担当は武漢と同じくらい生産性が高く、5人のチームが1日あたり1件の新規感染者に対応できると想定してみてください。5,000人の接触者追跡担当者がいれば(休日などを含めて〜7,000人まで増える)、3日以内ではなく1日以内にすべての新規感染者をカバーできます。

もちろんこれらの数値はあくまでも概算値です。ねらいは、このことをどのように考えるべきかを明確にし、各国が必要なコストを定量化しかつ最小化するように奨励し、そしてその必要額の大まかな規模感の目安を与えるものです。これらの概算規模は、私たちが多くのことを認識するのに役立ちます。すなわち、

  • 流行が猛威を振るっている間、接触者追跡に依存することは非常に困難です。米国では4月末に1日あたり約30,000人の新感染者があり、1件あたり15人日が必要な場合、これを行うには500,000人以上を雇う必要があります。それを迅速かつ効果的に行うことは非常に困難です。ハンマー戦略が果たす役割の1つは、その数を下げ、接触者追跡担当が対応しやすくなります。
  • また、シンガポールや韓国のように新たな大流行が発生した場合は、感染者追跡チームの能力を超えてしまうので、その地域毎のハンマー戦略が必要になる可能性があります。
  • もし5人の追跡担当のチームが新規感染者1人を処理するのに3日かかるとすれば、それは遅すぎます。多くの感染拡大がすでに起こってしまっているでしょう。
  • また、これらの人々は、手動で、必要なすべての接触者をキャッチできない可能性もあります。前掲の写真のアンカレッジの接触者追跡チームの手動プロセスは、アラスカにとっては十分な米国の先駆者であるかもしれませんが、他の州または国にはスケールせず当てはまらないかも知れません。それははるかに効果的である必要があります。

図26.a:人海戦術による追跡調査

上記の図では、ボブ(赤い点、感染者)がかなり社交的で、過去2週間で55の接触者と濃厚接触があったと想定してみましょう。接触者追跡担当との会話では、彼が4人の家族について話すのは簡単かもしれません。カレンダーの記録を確かめた後で、彼は面談した8人の同僚についても話すことができるかもしれません。さらに4人の友人と夕食を取り、食料品店に行ったときのことを覚えています。

CCTVを確認した後、追跡担当は食料品店でのボブの動きを確認しさらに2人の接触者を特定し、これで合計18人の接触者について特定できることとなります。追跡担当には仕事上の接触者の電話番号や食料品店の人々の身元もわからないないため、これらの接触者とのコンタクト方法を調べるには、雇用主や店と話す必要があります。これは、ボブが協力してくれることを前提としています。

さらに、この18人というのは接触者の半数に満たず、残念ながら調査には3日かかりました。理想的には、1日で70%から90%が必要です。しかし、このプロセスでは、ボブの協力と記憶に頼っているだけで、すべての情報を得るにあちこちとキャッチボールをせざるを得ません。しかしそれだけでも十分ではありません。

このプロセスを本当にうまく行っている国は韓国です。ではどうやってやっているのでしょうか?

接触者追跡担当者が用いるテクノロジー:感染者の個人データ

図26.b 韓国のアプローチ:インタビューとGPS/クレジットカード/監視カメラへのアクセスを通した接触者の特定

(凡例)
●赤:感染者
●青:調査担当者とのインタビューで特定された接触者
□緑枠:GPSおよびクレジットカード情報をもとに特定した接触者
●緑:調査担当者が監視カメラにアクセスして特定した追加の接触者

韓国の接触者追跡担当者は、ボブのような感染者のGPSとクレジットカードの支出データにアクセスできます。それらのおかげで、ボブが過去2週間どこにいたかはとても容易に把握ができます(グラフの緑色の四角参照)。

ボブがどこにいたのかはっきり思い出せれば、彼が出会った可能性のあるすべての人々を特定するのははるかに簡単になります。監視カメラや、バスやジムのタグ付けシステムへのアクセスのようなCCTVその他の情報があればボブの接触者をさらに補完できます。結果として、この架空のシナリオでは、18–41人の接触者が追跡されます。まだ55人には届いていませんが、かなり近いです。すでに75%であり、伝播速度に劇的な影響を与える範囲に入っています。

これらの数値は概算ですが、韓国の現実を反映しています。韓国ではこのような方法で接触者を追跡しており、それによって新しい感染爆発をすべて回避しました。韓国の事例は、このような対策をうまく実行することで、他には何もせずに十分流行を制御できる可能性があることを示しています。

これには、まだ説明していない、もう1つの大きなメリットがあります。

図8:韓国における新しい感染例のリアルタイム公開データ

(左上)感染確認者10,537、回復者7,447、志望者217
(右下凡例)訪問日の色分類 緑:4~9日以内、黄:24時間~4日、赤:24時間未満

私たちの記事「コロナウイルス:ダンス戦略を学ぶ (「ハンマー戦略とダンス戦略」)」では、感染した患者がいた場所と時間を韓国がどのように公開したかを説明しました。人々は、感染した場所がどこであるかをすばやく確認し、自分自身が感染した可能性があるかどうかを確認して、検査を受けることができます。

