ブロックチェーンとは?

Tomo
15 min readJun 28, 2018

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ブロックチェーンや仮想通貨という言葉が巷で話題になってからしばらく経ちましたね。連日、新聞の一面を飾る主に仮想通貨関連のニュースも非常に多く感じます。それほどまでに世間的な関心・期待が高まっている当該技術ですが、その実際を理解している人はどの程度でしょうか?僕はからっきし。仮にいずれ技術がさらに発展して社会の重要なインフラとして機能し始めた場合、現在のインターネットのように、その仕組みや成り立ちを理解しなくても便利に使いこなせるようになるでしょう。しかしその結果だけを享受するのではなく、この社会の変革を当事者意識を持って見守る、又は参加する方がワクワクするし、面白そうだと感じたため、ちょっと勉強して見ることにしました。

今回は日本経済新聞出版社、翁百合・柳川範之・岩下直行編著の「ブロックチェーンの未来」を要約する形にしました。

出展)https://goo.gl/AqBvsp

そもそもブロックチェーンとは?

ブロックチェーンとは、一言で言うと「取引の履歴情報をブロックチェーンネットワークに参加する全員が相互に分散して保管維持し、参加者がお互い合意をすることで、そのデータの正当性を保証する分散型台帳(Distributed Ledger)」です。

ここで疑問となるのは、今までの台帳と何が異なるのかと言う点です。金融に限らず、様々な取引の記録を記入するために用いられてきた台帳ですが、昔の紙のものから現在の電子化されているものまで、全て特定の組織や個人が集中管理をしてきた、いわば中央集権的な考え方で運営されていました。例えば証券取引所などがそれに当たります。こういった従来の管理方式で問題になるのは、以下の点です。
①取引データなどを記帳するためのシステムの構築・維持・管理に多大なコストや時間がかかり非効率
②サイバー攻撃などにより、情報が失われる・流出・改竄されるなどのリスクがある。
③サイバー攻撃などによるシステムダウンを想定したデータのバックアップやBCP(Business Contingency Plan:事業継続計画)対策に多大なコストがかかる。

これに対してブロックチェーンの発想では、上記の定義のように取引履歴を記録するデータベースをネットワーク参加者で保有し管理を行う、分散管理を基本的な考え方とします。ネットワークに参加しているコンピュータ(ノードと言う)がPeer-to-Peer(中央サーバを経由せずに個々の端末が互いに接続することで成り立つネットワークのこと)で直接接続し、モノやカネの取引履歴を共有します。

ブロックチェーンのメリット

では以上の中央集権型の考え方と比較して、ブロックチェーンを使うメリットとは何でしょうか?それらは以下にまとめられます。

①障害につよく、コストがかからない
分散型ネットワークの特徴として、その柔軟さと、柔軟さがゆえの強靭さがあります。(ここは「IoTとは?2」にも近い考え方が載っているので、よければご参照ください。)一部のノードがダウンしても他のノードが情報を共有しているために、問題が大きくなりにくいです。そのため、現在中央集権的に管理している主体が払う、システムダウンを想定した際のコストを、誰も負担する必要がありません。

②データの改竄が難しい
ブロックチェーンはカネやモノの取引情報を電子データとしてブロックとして集約し、それらのブロックを連鎖させます。そのため、過去の取引を改竄しようとした場合、それ以降に連なっているブロック内容を全て書き換えねばならず、さらに全ノードのブロック内容を書き換える必要もあるため、データ改竄が非常に困難です。

③仲介者がいないために低コスト
例えば現状国際送金をする場合、国外・国内銀行などの仲介者を挟むためにコストが非常に高くつきます。一方でブロックチェーンで国際送金を行う仕組みを作った場合、その分の取引手数料が省かれ、安価になります。また、中央集権的な仕組みの際に、取引データなどを記帳するためのシステムの構築・維持・管理を行っていたような主体がいないため、その管理コストも下がります。

