オードリー・タン台湾デジタル大臣対談【未曾有の危機に使える未来思考】Part 3/3

Daisuke Ishii
Daisuke Ishii Blog 石井 大輔 ブログ
66 min readDec 28, 2020

台湾の秘策とコロナ対策事例【聞き手:石井 大輔 Kiara Inc.】

(Part 1 / Part 2 / Part 3)

本インタビューは下記の”コロナ vs. AI −最新テクノロジーで感染症に挑む(翔泳社)”の特別企画として収録されました。

YouTube

データサイエンス主導の政策決定の再発明・国民全参加型の議論フォーラムの可視化

石井大輔

次の質問は、シアトルの企業Pol.isとのコラボレーションについてです。Pol.isとのコラボレーションでは大変革新的な取り組みをされているそうですね。民主主義をリアルタイムに可視化するような試みと聞いています。私たちもここ東京で機械学習ハッカソンのコミュニティを運営していますので、オードリーさんの見方には非常に興味があります。人々が行う意見交換をデータ分析して、何か発見はありましたか?次世代の政治システムへと繋がっていきそうですね。ここ日本でも同じことをするべきだと思います。

My next question is your collaboration with Seattle company Pol.is is very innovative. It is like a real-time visualization of democracy. And since we run a machine learning hackathon community here in Tokyo, we are very interested in your insight. What did you find by data analysis in people’s opinion discussion? And that will lead us to the next generation political system. We should do the same here in Japan, I think.

無料で誰でも使えるPol.is のユーザーインターフェース(筆者作成)

https://pol.is/4twr7iaf7j

オードリー・タン

私たちはあらゆることにPol.isを使用しています。例えば登山やハイキング、マリンスポーツ等です。さらには、米国大使館との外交まで、本当に何にでもpol.isを使っています。

Year, we use pol.is from everything to, you know, do with the open mountaineering that’s the hiking to the opening of the oceans that’s like sea-sports and so on, and to diplomatic conversations like with the U.S. Embassy on the digital dialogues and pretty much everything right.

因みに、台湾のPol.isシステムのウェブサイトはgov.twというドメインで運用していますが、これは台湾国内のサーバーでホスティングされています。そのため(コンプライアンス上の要件もクリアしやすく)、既に我々の機関に非常に浸透しています。私がPol.isについて一番気に入っている点は、これが20世紀のAIを使用しているということです。

There’s even a website Pol.is that “gov.tw” that is our locally hosted instance so it’s very much ingrained into our institution already and the best thing I found about Pol.is is that it’s AI in the 20th century.

仮にディープラーニングのような21世紀のAIを使った場合、その仕組み上、なぜその結果が導き出されたのか説明するのが困難だからです。

It’s not AI in the 21st century what was deep learning and so on because it’s actually much harder to explain the results. If you use 21st century AI.

Pol.is.が使っている20世紀型のAIは、ほとんどが主成分分析と呼ばれる手法を使っています。

If it’s just 20th century AI in Pol.is., it’s mostly principal component analysis.

http://www.nlpca.org/pca_principal_component_analysis.html

オードリー・タン

また、多くの場合、”k-means clustering “と呼ばれるアルゴリズムも用いていますが、一次元の場合、時間をかけて概念を説明してあげれば、聞き手側でも検証が可能になります。

Mostly “k-means clustering” these are ideas that even for a primary scalar, if you take some time to explain through the concepts they can verify it themselves.

訳注:k-means clustering=ベクトル量子化手法の1つ

https://medium.com/@rohithramesh1991/unsupervised-text-clustering-using-natural-language-processing-nlp-1a8bc18b048d

オードリー・タン

しかし、もしあなたがディープラーニングの最先端手法であるトランスフォーマーモデルを使って説明した場合、聞き手側で同じように検証するのは非常に難しくなります。

But if you used any of those cutting-edge like transformer models of deep-learning are explaining it is actually very very difficult.

https://qiita.com/omiita/items/07e69aef6c156d23c538

オードリー・タン

データを扱う能力を獲得するには、自らデータを作成して分析し、自信をつけることが必要だと思います。

And so I think it helps to build data competence that is to say as self-confidence in producing and analyzing data.

データを扱う能力を獲得するには、データ分析の結果だけを見て満足するのではなく、自ら結果を導き出す能力が必要なのです。出来合いのメディアを見ているだけはメディアリテラシーが高くならないのと同じことです。

Instead of just consuming the results of a data analysis is like media competence is the ability to produce media versus media literacy, which is just about viewing a reading media.

まずは20世紀のAIのような分かりやすい技術から導入を始めて、各々の聞き手が結果を再現し、自前で分析できる能力を付けることが重要です。

It’s important to start small to start with well understood techniques like the 20th century AI and then build confidence in all the participants ability to not only replicate the results, but also do their independent analysis.

その上で、ディープラーニングのような支援、例えばスマートな分類などを導入するのが良いのではないでしょうか。

Then maybe you can have some more like deep-learning as assistance, for example, smart categorization and so on.

中核技術を持つのはよいことです。ただ、その動作機構について説明可能でなければならないと私は思います。つまり、簡単に説明できて、導き出された結果が利用者にとって最善であることを示す必要があります。

But these are nice to have the core functionality. I think must be very accountable. That’s to say easy to explain and also value aligned meaning that it serves the best interests of the person using it.

石井大輔

ありがとうございました。今ご説明いただいたことに関連して質問があります。機械学習が持つ特徴として、直感に反するような事実を発見できることがあると思います。今回、人の意見を分析して、何か直観に反するような事実は見つかりましたか?

Okay. Thank you very much. The counter question about that comment is I think the beauty of the power of the machine learning is finding counter-intuitive fact, so did you find any counter-intuitive fact in analyzing people’s opinions?

オードリー・タン

Pol.isシステムによる洞察は、大半の参加者にとって驚くべき内容で、全く直観に反するものでした。ソーシャルメディアの中には社会にとって好ましくないものがあります。イデオロギー対立に関する論争により、人々はこれまで多くの時間を浪費してきたことが明らかになりました。

Yeah, the pol.is the main pol.is colors insight which is surprising to pretty much everyone participating is that actually people agree mostly with each other’s points most of the time most of the issues and it’s very counter-intuitive because people have already been exposed to the more anti-social social-media which wastes people time just going through the ideologically charged controversial issues buying each social topic.

