オードリー・タン台湾デジタル大臣対談【未曾有の危機に使える未来思考】Part 2/3

Daisuke Ishii
Daisuke Ishii Blog 石井 大輔 ブログ
47 min readDec 28, 2020

しなやかに強く生きるために【聞き手:石井 大輔 Kiara Inc.】

https://www.flickr.com/photos/audreyt/50011296731/in/album-72157714727635571/

(Part 1 / Part 2 / Part 3)

本インタビューは下記の”コロナ vs. AI −最新テクノロジーで感染症に挑む(翔泳社)”の特別企画として収録されました。

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マインドフルネスを保つための秘訣とは — 悲観も楽観もバランスを取れば良い

石井大輔

次の質問は、私の友人の台湾人からです。あなたは怒りを見せたことがなく、いつも落ち着いているそうですね。マインドフルネスを保って穏やかな考え方をすることは、パンデミック下ではとても重要です。しかし最近、ソーシャルメディアはカオスの様相を呈しています。

My next question is, according to my Taiwanese friends, you never showed anger and you are always calm. Having mindfulness and being calm mindset is very important under pandemic, especially social media was chaos in this time.

オードリーさんのように穏やかにいるためには、どのようなマインドセットを持っていればいいのでしょうか?3つほど教えてください。

And then which kind of mindsets should we have to be a person like you?

オードリー・タン

1つ目は、スマートフォンなどの通知を全てオフにすることです。私は仕事中いつもサイレントモードにしています。例えば、人と面会している時、呼び出し音が鳴らないにならないようにしています。これは、集中するために重要なことです。

2つ目は、ソーシャルメディアやメールのチェック間隔を30分に1回に制限しています。

Yeah, first of all, I turn off all the notifications. I always work in the do not disturb mode.

So I will not for example, my phone will not go Bing(鳴動音) when we are having this conversation. And this is important to be distraction-free and the second thing is I limit my social media or indeed checking my inbox only once per half an hour.

例えば、25分間集中します。そして、5分間ソーシャルメディアやメールをチェックします。これはポモドーロ・メソッドと呼ばれていますが、これも大変効果的です。

So, I focus for 25 minutes. And then I check social media or email for five minutes. It’s called the Pomodoro method and also helps a lot.

そして3つ目は、毎晩十分な睡眠をとることです。

And certainly, I think it’s important to have sufficient amount of sleep every night.

私は毎晩平均8時間程度の睡眠をとっています。十分な睡眠時間があれば、前日に集めた短期記憶のほとんどが長期記憶に書き込まれます。

I sleep about average eight hours every night. If you have sufficient amount of sleep, then most of the short-term memory you gather the previous day will be written into long-term memory.

しかし、睡眠時間がとても短い場合、長期記憶への書き込みが完了しないままになってしまいます。そうすると、前日のことが頭の中に残っている状態で一日を過ごすことになり、それが邪魔になって気が散ってしまうのです。

But if you have a very short amount of sleep then that’s writing to the long-term memory is not yet done. And so you will live the other day with a lot of thoughts from the previous day still in mind and that interferes is kind of an internal distraction.

そういうわけで、睡眠不足を避けることは非常に重要です。

And so, having sufficient sleep also very important.

石井大輔

そうですね。私は以前イタリアで働いていたのですが、友人のイタリア人はパンデミック下の新しい生活スタイルに対してとても楽観的に適応しています。一方、日本では最近、数人の有名人が自殺してしまいました。ここ数か月の日本の自殺数は、15%ほど増加しているそうです。

Okay. Similarly, I used to work in Italy so they are very optimistic about a new(the) way of thinking and then recently some of the celebrities committed suicide in Japan and the suiciding rate, it was like a 15% increase last month in Japan.

パンデミックのせいで景気が悪化していますが、このような環境下でも楽観的な考え方を維持するにはどうすれば良いでしょうか?

So, people are like getting pressure on the pandemic about the economy, so well similarly how can we maintain this optimistic mindset that in the pandemic?

オードリー・タン

これは私の考えですが、落ち込んでいる時に楽観的になろうとする必要はないと思います。そのような時は、脅威を見落とさないように、長期の考えを整理する好機なのです。行動してばかりだと、脅威を見落としてしまう恐れがあります。

Well, I mean, it doesn’t have to be optimistic if you feel depressed that is also a good time to reflect to do some long-term thinking to make sure that you don’t miss some threats. That could be missed when you are much more active.

悲観的な時は長期的な戦略を立てるのに適していて、楽観的な時は行動に適しています。

Right So it’s like the time and time if you feel pessimistic, it’s good for long-term strategizing if you feel optimistic is good for actions.