④複雑な契約を自動化できるスマートコントラクト
これら①〜③のメリットを活かし、ブロックチェーンでの取引内容にスマートコントラクト(当事者間の私的契約をプログラム化し、ブロックチェーン上に記述、これを自動的に執行する仕組み)を載せれば、取引に付随する複雑な処理を自動的に行えることになる。これによって、従来取引に付随していた膨大な手作業などのマニュアル処理が不要になります。

管理者不在で取引履歴の整合性が成り立つ仕組み

では中央で責任を持って統括している人間がいないにも関わらず、どうやって取引データの整合性を保っているのでしょうか?答えは、コンセンサス・アルゴリズムと呼ばれる、データの整合性についての合意を得るための計算方法を活用することです。
例えばブロックチェーン技術を使用した仮想通貨であるビットコインは、PoW(Proof of Work)と言うコンセンサス・アルゴリズムを使用しています。ビットコイン取引の整合性を確認するには、マイナー(採掘者)と呼ばれる人々が、大量の電力を消費してコンピュータに計算をさせて、マイニング(ブロックチェーン上で行われた取引の記録作業)競争をします。その競争の勝利者(何が勝利の条件かはちょっと技術的になりすぎるので割愛。とにかく大量の計算を行う必要が有るってことらしいです)が新たなブロックを生成し、以前のブロックチェーンに結合させます。そうすると勝利者にはマイニング報酬が渡される仕組みとなっており、ネットワーク参加者に計算競争への参加意欲を持たせるのです。

ブロックが生成されると、他のノード達の多数決によってそのブロックの承認作業が行われます。ブロックチェーンネットワークの過半数のノードによって承認されればそのブロックは正当なものとみなされます。このようにして生成されたブロックをノードが多数決で承認しながら、常に正しいブロックが同期されるような合意形成(コンセンサス)を行うことで台帳への記録作業が行われているのです。

この仕組み上で不正を働こうにも、世界中に無数に存在するノードの計算能力を上まる計算能力を保有する必要があため、ハッキングへの意欲を低減させられる仕組みなのです。このように、PoWと言うコンセンサス・アルゴリズムにより、人々が合理的な選択の結果として正しい取引記録を行う仕組みを確立したことで、管理者が存在せずとも、取引の記録作業が自律的に維持されているのです。

ちなみに、コンセンサス・アルゴリズムには他にも、以下の形式などがあります。
PoS(Proof of Stake):コインを持っている割合でブロック承認の権利を認めるもの
PoI(Proof of Importance):ノードごとの取引額や残高を指標に、個別のノーの重要性を計算し、より重要なノードの承認の優先権を与えること
PBFT(Practical Byzantine Fault Tolerance):参加者のうち3分の2の合意により書き込みが行われる仕組みで、高速な合意形成が可能

ブロックチェーンと分散型台帳技術(DLT: Distributed Ledger Technology)

ここで、ほぼ同一のものにも関わらず、分けて説明される場合があるなど、定義が曖昧なブロックチェーンと分散型台帳技術(以下DLT)の関係性について補足します(公式に合意された定義はありません)。それはビットコインの歴史を振り返ることで解明されます。まず「ビットコインは、ブロックチェーン技術によって作られた仮想通貨の一つ」と言う説明がよくなされますが、その実、ビットコイン→ブロックチェーン→DLTと言う順番があります。具体的には、ビットコインが注目を集め、類似の技法で新たな仮想通貨が開発されるようになると、技術面に着目したそれらの総称として「ブロックチェーン」と言う言葉が使われるようになりました。その後、その技術が仮想通貨以外にも適用されるようになると、ブロックチェーンという言葉よりも汎用的な印象のあるDLTが使われた、という流れです。

この歴史的背景の関係上、ブロックチェーンは比較的仮想通貨に用いられることが多く、DLTはその応用として様々な場面(金融機関、政府、企業など)で使われる技術として用いられているのです。

ブロックチェーンは現在どのように使われている?