物議を醸すようなイデオロギー対立の原因はそれほど多くありません。意見が合わないこともありますが、大半の事については合意できるはずです。例えば、Uber-Xが台湾でサービスを開始した時、(白タクだということで賛成派と反対派の意見対立がありましたが、)ドライバーを登録制にすることや保険料を徴収することで合意することができました。

These controversial ideologies are maybe just a few points if you just say, okay, we agree to disagree, but then there’s much more that we agree. For example, where Uber-X came to Taiwan

everybody agreed on the insurance taxation the fairness principle registration and so on.

シェアリングエコノミーについての解釈も、人により様々です。知人だけで乗車する場合や単独で乗車する場合はシェアリングエコノミーに該当しないと主張する人がいる一方で、空いている車をマッチングするプラットフォームがあればシェアリングエコノミーに該当するという人もいます。

And while of course people may differ on what constitutes a sharing economy some people think, you know, you’re not even carpooling that’s not sharing economy that people some people think of its sharing economy if there is a platform that does matchmaking of the idle hours of cars and so on.

イデオロギーにとらわれてしまうと社会の進歩は止まってしまいますが、Pol.isシステムの直感的でない洞察を活かせば、意見の一致や価値の共有を促進することができると思います。

If you get caught up in those ideologies, of course, the society goes nowhere, but counter-intuitively Pol.is shows that we actually agree on those rough consensus or those common values after all.

古代ギリシャの全員参加型政治もPol.isならオンラインで実現できる

実際の台湾のPol.isの分析ダッシュボード

https://blog.pol.is/pol-is-in-taiwan-da7570d372b5

(石井注釈)

オードリーさんが第3次AIブーム以前の古典的機械学習(DeepLearning以前の歴史あるAIモデル )を、Pol.isの議論データ分析に選んでいる点に注目したいです。精度が十分でない場合、解析の中身のプロセスが出来るようなモデルを好んで使っています。

当然最新のTransformerなどDeepLearningニューラルネットワークモデルを使うことはできますが、政策は重要な意思決定という視点に立つと、プロセスがブラックボックス化しているニューラルネットワークは検証しづらいので向いていないという事でしょう。

同時に政策の立案はなかなか答え合わせ(=AIの精度の検証)をしづらい分野であるといった事に起因していると思います。

台湾の事例紹介ブログ

https://blog.pol.is/pol-is-in-taiwan-da7570d372b5

民主主義を再発明するvTaiwanのHP

https://info.vtaiwan.tw/

Pol.isでは意見の違いが平面上で可視化できる

https://www.nesta.org.uk/blog/crowdsourcing-democracy-using-wikisurveys/

繁体中国語という言葉の壁はあるとは思いますが、私としてもPol.isの素晴らしい仕組みとムーブメントがどうなっているのか、台湾国民がどう議論されているのかという事は、

しっかり時間をとってAIスタートアップ経営者として研究したいと思います。すでにPol.isは米英で事例が広がっていますが、日本とアジアで展開できないか模索したいです。

後半でオードリーさんに指摘いただいた、反直感的事実がとても大事だと思いました。

アイデアについて、支持不支持という2つの意見が出る事が多いです。一見、真っ二つに割れてるように見え、一致してない部分ばかりにメディア・国民・政局の注目が集まり、その調整に長い時間をかけているという事実があります。そこで国民の総意をPol.is と言う形で小さな声も拾いつつ、統計的に分析すると、支持不支持の折衷案や、全体最適とも呼べる第三案などの議論の落とし所がデータとして可視化できるのは非常に効率的です。

これはスピード感を持った政治的意思決定、戦略立案、立法がデータサイエンスで可能になることを意味します。台湾ではその結果がしっかりと出ている、という点は非常に着目すべきです。

日本は先進的な仕組みを急には取り入れないかもしれません。

自動運転、シェアリングエコノミー、遠隔医療を始めとしたイノベーションに対する社会実装が、法律や政策が壁となって進まない例はごまんとあります。

ところがそれは支持不支持を決着をつかない中で、支持率や投票数が大事な政府がそれを決めあぐねているからではないでしょうか。Pol.is を使った迅速な国民の総意サンプル分析で、議論を発展させ、その中の的確な落とし所と長期的展望の分析を短時間で決めると言う仕組みが浸透すると、かなりの数イノベーションの社会実装が一気に進むはずです。

確かにリーダーシップのあるカリスマ政治家トップはいます。ただそれは属人的であり、次に悪いリーダーが現れた時には、国家の成長は止まるはずです。Pol.isの様な誰が政治のトップでも幅広く使える仕組みは、国家と世界の発展には効果がありそうです。

弊社も自然言語処理AIの会社として、コミニケーションの新しい形態は継続的に研究する立場にありますので、先進事例として各公的機関と連携しながら、世界の社会に貢献できないかということを弊社としても考えたくなりました。

オードリー・タン

まずは施策を実行して、そういったイデオロギー的なことは後から議論することもできるのです。

So why don’t we just regulate those and then we can talk about those abstract concepts that are controversial later.

石井大輔

なるほど。最終的にはデータサイエンスに基づく政策の最適化が可能とお考えですか?

Okay. So, do you think eventually optimization of the policies can be done based on the data science?

オードリー・タン

確実に可能と考えています。社会全体に広く影響が及ぶにも関わらず、見過ごされがちな問題があります。データサイエンスは、そういった問題を探し出すことができます。例えば、私達が今議論している気候変動のような問題です。

Yeah, definitely. I think data science offers a very rare but important glimpse which is much more holistic to the entire society a lot of the difficulty that we have we’re talking about like climate change.

問題がとても複雑で、解決策が単純でない場合、このような情報危機が起きます。

This information crisis covered whatever is that because the problem space and solution space is so large.

多くの問題や解決策を1人の頭の中だけで同時に考えるのはとても難しいのです。

その結果、人間は問題を単純化しようとして観点を一部に絞ってしまいます。本来同じ価値観を持っている人同士でさえ、着目する観点が違うとイデオロギー対立が生じてしまいます。

その点、データサイエンスによる洞察では、過度に単純化することなく全体像が浮かび上がります。

It’s very difficult to hold them in one’s mind.

So, one would oversimplify and what’s people oversimplify but in different ways it creates ideological differences, even though their value may be the same.