さらに、人々はこの情報を携帯電話にダウンロードし、感染場所に関する公式データを自分の移動データと自動的に照合するアプリを使用できます。そうすれば、これらのアプリのいずれかを使用している場合、感染した誰かに遭遇したかどうかすぐに知ることができます

「感染があった場所に自分が行ったかどうか確認できるアプリがあるって?教えてよ!」という感じですぐにわかりやすいメリットがあるので、人々は自然とそのようなアプリをダウンロードして使用するようになるでしょう。

上記のすべてを可能にするためには、当局がボブのような感染した人々のクレジットカードの支出データと携帯電話の移動データにアクセスできる必要があります。

つまり、プライバシーについて話す時が来たということです。

接触者追跡のプライバシー

注:このセクションを作成するために疫学およびプライバシーの専門家と話し合いましたが、結論は最終的なものではありません。接触者の追跡とプライバシーに関する議論をさらに進めるために、以下の考えを提案し、他の専門家にこれらのアイデアに関する私たちの議論に加わってもらいたいと考えています。

一部の人々はこれを読んで、そのような追跡方法は人々のプライバシー権を侵害し、米国が依然として苦しんでいる2001年の愛国者法のように、データ収集とプライバシー侵害といった後々大きな議論に発展しがちな問題へと政府を押しやるので、受け入れられないという反応を即示すかもしれません。

これは、後で取り上げる議論ですが、現時点ではまったく関係ありません。多くの国では届出義務のある指定感染症と呼ばれるものがあり、上記のことを達成するために実際には法律を変更する必要がないことを批評家たちは認識していません。

届出義務のある感染症のプライバシー

ボブが感染したとします。そのため、彼は地域社会の健康に害を及ぼしています。つまり、彼のプライバシー権は通常とは異なるということです。彼が今持っているプライバシー権は、英国フランスなどの多くの国で何世紀にもわたって存在してきたものです。オーストラリアのような他の多くの国にも同様の規則があります。米国では州レベルで規則が存在します。

これは理にかなっています。私たちは壊滅的な感染症がどれほど深刻な被害をもたらす可能性があるかを忘れてしまっていたのです。

「ニューヨーク市における疫病の克服」
健康精神衛生省の公式記録における死亡率(縦軸は人口1,000人あたりの死亡率、横軸は年)

出所: インスピレーションを与えてくれたドナルド・G・マクニールJr氏に感謝

このグラフからは、米国における疫病の流行により、死亡率が年ごとに大幅に変動したことがわかります。しかし、水の塩素消毒などの対策が実施されたため、グラフから突出した部分が消えました。

これは、制御されていない疫病の流行がどのような死亡率をもたらすかを示しています。当時、疫病の感染者は社会に対する実際の脅威だったので、健康な人と同じ権利を持っていないということは常識でした。感染者を特定して隔離することが重要でしたので、当局はそれを行う権利を有していました。

これは今日でも指定感染症の長いリストに含まれる病気に対して当てはまります。しかし、概念は同じです。もしあなたが社会にとって脅威であるならば、当局はそのリスクを取り除く態勢を備えているべきです。

コロナウイルスが届出義務のある感染症として分類された場合、医師は当局に直ちに陽性患者を報告する必要があります。当局には、ボブの接触者を追跡するためにすでに持っているリソース、データ、ツールを使用できる態勢が整っている必要があります。

これらの3つのステップ(届出義務のある指定感染症のリストがあること、指定感染症の患者を当局に通知するプロセス、およびこのような場合に免除されるプライバシー権)は、通常、それぞれの国で3つの異なる法律に対応しているため、何をすべきかは国ごとに異なります。

しかし、ボブの記録を当局に送信する国にとって、これは警察が犯罪者の携帯電話やクレジットカードのデータにアクセスしてその人物を特定し居場所を掴むことと同じです。当局はすでにそのようなことを実行可能であり、後に大きな問題となるような特別な権限を与えることなく、コロナウイルス感染者に対して同じことを行うことができるはずです。

GPSやクレジットカードのデータに簡単にアクセスできる技術的なソリューションがあるかどうかは関係ありません。接触者追跡担当は、この種の情報に既にアクセスできるはずです。それを人為的に困難にすることはナンセンスです。

私たちが知る限り、これが韓国のプライバシーのレベルであり、コロナウイルスの問​​題を解決する上では十分なものでしょう。韓国は、2015年のMERS発生後にこの問題のための特別法を承認しました。つまり、他の国でも同じことができるのです。

もう一度言いましょう。これは、世界中で発生した大規模な感染拡大を適切に阻止するための非常に貴重なツールであり、プライバシーに関する大がかりな議論を必要とすることではありません。これを成し遂げることに注意を向けるべきです。