さて、ブロックチェーン技術についての概観を眺めましたが、次は実際にブロックチェーン技術が現在どのように使われているかを見てみましょう。

仮想通貨

ブロックチェーン技術が初めて使われたのが、前述の通り仮想通貨のビットコインです。2009年から使われはじめましたが、現在の仮想通貨の種類は2018月4月時点で約1600種類と言われています。仮想通貨は信頼のおける法定通貨のある国においては、法定通貨にとって変わられることが想定されている訳ではありません。しかし法定通貨と比較した際に、仮想通貨の利点としては、以下のようなものがあります。
①デジタルに取引履歴を追えることから、マネー・ロンダリングなどの対策に優れている
②受け渡しに仲介者を挟まないために、プライバシー対応が可能(後ほど述べますが、一方でデータを分散管理するため、逆にプライバシー保護が難しいという論点もあります。)

政府のプラットフォーム

ブロックチェーン技術により、金融に限らず、様々な取引データ履歴(個人の健康情報、不動産などの財産の所有権、納税情報など)をより安全・安価に保管・利用できるというメリットがあります。この点を活かして、政府などの公共部門での活用が始まっています。代表例は、エストニア電子政府です。

バルト3国が一つエストニアは、その電子政府への取り組みで注目を集めています。国民の個人IDを活用することで、住民情報やカルテ、納税、投票などの様々な行政サービスを電子化しています。これは、エストニアの企業であるガードナー社が提供する同社のブロックチェーン技術による「X-Road」という既存のレガシーシステム同士を結ぶ相互連携ネットワークが基盤となっており、各省庁が個別にもつデータベース同士をインターネットを媒介に繋げることにより、相互参照を可能にすることで成り立っています。ガードナー社のブロックチェーン技術は、大規模に分散されたデータの改竄をリアルタイムに検知することが可能であり、その事実が、電子政府に対する国民からの安心感・信頼感を醸成しているのです。

金融商品や商取引のインフラ

例えばエストニアのファンダービーム社は、スタートアップに対する投資を募る仕組みをブロックチェーン上で提供しています。投資額に応じてトークン(ブロックチェーン上で発行した独自コインのこと。法定通貨と同様、流通しなければ価値はないが、広く流通すると価値をもつ)を発行し、流通市場で売買することを可能にします。つまり、スタートアップ企業が成長してExit(M&AやIPO)を待たずして、投資資金を流動化して、投資家の間で売買できる仕組みを作ったのです。

さらに英国のエバーレッジャー社は、ダイヤモンドが鉱山から消費者の手にわたるまで、勘定情報や取引履歴・移転証明をブロックチェーン上で記録・管理する仕組みを提供しています。これにより、古くからあったダイヤモンド取引市場での盗難や鑑定書の偽装、宝石にかける保険金詐欺などの問題を解決しようと試みているのです。

日本でもブロックチェーンを用いた種々の実証実験が行われていますが、以上のように、海外では実際のビジネスや公的セクターのシステムとして、ブロックチェーン技術が使われてきているのです。

ブロックチェーンが社会基盤となるために

ブロックチェーンの課題

インターネットと同程度の発明ともてはやされ、様々に応用されることで社会を大きく変えることが予想されているブロックチェーンですが、以下のような様々な課題を抱えています。

①技術自体の課題

A.大量の取引に対応できなくなる
これはスケーラビリティ(拡張性)の問題です。ブロックチェーンの取引が多くなるに連れて、ブロックに格納するデータの容量が大きくなってきます。その際にノードに必要なディスク容量・ネットワーク資源・マシンパワーが大きくなるため、ブロックチェーンの処理速度が遅くなったり、ネットワークに参加できるノードが限られたりします。このため、情報をコンパクトに格納するなどの技術的対応が必要とされています。

B.プライバシー保護と分散管理の両立が難しい
台帳をネットワーク参加者で持ち合うことによる透明性がブロックチェーンの特徴ですが、情報(例えば保有する証券情報など)によっては秘匿性が必要な使いかたが求められる場合もあります。秘匿性を確保しつつ、分散保有する方法の確立が必要です。