And so, the data science can give their holistic like dimensional reduction, right and it shows an interactive portrait of the actual problem space without oversimplifying to only one or two dimensions.

石井大輔

なるほど。Pol.isシステムを運営する中で、他に興味深い事例はありましたか?

So, what do you have any other example of the fact you found in the you know Pol.is and then made it as a policy for?

オードリー・タン

はい。例えば、AITと協力して、国境を越えた人と人の繋がりを強める取り組みをしました。

Yeah, definitely. So, for example, when we did the consultation with the AIT (American Institute in Taiwan) the U.S. Embassy promoting people-to-people ties across the world.

訳注:AIT=米国在台湾協会、事実上の米国大使館

これはとても物議を醸しているのですが、私は英語ともう1つの言語、例えばフランス語を台湾の職場で使えるようにするべきと主張しています。

There’s a very controversial statement that says and I quote Taiwan should make English and additional working language even France have done the same unquote

この主張は本当に議論を巻き起こしていて、あまり受けがよくありません。しかし、強く賛同してくれる人もいます。

And it was very controversial people don’t like it. But there’s also people who really like it.

英語の教育環境を整えなければならないという点では広く同意が得られています。職場で英語を使えるようにするというのも、同じ文脈です。

But the statement was the most consensus is that we need to prepare our education environment. So that in due time people will feel comfortable speaking native English. And so basically, it’s the same statement.

私達は10年、15年後を見越して、現在の幼稚園児くらいの年代に向けて英語学習環境の整備をする必要があります。

But Set in the future like for people who are in kindergarten we need to prepare so that’s 10 years 15 years down the line.

彼らの年代は既に、英語で考えることに抵抗はありません。今では誰もがこのことに同意しています。今は一見物議をかもすことであっても、将来を考えて忍耐強く取り組めばやがて広範な支持を得ることができます。英語教育の例は、このことの重要性を示しています。

They feel comfortable thinking in English and now everybody agrees with that. And so, I think this is important to realize that if you set far enough to the future, if you are patient enough something that looks like a very controversial topic may actually get everybody’s support and of course we develop our bilingual nation strategy based on that insight.

石井大輔

ということは、データサイエンスを使えば社会の中の小さな声を拾うことも出来るということでしょうか?

Do you think eventually data science can pick the weak voice in the society?

オードリー・タン

私達が意思を持ちさえすれば、拾うことができます。

If we decide to do so, of course.

石井大輔

ありがとうございます。

https://issuu.com/pdis.tw/docs/2020-08-18_mit_cdoiq

(石井注釈)

オードリーさんの洞察は、非常に大事だと思いました。政治の議論も、会社内の意思決定のプロセスであっても、我々は全体の声をバランスよく一気に把握できない事が多いです。

どうしても声の大きい人の意見が採用され、声が小さいけど大事な意見は取り上げられないことが多いです。

先ほども私が取り入れた、SNS特にTwitterも、確かに民意の一部は反映しています。

マスメディアが取り上げたり、政府も活用しています。

これとPol.isの違いは、台湾のPol.isは個人IDと紐付け、場合によりプロフィール含め政府のサーバーで管理しているため、時系列でIDごと・グループごとの意見を解析できる点もTwitterよりパワフルです。より正しく幅広いデータサイエンスが適用でき、民意データをフル活用できます。

Twitter分析のようにデータの表層をなめるだけではなく、Pol.isのように根本的な分析がマクロもミクロも出来ればより社会は発展します。

オードリーさんが英語教育・フランス語導入の事例を挙げていらっしゃいますが、それぞれのイシューがどの属性グループにどの様に受け入れられているのか、本当の意味で10年15年先の国家の発展を見据えて戦略決定ができているか、的確にわかると思います。

端的に言えば、一部意味のない反論をしているグループの意見は押し切ってもいい、というリスクはあるが正しい判断も、データサイエンスの力で透かして見えます。

フランス語導入は、かなりの物議を醸しそうです。ただどの層がフランス語の導入について賛成をしているのかと言うファクトを掴むことで、フランス語導入の真のメリットが理解できない平均的な一般市民の反対を押し切ってでも導入する、という思い切った意思決定ができるのではないでしょうか。

つまり投票は一人一票で平等ですが、匿名情報であるゆえに、プロフィール情報と紐つけた”意見の重みづけ”は通常はなされていません。そこを保管するのがPol.isだと思います。

台湾政府はデータに基づいて、オードリーさん主導のもと、しっかりとしたエビデンスをもとに、大胆で未来を向いた長期的な政策決定が実行できているはずです。特に政府に限らず、より抽象的な意味での類似の仕組みは企業内意思決定でも使える仕組みだと思います。

噂情報の真偽鑑定クラウドソーシングプラットフォームCofacts

石井大輔

次の質問は、台湾のG0v (gov-zero)チームからのものです。タイのファクトチェックプラットフォーム(真偽判定システム)「Cofacts」は、現在GitHubで最もアクティブなリポジトリの1つです。

Okay, thank you. My next question is According to your G0v(gov zero) team, your “Cofact” (訳注:Collaborative fact-checking platform in Thailand) is one of the most active repository in GitHub.

台湾のCofacts HP

https://cofacts.g0v.tw/

このプラットフォームでは、利用者は噂のファクトチェックをクラウドソーシングすることができます。

投稿すると平均60分で結果が分かります。このシステムを使えば、パンデミックで起こるインフォデミック(偽情報によるパニック)を止めることができます。

In this platform, people can crowdsource the factcheck of rumors. It can be done in 60 min as an average and this could stop info-demic under COVID-19.

どのようにしてこのアイデアを思いついたのでしょうか?

それと、このオープンソースとクラウドソーシングを組み合わせた仕組みを他の国に普及させるには、どうしたらよいのでしょうか?

And, how did you come up with this idea?

And then, how can we expand this open source plus crowdsourcing idea for other use cases under eventually the other countries?

オードリー・タン

Cofactsチームは既に普及を進めています。例えばチュラーロンコーン大学で、ここでは私達がワークショップを開催しました。よろしければ「Cofact.org」(https://cofact.org/)を訪れてみてください。

Yeah, the “Cofact” team have already spread for example to the Chulalongkorn University where we had a workshop and if you remove that and go just to “Cofact.org”.