秘訣としては、楽観と悲観のサイクルを数日以内に限定することです。もし楽観を半年間続けてその後に悲観を半年間続けるようなサイクルにしてしまうと、振れ幅が大きくなりすぎて双極性障害になってしまいます。しかしサイクルを数日以内に限定できれば、寝る前に戦略を練り、起きてすぐ行動を起こすといった最良のリズムになり、ある種の体内時計を獲得することができます。楽観と悲観のテンポとバランスは重要だと思います。

The trick is to make sure that the cycles are in a balanced fashion like in and young within the space of a day or at most a few days. If you spend half a year being optimistic half a year being pessimistic that’s much more bipolar, but if you can limit that interval to at least a few days or a single day, like maybe do some like strategizing when you are going to sleep and list of actions you can take when you wake up does of course the best rhythm so getting a kind of internal tempo going on. I think it’s very important at tempo the speed of going more active and more reactive that will tend to balance one another.

石井大輔

なるほど。ありがとうございました。ここで、少し前に伺った質問に戻らせてください。

Okay. Thank you very much and then a little bit back into the previous question.

(石井注釈)

最初の質問に彼女が示したノウハウは、大切なものでした。

しかし彼女の一生を通じて冷静さを保ち、

言葉を荒げた事がないと言う事は、それは持って生まれたものであり、

聡明さからくる冷静さという事に尽きると思いました。

この点、私は今後さらに多くの台湾国民と話し、彼女のマインドフルネスに溢れる行動のエピソードを拾う事で、自分の行動に生かしたいと思いました。

観音様のような聡明な人には、なぜ観音様でいられるか、というのは愚問かと思いました。

後半の回答は大きな発見でした。

確かに楽観的でい続ける事は一見よく見えます。

しかし彼女の指摘するように、悲観的なときにはリスク分析など冷静で論理的な判断ができます。これは現実的なプラン策定において大事時期だと言えるでしょう。極論言えば鬱々とした気分の時期も良い面がある、と言うことかと思います。

この話を少し数学的・物理的に見ると、時系列のグラフが右に伸びていて、数値が上と下にぶれていくような現象という現象は良くあります。

まさに私が経営してるスタートアップは、毎日ジェットコースターの様に上に下に乱高下しているわけです。

(上下にぶれる時系列データの例1)

https://www.chartjs.org/samples/latest/charts/bar/vertical.html

一般的には上に上がる状況が、楽しくて嬉しい時期だと思います。

ただ私の経験では、まさに新型コロナウイルスで経営上もがき苦しんだり、

銀行の残高がゼロに近づき追い詰められた時こそが、必死に考えあらゆる手段と人脈を尽くして難局を乗り切った、私自身のスキルレベルが一番上がったよ時期だと思います。

難局や不況は私の会社の贅肉を削ぎ落とし、本当に顧客にとって大事な部分に向けて組織とプロダクトを強制的に再構築させてくれます。

(上下にぶれる時系列データの例2)

https://www.chartjs.org/samples/latest/charts/line/line-styles.html

同様にマクロ経済でも、今年はまさに新型コロナウイルスですが、パナソニックの創業者・松下幸之助さんは”好況良し。不況なお良し。”と言う言葉を残されています。松下さんは経営の神様として、松下電器の歴史上で様々な不況や難局と立ち向かってきました。

不況時、社員さんが対策について勉強会を開き、一生懸命議論する所を見て、これで松下電器は大丈夫だと、非常に嬉しい気持ちになった仰っています。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9D%BE%E4%B8%8B%E5%B9%B8%E4%B9%8B%E5%8A%A9#/media/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%AB:Konosuke_Matsushita_01.jpg

この上下に動く時系列グラフの話は抽象的に多くの場面に拡張できます。

勉強続ける受験生や、スポーツの練習にも当てはまると思います。

受験に失敗した私の友人は、若くして大人っぽい成熟した人間になれました。人生について深く考えたのだと思います。

学力が伸びないときは、様々な勉強法に手を出して必死に実験するチャンスです。その中の一つが当たってハーバード大学に行けるかもしれません。

甲子園に行けなかった球児は、奮起して10倍練習し、大学で花咲いてプロ野球選手になれるかもしれません。

ハリウッド映画は、主人公が敵に殺されそうな大ピンチこそ、一番面白い場面ではないでしょうか。天才がストレートにそのまま成功する話は、ヒット映画になりそうにありません。

また、オードリーさんは悲観的と楽観的を繰り返すのが1番バランスが良いとおっしゃいました。楽観的な状況が続きすぎた場合、自分で意図的に悲観的な時期を作るのも良さそうです。自らプラスとマイナスのバランスをとることで、人間も会社も社会も経済も、1番良いバランスをとれるのでしょう。

https://en.wikipedia.org/wiki/Yin_and_yang

考えすぎを打破するための集合知の活用というメソッド

石井大輔

私たち日本人は単一民族で、細部に気を配る特性があります。これは強みであると同時に、考え過ぎの人(オーバーシンカー)が多くなります。

But well, we are Japanese single race in the country and they’re paying attention the details. This is the strings but at the same time, we overthink sometimes so we have many overthinkers.

