Code for Japan Summit 2016 : Keynote Speech

Nao Myoshu
Code for Japan
Published in
16 min readNov 26, 2016

Monique Baena-Tan, Code for America

Monique Baena-Tan

ユーザーリサーチャー/コミュニティエンゲイジメント担当, Code for America

モニックさんは各地のcode forのグループであるブリゲートのサポートをしており、各地のキャプテン、パートナーと活動するコミュニティエンゲイジメントの研究者です。

過去4年間で彼女が各地のcord forとの関わりで学んだ、地域行政とその住民の協働を促すノウハウについてCODE for JAPAN SUMMIT 2016にて話された内容です。

参考:
Bridge Communities to Build Government by the People
セッションスライド資料はこちら

Code for Japan Summit 2016:International Session
本スピーカーのモニックさんも加わって、世界各地のブリゲートについて話し合ったセッションの模様についてはこちらをご参照ください。

※本人に翻訳の許可を頂き今回の記事を書かせて頂いております。
※間違っている点、ご意見等ございましたらお気軽にコメント頂けると幸いです。

“共感”の生まれる協働とは

What do you think of when you think of collaboration?

例えば、行政職員と地域住民の協働。
Civic-techの理想の状態ですが、いかがでしょうか。
人によってそのとらえ方は様々です。

モニックさん自身、協働は決して簡単なものではないといいます。
しかし、そのネガティブな協働をすばらしい解決策にする方法は存在し、
そのカギは相手を理解しようとする場づくりにあると言います。
そしてそれが住民にとってより良い政府の実現につながります。

前職でモニックさんは住民にとってより公平で、参加しやすい都市計画のプロセスを生み出す方法をニューヨークで研究していました。

彼女が現場で地域住民からヒアリングを重ねる中で気が付いたことは、
行政と市民の一方的な関係でした。
住民と行政の間にはとてつもないギャップができてしまっていました。

住民がイメージする彼らと行政のとの関係は、地域で行われているコミュニティボード、いわゆる住民説明会における関係でした。

コミュニティボードの様子

会場では行政職員が前に立ち、客席に座る住民は質問の余地もなく、ただ一方的な説明を聞くことしかできません。

住民の意見が尊重されることもなく、もちろんそこでは議論なんてできません。
そうした中で不安を内に抱えたまま住民は会場を後にすることしかできず、自分たちの地域には私たちは一切の手出しができないというのが彼らの持つ地域に対する理解でした。

そこで彼女が取り組んだことは、
立場の異なる人たちが互いの意見を尊重して話合える場を作り出すことでした。同じ土俵で立場の異なる人たちが議論できるような雰囲気づくりをすることで、それぞれの多様な価値観を主張するようになりました。

Code for Americaが取り組む、
本当に必要とする人のために機能する行政の実現

We help government work for the people who need it most.

Code for Americaはサインフランシスコをベースとした、どの党派にも属さない、非営利団体です。
21世紀の、人民による、人民のための政府の実現のため活動しています。
約一年半前からモニックさんはcode for Americaで働き始めました。

Code for Americaはテクノロジーと政府こそが人々の生活を飛躍的に向上させる2つの重要なカギであるととらえています。

住民が本当に困っている地域課題の解決方法を突き詰めた結果、code for Americaは行政の仕事をサポートしてきました。行政サービスを通じて住民をサポートすることこそが、本当に困っている人たちを助けることにつながるとわかったからです。このやり方こそが住民にとって一番シンプルでかつ効果的に届きやすい方法でした。

例えば、面倒な手続きがスマホで簡単にできるようにすることで、住民が行政サービスを利用しやすくすることも彼らの取り組みの一つです。

Code for Americaの活動は、サービスの提供と土台作りの二つの側面から成ります。

1. For the people: 我々の活動を広く届けることです。
2. By the people: 行動をしたいと思ったすべての人が活動できる、関われるように仕組みを整えていくことです。

For the peopleの部分はさらに細かく言うと
以下の三つのポイントがが実現されている社会を目指した活動です。

・仕事に就くことができる
・犯罪に手を染めない
・食にありつくことができる

By the peopleの土壌の構築のために
年一回サミットを開催しており、数週間前に今年度のサミットを終えました。
サミットでは、行政がデザイナーやプログラマーなどのクリエイターを採用できるようにサポートしたり、新たなブリゲートの創出のサポートをしたり、新たな人材発掘の場となっています。

また各地で行われているcode forの活動の報告の場となっています。

ブリゲート、各地のcode forの組織は世界には130あり、アメリカ国内だけで80あります。それぞれのブリゲートは非常に多様でそれぞれの地域に合わせて独自の進化を遂げています。

ブリゲートが一貫して取り組んでいることが、多様な文化背景をもった人々が一堂に会しても、自由な発言ができる場所を提供することです。

イベントなど、ブリゲートの提供する空間では、参加者は積極的に互いの声を聴くことを求められます。
こうした場の継続的な提供が、コミュニティに変化を与え、自分たちの意見が尊重されているという安心感を住民たちに与えます。そうすることで地域住民は互いの絆を強めることができます。