訳注:チュラーロンコーン大学=タイのバンコクにある歴史ある公立大学

「Cofact.org」(https://cofact.org/)を訪れると、実際は"Cofact “リポジトリにある試運用バージョンのタイ語版に飛びます。つまり既に世界中、特にタイで広まっているのです。素晴らしいことです。

It actually goes to a Thai version in pilot of the “Cofact” repository. And so, it has already seen a lot of adoption around the world and especially in Thailand, which is very nice.

タイにも広がったCofacts

オードリー・タン

ですが、実際にこのチャットボット(Cofacts)の開発に一番の貢献をしたのは、プロジェクト共同設立者の「Liam G Johnson」という人物です。ニックネームは「MrOrz」です。彼はとても大きなチームをまとめ上げ、初期バージョンの開発を成功させました。ジョンソンにも話を聞くことをお勧めします。

But I cannot speak on behalf of the co-founder “Liam G Johnson” who really goes by the nickname “MrOrz” is actually the main mastermind behind this chat-bot and also the main contributor for the first version of the Cofact of course now it’s a very large team so I would encourage you to maybe ask “Johnson”.

彼のGitHubリポジトリ(https://github.com/MrOrz)と彼の連絡先をお知らせします。

このプロジェクトに関して私は支援者という立場で、全面的に関わってはいないのです。

I mean here is his GitHub repository (https://github.com/MrOrz) and his contact details and maybe he can share the full story because I’m just a promoter of “Cofact”, but I’m not part of the team that started perfect.

石井大輔

わかりました、連絡してみます。ありがとうございました。

https://issuu.com/pdis.tw/docs/2020-08-18_mit_cdoiq

(石井注釈)

台湾零時政府プロジェクトの中で、最もアクティブなレポジトリCofactsと言う仕組みは、

日本でも導入したい物の一つです。市民ハッカーのシビックテックなので、誰か市民のリーダーが立ち上がり、イニシアチブを持って広めなければなりませんが、パンデミック下のインフォデミック(情報の錯綜に関しての混乱)に対して良いソリューションだと思います。

クラウド上のファクトチェックのクラウドソーシングは、ウィキペディアの共同編集機能に少し似ています。色々な疑わしい事実がフォーラム上で投げられ、真偽のほどを時間の空いたコントリビューターや専門的な知見を持ったボランティアがチェックすることで、平均60分で真偽判定できると言う事は、とても効率的です。社会の混乱を招くような得体の知れない噂話を、悪い情報としてラベルをつけられる事は、大きく社会の役に立つはずです。

拡張して言うならば、パンデミックに限らず、災害・事件・芸能人の噂話に関しても、このようなファクトチェックの仕組みが広がれば、より良い快適な社会が実現できるでしょう。

例えば写真週刊誌などにより、いわれのない悪い噂広められ事務所辞めてしまうような芸能人や、自殺に追い込まれてしまうような芸能人もいます。この場合もファクトチェックのCofacts的な仕組みがあれば、かなり本人のの助けになります。

2chも似たようなファクトチェックの仕組みを持ってはいます。ただ2chは議論がネガティブな方向に偏りがちです。またウィキペディアも似たような仕組みを持っていますが、ウィキペディアは広辞苑の様な辞書のリプレースという目的にしか使うことはできません。

もう1点、Cofactsのタイへの広がりは素晴らしい取り組みだと思います。逆に言えばタイ以外の事例は、まだ非常に少ないはずです。日本や他国もこの仕組みを導入すれば、より社会が良くなり、安全になることは間違いないです。このような政府支援の元のファクトチェックの仕組みを、マスメディアや政府が利用すれば、より良い正しい社会を実現できます。

悪い噂が広まっている場合、その検知もできるので、警察・防衛にも使えるインフラになると思います。

天才プログラマー・オードリーさんがたった200行で効果的なアプリを作れる秘訣

石井大輔

次の質問は少し技術的なことです。オードリーさんは天才プログラマーとして有名です。GitLab Taiwanのエンジニア友人から伺ったのですが、オードリーさんは僅か200行のコードで、驚くほどパフォーマンスが高いアプリケーションを作成したことがあるそうですね。

Okay. I would definitely do so. Yeah, thank you very much.

My next question is a little technical. You are known as our programming Wizard and then my Taiwanese engineer who’s actually working for the GitHub Taiwan and says you can write 200 lines of codes and can build amazing performance application.

軽量で効果的なコードを書くための秘訣があれば、3つほど教えていただけますか?

So, what are the top three key points when light effective code?

オードリー・タン

1つ目は、デザインやグラフィックやアイコンなどを除外した、コアとなる機能のみが書かれたコードをコミュニティと共有することです。

Well, first of all, it helps to write it with the community if I write just a barebones without design, graphics, favorite icons and so on.

私はコードを公開する時、「このコードは暫定版なので、プルリクエストをお送りください。」と言います。そうすれば、他の皆さんが(修正時の心理的ハードルが下がるため)貢献しやすくなります。

But I do it in the open and I say I know this is looks ugly but send me pull requests then everybody can contribute.

それからもう1つ。本当に重要なことは、単独で作業するのではなくクラウドで作業することです。

and that’s really the main key point is to work out cloud instead of working in isolation.

2つ目は、社会的に良さそうなプロジェクトかどうか初期段階で見極めることです。コードを書き始める前にreadme.txtの文面を考え、プロジェクトの企画全体を想像し、プロジェクト名とハッシュタグを考え、不特定多数の人が社会的意義を認めて開発に参加するように動機付けるには何をするべきか、といったことを考えるのです。

The second thing also helps that you identify the projects social good in the very beginning. So even before you write the first line of code think about your readme (readme.txt) think about your pipeline think of you about your project name and hashtag and how to communicate the social good of your project to any random stranger so that there will be motivated to contribute to the code base.

3つ目ですが、相手を多くの同意書で縛る代わりに、相手に活躍の場を与えることを大切にしています。これは「Radical Trust(徹底的な信頼)」と呼ぶ方法論です。相手は、GitHubで自分が実施したcommitに問題があると分かったら、自らrevertすることができます。

Third always instead of asking people to sign a lot of consent forms and so on before contributing just give them the capability to contribute. That’s radical trust and it’s always easy nowadays that you can revert their changes If it turns out your changes doesn’t make sense.

