【完全版】D2Cビジネス 成功へ導くグロースハック術と事例集 Part3

DG Incubation
BLUE DOTS
Published in
17 min readFeb 20, 2018

本記事は、Part3です。Part1Part2はこちらからご覧になれます。

本記事は著者の許可を得て、CB InsightsのDirect to Consumer Strategies記事および個人リサーチ(Tetsuro Miyatake and @mikirepoによって書きました。

6.Glossier(グロッシアー)

150万人のブログ読者から$35Mの資金調達へ

エミリーは、Vogue社のインターンをしながら「Into the Gloss」という個人ブログをやっていた。セレブや著名の女性にメイク方法やTIPSを聞き、その内容をよりカジュアルにそして親しみやすいように書くことだ。

瞬く間に彼女のブログは人気になり、毎月150万人のユーザーが訪れるようになり、Glossierを創業。年間600%の売上増の秘密は彼女のブログだった。

左がブログ、右がサービスのトラフィック。ブログのトラフィックがサービスに移行したことがわかる。

新商品をリリースするときには、ブログの読者から意見をもらう。実際にMilky Jelly Cleanserという商品の発売の際には過去に投稿したユーザーからの声(400件)を取り入れいた。

ブログはヒアリングだけでなく、それ以上に購入確度が高いユーザーが集まっていることが強みだ。Into the Glossを読んでいるユーザーの購入率が読んでいないユーザーの購入率より40%高いことがわかった。

それぞれの肌の色に合わせたマッチング技術でCV率アップ

D2Cのいいところは、オンラインで簡単に宣伝ができること。Glossierは流入が多いブログを利用してユーザー各々に合ったシェードを見つけてくれるオンラインのスキントーンマッチングツールを始めた。

ネットでコスメを探す人は増えていたが、実際の購入はやっぱり店舗だった。それはもちろん実際に試さないと自分の肌に合うか分からないから。Glossierはその課題を解決するためにマッチング技術を開発。プロダクトを選ぶ際にどのシェードが適切かわからない際に「matcher」を開き、自分の写真をアップロードするとGlossierのツールでどのシェードが一番肌色と合うかをレコメンドしてくれる。

Glossierは実店舗やポップアップ店を開いてブランド認識を広げているが、自社で開発したスキントーンのマッチング技術はMacy’sのメイクアップカウンターと同じように新規顧客を引き寄せる力、ユーザー体験を作った。Macy’sなどデパートとの大きな違いは、オンラインで急成長しているスタートアップとして見られており、圧倒的なスケール力を持っている。

インスタ映えするわたしだけのGlossierバッグ

5億人のDAUを抱えているインスタグラムはブランドの成長を決めることができると言っても過言ではない。現在、Glossierのインスタグラムコミュニティは90万人おり、オンライン売上の70%はリファラー。

最初は、プロダクトのフィードバック用としてみていたインスタグラム。そこで見つけたのは、「ユーザーに配達されたプロダクトの写真を投稿」それを見たGlossierは、このユーザー行動によりインセンティブを与えるためにプロダクトを配送する際に一緒にステッカーを同梱した。ユーザーはそのステッカーを使ってGlossierのバッグをカスタマイズできるようにした。

Glossierステッカーを利用してユーザーがコンテンツを勝手に投稿してシェアしてくれている。

すべてのGlossierプロダクトはステッカーとステッカーを貼れるホワイトスペースがあるので、ユーザーがカスタマイズできるようにしている。もちろん、クオリティが高い投稿は忘れずにリポスト。

GlossierがリポストしたUGC例(16時間で2万5千いいね)。

このようにファンを感謝してリポストすることによってよりGlossierのフィードが仲の良いコミュニティに見え、よりユーザーもコンテンツを作りたくなる。戦略をまとめるとこうだ:

1.シェアもしくはユーザー自身がカスタマイズしたくなるようなプロダクトを作る
2.ユーザーが作ったコンテンツはリポスト
3.UGCのボリュームをもっと多く、より良い質になるようにインセンティブを与える