②合意の手法に関する課題

A.即時性の必要な取引には向かない
コンセンサス・アルゴリズムの1つであるPoWでは、データの整合性と処理効率のバランスから、10分ごとにブロックが作成されるように調整されているため、即時性の必要な取引には向きません。その課題に対応した他のコンセンサス・アルゴリズムが開発されています。

B.本当に低コストになるのかが不明
PoWを利用する場合、電力などシステム全体を見たさいに、結局コストが本当に低くなるのかがわからない。最終的にそのコストを使用するのは利用者になるのではないかという見方も根強いようです。ムーアの法則(インテル創業者の一人であるゴードン・ムーアが、1965年に自らの論文上で唱えた「半導体の集積率は18か月で2倍になる」という半導体業界の経験則)で急速に進化するPCの処理速度があれば、あえてブロックチェーン技術を使う必要もないのではないかとも言われています。結局そこは、得られる便益とコストを冷静に比較して決められるのでしょう。

③事業化する際に生じる課題

A.周辺のアプリケーション機能の開発や標準化が必要
例えば銀行の勘定系システムにブロックチェーンを導入したとしても、口座開設や残高照会、入出金明細といった各種のアプリケーションを新たに開発し、その勘定系システムに対応できるものとする必要があります。なぜなら、現在使われているそれらのアプリケーションは、ブロックチェーン技術を利用した勘定系システムとの利用を想定して作られてはいないからです。

B.契約では想定しない事態への対応が難しい
全ての事象を予想して網羅的にスマートコントラクトを定めておくことは難しく、スマートコントラクトの記述を利用して違法とは判断できないレベルでハッキングが行われる可能性があるのです。その例として、The DAOの問題があります。

ブロックチェーンが今後社会をどのように変えるか

①公的セクター
エストニアのように、政府が電子化する助けをブロックチェーン技術が担うことが考えられます。省庁間でのデータ相互利用を可能とすることや、現在先進国の中で非常に効率の悪い税徴収を効率化することによって、政府の仕事が大胆に効率化することが期待されます。

②民間ビジネス
先ほど紹介したファンダービーム社やガードナー社のように、ブロックチェーン技術によって新たなビジネスモデルが確立されて行くことが予想されます。またブロックチェーン技術はIoTとも親和性が高いと言われており、その応用が期待されています。ブロックチェーンとIoTが繋がることで、IoTによって得られた膨大なデータが安全に管理され、その情報に基づくスマートコントラクトでの制御、安全な決済などが期待されます。これによって、サプライチェーンや物流の効率化、シェアリングエコノミーの発展やヘルスケア分野などを飛躍的に発展させうる可能性があります。

③金融ビジネスでの取引効率化
決済手段に限らず、海外送金や貿易金融、証券取引など種々の取引がブロックチェーン技術を使用することによって、コスト削減や迅速性確保など、効率化が測れると考えられています。日本に限らず海外の金融機関に置いて、様々な実証実験が行われています。

まとめ

・ブロックチェーンは従来の中央集権的な考えとは真逆の、分散管理をコンセプトとしている。それはまるで、人間の脳内にある多数のニューロンが、相互に働き合いながら人間を動かしているようなもの。
・障害に強い、改竄されにくい、仲介者がいないためコストが安いというメリットがあります。
・ブロックチェーンは仮想通貨のみならず、DLT(より広義の捉え方)として、民間・公的セクター関わらず実務レベルで使用されています。もうただの絵空事ではなくなってきているのです。
・一方でインターネット並みの革命とはもてはやされていますが、社会基盤となるためには解決すべき課題がいくつか有る。

ブロックチェーンについてのご理解は少しでも深まりましたでしょうか?このように基礎を調べて見て、実際にじゃあどんなスタートアップがいるのかを見るのは、すごく面白いです。この時代の流れを一緒にワクワクしながらみて、参加していきましょう!

Tomo

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