訳注:commit=GitHub等で変更を反映する操作

訳注:revert=GitHub等で変更を取り消す操作

許可を得ることは謝ることよりずっと難しいことです。だから、取りあえず進めてもらい、もし間違ったら一言ごめんなさいと言って修正してもらえば良いのです。

But asking for permission is much more difficult than asking for forgiveness, right if people can just go and change and say, oh, sorry, forgive me. I got it wrong.

私自身もこれまで、誤字脱字を含め、些細なミスを色々してきました。

I made a typo or whatever it’s no big deal.

しかし、もし皆があなたの許可が無いと動けないとしたらどうでしょうか。その場合、それがプロジェクトのボトルネックになってしまい、あなたの負担が減ることもありません。あなたがその気になれば、あなたは他の人に委任することさえも委譲することができます。

But if everybody has to ask your permission, then you become the bottleneck for the project and so by relieving yourself of the bottleneck. You can delegate away even the delegation to other people.

石井大輔

その通りですね。ありがとうございます。

That’s great. Thank you.

オードリーさんが言及された「Radical Trust」に大変興味を持ちました。

「Radical Trust(徹底的な信頼)」と「Trust(信頼)」の主な違いは何でしょうか?

And then, your way of using radical trust. That’s really interesting. What’s the main difference between “radical trust” and “trust”?

オードリー・タン

「Radical Trust」の意味するところは、参画する権利の委譲です。例えば、Rakuというプログラミング言語を使いやすくするために、最近私はPugsの実装を行いました。その際、私は共有リポジトリへのプッシュ権が必要だったので、PerlやHaskellの関係者だけでなく、Pythonの生みの親であるグイド・ファンロッサムにもそれを伝えました。

ご存じの通り、Perl 6を巡ってはフォーラムに(Perl 5の正統な後継でないという)批判的なコメントが書かれますが、私達は大抵「権限があります」とだけ返信します。

Yeah, radical trust means that we gift right to commit. For example, when I was working on nowadays called “Raku” but back in that time the “Pugs” implementation. I give commitments just to say the right to push into the shared repository not only to people working on Perl and Haskell but also “Guido van Rossum”, the

creator of python. Why not and even when someone you know flames like writes some toxic language about Perl any of the forums. We often just reply saying hey here is a commit bit.

訳注:Raku=ラリー・ウォールが提唱。Perl 6から改称。

訳注:Pugs=HaskellでできたRaku (Perl 6)の処理系(コンパイラ及びインタプリタ)。オードリーが提唱。

訳注:Guido van Rossum=グイド・ファンロッサム。プログラミング言語Pythonの生みの親。

訳注:commit bit= GitHubアカウントに付与されたリポジトリへの書き込み権限

オードリー・タン

あなたも開発に参加して、より良いものにすることが出来ます。進化が続くのは、元のバージョンから改良版を生み出す人のおかげです。直前に変更が行われたばかりであっても、もっと良い案が見つかったなら直ちに改良を施すべきなのです。これはWikipediaと同様で、IPアドレスを持っている人なら誰でも改良することが可能です。もし間違った変更をしてしまったら、後から謝ればよいのです。

You can contribute and make it better. He even evolved so that when there was a committer who was

just giving first two to one of their children. We immediately gave the child a commitment to even though they’re just new born as a basically. It’s like Wikipedia right anyone with an IP address can paint our code and we can figure out the forgiveness later if they’ve made some bad changes.

https://www.flickr.com/photos/audreyt/49891138307/in/album-72157714287025581/

(石井注釈)

私の質問は天才エンジニアである、オードリーさんのコードの書き方のお作法や、

文法を作るときの注意点などを期待していました。

いわゆるプログラミングの教科書でいうきれいなコードを書きかたなどです。

オードリーさんの答えは予想に反して、他人の力をフル活用するというものでした。

そして一般的にオープンソース言われてるような、経験が反映されていると思いました。

つまり自らのオープンソースへの貢献や、エンジニアとしての経歴を生かして、

人間の心理を深く洞察し、オープンソースのコントリビューションを加速するためには、

どのように協力者にアプローチし、どのような情報公開すれば助けてもらいやすくなるかということを、深く考えていらっしゃると思いました。

例えばGitHubの文章を作るときに、この文章はまだ暫定的なものなので、コメントをぜひお願いしますといった一言添えるだけで、コントリビューターの数がおそらく数倍数十倍 違ってくるということを、オードリーさんは経験則からおっしゃっています。

また私が質問したラディカルトラストと言うのは非常に面白いコンセプトだと思いました。

GitHubレポジトリに貢献する人の心理ハードルを下げ、より安心して間違いを犯すことが出来るようなアプローチです。

GitHub、クラウドファンディング、NPOプロジェクト、Techスタートアップであっても、情報公開し協力者の支援を仰ぐといった事は世の中で広く行われています。

そんな時、より多くの協力者の申し出を集めるために、より協力しやすくなるようなメッセージを発信できているか、と言う事を我々は通常研究しません。

もしそこにプロジェクト成功のヒントが隠されているとしたら、IT・非ITの幅広いプロジェクトで、メッセージの発信の仕方をオードリーさんの様に研究して磨くことは、大きな意味があるはずです。

善意を持って、プロジェクトに協力したいと言う人であっても、人間だったら間違いを犯すと事を恐れます。その人間心理を理解することが大切なのでしょう。

“これは間違いを犯してもいいんですよ”と、直接的な表現で言うのではなく、

少し冗談ぽく語りかけたり、”私の考えもまだ甘い部分があるんですあるんですよね”、と言う謙遜した態度を表明することで、より周りが助けやすくなるはずです。

スーパースターの天才的なリーダーは、ときにピカピカのブランディングをしてプロジェクト推進します。でも、私足りないところがあるので非常に困っています、助けてください!と言う頭を下げるようなアプローチの方がより効果があるのではないでしょうか?

次の質問で”何事もデザインできる”=目標の達成に向かってプロセスとアウトプットを試行錯誤しながら最適化できる、と言うことをオードリーさんがおっしゃっています。

まさにこのオープンソースコードの力を使って、短いコードで良いアプリを作ると言う話そのものに、そういったプロセスの工夫の要素が詰まっています。オードリーさんが目的達成のために、業務フローそのものをデザインする過程で生まれた知恵なのではないでしょうか。

台湾ではコーディングはプログラムデザインと呼ばれる — Design Everything

石井大輔

関連して質問があります。景気後退の影響もあって、日本ではエンジニア(ITエンジニア)を目指す人が増えています。ITエンジニアは高給取りで、場所を選ばずリモートで仕事ができるからです。このようなエンジニアの新人や志望者を応援するためにメッセージをいただけますか?