協働を促す三つのヒント

3 tips for bridging collaborative gaps

1. 一般的な言葉、その場にいる人が理解のできる言葉を使いましょう
2. 期待値をコントロールしましょう
3. コミュニティの中間で引き合わせましょう

まず一つ目に共通言語を用いることです。
そこにいる人みんなに理解してもらうためには必須です。

具体的な方法として
1. 参加者を少人数のグループに分ける
2. グループで答えなくてはならない質問に答えてもらう

すべての質問に必ずしも答えてもらう必要はありません。
ここでより重要なポイントはストレスをなくグループで討議ができることです。グループのメンバーが貢献したい、自分の意見を話したいと思わせる雰囲気づくりがポイントです。

☆ポストイットの活用!
ポストイットはとても良いツールです。

なぜかというと
1. 主張が強すぎる人の意見を簡潔にまとめます。
2. 話すのが苦手な人が意見を主張するサポートになります。

他に参加者の理解度を統一するために、定期的に新規参加者向けにCivicTech入門編といったようなセッションをすることもあります。

2つ目に、参加者の期待値をコントロールすることです。

これはどちらかといえばイベント開催前に重要なポイントです。

参加者にはどんなイベントに参加しようとしていて、時間はどれぐらいで、そこで何ができるのかを事前に知ってもらっておく必要が有ります。

・どんな内容のイベントであるか
・どのような人が参加するのか
・どのような形式のプログラムなのか

などの情報に参加者が事前にアクセスできるようにしましょう。
そうすることで参加者はイベントを理解した上で参加してくれます。
ブリゲートが実際に行っていることを一つ例に挙げると、
議題やFAQを公開しているところもあります。

または、参加者へのあいさつや声掛けを徹底して、集まりにようこそ!といったようなプレゼンテーションを実施しているところもあります。

最後に、コミュニティのちょうど間で引き合わせることを意識しましょう。

これは物理的にも、比喩的にもです。
物理的な話でいうと一般的にイベントを開く際金銭的な問題や時間の制約など主催者側の都合で会場を決定する場合が多いと思います。

しかしここで懸け橋となろうとしている組織についてもう一度考えてみましょう。
対象に歩み寄るような会場選びを考えてみることが大切です。

例えばこの写真の会場は大学生の参加を促すために大学構内で行われました。

比喩的な話でいうと、
会場の雰囲気として、異なる立場の人々が互いの立場に立って考えることができる環境であるかということであります。

イベントを開く際に参加者に自分と異なる立場の他者がどういった境遇にあるのかを知ってもらうことは重要であり、課題を考える際に自分の考えを押し通すだけではなく違った側面からのアプローチもあることを知るきっかけをつくるのも重要な目的の一つです。

そうすることで参加者同士の間に信頼を築くことにつながり、人々を同じゴールに向かって動かすきっかけになります。

シビックテック実践編

Effective civic engagement tactics

市民の社会参画の実現に向けて用いた国家レベルまたは地域レベルにおける実践的な手法を紹介します。

国家レベルでの住民参加型の活動

国家レベルでのcivic-techの活動をする際には、参加者に自分たちは大きなムーブメントの一部であるということを自覚してもらうのはとても重要です。

Code for Americaは週末を利用したハッカソンを主催しています。Code Across とNational Day of Civic Hackingという名前を聞いたことがあるのではないでしょうか。

こうしたイベントで自分たちの地域の課題を、
遠く離れたシカゴの人たちも考えてくれているのをその地域の住民が目の当たりにするのは、地域住民を地域の課題に向かわせるモチベーションにつながります。

今この地域課題に立ち向かっているのは自分たちだけではなく、仲間がいると知ってもらうのは重要です。

また、大型のイベント主催の際には各地のcode forに運営を手伝ってもらうように呼びかけます。
大型のイベントには細かい作業も必要となってくると思います。なるべく、多くの人に参加してもらうことを大切にしているため、こういった作業をボランティアの方々にお願いします。
イベントの際は必ずしもエンジニアの人しかこなせないタスクばかりではなく、多くの方に関わってもらえるチャンスです。新たなボランティアの呼び込みにもつながります。

地域レベルでの住民参加型の活動

・地域の小さなイベントを主催する
・参加ボランティアが地域コミュニティに関われるようにする
・無料の子供預かりは必須!