オーバーシンカーは悲観主義者になりがちです。

Overthinkers tends to become a pessimist sometimes.

どうすれば、この考え過ぎ文化の弊害を克服できるでしょうか?

So, how can we overcome this by thinking culture?

オードリー・タン

それについては、レナード・コーエン(先述のカナダのシンガーソングライター)の言葉を引用したいと思います。『考え過ぎる癖がある人には、「なぜ、それがそんなに重要なのですか?」と問いかけます。もしあなたが完璧主義者なら、あなたのした仕事は称賛されるかもしれません。しかしこれでは、既に完成度が高い状態なので他人が支援や援助を差し伸べることがほとんどできず、結果として、少し欠陥が残るかもしれません。一方で、オープンソースを活用すれば、より早く頻繁にリリースすることが出来ます。』と。

どれだけ頑張っても、個人の力だけで完璧にするのは難しいのです。

Yeah. I think that’s where Leonard Cohen quote. I just quoted why it’s so important because if you overthink. If you’re a perfectionist when you share the work you do, you know other people made admire you but there’s really not much they can offer to support or help you because you’re already got is so perfect, and so a little bit of imperfection. in open-source we say and I could release early and release often, unquote meaning that even if you only have an idea even if it’s very much imperfect as long as you say so up-front the and instead of pretending like this completed work.

個人で抱え込むことは、ただ意地を張っているのと同じです。

You can just say oh this is a stubborn like in Wikipedia.

個人のアイデアは大勢で考え始める起点にはなりますが、それ以上ではありません。他の人たちが共同制作をするための招待状と考えて、早期にシェアすることが重要です。そうすることで、考えすぎて完璧主義に陥らないようバランスをとることが出来ます。

This is just a start that people can grow upon that’s an invitation for other people to co-create and so I think the importance of release early, release often really balances the perfectionism in overthinking.

少し考えるごとに細かくシェアすることを繰り返せば、100%まで考えてから初めてシェアするより、結果としてはるかに多様な人々と出会い、意見を得ることができます。

If you think a little and then publish and think a little and then publish you can meet much more diverse set of people than if you think to 100% and then publish.

石井大輔

理解できました。ありがとうございます。

Mostly makes sense. Thank you very much.

(石井注釈)

この回答は、オープンソースで開発・アジャイル開発・デザインシンキングといった要素を抽象化して彼女は答えているように感じます。

拡張するならば彼女のキーワードで端々に出てくる”集合知(コレクティブインテリジェンス)”を使うことの効率性を説いていると思います。

デザインシンキングにある、プロダクトを速く作り、顧客に見せる話と似てはいますが、プロダクトを作る自分の脳みそ1つと、想定している顧客の脳みそ9個を合わせた10個の脳みそで考えた方が、当然1つの脳よりも効率が良いというメッセージにも理解できました。

製品開発やスタートアップ経営の場合:

Aさん:1個の脳みそを使う

Bさん:10個の脳みそを使う

Cさん:100個の脳みそを使う

Dさん:1,000個の脳みそを使う

Eさん:10,000個の脳みそを使う

当然Eさんが、最高品質の製品を最短で作り、

最良の販売方法を見つけてビジネスで勝つでしょう。

弊社のTeam AIというAIの研究会には10,000人近いコミュニティメンバーさんがいます。

ハッと、この10,000人の脳を活かしきれてないと気づかされました。

https://pixabay.com/illustrations/personal-collective-group-knowledge-3285991/

私の様にコミュニティを持っていない人でも、Facebook Group上にはスタートアップや科学技術・趣味や経営方法に関する数十万のコミュニティが存在しそれぞれ数万人規模の会員がいます。そこでスパムの様に宣伝するのではなく、”世界を良くしたいので、この製品について意見が欲しい”と正しい質問をする事によって、商品開発のスピードは飛躍的に成功に近づくと思います。実際に私はそうしているので、強くお勧めできます。

日本経済が凋落したと言われますが、マクロや長期で見ると、高齢化社会・国家を引っ張ってきた製造業が成熟期・もともと資源のない小国な事からして、非常にナチュラルな結果だと思います。別に悲観する必要もないと思います。