Great. Similarly. Lots of people in Japan maybe globally wants to become an engineer (IT engineer) this time because of the bad economy. IT engineer can be highly paid and then one can work remotely regardless of the place. So, do you have any message to encourage this kind of newbie or wannabe engineers?

オードリー・タン

台湾ではソフトウェアエンジニアリングとは呼ばず、プログラムデザインと呼んでいます。意味するものは同じなのですが、異なるイメージがあるからです。エンジニアリングというと、機械と対話する人のことを思い浮かべます。

Yeah, I think in Taiwan, we don’t call it software engineering we call it program design and it’s the same thing but it conveys a different idea when you call it engineering you think of someone who interacts mostly with machines.

しかし、デザイナーというと、主に人とのやり取りをする仕事をイメージします。そしてもちろん、プログラミングの仕事には、人との仕事と機械との仕事の両方が含まれています。あなたが書くコードは機械に読まれるだけでなく、人間にも読んでもらえるようにしなければなりません。

But if you call it a designer, that’s someone who mostly interact with other people. And so, of course a real programming work involves working with people at working with machines, of course and whatever code you write must be readable by machines, but also readable by humans.

プログラミングの仕事には2つの側面があるのです。ソフトウェアエンジニアという言葉が片方の側面だけしか持っていないとういことではないのですが。

プログラマーにはぜひデザイン思考、コンピューティングスキル、科学的思考の重要性を認識してほしいです。

And so, there’s two sides of this job. I’m not saying that there’s only one side but since you’re talking about software engineers. I would like to encourage them to not forget about the design part computational thinking scientific thinking is great.

デザイン思考ができると、人が持つ様々な価値観を探り、その多様性の中から共通の価値観を定義する方法を学び、様々なプロトタイプに合わせた開発を並行して行い、最終的な作品を納品する方法を学ぶことができます。

さらに、他の人に参加してもらうことも学べます。そういったことがデザイン思考です。

But also design thinking learn about how to explore the various different values that people have how to define a common value out of that diversity how to develop according to various different prototypes concurrently and how to deliver the final work and also allow other people to deliver their version of their work and that’s design thinking.

石井大輔

ありがとうございました。典型的なバックエンドエンジニアや機械学習エンジニアがデザイン思考を身に付けるにはどうしたら良いでしょうか?

Okay. Thank you very much. So how can typical because for example one of the typical backend or machine learning engineer do not learn designing?

デザイナーでなくてもデザイン思考を学ぶことができますか?

And then, how can they learn designing without being the designer?

オードリー・タン

プロのデザイナーにならなくてもデザイン思考は身に付きます。仲間と分かり合い、取り組みを定義し、問題を再定義して、革新的なソリューションを作成することの反復によって培われます。

Yeah, I mean design thinking is not about being a professional designer. This is just about working through this iterative process to how to understand your fellow human beings and how to define those challenges and redefine problems and create innovative solutions and if you can learn programming by going to I don’t know stack exchange or whatever form that people are having a such a conversation.

例えば、インタラクションデザインの基礎やデザイン思考についての説明を読んだり、参考文献を探したり、コミュニティに参加したりできると思います。デザイン思考は常にアイデアから始まります。このアイデアは多くの場合、あなたの生活の一部です。物事をより良くする方法について日頃から考えていれば、アイデアが自然に浮かび、実現させることができます。他の人に意見を求めることもできます。

I’m sure that you can also browse for example, the interaction design foundations and description about design thinking and find the references and join the communities. I mean design thinking always starts with an idea and this idea is often just part of your life right you can see something that you want to see done better and then it reaches you and then you can reach to other people asking whether there are some other issues that you also want to solve in that vein.

それがインタラクションデザインの基礎で、問題解決の道筋を教えてくれます。もしご興味があれば、「interactiondesign.org」のビギナーズガイド)をご覧になってください。

And that is the basis of interaction design and that will then teach different plans of problem-solving. So, if you’re interested, I just pasted the “interactiondesign.org” beginner’s guide.

https://www.interaction-design.org/

オードリー・タン

全てのレッスンを見る必要はありませんが、概要を見ればデザイン思考の学習法が分かると思います。ユーザーインターフェイスやユーザーエクスペリエンスの観点、フロントエンド開発者やユーザーや研究者の観点から学ぶことができます。

You don’t have to follow all the lessons but that outline shows what’s the learning path about design thinking and you can start from a user experience perspective from a user interface perspective a front-end developer perspective a user researcher perspective.

デザイン思考は、多種多様な観点を糸口にして学び始めることができます。

There’re many many different entry points into the learning path of design thinking.

石井大輔

ありがとうございました。

デザイン志向について色々気付きがありました。中でも今日の最大の学びは、UI / UXデザイン以外にもデザイン思考を適用できるということです。機械学習やバックエンド開発など何にでも適用できるのですね。

Yeah, okay. Thank you very much.

I’m also big found design thinking but my biggest learning today is what we are saying is design thinking except UI/UX design exist in case of machine learning in case of backend everything can be designed.

オードリー・タン

はい、その通りです。機械装置の設計やCADもデザインの一種です。様々なことにデザイン思考を適用できます。

Yeah, that’s definitely the case mechanism design or CAD design service design. Everything can apply the design thinking too.