しかし、この技術からはさらに多くのアクションが可能になります。本当のプライバシーの議論はそれについてなされるべきです。それは、当局はまだ正式に感染者とみなされていない人々のデータにもアクセスできるべきかという議論です。

追跡された接触者のプライバシー

図26.c:感染者へのインタビュー、感染者のGPS/クレジットカード/監視カメラのデータへのアクセス、および接触者のGPSデータとの照合を通して特定された接触者

(凡例)
●赤:感染者
●青:調査担当者とのインタビューで特定された接触者
□緑枠:GPSおよびクレジットカード情報をもとに特定した接触者
●緑:調査担当者が監視カメラにアクセスして特定した追加の接触者
●黄色:携帯通信事業者によるGPSデータの照合を通して追加で特定された接触者
●オレンジ:GPSデータの照合による誤検知(誤って接触者と判定された人)

ボブのクレジットカードと移動データに加えて、接触者追跡担当が携帯通信事業者からボブと接触した可能性のある人物のリストを受け取ったとします。

携帯通信事業者はいつでもあなたの位置を知っています。彼らはあなたの近くにいる他の人の情報と一緒にあなたの位置を記録することができ、2人の人が例えば10分間以上2メートルの距離にいたといった場合をすべて照合することができます。主要な携帯電話事業者が1つしかない国でも簡単にできますが、事業者が多い国でも、各企業が他の企業の顧客データは閲覧できないという状態を維持できるような方法で、そのようなデータベースを共同で作成することが可能です。

政府は、ボブのすべての接触者情報を取得するためのリクエストを送信し、非接触者の詳細情報についてそれ以上知ることなく、接触が発生した場所と時間を知ることができます。

誤検知がたくさん発生することが予想されます。例えばGPSは高度の測定は可能ですが、処理の過程でそのデータが破棄される場合もあります。その結果、今日の集合住宅では同じ垂直線上の部屋に住んでいるすべての人々があなたの接触者のように見えるでしょう。ただし、接触者追跡担当は、常に自室にいるケース、かつ感染者と同居はしていないというケースをすべて除外することにより、そのような誤検知のほとんどを防ぐことができます。

政府に提供されるこのようなデータこそまさに私たちが政府に取得してほしいと考えるデータです。つまり、感染者個人の移動データと、接触者の位置と一致した照合データです。この特定の状況で必要なデータを除いて、人々の移動に関する大量のデータにアクセスできるようになる人は誰もいません。携帯通信事業者もまた、通常手に入れられていた以上のデータにはアクセスできません。これにより、プライバシーを保護しながら接触者の追跡を強化できます。

この対策の欠点は、GPSが十分に正確ではないために、一部の接触者が見落とされ、接触者ではない人が接触者として追加される可能性があることです。米軍は望まないかもしれませんが、米軍の保持するより一層精度の高いバージョンのGPSデータへのアクセスを許可した場合、あるいはAIツールを使用した場合、GPSの位置情報をより正確にすることができます。GPSの精度が悪すぎる場合、このソリューションはまったく役に立たない可能性もあります。人口密度の低い地域でのみ有効な対策かもしれません。この対策を詳細に調査する分析はまだ出てきていませんが、楽しみにしています。

GPSのこのような限界が、多くの国がBluetoothアプリに飛びついた理由でした。

Bluetoothアプリが接触者の追跡に役立つために必要なこと

ここで、接触者追跡担当がボブのデータにアクセスでき、さらに市場で入手可能なBluetoothアプリから接触者データに頼ることができると仮定しましょう。

もし、あなたがBluetoothアプリに精通していない場合、ほとんどのBluetoothアプリは、人々がアプリをダウンロードして設定し、開いているときに、近くにいる人々がが同様のアプリを有効にしている限り、近くにいるユーザーの匿名コードを登録するように考えられています。これはAppleとGoogleが有効にすることに合意したものです。

ボブがこれらのアプリの1つを持っている場合、彼はコロナウイルスに感染していること、およびこの情報を当局に送信することを望んでいることを通知できます。

では、このようなアプリを使いたいと思う人はどれくらいいるのでしょうか?

第1回の記事を読んでいればシンガポールの公式BluetoothアプリであるTraceTogetherの普及率が20%しかないことをご存知でしょう。高い普及率を達成できるはずの別の国であるアイスランドでも、わずか40%の普及率しか獲得していません。インドは、5,000万人がダウンロードしたアプリをリリースしました。成功したように見えますが、これは人口の4%未満にしか過ぎません。

かなり楽観的に考えて、ほとんどの国がシンガポールよりも50%優れていると仮定しましょう(シンガポールの国民は非常に裕福で、誰もがスマートフォンを持ち、教育水準は非常に高く、人々は政府を信頼しているという環境なので、そんなことはあり得ないのですが…)。それでも、人口当たりのアプリダウンロード率は30%にしかならないのです。