他方で15年前であればゴールドマン・サックスが分析したBRICs(ブラジル・ロシア・インド・チャイナの21世紀の経済大国)という”21世紀の世界経済をリードする国々”というキーワードがありました。先日金融工学の友人と議論していて、でも2020年の世界経済を引っ張っているのは米国のテック企業だよね、という話になりました。本来ならBRICが世界を牛耳らないとおかしいのに、GAFAが牛耳っています。インドと中国の勢いはすごいですが。

Apple除きソフトウエア企業は、国境を越え世界市場でのシェアを取りやすい形態ではあります。他国との一番の違いは、私が2015年からずっと追いかけているシリコンバレーのカルチャーである、”とにかく速く行動する”だと思います。NikeのスローガンのようにJust Do Itです。世界経済を牛耳るようになったGAFAが、ゴールドマンサックスのBRICs予測まで覆してしまった要因は、圧倒的に洗練された、実験サイクルの回し方の手法に尽きると思います。

私の目から見ると、我が国日本がそこから一番学ぶべきは、GAFAを作るインキュベーションセンター設立や国家予算の配分ではなく、この行動を速くする手法そのものや、行動を遅くするメンタリティブロックを打破するための考え方の体系的な教育です。その方が学生にも、企業にも、社会にも、国家にも良いと思います。

最近は河野行政改革大臣がすごいスピードで改革をやられています。

これも単に良い事例としてメディアが取り上げるだけに止まってはもったいないです。

今回のオードリーさんのインタビューにも少しエッセンスが盛り込まれている様に、世界中のITに目を広げれば爆速でビジネスを立ち上げる素晴らしいノウハウが無料で転がっています。

商品開発もオードリーさん流に言うならば、1人の脳みそは(オードリーさんのIQ180の脳みそでさえ)限界があるので、市場=顧客に見せて、10–1,000人で商品を開発しなさい、という事かと思います。

デザインシンキングのような、抽象的で少し勉強が必要のような手法よりも、このような脳みその数で考え、沢山の脳みそを使った方が当然パワフル、というオードリーさんの説明は数学的で明快で素晴らしいと思いました。

同様に拡張になりますが、私のいるAI業界がこの5年間でなぜ爆発的に成長したかと言うと、著作権フリーなオープンソース公開・オープンな論文発表・自由に研究に使えるオープンデータ・オープンな議論フォーラム・競争よりも協業といったオープンサイエンスカルチャーに尽きると思います。これは私自身がTeam AIという8,000人のAI研究会コミュニティ主催するおもな理由でもあります。オープンサイエンスの素晴らしさに惚れ込んでいるのです。

オードリーさんのオープンソース、オープンガバメント(gov zero)ムーブメントを文系分野に拡張するならば;

  • オープンカンパニー(会社経営の集合知 = 皆でノウハウをシェアしベストを考える)
  • オープンデザイン(デザインフローの集合知)
  • オープンエデュケーション(教育システムの集合知)
  • オープンファイナンス(財務や金融オペレーションの集合知)
  • オープンセールス(営業プロセスの集合知)
  • オープンマーケティング(マーケ活動の集合知)

など、

いろんなことをオープン化(具体的にはプログラミングのコードに当たる、手法やノウハウの共同編集プラットフォーム)する事によって、世界規模つまり70億人の頭脳を作って使って新しい社会や手法の開発ができ、そのドラゴンボールの元気玉のようなパワーの集合を使って大きな社会変革を起こすことができると思います。世界中の人がもしITや科学技術以外のジャンルに関して、オープンにディスカッションでき、ナレッジ見やすいデータベース化することができたら、社会は大きく発展すると思っています。

台湾の素晴らしい文化 — 恩を何倍もにして返す社会契約コンセプト

石井大輔

次の質問は、2020年5月に行われたアンドリュー・レオナルドとのインタビューについてです。

My next question is a in your interview with Andrew Leonardo which happened in May 2020.

協調と競争についてのお話でした。「#Taiwan can help」というハッシュタグについても話されていましたね。

You were mentioning about warm power versus sharp power, also hashtag Taiwan can help.

この概念は、21世紀において大変重要だと思います。世界は競争から協調へとシフトしていかなければなりません。この考えが受け入れられやすいのは、台湾の文化に由来しているかもしれませんし、台湾の人たちが温かい人だからかもしれませんね。今回、インターネットの力でどのように加速させたのでしょうか。

This is very important concept in the 21st century. So the world should shift from competition to collaboration. So is warm power coming from Taiwanese culture or since actually Taiwanese people are very very warm to me. So, how did you accelerate it with a power of internet.