(石井注釈)

台湾ではエンジニアリングのことを、プログラミングデザインと呼んでいる。

そしてオードリーさんはユーザインターフェースやユーザエクスペリエンスがなくてもデザインができるとおっしゃいました。例えばAI・機械学習に関しても、無形だがデザインができる。ユーザーの気持ちになってプロセスを改善しようと学ぶ姿勢そのものが、エンジニアの方スキルを磨き、良い目標達成のために、より広い視野で成長するプロセスであると言うことを、オードリーさんは教えてくれました。

今回のインタビューの中でここが私に1番刺さり、弊社の経営・私の人生にとって非常に大きな意味を持つ言葉をいただけたと感じ、感謝しています。

我々はデザインと言えば、建築・アート・アプリのUI・雑誌の表紙のようなものを思い浮かべます。形のあるものに目を向けがちです。

広義のデザインはもしかしたら、目標の達成のために、良い計画推進のプロセスを研究し・アウトプットを何回も試行錯誤し、実験を繰り返して最適化するとも言えないでしょうか。

そう考えれば広義では以下もデザインできるはずです;

  • パンデミックにおける国家の対策戦略
  • 夫婦の関係を良好にし幸せな人生を送るための戦略
  • 就職活動のプロセス
  • 受験勉強のプロセス
  • 金メダルを取るためのオリンピック選手の練習プロセス
  • 地球を永続的に発展させるための人間の活動

このように考えると、人類全員(あらゆる年齢・職業)が広義のデザインを学び、

それぞれのプロトタイピングづくりと試行錯誤を通じて、

目標達成に向かってより良い高いクオリティーのアウトプット出そうとすると、

この運動が広がれば社会全体が良くなると思います。

私の会社であれば下記がデザインできます:

  • 社長としての私の行動
  • 経理部のプロセス
  • 資金調達するときの財務戦略
  • エンジニアチームの組織形態
  • 日々のプロジェクト進捗管理
  • リモートワークの働き方
  • よりメンバーが幸せになる福利厚生

毎日こういったデザインを繰り返す会社と、全くデザインしない会社では、5年後の決算で大きな差がつくと思います。少なくとも私はそう思い、これからも会社をデザインし続けようと思いました。プロジェクトの目標が大きいと、デザインのプロセスは永遠に終わらない、とも言えるでしょう。そして、永遠に終わらない会社こそ、永遠に成長できるとも言えるでしょう。

皆さんの周りでも、身近ないろんなことがデザインできるのではないでしょうか。

会社系に限らず、周りプロジェクトやプロセス、たとえデザインスキルがない方でも、絵が苦手な人も、ぜひ広義のデザインをして欲しいと思います。

https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Illustratie_design_thinking_%2B_lean_%2B_agile_v2.jpg

成功したマスク在庫状況アプリのオープンソース化と韓国への波及

石井大輔

私の最後の質問は、オードリーさんが実現したマスク配給アプリとデータ視覚化についてです。これは 誰もが称賛していますね。技術的に言えば、このシステムの構築にはパブリックAPIとオープンデータが不可欠だと思います。ICFPで行われた基調講演で、オードリーさんは韓国の例に触れていましたね。韓国では同様のアプリケーションを構築しようとして実現できず、薬局のオープンデータAPIは無いそうですね。その他の国の政府や大企業は、このオープンデータの動きを進めることができているのでしょうか?たとえば、大企業にパブリックAPIをもっとたくさん提供してもらったり、シビックテックハッカソンをサポートするための予算を多く割り当てたりなどです。

My very last question is that everyone praises your achievement mask supply application and its data visualization.

So, technically speaking public API and open data are essential to build it.

So, In your ICFP keynote, you said someone from Korea contacted you but they couldn’t make it, they couldn’t built the same application in Korea. So, we do not have a pharmacy open data API either.

So how can other country, for example government, big companies, proceed this open data movement, for example persuading big companies to provide more a public API for allocating the budget to support civic tech hackathon.

オードリー・タン

まず初めに、今年2月上旬、台湾では薬局向けAPIが公開されました。その時点で韓国にはまだ同様のオープンAPIはありませんでした。

Yeah, first of all, I was referring to early February where are we did the API for Taiwanese pharmacies and at the time of course the Korean people do not yet have to open API.

しかし、G0v(gov-zero)のSlackチャネルで台南市のエンジニアが、彼が持っていたAPIを韓国の人々に共有したのです。その後、ソウル市は3月頃に同様のAPIを公開し、韓国のその他の都市も続きました。

But what’s amazing is that Mr. Finjan Kyung from Tainan city part of the G0v (gov-zero) Slack channel shared the API that he had with the people in Korea. And so, for example, Seoul city quickly well not quickly but eventually around March set up such API and followed by other cities as well.

これは、ほんの数週間の出来事です。3月中旬までには普及していたと思います。現在彼らは、マスク配給システムと連動したマップを持っています。

And so, I think it’s just a few weeks time. I think by mid-March. They do have a mask availability map going in their masks rationing system.

私はビデオ会議で韓国の開発者に会いました。中には15歳くらいの方もいました。素晴らしいことです。今回、韓国政府は慣例に囚われませんでした。そしてシビックエンジニア達は、台南のAPIを使うことでスクラッチ開発することなくマップ作成を成し遂げました。台南のエンジニアは韓国語を話せませんでしたが、JavaScriptが共通言語となりました。

And I also met developers over video conference. Some of them are just like 15 years old, so it’s excellent. And so, what happens I think at that time is that the Korean government were seeing that there is a need that they do not have example and the civic technologists can show is that once you use the API then instead of coding anything from scratch the map that pigeon can made in Tainan City can immediately work also as a map for the Seoul city even though Vincent doesn’t speak Korean, but he speaks JavaScript that’s the important thing.

JavaScriptによるコラボレーションが上手くいった例だと思います。

Right. And so, I think that enabled a real collaboration.

日本のシビックテック団体「Code for Japan」も東京都と協力してCOVID-19ダッシュボードを作りましたね。彼らはオープンソースで作業しているので、台湾G0v(gov-zero)のメンバーも国際化と台湾語への翻訳(ローカリゼーション)を支援しています。私も個人的に手伝っています。

In Japan, there is a very similar story about the “Code for Japan” people who work with the Tokyo Metropolitan government to work on the stock COVID dashboards. And again, because they work out in the open the G0v (gov-zero) people also helped out the internationalization and localization and I personally also have translating it.

オープンソースであり、GitHub上で行われている限り、もはや国境を意識する必要はありません。韓国にいる人、台湾にいる人、日本にいる人、どこにいる人であっても、JavaScriptを話す人なら誰でもAPIを共同設計できます。そして政府は、基本的にそこでの作業結果をすべて受け入れます。いわば逆調達で、政府がしなければならないのはAPIの安定性に対する保証のみです。他に必要なことは何もありません。

So as long as it’s open, it’s on GitHub. I think it’s there’s no boundaries. It’s not just you know people in Korea or people in Taiwan or people in Japan everybody who speak JavaScript can co-design the API. And the government basically accepts whatever work with there and then basically it’s like a reverse procurement where the government only have to guarantee the stability of the API, but doesn’t have to do anything else.

