(続)「移働」の時代に、Coworking + Coliving がじわじわ来る。

(続)言ってみれば、これからの働き方について

ito tomio
cahootz
10 min readMar 12, 2017

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昨日書いた、"「移働」の時代に、Coworking + Coliving がじわじわ来る。"に、たくさんアクセスいただいて喜んでたのだが、書き漏らしたことに気づいた。で、それに追記しようかと思ったけれど、少し長くなるので、別稿で補遺とする。

※昨日書いたのは、こちら。

あそうだった、WeWorkのことを書いてなかったと思い出したわけで。

ニューヨーク発祥のコワーキングであるWeWorkは、いまや世界中に150以上のスペースを擁するマンモス企業になっていて、その評価額、なんと100億ドル以上(!)。聞くところによると、近くソフトバンクがWeWorkに総額40億ドルの出資をするらしい。

WeWorkでは、マイクロソフトの350人の社員がオフィスを引き払ってここを使い始めるなど、このところ多くの大企業と提携して急激に業績を伸ばしている。社員が自由に仕事をする場所を選択でき、かつ、会社はオフィスの賃貸料を節約できるというわけだ。

そのうち、企業は中枢部以外はオフィスを持たず、社員にデスクが要るのならコワーキングを使う、というのが当たり前になるだろう。いまどき、WiFiさえあれば会社のサーバにセキュアなVPN回線で直接アクセスすることも可能だ。

ただ、コストだけがその理由ではない。そこで、社外の人とも交差することでコラボも起こればスパークも起こる。未来を見ている企業はすでにそっちへ進んでいる。

と書いてたら、こういう記事を発見した。非常に詳しいので一読をお勧めする。

ちょっと脇道に逸れるが、書いておく。WeWorkがやっているのは純然たる不動産業だが、これまでの不動産業とは、少々違うフェーズでビジネスにしている。

これまでの不動産業ではハコを作ってそこに人を入れ家賃を回収し、後は知らない、ということでビジネスが成り立っていた。オフィスの需要があったからだし、それだけの収益で満足していた。

WeWorkはそこに付加価値を付けるのが上手い。どこのスペースも利用できるようにしたり、入居者のコミュニテイやSNSを運営したりするのもその一例だが、上記の記事にもあるように、最もモノを言うのは利用企業とのコラボだ。つまり、ハコは手段であって目的ではない。

これまでの不動産業では発想すらしなかったと思う。翻って、日本の不動産業界は、まだこの領域に踏み込めていないように見える。ちなみに、ぼくは以前、16年間、建設・不動産業界にいたが、その頃には思いもしなかった光景だ。業界の中にいては見えないのだろうが、もはやハコだけをいじっていてはダメな時代になっている。

余談ついでに、WeWorkはつい最近、Creator Awardsというプログラムを始めた。

これは、クリエイターや起業家、NPO、アーティスト、教育家などに総額2000万ドル以上を提供するというもので、WeWorkのメンバーでなくても応募できる世界規模のファンドだ。

いまや会員数が10万人を超えて、キャッシュで650億円もあるそうだから、どうということはないのだろうが、コワーキングを中核にしてこうしたファンド事業に横展開できるのも、WeWorkの強みだろうし、そこが狙いだと判る。

ま、それはいいとして、話を戻すと実はそのWeWorkがColivingをすでに昨年からやっている。

先のカンボジアのそれとは、また全然違う、まあいえば、ゴージャスな作りでいかにも都会的だ。ここにも企業とのコラボが背景にあると思う。ソフトバンクが期待しているのもたぶんそこだろう。で、それもこれも、リモートワークが前提なのは言うまでもない。

要するに、「移働」の時代、なのだ。

さて、書き忘れたことを、もうひとつ。国内のこと。

昨年からコワーキングツアーで地方のコワーキングを巡っているのだが、宿泊設備が併設されていたり、提携していたりするコワーキングがちらほらある。

例えば、千葉県佐倉市の「おもてなしラボ」なんかはそれだ。

ここのツアーリポートは近々、トイロハのほうで公開するが、ざっくり言うと、「コワーキング+ゲストハウス+コミュニティスペース」で構成されている、いわば複合施設だ。

ここはコワーキングスペースだが、

この反対側はドミトリ型のゲストハウスになっていて、ベッドがある。

下の階には地域の誰でも使えるコミュニティスペースがあり、近所の奥さん方や学校帰りの小学生たちでワイワイ賑やかだ。

聞けば、ドミトリは成田空港に近いので外国の方の利用も多い。すぐとなりにコワーキングがあるので便利という評判は、早晩、世界のリモートワーカーに広がるのではないだろうか。

もう一例。つい先日、コワーキングツアー沖縄編でおじゃました沖縄県国頭郡国頭村の「HENTONA LOUNGE」は、この1月にオープンしたばかりのコワーキングだが、

ここの2〜3階は「CAMP HENTONA」というメゾネット形式の3LDKの宿泊施設になっていて、最長2週間、6名まで泊まれる。宿泊費が、3,000円/泊・棟というからオドロキ。ひとり、500円ですよ!

沖縄の中心地、那覇からはクルマで2時間ほど離れている、本当に静かでのんびりした村にある。そもそも、村おこしの一施策としてこの施設を作ったそうだが、都会の喧騒を逃れてCoworkationするには最適だろう。

あるいは、滋賀県近江八幡市の「co-ba 近江八幡」は、築300年の造り酒屋を改装した「コワーキング+ゲストハウス」だ。

こうした複合型のコワーキングは地方においては、今後も増える気配がするし、いい傾向だと思う。いずれも、ドンタクハウスに参加していただける日も近い。

さて、最後にぼくがいま理想とするコワーキング、というか、コワーキングを内包するColivingの形を図説にしてみたのであげておく。個々の詳しい説明は別の機会に譲るが、「旅」という要素は絶対に外せないと考えている。

「移働」の時代、だからだ。

実はいま、さる地方自治体から、まちづくりの一環としてコワーキングを中核とした施設の企画に意見を求められていて、ざっくりいえば上図のような要件を満たすものを目標としたい旨、伝えている。

地方は分母が小さい。その地の人口だけを頼りにしていては、いずれ行き詰まる。それよりも移働するリモートワーカーを相互に受け入れる連携体制が必要だ。しかも、地元の人、企業との接点としての役割もある。そのために、CoworkingもそしてColivingも十全に機能するようにしておく必要がある。

やっぱり長くなってしまった。しかし、2日続けて書くとは思わなかったなぁ。続きはまたの機会に。それもまた、早く訪れそうな気もするけれど。ちなみに(ちなみに、が多いがお赦しを)、このテーマは今年、本にする予定。タイトルは、『「移働」の時代』、かな。

ということで、最後までお読みいただき有難うございます。このブログは、ブログJelly Vol.69 Revengeで、昨日書いたものの補遺として書きました。

※昨日書いたのは、こちら。

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他にも、「カフーツ式BlogMagazine」に書いていますので、よろしければチェックください。

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ito tomio
cahootz

コワーキング・プロデューサー。メディア企画、執筆、翻訳、編集。2010年、日本で最初のコワーキングスペース「カフーツ」を神戸に開設。2012年、経産省認可法人コワーキング協同組合設立、代表理事就任。2014年、コワーキングマガジン発行。2016年、コワーキングツアー開始。訳書に『グレイトフルデッドのビジネスレッスン』他