オードリー・タン

確かに台湾の人たちは社会を良くすることにとても理解がありますし、インターネットを通じて、さらに増幅されていると思います。この対談の内容も、2人で話しているだけでなく、ウェブサイトの記事や動画、それに本を通じて多くの人に届けられます。私達は常に、公共に奉仕する姿勢を持っています。もしかしたら日本のラップバンドが対談の内容を歌詞に載せて歌うかもしれませんが、それも歓迎しますよ。

Yeah, I think of course the Taiwanese people are very much like pro-social and the pro-socialness is amplified through the internet by making sure that people work out loud is actually a book about it and working Allah meaning that just sharing what I’m working on like this interview. It’s not just for the two of us

or for reader of the book actually we’re going to publish either as a video or as a transcript everything we have said and so basically dedicating it to the commons, and by commons we mean that people can take it and like the rap band Dos Monosin Japan they maybe take whatever we have said and sample it into music and that’s fine too. Right?

大切なことは、声を大にして仕事することです。そうすれば、自分と同じような仕事をしている人や、自分が予想していなかったような分野の革新的な人と出会うことができ、関係を築くことができるということです。

And so the point here is that if you work out loud, you can meet people who take the kind of work that you do and innovate the direction that you not anticipate and that’s builds social relationships much more easily than if everybody have to sign a contract and pre-agree whatever deliverable there are of course, there’s a role of contracts in the financial sense in a business sense.

台湾の人々には、周囲から得たものよりも多くのものを提供しようという姿勢があります。これは一種の社会契約とも言えます。

But as social contract in which that people agree to give more into the commons that we take from the commons.

これは大変重要なことです。自分が良いことをされたら、それを何倍にもして恩返ししようというのが、台湾人の基本的な考え方です。同様に、国際社会から何かしてもらったら、お返ししたいと思っています。

That’s also very important. That’s the underlying idea of Taiwan can help in that we are much more willing

to help than we take from the International Community.

石井大輔

素晴らしいです。ありがとうございました。

「#Taiwan can help」というハッシュタグがもたらした最大の影響は何だと思いますか?このハッシュタグによって何が起きたでしょうか。

That’s great. Thank you very much. So in your perspective what’s our biggest impact of hashtag Taiwan can help which kind of things happened based on this hashtag?

オードリー・タン

例えば、「Taiwan can help」というウェブサイトがあります。このウェブサイトの素晴らしいところは、政府による運営ではないということです。政府の資金は全く入っていないのです。

For example, there’s a website called “Taiwan can help that us and that asks who can help Taiwan that one can help and the great thing about this website is that it’s not run by the government. There’s zero Government funding in it.

訳注:https://taiwancanhelp.us/

資金はYouTuberがクラウドファンディングで集め、コンテンツは全てクラウドソーシングで作成されています。ちょうど私が今朝視聴したオンライン公開講義についてお話しましょう。このオンライン講義は陳建仁博士によるものです。陳建仁博士は台湾の副総統で、疫学の教科書の著者でもあります。内容は新型コロナウイルスの分かりやすい解説なのですが、講義画面上から直接、クラウドファンディングによる支援を行うことも出来るようになっています。

It’s just YouTubers people who crowdfund and crowd-source the entire content, and just this morning, I actually went to the massive online open course the how channel which you can see and I can help us if you can scroll down a little bit where they recorded from our vice president (副総統) at the time. Dr. Chen Chien-Jen (陳 建仁) the crash course on COVID-19 because he literally is not just the vice president who actually wrote the textbook on epidemiology.

英語の吹き替えと字幕をつけて、有用な情報を国際社会と共有する取り組みが行われています。それにより、政府だけでなく台湾の普通の人が、スピーディーに国際的な人道支援を行えるようになっています。

同様に地域社会での支援も可能で、立場の異なる多様な人々が関与しています。

And so, this idea of people pulling in useful resources sharing it with international community with the English dubbing and subtitle and so what signifies the idea that is not just a government but rather everybody in Taiwan can dedicate for example a few months for the international humanitarian aid you

can also see that in town can help us. So, it shows that diversity and across sectoral participation.

石井大輔

素晴らしいですね。

https://twitter.com/mofa_taiwan/status/1166191092611481601

(石井注釈)

ここの最も美しい話は、#TaiwanCanHelpを政府が支援しながらも、民間が運用し、それがITの力を持って世界中に広がったと言うムーブメントの加速の部分であると思います。

同様のプロセスや手法や、日本や世界各国で通用するもあると思います。

大きな発見はこの”1回受けた恩を何倍にもして返すカルチャー”がある事で、

台湾の文化として根付いているのは本当に素晴らしいことです。

我々日本は、例えば台風・地震の際に台湾政府・台湾市民から非常に熱いサポートを頂いているのは皆さんもご存知でしょう。

日本人の文化では、そこは少し控えめだと思いますが、個人単位・会社単位では、台湾のこの恩返し文化は、しっかり真似すれば良いのではないでしょうか。例えば、1万円相当の恩が発生した場合に、10万円分にして返すと、