石井大輔

他の国からマスクアプリケーションについて協力要請はありましたか?

Did you get any requests from other countries regarding the mask application, Fantasy API.

オードリー・タン

ありました。そして、ただ単にAPIをコピーしようとするだけではなく、市民主導の開発という台湾モデルに注目が集まっています。従来は政府のITサービスを市民主導で作ることに理解が得られなかったのですが、驚くべき変化です。

Exactly definitely and many people are seeing it’s not as something that they can just copy but rather a model like the Taiwan model where they can engage to civil society the social sector who do not previously understand that they can also make government digital services.

たとえば、東京都の新型コロナウイルスデータ可視化は東京都ドメインで運用されています。

For example, on the stock COVID dashboard in Tokyo I think all watch the Tokyo people do in the metropolitan government is basically giving them a domain name that is a government.

しかし、データの実体は依然としてGitHub上にあって、人々がプルリクエストなどを行っています。

But the actual link is still to GitHub and the GitHub is the main place where people do pull requests and so on.

つまり、東京都のドメイン名が付いているけれど、実体は他の多くの都市にも分散していて、世界中で開発されているということになります。

And that means that it’s made in the world is just given a Tokyo Metropolitan domain name and that of course is forked into many other cities as well. Okay?

石井大輔

なるほど。ありがとうございます。

これで私からの質問は終わりです。回答に感謝します。

Well, thank you very much. That’s all for my questions and I thank you very much for answering

we think.

https://www.taiwannews.com.tw/en/news/3882111

https://issuu.com/pdis.tw/docs/2020-08-18_mit_cdoiq

(石井注釈)

最後はオードリーさんの新型コロナウイルス対策の中で、最も有名なマスク在庫状況シェアアプリのお話でした。各薬局のマスクの在庫のAPI(コロナウイルス対策商品の在庫のリアルタイムデータが簡単にアプリのフロントエンドと繋げられるデータベース連携の仕組)が提供されているかどうかが、アプリを開発できるかどうかのキーになる、と私は考えていました。

当然日本のようなコンサバな国では、薬局の在庫データがドラッグストアチェーンの垣根を越え、横串で繋がり、一般公開が許される様な状況は考えにくいです。台湾の様にはいかないと思っていました。ところが上記に出てくるgov zeroメンバーの活動で、本来は難しかった韓国でも、台湾同様のマスクアプリが実現したとオードリーさんはおっしゃいました。難しい状況下でこのプロジェクトが韓国にも飛び火できたというのは、希望の光だと思います。日本で無理と考える私も甘いのかもしれません。

個人的にもこのgov zero(零時政府)およびCode for Japanのシビックテックの取り組みは素晴らしいと思っています。オードリーさんの目論見も、このような公的事業に近い良いものを、あえてオープンソースとして政府の外でgov-zeroとして管理することで、政府の許可を得ないで開発が進められるというスピードメリットを重視しているのでしょう。

2020年時点では若干未来的すぎて、gov-zeroのコンセプトは一般の方には理解しにくいかもしれません。オードリーさんはそこもお見通しで、長期的な世界への種まきとして、他国との共同作業プラットフォームをオープンソースで仕込んでいるのでしょう。社会とITリテラシーの進化が追いついてくれば、各国で一気にgov zeroとgov zero的なが協業の社会インフラとなり、社会問題解決アプリが加速度的に世界中に広がるでしょう。

Gov-zeroのメンバーとの対話で分かったのですが、繁体中国語のドキュメントという縛りから、現状はgov-zeroをベースにしたアプリは主に台湾と香港で広がっています。

英語圏や日本には広がっていません。この意味でgov-zeroプロジェクトには、世界市場への広がりという大きな可能性が残されています。

通常、私も含めて政府の文句を言いたくなることが多いというのが国民感情です。

その際、オープンソースを通じ、世界のどこにいても自国の社会変革に貢献できるgov-zeroの仕組みがあれば、たくさんの人が国籍を越えてアクションを起こすでしょう。

例えば、日本のスタートアップでIssue Huntという仕組みがあります。GitHubのIssueのコーディングタスクをチケット化して、それを消化してくれた人に報酬が出る仕組みです。

賞金稼ぎ的なノリで、コーディングの納品が速い人には追加ボーナスが支払われます。

もし社会貢献性のあるアプリの開発に対して、そのミッションに共感した大企業、例えば東京海上のCSR予算からの拠出金があれば、各Issueに対しての報酬の原資ができます。オープンソース側は、スポンサーの参加により負担金なく開発スピードを上げられます。さまざまなオープンソースや資金提供の仕組みをマッチングすることで、世界中から多数の市民ハッカーが集まり、社会変革アプリが一気に立ち上がる未来も近そうです。

新型コロナウイルスで、リモートワークが広がり、地方や海外に在住してお金を稼ぐ方法や、コーディングスキルを磨きたい人が増えています。そんな時、gov zerroをはじめとした社会貢献プロジェクトがあり、かつ大企業のスポンサー金でコーデイングのアウトプット毎に細かく報酬が支払われる仕組みが構築できれば、本職として市民ハッカーになり、世界中を旅しながら稼ぐ、という新しい職業も生まれそうです。

おわりに

私自身この汎用的に使えるインタビューを今後も繰り返し読み、

オードリーさんのインタビューやYouTube、書籍で勉強させていただき、

また彼女のg0v(gov-zero)を始めとした

オープンソース・オープンガバメント運動に少しでも貢献できるよう努力したいと思います。

オードリーさん、台湾政府各位、台湾国民のみなさまに、この貴重な機会を感謝いたします。

有難うございました!

To Audrey Tang-san & Taiwanese people & Taiwanese government

Thank you very much for inspiring me.

I will try to contribute to Taiwan’s open source and open government movement from Japan.

I found any kind of negative event can be solved by the power of people’s collaboration.

We will make a better world together.

給唐鳳先生和台灣人民和政府。

非常感謝您給我的啟發。

我將為日本的台灣開源和政府公開運動做出貢獻。

我發現人們合作的力量可以解決任何負面事件。

我們將共同創造一個更美好的世界。

(Part 1 / Part 2 / Part 3)

ご感想等、是非お寄せください。Email : dai@kiara.team

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