インスタを活用したアンバサダープログラム

2017年夏にGlossierは新しくインスタグラムのアンバサダープログラムを始め、今ではオンライントラフィック及び売上の8%がそのプログラムからきている。

クオリティの高い投稿をしたユーザーはGlossierのアンバサダープログラムに招待される。特殊なクーポンコードをもらい、そのコードでGlossierのプロダクトを宣伝すると、売上の一部をもらえるようになるのだ。

Glossierアンバサダーのインスタグラムプロフィール

この戦略の元、GlossierはブランディングのためだけではなくUGCを利用して売上に繋げている。コンテンツがあるほど、Glossierのプロダクトの認知度が上がり、アンバサダーというマイクロインフルエンサーを通してそのコンテンツにエンゲージしてもらうような仕組み作りを行っている。

このようなプログラムを立ち上げるのは大変だが、結果Glossierの売上の多くはこのリファラーで成り立っているのだ。

7.Bonobos(ボノボス)

メンズアパレルのオンラインストア

フィット感が重要なズボンをオンラインで成功させた方法

2007年に創業されたBonobosは本投稿の中で1番古いD2Cのサクセスストーリーとなる。商品をリリースしてから6ヶ月で$1M ARRを達成し、2013年には$70Mの売上を達成した。

創業者であるアンディは二つの課題を元にBonobosを創業した。

・男性は店舗でズボンを購入したがらない
・ほとんどの男性はフィットするズボンを探すのに苦労している

リサーチ結果ではヨーロッパのズボンはタイトすぎて、アメリカのズボンは大きすぎた。その中間のズボンを作れたら売れる商品があるのではないかと仮説を立てた。この商品設計はCasperのモデル(foamとlatexのマットレス)と似ている。

さらに、アンディはオンラインをメインで売ること考えたが、当時の1番の課題はオンラインで服を買う人が少なく、特にフィット感が大事なズボンに対してはハードルが高いということだった。

Bonobosの初年度の売上の成長

彼らは、当時人気になり始めたZapposをマネて、理由なしでの返品を可能にしてみた。ユーザーに対して数着オーダーしてフィットしなかったものを返品するように勧めたのだ。

手厚く素早く サポートメールで満足度を上げる

認知度の低いブランドであったBonobosは、別格なユーザー体験が重要だと初期から認識していた。ユーザーにオンラインで高単価のズボンを注文してくれるような体験、そして購入したユーザーが友達などに同じズボンを勧めるようにしなければならなかった。

アンディはZapposの成長戦略を見た際に、Zapposの成長はプロダクトではなく、カスタマーサービスによるものだと気付いた。新しいオンラインサイトから服を頻繁に買ってもらうには、他にはないカスタマーサービスを提供しなければならないと考えた。

Bonobosは解答スピードを重視するサポートチームと企業文化を作り上げた。90%以上の電話の呼び出しを30分以内に応答し、メール返信の90%以上が「great」と評価、そして平均メール返信スピードが24時間以下という優秀っぷり。

ブランドのインパクトの一つの測り方として、サイトのダイレクト流入ユーザーをベンチマークしていた。。SimilarWebによるとBonobosのダイレクト流入率は業界トップの53.5%だった。

Bonobosが与えるユーザー体験のレベルは常に高く、2015年および2016年には大手ブランドのFossil、Lowe’s、Coachがいる中Multichannel Merchant’s Customer Experience Leader賞を受賞。現在、様々なスタートアップが自社のサポートスタッフを「ninja」と読んでいるが、「ninja」のコンセプトはBonobosがECで始めたものだった。

8.Warby Parker(ワービーパーカー)

2017年から5,000億円の視力検査市場に参入

まずはおさらいをしよう。きっとご存知の方が多いと思うが、Warby Parkerは他のメガネ系のD2C企業と違ってテクノロジーを利用して対面での必然性を無くしたメガネ企業。

まずは家での試着を始め、その後ウェブカメラや画像認識などの技術を利用してバーチャル試着を可能にした。

そして、2017年初旬にWarby Parker内の小さなチームが新規事業として約5,000億円である視力検査市場に入り込んだ。アメリカでは毎年1.1億人が視力検査を受けており、視力検査は1回で約5,000円払っている。