当然相手はめちゃくちゃ喜び、関係性もすごく深まると思います。

私は営業畑で10年やってきましたが、ここまでの発想はありませんでした。

私自身この手法は、必ず個人単位・会社単位で取り入れたいと思います。

サイエンスシンキングの重要性 — 真偽鑑定とメディアとの適切な距離

石井大輔

オードリーさんの話に関連して、いくつか質問があります。私はAI関連のプロジェクトに関わっていますが、今回のパンデミックは誤情報によるミスリードが混乱をもたらす様子を目の当たりにしました。科学的な事実や知識に基づいて考えられる人がいる一方で、ソーシャルメディアやテレビ、新聞などの誤った情報や偏った情報に踊らされてパニックになってしまった人もいるように思います。このことについて、ご意見をお聞かせください。

Okay, great, and then a little some question from that answer is I think I personally think because I’m doing an AI project. This time pandemic including “infodemic”. Some people are working on the science thinking like scientist and then got panicked from the false information or biased information in social media or television or newspaper or someone else in the town.

訳注:infodemic=Blend of information +‎ epidemic

最近は科学的な考え方が重要になってきています。特に、パンデミックのような状況下ではそうだと思います。オードリーさんのご意見はいかがですか?どのようにすればサイエンスシンキング(科学的な考え方)を広め、誤情報による混乱を改善することができるのでしょうか?

So, science thinking is getting becoming more important nowadays, especially for things like

pandemic. What do you think about it? And then how can we improve this science thinking?

オードリー・タン

同感です。科学的な考え方は誰でも実践できるものだと思います。学校で習って終わりになるような抽象的な考え方ではありません。ずっと持ち続けられるものだと思います。

Year, definitely. I think the scientific method is something that people can practice it is not just abstract idea that you just learn about in school and then throw away. It’s something that you can just keep doing, right?

方法はシンプルで、基本的な情報に触れることです。これは政府の取り組みも効果があります。

例えば、副総統が公開した新型コロナウイルスの解説動画もそうです。また、中央伝染病対策本部は、毎日午後2時に生放送で新型コロナウイルスに関する記者会見を行っています。記者からの質問にすべて答えることに加えて、感染数等の情報を提供しています。情報に基づいて科学的に思考し、自分自身の仮説を立て、帰納法や実験を通して、新しいアイデアを推理し、それをコミュニティに提案して、評価してもらうことが出来ます。これは再現性が高い方法です。(訳注:ここでオードリーさんが窓の外にあるレストランを指出しました。)

The idea is simply to learn about basic prior so basic facts and that’s what the government can help. For

example with the vice-president recording crash courses, but coronavirus or the central epidemic command center holding live press conferences every 2 p.m. during the pandemic and answer all the questions from the journalists and that gives the basic observations, but now based on observations part of science thinking is you can form your own hypothesis and through induction and through experiments you can deduce new ideas and propose it for the community to evaluate to replicate basically, for example, there was a person named “Slichen” who tried to use the rice cookers and to disinfect the mask and you can actually see the restaurant right here. (ここで窓の外のレストランを指出す)

訳注:slichen=nothing but a simple vampire slut.

石井大輔

おお、あのレストランですね!

Oh, yeah.

https://taiwancanhelp.us/

オードリー・タン

私はあのレストランの協力を得て実験してみました。まず、古めの炊飯器に医療用マスクを入れました。この炊飯器には通気孔がないので、加熱による影響がとても予測しやすいのです。スイッチを入れると急速に110℃まで加熱され、その後急速に冷却されます。100℃以上になった数秒後にウイルスは死滅しますが、医療用マスクの素材は破壊されませんでした。

And then, basically I tried to put the medical masks in such traditional rice cookers, which unlike the newer IH cookers. They don’t have a ventilation hole. And so that makes the heating model very predictable. It will very quickly heat up to 110 Celsius and then very quickly cool down and because of that in the few seconds where reaches more than 100 Celsius it kills off the virus, but doesn’t destroy the material of the medical mask, and so he basically outlined the procedure of doing so and then share it with the community now because the medical mask are theoretically one-time use, of course the Taiwan Food and Drug Administration is quite skeptical of this idea that you can somehow reuse it.