図26.d:感染者へのインタビュー、感染者のGPS/クレジットカード/監視カメラのデータへのアクセス、およびBluetooth追跡アプリを持っていない感染者との照合を通して特定された接触者

(凡例)
●赤:感染者
●青:調査担当者とのインタビューで特定された接触者
□緑枠:GPSおよびクレジットカード情報をもとに特定した接触者
●緑:調査担当者が監視カメラにアクセスして特定した追加の接触者
◎ターコイズ:Bluetoothアプリを所持するユーザー

ここで、周りにターコイズ色の円があるドットは、これらのBluetoothアプリのうちの1つをダウンロードした接触者です。残念なことに、ボブはダウンロードしなかったので、この状況ではこれらすべては無意味です。これらのアプリの普及率が30%の場合、これは、70%の確率で起こります。

では、ボブが実際にアプリをインストールしていると仮定してみましょう。それだけでなく、ボブは非常に勤勉で、すべての設定が完了し、Bluetoothが常に有効になっているとします。

図26.e:感染者へのインタビュー、感染者のGPS/クレジットカード/監視カメラのデータへのアクセス、およびBluetooth追跡アプリとの照合を通して特定された接触者

(凡例)
●赤:感染者
●青:調査担当者とのインタビューで特定された接触者
□緑枠:GPSおよびクレジットカード情報をもとに特定した接触者
●緑:調査担当者が監視カメラにアクセスして特定した追加の接触者
◎ターコイズ:Bluetoothアプリを所持するユーザー

この場合、接触者追跡担当はボブの接触者のうち8人を追加できますが、それは必要な接触者の約15%です。なぜそんなに少ないのでしょうか?第一に、ボブの接触者の30%しかアプリを持っていないからです。多分もう少し多いかもしれません、なぜなら、ボブがアプリを持っているということは、ボブがアプリを使用する必要性を認識しており、彼の友人も彼のようになる可能性が高くなるからです。では、彼の接触者の40%がアプリをダウンロードしたとしましょう。しかし、彼らの多くは、それを開かなかったり、セットアップしなかったか、実行したがお互いに出くわしたときBluetoothは有効になっていなかったとします。

70%の確率でボブにはアプリがないので、その場合私たちができることは何もありません。たとえ、彼がダウンロードしていたとしても、開いていない、セットアップしていない、Bluetoothを有効にしていない、などの可能性があります。アプリをダウンロードしている人の50%だけが意図したとおりにそれを使用していると想像してみましょう。つまり、85%の確率で、接触者追跡担当は、関連情報を含むアプリを持っていない人に出くわしてしまうということを意味します。

残りの約15%の感染した接触者の15%のみがアプリを適切に機能させており、合計で約2%の接触者が追跡されています。

覚えておいてください、これは、ハンマー戦略からダンス戦略に移動するために追跡する必要がある接触者の70%〜90%に相当します。

しかし、それだけではありません!現在のアプリのセットアップ方法では、人々は自分の症状を自己申告し(大多数の人はこれを行ないません)、そのデータを能動的に政府に送信するかを決定する必要があります。

多くの善良な市民はそれを行いますが、行わない人も多くいます。データを調査担当者に渡した場合、家族や友人全員が検査され、多くが隔離されなければならないという結果になる可能性があります。あなたの夫や友人が、2週間以上家にいなければならないために仕事を失う危険があるのなら、あなたはこのデータを渡すでしょうか?

したがって、追跡される接触者の量が半分になる可能性があります。

これらの行動の1つ1つを行う人がどれだけいるのかは、誰にもわかりませんが、10年以上に渡って技術製品の採用に携わってきた私の経験上の推測は以下の通りです。

図27.a:標準的なアプリを介して、調査担当者が取得する接触者の割合(のイメージ)

(左から)全人口、スマートフォン使用者、アプリのダウンロード(1)、アプリを開く(2)、アプリのセットアップ(3)、Bluetoothの有効化(4)、識別された接触者の合計の割合(5)、調査担当者に接触者のデータを渡す割合(6)
(1)シンガポールのアプリの普及率は現在も成長中であると仮定したため、シンガポールの割合である20%の代わりに30%を使用しました。しかし、シンガポール国民の教育レベルや政府へ信頼のレベルを考慮すると、他の国がシンガポールが成し得たことを達成するのは難しいでしょう。
(2)人々の85%がアプリをダウンロードし、開いたと仮定しました。
(3)アプリのセットアップについても同様です。
(4)実際には、実際には、Bluetoothが有効になっている正確な時間ではなく、Bluetoothが有効になっているときに会った接触者の割合です。多くの人がいつもBluetoothを起動することは望まないと考え、私は60%と仮定しました。
(5)12%は、Bluetoothアプリが機能するために必要なすべてを備えている人々の割合です。これらの12%の人は、このようなアプリを持っている別の人に出会ったときにのみ接触者を記録しますが、これは12%の確率でしか発生しません。ですので、2%とは、12%に12%を乗算したものです。私は、クラスタリング係数を追加しました(なぜなら、アプリを持っている人は、アプリを持っている人に出会う可能性が高いからです)。
(6)50%の人が実際にアプリに症状を入力してから、友人や家族が2週間隔離されるという結果を知っている場合は、情報を調査担当者に送信を希望することを確認すると仮定しました。
赤字:調査担当者が接触者追跡アプリから実際に取得する接触者の割合

