IoTとは?1

Tomo
8 min readJun 13, 2018

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世間一般でIoT、IoTと騒がれるようになりしばらく経ちました。IoTとはInternet of Thingsの略であり、「モノのインターネット」だということはわかるんだけど、概念的すぎるが故にそれ以上のことが分からないという方も多いのではないでしょうか?

今回は坂村健氏著「IoTとは何か?」を元に、改めてIoTとはなんたるか、現状は、そして今後どのような課題を解決し、どのような社会を描いていくのかをまとめました。

IoTとは何か

IoTとは言葉通りにとれば「モノのインターネット」ということで、モノをインターネットにつなぐというイメージで捉えられがちではありますが、その本質としては「インターネットのように」会社や組織や所有者の枠を超えてモノが繋がれる、オープンなインフラを目指す言葉と捉えるべきです。

この「オープンな」という形容詞が非常に大切であり、また今後解決していくべき課題でもあるのですが、それは「IoTとは?2」で解説します。

そんなIoTですが言葉自体は近年耳にし始めた感がありますが、そのコンセプト自体は前々からあったのです。それは2000年代前半ごろに構想された「ユビキタス社会」なのです。”Ubiquitous”は「神は何処にもおわす」というラテン語に起源を持ち、「どこにでもある=遍在」という意味です。「いつでも、どこでも、何でも、誰でも」がコンピューターネットワークを初めとしたネットワークにつながることにより、様々なサービスが提供され、人々の生活をより豊かにする社会というコンセプトです。

簡単な話、「ユビキタス社会=IoT」であり、呼び方が異なるだけでその本質の概念は同一です。IoTという言葉自体は技術系の専門用語に見えて実際のところは結構曖昧な言葉です。こういった言葉を「バズワード」と言います。バズワードとは具体的な定義がないままに新規の専門用語のように現れ、広くイメージ先行で流行する用語のことで、姿がみえないのにも関わらずブンブンと音の聞こえる蜂の音になぞらえて作られた言葉です。

当時のユビキタスよりもIoTという用語が流行っている背景には、現実味の違いがあるでしょう。実際に2000年代前半に比べて我々を取り巻くネット環境は大きく進歩し、「いつでも、どこでも、何でも、誰でも」がコンピューターネットワークを初めとしたネットワークにつながる世界が現実味を帯びてきました。みんながその変化を感じてはいるけれども、でもそれをどう表現していいかが分からない時に、その曖昧な何かを指す言葉が生まれることでみんながそれに飛びついてバズワードが一気に広がります。社会的な潮流に名前がつくことで、社会の中でそれが伝わりやすくなり、それに向けた開発やビジネスが多方面で加速し、その成果が具体的に現実に影響を与え始めます。そうして、結果的にその概念に対して具体的な定義が社会で醸成されていくのです。
まとめると、①みんながなんとなく認識している社会的な潮流が生まれる②具体的定義のない用語が生まれる③それがバズワードになる④バズワードがそれに関する開発やビジネスを加速させる⑤バズワードに具体性がついてくる、という5段階の流れがあります。
IoTに関していうと、現在は③から④の段階でしょう。つまり、IoTに関してはイメージ先行なので、その実際が分からなくて仕方がないのです。今後④が広く行われ、その後に⑤具体性がついていくでしょう。

オープンなインフラとなるIoTは、技術的な側面が重視されがちですが、実際のところそれ以上に社会的な変革が必要なのです。だからこそ、多くの人に認知してもらえるバズワードの登場は重要なのです。

IoT実用化の可能性

IoTの概念を明確に想像しやすいように、IoTが実用化した際にどのようなことが可能になるのか、いくつか例を見てみましょう。なんとなくIoTと聞いたら想像するであろう、「携帯のアプリ一つで家の中の電化製品を全部制御できてしまう」以上にわくわくする可能性がたくさんあります。

2020オリンピック、IoTで実現するホスピタリティ

2017年の外国人旅行客数はおおよそ2800万人と発表されており、東日本大震災の発生した2011年の600万人から比べると、約5倍弱の伸びです。そして2年後にはオリンピックを控えており、更に爆発的に訪日外国人が増えることが予想されます。そんな中で日本のおもてなし体制は万全と言えるでしょうか?やはり言語の壁を基本に、不安はまだまだ残るでしょう。