このレストランでの実験結果を受けて、FDAも同様の実験を行いました。FDAの実験は私のレストランでの実験より信用できます。FDAは毎日定例の記者会見にMr.Laiを招待し、仮説を説明しました。また、Chen Zhong(陳忠)大臣はライブストリームの視聴者の前で、実際に医療用マスクを炊飯器で炊く実験をしました。

But then that the FDA did their own experiments and much to their credit. They invited Mr. Lai Chane-yu to the daily press conference to teach the evidence of the hypothesis while the minister Chen Shih-chung actually cooked a medical mask in a rice cooker in a front of all the people watching the live-stream.

訳注:Mr.Lai=Lai Chung Han(シンガポールの公務員で海軍軍人)

https://twitter.com/audreyt/status/1245680407401697286?s=20

オードリー・タン

これはほんの一例に過ぎませんが、科学とは私たち全員が参加するもので、私たち全員が再現できるものであることを示しています。一握りの科学者だけのものではありません。誰もが市民科学者になることができ、マスクを再利用することができるのです。

So this is just one simple example, but it shows that science is something that we all participate and we can all replicate. It’s not that just for a handful of scientists. Everybody can be a citizen scientist and when it comes to reusing mask.

この実験は世界中で再現されており、最近ではこれがN95のマスクにも有効であることが査読付きジャーナルで確認されています。

This experiments are being replicated around the world and nowadays we see from peer-reviewed journals that this even works for N95 masks.

石井大輔

凄いお話ですね。関連して質問したいことが出てきました。今回のパンデミックでは、事実と意見が混同されて扱われる様子を目にしました。日本人は、ニュースが事実だと信じています。しかし実際は、新聞社のオーナーの方針が反映されたり、スポンサーの意向によってニュースが偏ってしまうことがあります。科学者は証拠の裏付けがあるものを事実と考える傾向がありますが、一般にはそうでない人も大勢います。

That’s a great story and then similar question is this time people got confused between facts and opinions and then many Japanese people believe like a news is a fact, but the news can be biased because of the sponsor because there are owner of the newspaper company so as a scientist tend to think to be in the fact supported by the evidence.

こういった傾向についてオードリーさんはどう思いますか?

So this kind of way of thinking is important I think but what do you think about it?

オードリー・タン

もし報道機関を運営している人たちに偏りがなくて、緻密な方法で取材したとしても、情報源に偏りがある可能性はあります。

Well, I mean, even if there’s no bias in the people running the news organization the source that they collect those ideas from may be biased and even if they use the most rigorous methods,

データサイエンスの世界でも同様です。何らかの期待を持ってデータを収集すると、集まるデータに偏り(バイアス)が生じることがあります。その後も、それに気づかないままバイアスは蓄積されてしまいます。本当にバイアスから逃れることは難しいことです。それに対して人々ができることは、報道内容の情報源が何なのかをよく確認することです。学術論文を参考にするのも良いでしょう。論文にはDOI(デジタルオブジェクト識別子)と呼ばれる一意の番号が付いていますから、これも役立ちます。こういった作業は、食品を選ぶ時にラベルに書かれている成分表示を確認するのと同じことです。

It’s like data science still if you have the wrong expectation of the data that you may collect the data, but then accumulate data bias without realizing it so there really is no escaping of bias. And what people can do is like listing an ingredient in the food label do this exactly what are the sources like in the journalism if they use a research paper it helps of course to include a DOI number.

そのようにして、人々は自らファクトチェックを行うことが出来ます。データサイエンスに関わっているのであれば、ファクトチェック結果を導き出すのに使ったデータセットを公開しておくと、同業者が独立して評価できて良いです。一個人がバイアスのないファクトチェックを行うのは難しいことです。しかし、私たちは、他の人が検証しやすいように自分達が使った情報源を公開することは出来ます。

So people can fact check themselves and if we’re doing data science and also helps to list the data sets that we actually draw our conclusions from so our peers may evaluate independently, so I don’t think any single individual can be free of bias. But what we can do is to list our sources so that other people may benefit from independent verification.

これが科学的方法論の良いところであり、コミュニティとともに成長することを可能にします。

That’s the beauty of the scientific method and it grows with the community.

石井大輔

なるほど、格好良い方法ですね。本当におっしゃる通りです。ありがとうございました

Yeah. That’s cool. Great way to sweet. Yeah. Thank you very much.