ここでは、この簡単なモデルで少し遊んでみましょう

私は楽観的だったかもしれないし、接触者追跡担当に引き渡された接触者の割合はわずか0.1%かもしれません。あるいは悲観的であれば、5%になっていたかもしれません。あるいは10%かもしれません。しかしいずれにせよ、現在のアプローチでは、我々が希望する70%〜90%に近づくことは決してありません。すべてのビットがカウントされていますが、このビットは非常に小さいビットです。

これを変えるにはどうすればよいでしょうか?まず、AppleとGoogleがOSのアップデートを作成し、それらが作業中であることを想像してください。ただし、アプリをダウンロードする代わりに、OSをアップデートするとすぐに、アプリはバックグラウンドで実行され、接触者をキャッチするように最適化されます。このような状況では、約50%の人がOSを更新する可能性があります。1ヶ月以内の通常の割合です。

仮に、そのようなアプリでも、ボブはまだ、自分が感染していることを能動的にアプリに伝えて、連絡先を当局に送る必要があると仮定してみましょう。それでも50%しかそれをしないと仮定してみましょう。

図27.b:オプトアウト形式※であり、最適化され、アクティブな感染通知を必要とするBluetoothアプリを介して、調査担当者が取得する接触者の割合(のイメージ)

(左から)全人口、スマートフォン使用者、アプリのダウンロード、オプトアウト、アプリのセットアップ、Bluetoothの有効化、調査担当者に送信される可能性のある接触者の合計の割合、ボブが感染したと自己申告した後に送信された接触者の割合
注記:人々の50%はオプトアウトする。ボブが感染したと当局に通知する場合を除いて、他は自動的に行われる。50%のケースで、ボブはアプリに自分が感染したと告げるであろう。
※オプトアウト:情報が配信される前提で、配信停止をするには受信者側から能動的にその意思表示をする必要がある配信形式。
赤字:調査担当者が接触者追跡アプリから実際に取得する接触者の割合

接触者はまだ10%程度です。何もないよりはましですが、それでも実質的ではありません。もっと上手くできるでしょうか?できます。

ここで、OSのダウンロードが自動的に行われていると仮定してみましょう。ユーザーはそれをオプトアウトすると決定するかもしれませんが、AppleとGoogleは毎日、あなたがOSをアップデートすることを非常に強く要求してきます。

また、ボブは法定伝染病にかかっているため、陽性判定時に接触者リストをアップロードするかどうかは選択できないと仮定します。リストのアップロードは彼のためなのです。

図27.c:デフォルトでインストールされており、オプトアウトしないよう強く奨励される、感染者を自動的にアップロードするアプリを介して、調査担当者が取得する接触者の割合(のイメージ)

(左から)全人口、スマートフォン使用者、アプリのダウンロード、オプトアウト(配信の停止)、アプリのセットアップ、Bluetoothの有効化、調査担当者に送信される可能性のある接触者の合計の割合、調査担当者に送信される接触者の割合
注記:デフォルトではオプトアウトで90%がインストールされる。

オプトインとオプトアウトの大きな違いを裏付ける多くの研究があります。

図28:オプトインとオプトアウトが臓器提供の同意の割合に与える差

縦軸:臓器提供に同意する人々の割合
横軸:国別の割合(左から)デンマーク、オランダ、英国、ドイツ、オーストリア、ベルギー、フランス、ハンガリー、ポーランド、ポルトガル、スウェーデン
茶色字:オプトイン採用の国々:人々は能動的に臓器提供に同意すると表明しなくてはならない
水色字:オプトアウト採用の国々:拒絶の表明をしないかぎり、臓器提供を前提としている

臓器提供の場合、その差は15%と99%との間です。接触者の追跡についても、ほとんどの人はオプトアウトしません。彼らがオプトアウトした場合、数時間ごとに新しい確認を求める、または数時間ごとに設定に移動してオプトアウトを確認するように求めるなど、再度オプトインに促すためにできることはたくさんあります。政治的な理由から、すべての国がオプトアウトで99%の普及率を達成できるとは限りませんが、これらのアプリを有用にしたい場合は、これが唯一の方法です。

図27.d:初期インストールされている場合の接触者特定アプリ使用率(ファネルのイメージ)

左から、全人口、スマートフォン使用者、アプリのダウンロード、アプリのオプトアウト(1)、アプリのセットアップ、Bluetoothの有効化(2)、調査員に接触者でーたを送信する割合
(1) それでも5%は何らかの方法で使用を停止すると想定
(2) ユーザー自身で無効化したりバッテリー切れしたりするためBluetoothが常に有効化されているわけではありません。
注:ここでもBluetoothを有効化しているユーザー同士が出会う割合を考慮しています(この図では81%の二乗)、さらにクラスター要素として25%増しにしています。
(赤字)この理論モデルでようやく流行を止めるために十分な割合の接触者を追跡できるようになりました。

