岡野八代さんの『フェミニズムの政治学』が出たのがもう12年前で、その時もとても衝撃を受けたのだけれど、そこで提案されている考え方は当時とても荒唐無稽なものに思えて、現実にする手立てを想像することもできなかった。
チリを一週間ほど訪れるとこになり、ヒメナに旅程を考えてもらっていたらしばらくして、「南にある自分の生まれ故郷で講演を頼まれたのでいっしょに行かない?」とメッセージが来た。
ゆえあってジュネーブに行くことになった。なんと初めてのヨーロッパだ。ぼくは思春期の頃からヨーロッパの文化が好きで、イタリアや、フランスの映画を観て育ち大学ではフランスの現代哲学を勉強した。
「井上さんは野宿仲間なんだよ」、初めての人によくそうやって紹介してくれて、そのときに相手の頭の中に「野宿?」とはてなマークが踊るのをちょっと楽しんでいるようなところがあった。まずはぼくにとってそうやって紹介してくれる古い戦友がいなくなるのがとてつもなく寂しい。