(石井注釈)

日本が悪いとか、外国がいいとかではないです。

しかし、私が暮らしていたほとんどの国が、政府の公式発表やマスメディアの報道を疑ってかかる国民が多かったです。つまり一般市民であっても、情報にフィルターをかけて、事実かどうかファクトチェックし、怪しい部分は話半分に聞いてディスカウントして活用しています。従いニュースに過剰反応することもないです。

心優しい日本人の文化は、他人の情報を信じる傾向があります。

今回の新型コロナウイルスの混乱によるインフォデミック(怪しい噂を含めた情報の錯綜による社会混乱)を見ていると、この点が少しネガティブに出てしまったはずです。

例えば非科学的な噂のツイートが出回ったり、医師でもない人が断定的にコメントしたり、

自称専門家がワイドショーで大きな声で話していて、テレビを見ている視聴者は、その専門家が断定的なコメントをする資格がある方かどうかチェックせず情報を鵜呑みにしてしまう、

という現象はあったと思います。もっと言えば感染症の専門家は当然現場に駆り出されていてテレビに出る暇などない訳ですし、背後にはインターネットに押されて視聴率至上主義が増大しているマスメディアの根本的なビジネスモデルの問題もあったはずです。

https://www.undrr.org/news/cutting-through-covid-19-infodemic

我々はデータ分析の会社なので、オードリーさんのご指摘のあったように、

まんべんなく様々なソースからファクト拾い集めたとしても、

そのファクトの入手経路に偏りがあったらファクトが曲がっている可能性もあるというのは、

おっしゃる通りだと思います。サンプルデータ偏っていては真実を見ることができません。

シリコンバレーではピーターティールと言う有名起業家・投資家が、その問題を解決するため、ニュースの中で信憑性のあるものをランキング付けするRiverというアプリを開発しています。

https://techcrunch.com/2020/10/15/river-the-latest-venture-from-wander-founder-jeremy-fisher-launches-with-10-4-million-in-funding/

私は最近マスメディア・広告関係の方とご一緒しましたが、ビジネスモデルが激しく変わる中でコンテンツと収益確保をどうしようと悩んでおられる方が多いです。

メディアの再発明の成功例では、ニューヨークタイムスやワシントン・ポストのサブスクリプション課金への振り切りの成功があると思います。当然瞬間的なページビューの最大化を狙う広告モデルと、長期的な顧客との契約を狙うサブスクでは、コンテンツの作り方が全く異なります。

バズらなくても、サブスクなら顧客=読者が満足していればメディアの収益は最大化されるからです。同じように、(集金の方法が物議を醸すものの)サブスクのNHKと広告収入の民放では、コンテンツ作りの方向性が全く異なると思っています。

米国をはじめとしてメディアのサブスク化は今後も進みますので、事例研究を通じて是非日本のメディアさんにも再度元気になり、本当の意味での顧客=視聴者や読者に向けて良質なコンテンツ作りに集中していただければと思っています。

また一点、日本のマスメディアはソーシャルメディアを大々的に取り上げすぎな気がします。

分析データには間違いないですが、一部のネットマニアの間のTwitter炎上が、まるで国民全体の総意のように扱われているのは、我々もデータ分析や統計をやる会社として非常に違和感があります。

Twitter炎上に端を発したマスメディアの過剰報道で、新型コロナウィルス対策の難局に当たっている政府が、緊急度の高い疫病対策タスクに当たれなかったとしたら、大きな問題だと思います。

ソーシャルメディア、マスメディア、国民の距離の取り方は、欧米と大きく異なると思います。

例えばCNNやBBCといったメディアはSNSは情報源として使いますが、大々的には取り上げていません。また国民も多くの人がメディアのことを信じすぎないで、適度に冷ややかな自分の分析を持って消化しているという所は、注目すべきであり、ある程度日本でも取り入れていいと思います。

オードリーさんが最後に指摘した、情報ソースを公開し、他人にチェックしてもらうと言うことを、オープンソース・オープンデータを始めとしたITでは通常行えています。

日常のITと関係ない会話の中でも、こういった態度と仕組みが必要なのではないでしょうか。

例えば喫茶店では、情報源全く不明で、伝聞の伝聞の様な情報を、断定的に語る人も見かけます。

サイエンスシンキングは私の作った言葉です。理系では実験結果を論文にまとめ、それを他のアカデミア関係者にダブルチェックしてもらい、学術誌や学会の厳しい審査を通り、やっと”確からしい実験結果=絶対ではないけど”として認められます。

私は一般市民の方や純粋な文系の方には、上記のダブルチェックの手法のエッセンスだけでも良いので使うと良さそうに思います。新型コロナウイルスの情報の混乱で起きた様に、偽情報に騙されることがぐっと減るからです。

SNSの規模が小さかった10年前なら、不要だったスキルかもしれません。

今やインターネット報道・SNSの方がマスメディアより力を持つ時代なので、その真偽鑑定スキルは、極端な話中高生でも持つべきだと思います。実際なんの根拠もないLINEとTwitterを真に受けすぎて、随分な都市伝説を信じてしまっている若い方にたまに遭遇します。

Part 3へ続く

(Part 1 / Part 2 / Part 3)

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