そんな中、非接触IDカードを使ったIoT施策による個人識別個人属性の流通による解決策が提唱されています。すでに電車・バスなどの交通機関に限らずショッピングなどでも広く利用され、累計発行枚数が1万枚を超えている既存のインフラである交通系ICカードを使用します。この交通系ICカードを旅行客に配布し、クラウド上にそのIDカードに紐ずいた個人の属性情報をためておき、例えばカードを飲食店の端末で読み込んだ際に、IDカードによって個人を識別し、「魚は食べられない」などの属性情報を引き出せるようになれば、個々人に最適化したサービスの提供が可能になります。
また他にも、買い物時に外国人客がIDカードをかざすだけで、パスポートを含む免税のための情報がクラウドに蓄積され、帰国時に空港の免税手続きの際に、再度IDカードをかざすだけでそれまでの買い物の記録をまとめられ、免税手続きが自動一括で処理される、という使い方もありえます。
更に、駅に置かれたデジタルサイネージにカードをかざすと、またクラウド上に保存された種々の属性情報を元に、自動で最適な道案内が行われるというものも考えられます。例えば渋谷から滞在先ホテルまでの行き方を、その人の使用言語で、その人に合った文字の大きさで表示も可能です。

このように、人の属性情報とモノを繋げることで、おもてなしの質を向上させられる可能性があります。

これは、従来のCRM(Customer Relationship Management)と対極をなす、VRM(Vendor Relationship Management)という新しい概念の登場を意味します。
CRMではサービスベンダーが主体となって顧客を管理するという発想の元、ポイントカードなどを用いて顧客を囲い込んできました。
VRMでは逆に、顧客が自らの属性情報を管理し、どのベンダーに流すかを管理します。今回の例でいうと、IDカードを媒介にクラウド上に自身の属性を主体的に管理し、そこから複数のベンダーに対して(飲食店と交通)それらの情報を利用することを許諾するので、複数のサービスを顧客視点から組み合わせて使用することが可能になります。

トレーサビリティの強化

トレーサビリティとは、ある製品の原料から消費されるまでの工程を記録し、流通した後でもその記録をたどって追跡できるようにすることです。トレーサビリティには2種類あり、流通後にその流通の川上まで遡る「トレースバック」と、製造工程で問題が発生し、その製品を回収しなければいけなくなった際などに、その製品がどこに売られたのかなど、流通の川下に向かって追跡する「トレースフォワード」があります。

例えばワクチンに対して個々を識別できるような電子タグをつけたとしましょう。保管温度に敏感で、適温での保管がなされなかった場合にその効力が失われるワクチンがあります。IDで個体識別ががなされていない場合、正常なワクチンと、適切な保管がなされておらず効力のなくなったワクチンとの違いを把握することが難しいでしょう。その結果、1本でも不適切なワクチンが見つかった際、全てのワクチンを廃棄しなければならないといった事態が起こり得ます。
一方個体識別がなされている場合、適切に保管されていなかったワクチンと適切に保管されていたワクチンが一緒に置かれていたとしても、埋め込まれたセンサーによって測られた個々のワクチンの保管温度の記録などがクラウド上に保存されているため、IDからその情報を参照することで、個々のワクチンの属性を識別できます。これによって不適切な1本のワクチンのために、他全てを廃棄しなければならないということはなくなるのです。これがトレースバックです。

また、例えば牛乳に個体識別番号を付与する場合を考えてみましょう。牛乳を大量に生産する工程の一部で、問題が発生しました。しかし当該牛乳はすでに出荷され、スーパーに並べられているとします。その際にクラウド上に保存されている個体識別番号に紐づけられた情報に対して「製品欠陥のため回収します」という情報を工場側が付与したとします。消費者や小売店は携帯端末などで牛乳の電子タグを読み取ると、「製品欠陥のため回収します」という情報がリアルタイムで得ることができるため、事故を回避できます。これがトレースフォワードです。

これらはほんの1例ですが、IoTによって様々なことが実現可能なのです。しかし、技術の発展のみでは実現はできず、前述の通り社会的な変革が必要なのです。具体的には次回ご説明します。

まとめ

・IoTとはオープンなインフラとなるもの
・2000年前半のユビキタス社会=IoT
・IoTが普及するには技術的進歩のみならず、社会的変革が必要。そしてIoTがバズワードとなった事実は、社会的変革の達成にひと役買う
・様々なIoT実用の可能性がある

長くなってしまうため今回はここまでとしました。

次回は、IoTの現状とこれからの課題を中心に書き、IoTとは?を完結させたいと思います。

トモ

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