視力検査を受けたあとにメガネを売ることは非常に魅力的だったので、Warby Parkerもそこに入り込みたいと考えた。そして、従来の視力検査のフローを元にオンラインで解決できる新しい視力検査のフローを生み出した。

Warby Parkerの「Prescription Check」アプリを利用するとユーザーはオンラインで視力検査ができるようになった。検査結果はWarby Parkerと提携した視力測定医に送られ、承認をもらえる仕組み。

Warby ParkerのPrescription Checkのアプリ画面

家で処方をもらえるだけでなく、それ以上にWarby Parkerの営業チャネルに直接連結するようになった。処方をもらうとWarby Parkerのアプリと連携し新しいメガネをすぐに購入することができるようになった。

このアプリだけでWarby Parkerは従来のメガネ企業のバリューチェーンを壊し、新しいビジネスモデルを発掘した。

Warby ParkerのPrescription Checkアプリのレビュー

ユーザーが投稿してハッピーになるサイクルを作る

バイラル動画は最高のマーケティングツールだが、頻繁にバイラルさせるのは結構大変。Warby Parkerは同じく動画マーケティングを実施したが、一つのバイラル動画に頼らない、より真似できスケールしやすいアプローチ法を行った。

Warby Parkerはユーザーに試着している姿の写真・動画をシェアしてもらうようにPRした。コンテンツをシェアしたユーザーの購入率がシェアしてないユーザーと比較して50%高くなっていたことが分かったので、Warby Parkerはシェアしてもらうようなプロダクトデザインへの改善を行った。

このプロモーションの鍵となったのはユーザー側で既に写真共有を勝手にやっていたこと。ユーザーとしては友達などからメガネを試着してフィードバックをもらいたがっていたのだ。Warby Parkerはそれをワンステップ進めて友達ではなく他者にシェアしてもらうよう勧めた。

Warby Parkerの試着用のキットに試着姿の写真をシェアするように推奨している。

試着用キットやヘルプセクションではユーザーがフィードバックをもらうためにはSNSで共有した方が良いと記載されているが、事実上マーケティング要素が含まれている。YouTubeだけで「warby parker try on」と検索すると、5万件以上の動画がアップされている。

YouTubeにて「warby parker try on」の検索結果

動画があるほど、よりユーザーが自分の動画を撮るモチベーションが上がり、最終的にWarby Parkerのメガネが売れるという仕組みになっている。回り始めたらどんどん加速していくサイクルであり、Warby Parkerもこれに気づいていて、2015年にWarby ParkerのiOSアプリに動画録画機能と共有機能を追加している。

9. Dirty Lemon(ダーティーレモン)

DirtyLemonはデトックス用のドリンクをテキストメッセージで購入できるD2C企業。次のエナジードリンクとして「リラクゼーションドリンク」と言う新しいドリンクが現在流行っている。その中でも成長している理由は購入プロセスを若者に合わせていること。現在プロモーションを全てインスタグラムで行い、購入はテキストSMSで行っている。

実績として、Dirty Lemonのユーザー数は2016年に3万人、毎月5万件以上のテキストメッセージを処理している。アメリカのスタートアップ業界では「一番売れているチャットボットEC」と言われている。SMS上で購入できるので、専門のアプリやサイトに訪れなくても気軽に買えるようにしている。

さらに、会話形式で顧客情報を引き出す方が簡単なので、より一人一人のユーザーを理解してプロダクトのフィードバックや新しいプロダクトの開発時にどの層に通知を送った方がコンバージョンが高いかわかる。さらに、会話形式にすることでECで起こりがちなカード決済の離脱率がなくなる。

日本のD2Cのこれから

LaFabrics(ラファブリック)