要点は、Bluetooth追跡アプリを役立たせるためにはそのようなアプリを非常に高い普及率で浸透させる必要があるということです。ユーザーが各段階で行う意思決定は普及率を大幅に低下させます。しかし、高普及率を達成できれば、その見返りは驚くべきものとなります。

図26.d:Bluetoothアプリが初期インストールされている場合に特定される接触者

(凡例)
●赤:感染者
●水色:Bluetoothアプリを通して特定された接触者
●灰色:Bluetoothアプリを使用していない接触者
水色:Bluetoothアプリの使用者

感染者の判明後すぐに当局は関連する接触者全員のリストを(多くの誤検知と一緒に)手に入れることができます。ボブへのインタビューは簡単で、すべての接触者にすぐに電話をかけることができます。

そして、これを実現するのはそれほど難しいことではありません。以前私が紹介したAppleとGoogleの発表を覚えていますか?これらの企業が言っていることは、開発者がiOS端末とAndroid端末の間で簡単に相互通信できるBluetoothアプリを作成できるようにするということです。そして次にそのような機能をOSにに組み込みます。彼らはその機能をオプトインにする計画ですが、必要性が十分に明確で政府が強くそれを要求する場合、これはおそらくオプトアウトに変更したり、さらには強制的に有効化することも簡単にできるかもしれません。

まとめると、ハンマー戦略からダンス戦略に移行するには、接触者の追跡が、経済を再開させるのに十分なしきい値より上にある状態を維持することが重要だということです。もしオプトアウトする割合が20%から5%に減った場合、Bluetoothアプリによる接触者の追跡が機能するために十分な数の接触者情報が当局に送信されるようになるでしょう。

繰り返しになりますが、このセクションで使用しているすべての数値は実際の数字ではなく説明のための例です。それらの数値を使用して、接触者追跡技術の最も重要な成功要因が普及であるということを例示しました。

Bluetoothアプリの代替としてのQRコード

Bluetoothアプリ(またはiOSやAndroidに組み込まれている機能)は、これを行う唯一の方法ではありません。他にも興味深い代替案がいくつかあります。それらの1つは、Zerobaseが構築しているようなQRコードによるものです

乗客が2020年4月1日に武漢の地下鉄駅でグリーンパスを取得するためにQRコードをスキャンします。NgHan Guan / AP写真、Business Insider経由

建物に入るときに、QRコードをスキャンする必要がある場合があります。それをスキャンすると、その時点のその場所と、同じ時間にタグ付けされた他のすべての人とあなたを紐づけます。これらのコードは、建物の入り口、部屋、バス停、電車の車両など、どこにでも簡単に印刷して貼り付けることができます。プライバシーを保護する方法で追跡を行うことができます。

Bluetoothアプリとの違いはテクノロジーではありません。どちらもかなり素晴らしいです。違いは浸透度です。建物に入る際に、QRコードのスキャンを必須にすることができます。拒否したいのであれば、建物に入らないということになります。が、遵守する動機は強力です。Bluetoothアプリでも同様のことができます。建物に入るときに1つを開くことを必須とすれば、浸透率は十分に高くなる可能性があります。

まだ自己申告の問題があることに注意してください。ボブが感染していると判断されたときに、場所と接触者を当局に自動的にアップロードする方法が必要です。

たくさんの情報があるため、すべての長所と短所をまとめてみましょう。

出所 (ここには色盲の方のための青と赤の混合チャートが含まれています)

ご覧のとおり、Bluetoothオプトインを必要とするアプリは価値がないと思います。強制されていないQRコードの方が、少なくともボブがスキャンしてどこにいたかを記録できるので、少しだけまだ良いです。しかし、義務付けられていない場合、ほとんどの人や企業が使用しないため、記録される接触者はほとんどありません。

次は、手動の接触者追跡です。とにかく手動追跡が必要なので、そうすべきです。しかし、彼らは接触者の一部のみを追跡し、それは時間がかかります。彼らは結果として感染者とその接触者の両方のプライバシーを侵害します。

次に、接触者追跡担当への連絡を実質的に支援する一連の技術ソリューションがあります。ボブのGPSとクレジットカードデータへの自動アクセス、モバイルオペレーター主導のGPS一致の追加、青い接触者追跡アプリのオプトアウトなど、これらはどれもかなりの量の情報を非常に高速に、低コストでプライバシーに提供します。

最良のオプションは必須のQRコードまたはBluetoothアプリです。接触者を即時に洗い出し、一方でプライバシーは合理的に保護されます。というのも、当局が受け取る唯一のものはその人の情報と一致のリスト、およびそれらがどこでいつ発生したかだけであるからです。

これらのソリューションの場合、当局はこれ以上の情報を持つ必要はありません。数か月間のすべての動きを追跡してデータベースに保存する必要はありません。誰かが感染したことが分かった際の、過去2週間の照合です。

一部の人々は、このわずかなプライバシー情報でさえ眉をひそめるかもしれません。それについて話しましょう。

コロナウイルスとプライバシーについてどう考えるべきですか?

