WEB3.0への足りないピース

Ryo Tanaka
Aerial Partners
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9 min readJan 28, 2019

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Photo by Kevin Ku on Unsplash

WEB2.0からWEB3.0へ

現在我々がつかうWEBは「WEB2.0」であるといわれています。

定義にもよりますが、2000年代からの通信スピードの高速化、AppleのiPhone登場、Facebookのソーシャル、Amazonのクラウドが揃ったことで生まれた、2019年の現在に至るまでつづく大きな流れです(*1)。

WEB2.0とは、読み―書き―公開が誰にでもできるようになった時代といって良いでしょう(*2)。

WEB2.0を代表するのが、GAFAと呼ばれる、現在のネットの覇者Google,Amazon,Facebook,Apple.

こうしたネットの巨人たちは快適なサービスを提供してくれる一方で、多くの個人情報を収集しています。集めた情報は大きなお金を生み出し、これら企業を急激に成長させました。また同時に、彼らは世論を大きく操りうるほどの巨大な権力を手にしています。

我々は快適なサービスを受けるかわりに、プライバシー、個人情報を犠牲にしている状況ということができます。

人々の生活を大きく進歩させたWEB2.0ですが、課題もみえてきました。巨大ネット企業に個人情報が集まりすぎて、現実社会の政治や思想に影響力を持ちすぎているのが現在のWeb2.0の課題。

そこで、非中央集権型のブロックチェーン技術によって、より人間中心でよりプライバシーの高い、WEBが本来目指していたかたちを目指そうというのが『WEB3.0』の考え方です。

イーサリアムを中心としたWEB3.0

イーサリアム・コミュニティでは、WEB3.0を目指すという意識が強いようです。 イーサリアム共同創業者でCTOをしていたGavin Woodは、2014年に『ĐApps: What Web 3.0 Looks Like』という記事の中でĐAppsを中心とするWEB3.0の世界観を表明しています。その後彼はWEB3ファウンデーションを創立し、WEB3サミットを開催しています(*4)。

イーサリアムのファウンダーJoseph LubinもよくWEB3.0へのビジョンを語っています(*3)。

WEB3.0の考え方自体がそもそもイーサリアムコミュニティからブロックチェーン領域に持ち込まれたものと考えることができそうです。

WEB3.0への道のり

WEB3.0に移行していくには、どんなことが必要でしょうか?

現在のブロックチェーンでは、次のような課題があります。

・遅い ― トランザクションの処理スピードが遅い、同時にさばける量も少ない。

・使いにくい ― ブロックチェーンを利用するための優れたユーザインターフェースがない。

・プライバシーに欠ける―トランザクションが丸見えになっている(この点は別の記事にまとめています→なぜビットコインの最大の課題はプライバシーなのか?)

・仕様が未確定 ― どのブロックチェーンが主流になるのか不明。また、各チェーンの仕様も未確定。

WEB3.0がWEB2.0よりも便利になって使われていくためには、こうした課題を解決していかなければなりません。

現在われわれはGoogleなどの快適なWEB2.0のサービスを利用しています。こうしたサービスよりもWEB3.0のĐAppsによるサービスが便利でなければ、多くの人はĐAppsに乗り換えることはないでしょう。使い慣れたサービスから新たなサービスに移行するには、10倍以上便利である必要があるという指摘もあります(*5)。

ĐApps(非中央集権型アプリケーション)をWEBで日常的に使うには、まだまだブロックチェーンの性能が発展途上であり、10倍良くなるどころか10倍以上不便なのが現状です。

WEB3.0への大きな流れが生まれはじめていますが、発展の土台はまだ完成しておらず、道のりはまだまだ長いものと考えるべきでしょう。

WEB3.0はいま使えるのか?

それでは、現在WEB3.0は全く使いものにならないのか?というと、それもちょっと違うようです。

①少ない取引回数で、②大きな価値の移転を行う場合には、現在のブロックチェーンの性能でも十分使うことができます。

この点は、現在のブロックチェーンは高額決済に向いていることについて、別の記事でまとめています。

では、高額決済が向いているのってどんな領域でしょうか?

最初に生活に影響する領域は“金融”

まず、思いつくのは金融です。金融領域では、一つの商品価値が高く、大きな価値の移転を少ない取引回数で行うものが色々と考えられます。

例えば、不動産を証券としてトークン化するケース、株式をトークンとして発行するケースが考えられます。ステーブルコインやデリバティブなどの金融商品を発行することも考えられるでしょう。

証券型トークンを発行することをSTO(Security Token Offering)といい、現在アメリカを中心に、規制当局とも交渉を重ねながら実現しようとしています。

こうした金融領域でのĐAppsを“DeFi” (Decentralized Finance. 非中央集権型金融)と呼ぶこともあるようです。

実は、イーサリアムのホワイトペーパーを読んでみると、非中央集権型アプリケーションの例の最初に金融領域が挙げられています(*4)。

こうした金融領域から人々の生活にも徐々に影響が広がっていき、WEB3.0ははじまるのではないでしょうか。

WEB3.0への足りないピース

WEB3.0が実現するためには、高速で大量のトランザクションを処理できるブロックチェーンが必要であり、まだまだ大きな課題があります。

金融領域以外にも、ゲームが登場してくると思いますが、高速かつ大量のトランザクション処理はむずかしいので、スマートコントラクトをなるべく使わないようなゲームの開発が、しばらく続くことになりそうです。

2007年にiPhoneが登場したときを思い出してみましょう。動作が遅いしアプリケーションも少なくて今のような価値はまだなく、多くの人が今ほどの評価はしていませんでした。ブロックチェーンも同じように、数年かけて性能が向上しアプリケーションが揃ってくるに従って、多くの人が評価して使うようになるでしょう。

WEB3.0への足りないピースは、

・高性能なブロックチェーン(スマートコントラクト・プラットフォーム)

・トランザクションを秘匿するプライバシー技術

・その上に作られるアプリケーションの充実

・そして、そのために必要な時間、たぶん数年〜10年スパン

ではないでしょうか。

WEB3.0はある日突然あらわれる訳ではなく、技術進歩とアプリケーションの充実によって、徐々に実現されるものだろうと考えています。

WEB3.0の原初のかたちは、金融領域からすでに生まれつつあるようです。

僕たちAerial Partnersは、いまブロックチェーンが何に使われていて、次のユースケースがどこに生まれるかを考えています。そこで必要とされるってなんだろう?を掘り下げていき、みんなに使ってもらえるプロダクトをつくっています。

WEB3.0はどんなかたちで現れるでしょうか?ぜひ一緒に議論しましょう。

▽興味をもってくれた方こちらから連絡ください

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Ryo Tanaka
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