地域の小さなイベントを主催する

地域レベルで考えると状況は少し異なり、なるべく多くの回数小さいイベントを多くの場所で開催することが重要です。
各地のブリゲートは地域の多様なコミュニティに関わり市民の参加を増やしてきました。

参加ボランティアが地域コミュニティに関われるようにする

あるブリゲートでは参加者集めをゲーム式にしました。
地域に根付いた団体にイベントに参加してもらうために、
参加者が普段一緒に課題に取り組んでいる地域のパートナーをイベントに連れてこさせました。
そして連れてこられた場合はポイントを与え、高得点の参加者には商品を配りました。
ブリゲートにとってなるべくその地域のすべてを包括していることが重要です。

無料の子供預かりは必須

実はこれが効果抜群で参加者を2~3倍にすることもあります。
週末は家族で過ごしたいと思う人がほとんどです。
もし、イベントに子供も連れて行けるのであれば参加するのにと思う参加者は
アメリカの場合特にたくさんいます。

Code for Amercaのチームの絆を強くするツール

日常的に会うことのできない、各地に散らばるブリゲートとプロジェクトを回していくことを可能にするツールを紹介します。

いくつかのツールは英語なので実際に利用することは難しいのかも知れませんが、CfAが利用している理由を知って参考にしてもらえればと思います

・ 外への情報発信として Meetup, Medium
・ 内部/外部への情報共有の手段として Slack, Loomio
・ 内部での作業の効率化の手段として Google Docs

Meetup

イベント情報のプラットフォームとして活用しています。
Code for AmericaではCode for Americaのアカウントのもとで、すべてのブリゲートのイベントが紹介されています。閲覧者にとっては自分の地域以外のイベントを知ることにつながりますし、code for Americaにとっては各地のブリゲートの活動を知れる手段になります。

Medium

ストーリーテリングの観点で重要な役割を果たしています。成功や失敗の経験、ノウハウをブログ記事として公開することで、組織の透明性も担保されます。

Slack

Slackはcode for amricaでも毎日使うツールの一つでもあります。
たくさんのチャットツールがある中であえてslackを使う理由についてポイントを整理したいと思います。

・たくさんのユーザーの参加が可能
→600人いるブリゲートのチャンネルでは600人から回答をもらうこともできる。

・アカウントの詳細情報の確認が可能
→マウスオーバーでたとえあったことがない人でもコメントをくれている人の所属を知ることができる。

・有益な情報の共有、また投稿へのタグ付けが可能
→単なる情報のシェアだけではなく、投稿へのタグ付け機能で通知が簡単

Loomio

距離的な問題で、全員での実際に顔を合わせた打ち合わせが難しい中で、
意思決定が行われた際にその過程がどのようなものであったのかを共有するツールとして機能します。
Loomioでは課題に対する解決策の案を提案し、それに対する投票を行うことができます。その投票数がリアルタイムで確認できることからも透明性の観点で有益です。

Google Docs

プレゼンテーション、表計算、文章のファイルを作成することができ、共有もすごく簡単です。一般公開することも、特定の人と共同で共有することも可能です。

立場の異なる3人の協働のストーリー

A story of three individuals:
a Brigade leader, a student and a government employee

プロジェクトを境に出会ったブリゲートリーダーと、学生、行政職員の話です。

それまで会ったこともなかったこの三人は週末の時間を使ってプロジェクトの実現に向けて協力しました。
そして最後には自分たちの活動を一枚のイラストにまとめました。

このイラストは市庁舎に貼られ、多くの人の関心をあつめ、多くの議論を生み出しました。行政のある職員の人が市民のことについてもっと知りたい、
そしてある市民もまた行政のことについて知りたいと思うきっかけになりました。

この話はほんの些細なことに聞こえるかもしれませんが、政府と地域コミュニティをつなぐきっかけとなる初めの一歩となりました。

彼らはこの経験を通して未来への希望を抱きました。

その未来とは、
住民説明会以外にも行政と住民が顔を合わせる機会がある社会
投票の時以外も、住民が自分たちの地域のことについて関心を持つ社会

そしてそこでは対話の場が持たれ、
相互に質問し互いから学ぶことが尊重され、地域行政と住民の距離が近い。

この三人が相互の関わりから学んだことは、
本当の意味での民主主義が実現されればcivic-techや地域について議論の場にはこういった社会を実現する鍵となるということでした。

モニ―クからのメッセージ

You are not alone.
あなたは一人ではありません。

この課題に向き合っているのは我々だけではありません。

行政の中にも市民の中にも行政に限らず様々なバックグラウンドを持った人たちがいて、それぞれ今の政治がうまくいくように取り組んでいます。

それを忘れないでください。

参考:Bridge Communities to Build Government by the People

筆者あとがき

地域のCode forの活動に参加していると、
自分たちの地域での活動ばかりにフォーカスしてしまいます。

しかし、 視界を広げた時に世界中で同じく地域で活動している仲間の存在を感じることができます。

まさにこの視界を広げさせてくれるのが今回のSummitだったように思います。

Code for AmericaのSummitが果たしている役割と同じく、
様々な地域から集まるアツい人々と交流したり、現場の人たちの声を聴けるこのJapanの会場はとても素晴らしい場所でした。

Code for というきっかけを通して、
前向きな多様なバックグラウンドを持つ人々が一堂に会し、気兼ねなく交流ができる、まさに時代が求めている場所のように思いました。

Code for Japan Summit 2016: International Session レポートもぜひご覧下さい

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