怖いです。

私たちの身の周りの、少しずつ知ってきたすべての世界は、ほぼ一夜で消えました。私たち全員が大切にしている仕事、生活、自由、友情は離されました。

だから、私たちがプライバシーの他に取り上げられたことについて話すとき、私たちは反応し、反抗します。私たちはそれを失いたくありません。

なぜなら、私たちは仕事、友情、自由が復活すると理解しているからです。しかし、プライバシーを放棄した場合、プライバシーを取り戻すことはできないと恐れているのです。

1984年を恐れている。

私たちは、政府が私たちのあらゆる動きを把握し、私たちの行動を評価し、すぐに何を考えるべきかを教えてくるようなAIに監視される世界を避けたいのです。中国のようにはなりたくない。

それは単なる理論的な悪夢ではありません。欧州連合の中心で、人々が注意していない間に、ハンガリーは独裁政権に成り下がったのです。そして、米国は依然として9月11日をきっかけに19年前に承認された愛国者法の下にあります。

この恐怖は私たちに警戒心を与える点で良いです。注目を集めます。私たちが有する自由を認め、それを守るために戦うことができます。もし自由を今日失うと、もう取り戻すことができないからです。

しかし、その恐れは不合理ではあり得ません。すべてを網羅することもできません。パニックに陥ってもいけません。

冷静に問題を見つめ、問題を分解し、合理的に行動を決定する必要があります。

まず最初の方法は、これはすべての人のデータではなく、感染者とその連絡先という2つの小さなグループのデータであることを理解することです。

感染者が持つプライバシーは既に異なります。多くの国ではすでに法制化されています。我々はそうしたい 感染者が感染の影響を減らすために当局と協力しないことを望むだろうか?ここでの唯一の議論は 彼らが守るべきプライバシーのレベルです。

ここでの提案は、感染者について知る必要がある唯一のデータは、過去2週間にどこにいたか、誰と一緒にいたかということです。直接聞くのは誤りです。GPS、クレジットカードの支出パターン、または必須のBluetoothアプリを介してその情報を取得することは、信頼性が高く、即時に行われますが、警察への露出を制限することで、誰も知ることができません。

彼らの接触者に関しては、彼らのプライバシー権は少し高いはずです。私たちは、彼らのクレジットカードの明細書、または彼らの全体のモビリティデータを必要としません。必要なのは、彼らが誰で、感染者との交流があったのか、どこで、いつ、どのくらいの期間あったのか、ということだけです。必要なのは直近の2~3週間の情報だけです。これらの情報は、必須のBluetoothアプリ、必須のQRコード、携帯電話事業者からの報告書、そしておそらく他のツールを使って収集することができます。政府はそれ以上のことを知る必要はない。ただそれだけです。

つまり、当局が収集できるはずのデータには制限があるということです。

  • 収集されるデータの制限:感染者から収集するのは、場所、彼らが誰と会ったか、どこでどのくらいか、です。彼らの接触者については、接触者、場所、期間だけです。
  • 時間制限:データは過去3週間のみアクセスできます。以前のデータはすべて削除されます。
  • アクセス:厚生省または同等の地域機関のみが、法的手続きの下で民間企業から、またはインタビューで調査官が収集したデータにアクセスできます。厚生省内のデータにアクセスできる人(調査官など)は明確に規定され、従業員がデータにアクセスするたびに追跡することにより注意深く監視され、堅牢な監査を受ける必要があります。
  • セキュリティ:すべてのPIIは医療基準に適合するように保護されます。
  • 明確に定義された終了基準:このデータが必要なのは、疫病が流行している間だけです。「流行」の定義は客観的に明確にする必要があります。例えば、人口の70%以上がワクチン接種や集団免疫によって免疫を獲得した場合、データ収集システムは自動的にシャットダウンされ、収集したデータは破棄されます。
  • 適切なプロセス:政府が意図しない方法でデータを使用した場合や、調査員が出した結論が不当であったり、不十分であったりした場合には、人々は法廷に訴えることができなければならない。
  • 透明性:収集されるすべての情報は明示的にする必要があります。また、名前や住所など、個人を特定できる情報(PII)をすべて除いたうえで公開する必要もあります。

プライバシーの専門家は、位置情報の履歴データを保護する方法について、より具体的な情報を提供することができます。例えば、企業や非営利団体、あるいはそれらのセットによって運営されているすべての連絡先を追跡することができます。彼らは、単に誰が隔離されるべきか、誰が執行のために隔離されるべきかを当局に伝えることができます。多分、人々は情報を共有することをオプトアウトすることはできませんでしたが、彼らはそれを与える誰に選択することができます。