店舗での購入は不要

LaFabricsでは、実店舗を新宿・渋谷・銀座など7店舗で展開。どれも店舗での購入は不要。(店舗購入も可)店舗では、オーダーメイドのためのサイズ測定がメインであり、注文フローはすべてネットに完結している。そのため、ユーザーは店舗でおすすめから買わなくてはいけないというプレッシャーがなくなり、自宅でじっくりと選ぶことができるのだ。また、中間流通も省いているため、高品質なオーダーメイドを、同程度製品の市場価格よりも安価で購入することができる。

今までにない上質なEC体験

アパレルが運営するECサイトは、極端に良いか悪いかのどちらかが多い中で、LaFabricsは丁寧なEC体験を実現している。例えば、スーツの場合、細かな生地の質感からストライプの幅のサイズまで教えてくれる。また一度店舗でサイズ測定をすると、採寸データがクラウド化され、WEB完結でオーダースーツを購入することができる。

2.Liveshop!(ライブショップ)

憧れという購買体験

Candeeが運営するソーシャルライブコマースLiveshop!は独自ブランド「TRUNC 88」を開始。Liveshop!内で展示会をすると完売する好調ぶり。通常、展示会に参加できるのは業界関係のみで、プロダクトのこだわりを直接聞く機会は一般ユーザーにはあまりなかった。その展示会をライブコマースとして配信することで、先取りをしているような気持ちになり、プロダクトひとつひとつの質や思いを知ることができる。そして、その場で簡単に購入可能。ライブコマースの最先端を行く、中国での多くの購入動機は商品の質を確かめる意味合いが強かったが、日本では、インフルエンサー等のファンが「なりたい!」という気持ちから購入する動機が多いように思える。

この配信「TRUNC 88 LIVE」は、同アプリの人気番組ランキング2位になるなど、Liveshop!内でも人気のコンテンツだ。Liveshop!全体での、平均客単価は4,000円、1配信は最高で150万円とのこと。また、競合サービスのライブコマースアプリ「PinQul」もプライベートブランド「P.Q. by PinQul」をリリースし、開始1ヶ月ですでに数百万に達しているという。

コスメYouTuber ゆうこす

正確にはD2Cではないが、ご紹介させて頂きたい。メイクアップ系トップユーチューバーのゆうこすこと、菅本裕子氏は昨年有名アパレルブランドとコラボ商品を発表。彼女のInstagramやTwitter、そしてYouTubeを駆使し、生配信中に即完売。(彼女はライブ配信をする際は、LINELIVEとInstagramとYouTube同時に配信している。)今後D2C分野でも、ジェシカ・アルバやのようなセレブリティによる個人ブランドtoCのような独自ブランドをスタートするインフルエンサーやクリエイターもより増えてくるのではないかと期待している。

3. Minimal(ミニマル)

サードウェーブの流行

Minimalは、カカオ豆の仕入れ、選別、成形などチョコレート製造工程のすべてを自社工房で行うBean to Bar Chocolate専門店。名前の通りミニマルで洗練されたプロダクトが特徴だ。各商品ごとに、原産国やフレーバーの特徴、ペアリングのリコメンドなど十分すぎるくらいのこだわりの説明がついてくる。Minimalが誕生した翌年の2015年、日本に初めてブルーボトルコーヒーがオープン。D2Cの目新しさは、ブルーボトルコーヒーの上陸の影響は大きかったように思える。ITmediaの取材によると、初年度から黒字。2年目は300%成長で、3年目も250%に着地する見込みと好調の様子。

熱狂的なファンを作れ

多くのD2Cビジネスに共通するキーは「熱狂的なファン」がいるかどうか。その店舗もしくはサイトに来てもらわなければ、何も始まらない。そして、リピートしてもらう。Minimalは、厳選されたラインナップの中で、その時々にしかない限定フレーバーを発売している。また、サイト上では、パッケージのこだわりからブランドストーリー、おすすめのペアリングまで、ますますMinimalのファンになってしまう要素が散りばめてある。店舗では、定期的にWorkshopと開催し、ファンとの交流を欠かさない。

本記事はCB Insights記事および個人リサーチによって書きました。
Part1Part2はこちらからご覧になれます。

Translated by Tetsuro Miyatake, Edited by @mikirepo

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