私たちがこの問題を見ることができる第二の方法は、私たちが政府に持っていてほしくないデータを介してです。過去2週間の感染者との接触データを政府と共有することに対し、ほとんどの人は問題ないでしょう。望まないのは、政府が彼らのすべての動きを知ることです。

しかし、それはすでに可能です。

米国のような国で、IRS、DHS、FBI、およびその他の機関からの膨大な量のデータがすでにあるからというだけではありません。また、この情報の多くはすでに民間企業から入手できるためです。

ニューヨーク・タイムズ紙が報じたように、数十社(数百社とは言わないまでも)の企業が、ここで必要とされるデータよりもはるかに多くのデータを収集し、販売している。Google、Apple、Waze、Uber、IBM、Kiip、TheScore、Facebookなどの企業は、あなたがどこにいて、どこに行くのかを常に知っており、多くの企業がその情報を販売しています。

出典:New York Times

企業はすでに、ユーザーあたり5,000データポイントを知っていることを共有しています。それはあなたがあなた自身について知っている以上のものかもしれません。その情報は、匿名化されて売られていることもありますが、匿名化を解除する事も出来ます。そのため、企業、NGO、政府などと、既にオンラインで購入できる情報よりもはるかに少ない少量の情報を共有することについて議論していまその情報は、先週ランチでボブに会ったかどうかということを共有するよりもはるかに心配すべきことです。

この問題を解決できる3つ目の方法は、我々でオプションを購入することです。ここで説明するシステムの一部は依然として論争の的になる可能性がありますが、それでも、承認を待たずにすぐにでもシステムを構築したいと思うかも知れません。議論を解決するために何ヶ月も待っていて、突然新しい大流行が起こった場合、何兆ドルもの経済閉鎖か、スイッチを入れてこのテクノロジーを使用するかを決定する必要があるかもしれません。しかし、それが出来るのはテクノロジーが使える場合だけです。たとえば、すべての人々にBluetoothアプリケーションを使用する場合は、2〜3ヶ月にはそのオプションを利用できるように、今すぐそれを構築する必要があります。

最後に、私たちは失った他の権利との兼ね合いでプライバシーを考える必要があります。私たちは健康を失いました。私たちは経済を失いました。私たちは自由を失いました。もしほんの少しのプライバシーと引き換えにそれらを取り戻すことができるとすれば、それをどうして検討しないのでしょうか?米国で承認された2兆ドルの対策予算は成人1人あたり$ 10,000に相当します。あなたは、すでにFourSquareに提供している情報をほんの少し政府に提供するよりも、10,000ドル支払うほうがいいと本当に思いますか?

要約すると、非常に制限されている可能性がある少量のデータを共有したいだけです。これは、非常に少数の人々について、すでに公開されているデータや政府が利用できるデータよりもはるかに少ないデータです。私たちの健康、経済、自由、そして私たちの生活を取り戻すためです。

人間は孤立すべき運命にはありません。私たちはダンスすべき存在なのです。

このセクションは、@ Genevieve Geeの接触者追跡リサーチからのアイデアや情報によるところが多くあります。

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これは、私たちの記事、コロナウイルス:ダンス戦略の方法を学ぶの第3部です。第1部(英文邦訳)では、我々は台湾、シンガポール、中国、韓国からのベストプラクティスを紹介しました。第2部(英文邦訳)では私たちはマスクを議論しました。第4部では、検疫と隔離について説明します。第5部では、移動の禁止、集会の制限、経済的閉鎖について説明します。第6部では、すべてをまとめます。警告を含めて、それぞれに具体的な推奨事項を示します。ほとんどの国がダンス戦略にうまく取り組めていません。いまのままのやり方を続けるならば、彼らはシンガポールのようになるでしょう。

この記事は、リサーチ、情報ソース、議論、文章表現に関するフィードバックなどを提供し、私の主張と前提に異議を唱え、私に反対してくれた何十人もの人々の助けを借りた大規模なチーム作業により出来たものです。Genevieve Gee、Matt Bell、Berin Szoka、Carl Juneau、JorgePeñalva、Christina Mueller、Barthold Albrecht、Elena Baillie、Pierre Djian、Yasemin Denari、Shishir Mehrotra、Eric Ries、Kunal Rambhia、Jeffrey Ladish、Claire Marshall、Manik Gup 、Brian McClendon, Donatus Albrecht, 検査アンド追跡チームそしてその他多数の方々に特別の感謝の意を表します。これは、皆さんなしでは不可能でした。

あなたは米国におけるよび検査と接触者追跡に関する最新情報を知りたい場合には、Test And Traceをご覧ください。

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Tomohisa Kato
Tomas Pueyo

CEO of Zuitt, No.1 coding bootcamp in Ph & AI developer. Serial entrepreneur. Founder of RareJob, that is listed in Tokyo stock exchange market (TSE6096)