オードリー・タン台湾デジタル大臣対談 【未曾有の危機に使える未来思考】 Part 1/3

Daisuke Ishii
Daisuke Ishii Blog 石井 大輔 ブログ
41 min readDec 28, 2020

多様な考え方でコロナに勝とう【聞き手:石井 大輔 Kiara Inc.】

(Part 1 / Part 2 / Part 3)

本インタビューは下記の”コロナ vs. AI −最新テクノロジーで感染症に挑む(翔泳社)”の特別企画として収録されました。

はじめに

IQ180の天才エンジニア、世界でも大注目を集める台湾のデジタル大臣オードリー・タンさんに貴重なインタビューの機会を頂けた事は、私にとっても大きな勉強になりました。

台湾は新型コロナウイルス対策で、世界でも最も成功した事例として知られています。

YouTube Playlist:

インタビュー後の私の感想としては、大げさではありますが、”観音様に出会った孫悟空”の様な気持ちになりました。

あまりに聡明すぎて、彼女のコメントからは、地球と人類を宇宙という高い視点から眺め、

100–1000年単位の長期スパンで物事を考えていらっしゃる印象を持ちました。

コメントが上手な人はTVでも良く見かけます。彼女はそういった人とは大きく違っていて、

様々な事象に関する真理、それも様々な物事に適用できる汎用的で長期的な真理を短く抽象的な一言で、

的確に深い洞察のもとコメントされていると思います。

インタビューが終わり数週間、いまでもジワジワと、”あの時のオードリーさんの一言は、きっとこういう場面にも使えるはずだ”という事に日々気づかされています。ぜひそういう目線で、楽しんで読んで頂きたいです。

多くのメディアに登場する彼女に質問するにあたり、

被ってもつまらないので、過去のインタビュー記事全てを読み、

彼女のプロジェクト全部を調査し、知人の台湾国民5人に彼女の強みを聞きました。

我々もせっかくTeam AIという人工知能のハッカソンコミュニティを運営しているので、

彼女関連のGitHubレポジトリ、効果的なコードの書き方、データサイエンス目線での政治の未来、といった、ギークな質問を聞きました。

ある程度彼女のエンジニア心に刺さり、エンジョイして頂けたと思います。

私も過去の伊藤忠商事勤務自体含め、現役国務大臣の1on1を実施するのは初でしたが、

Techスタートアップ経営者としてかなり目線が上がり、

ビジネスたるもの単なる金儲けではダメで、長期的視野に立ち、人類と地球の幸せに大きなインパクトを与えなければならないと改めて気づかされ、背筋が伸びました。

私自身この汎用的に使えるインタビューを今後も繰り返し読み、

オードリーさんのインタビューやYouTube、書籍で勉強させていただき、

また彼女のg0v(gov-zero)を始めとした

オープンソース・オープンガバメント運動に少しでも貢献できるよう努力したいと思います。

オードリーさん、台湾政府各位、台湾国民のみなさまに、この貴重な機会を感謝いたします。

有難うございました!

To Audrey Tang-san & Taiwanese people & Taiwanese government

Thank you very much for inspiring me.

I will try to contribute to Taiwan’s open source and open government movement from Japan.

I found any kind of negative event can be solved by the power of people’s collaboration.

We will make a better world together.

給唐鳳先生和台灣人民和政府。

非常感謝您給我的啟發。

我將為日本的台灣開源和政府公開運動做出貢獻。

我發現人們合作的力量可以解決任何負面事件。

我們將共同創造一個更美好的世界。

未曾有の危機に幅広く使える考え方

石井大輔

今日は貴重な機会をいただき誠に有難うございます。

私達の本のタイトルは「AIがどう新型コロナウイルスを打ち負かせるか」です。

Okay, let it start. So, our book title is “how can AI beat coronavirus” and thank you very much for your time.

今回、私はこの対談に先立って、可能な限り多くの台湾の方と話しました。例えば、私の台湾の友人や、エンジニアや、女性起業家や、グーグルの卒業生や、製造業関係者や、gov-zeroのメンバーなどです。彼らの意見はオードリーさんの戦略の長所を反映していました。

So this time as a preparation I talked with as many Taiwanese as possible and then these voices from them reflect strong point of your strategy example my Taiwanese friends, background engineer, female entrepreneur, ex-Googler, manufacturer, gov-zero (g0v) members.

私は9つの質問を準備してきました。

So I prepared nine questions.

まず、最初の質問です。2020年10月時点で、多くの日本企業はパンデミックによる景気後退に苦しんでいます。

First question is as of October 2020 many Japanese companies are suffering from bad economy after pandemic.

私の戦略は「悲観主義者のように準備し、楽観主義者のように行動する。」です。

My strategy is preparing as a pessimist and act as an optimist.

オードリーさんから日本のビジネスマンと市民に向けて、助言や励ましのお言葉をください。オードリーさんのように賢明な考え方をするための助言です。

So, what is your advice or encouragement for Japanese business-people and the citizens but mentality should we have like smart person like you?

オードリー・タン

私はよく、レナード・コーエンというカナダのシンガーソングライターの格言を引用します。

「どんなものにもチャンスがある。大切なことは、それに光が当たるかということだ。」というものです。

Okey, there is a saying I often quote from Leonard Cohen and I quote “There Is a Crack in Everything, That’s How the Light gets in”.

COVID-19のような社会共通の課題に対しては、ソーシャルディスタンスのせいで人々は分断されてしまうという側面と、パンデミック以前は決して繋がらなかった人同士が結び付くという側面の、二面性があるという考えです。

The idea is that a common issue like COVID if both of course separates people because of social distancing and so on but it also connects people like never before like previously before the coronavirus pandemic.

訳注:Leonard Cohen=カナダのシンガーソングライター

https://en.wikipedia.org/wiki/Leonard_Cohen#/media/File:Leonard_Cohen,_1988_01.jpg

オードリー・タン

実際、(パンデミックがなければ)私達は今こうして対談していないだろうし、この本が出版されることもおそらく無かったでしょう。なぜなら、パンデミック前は、AIが持つ人道支援に対する有用性が今ほど明らかになってはいなかったからです。

We will probably not be having this conversation and this book probably will not be published because the idea around AI before the coronavirus is definitely not specializing in the humanitarian part of AI.

人々は超人間主義について考え、多くの時間を無価値なプロジェクトに費やしています。

People think about transhumanism and people spend a lot of time vanity project.

私はこれを良いとも悪いとも評価していません。ただ、ある人を他の人より優れているかのように見せることは、今日では美しいことではなく、規範的でもなくなっています。

I say this without judgment, but by making people look like better than other people and so on, and nowadays these aesthetics are no longer the norm.

オードリー・タン

私たちはインスタグラムやソーシャルメディアで自己顕示する人とこれ以上会いたいと思いません。なぜなら、私達には解決すべき差し迫った課題がもっとたくさんあることを理解しており、それに私達のエネルギーを向ける必要があるからです。

We don’t see people showing off on Instagram or social media anymore because we understand that there are much more pressing issues to be solved and we need to direct our energy to it.

そして、私たちの主要な関心事は公共の利益についてです。私たちが公益について考えていれば、貢献できる共通のプロジェクトを見つけやすくなります。

And, so I think the main idea is here about the common good. If we have the common good in mind, then it makes it easier for us to find the common projects that we can all contribute on.

しかし、私達が個人的な利益、例えば自分自身のステータスを他人より良くすること等を考えると、コロナに対処する時に弊害があります。

But if we think more individualistically like raising my status above other people and so on that will be detrimental in the time of coronavirus.

石井大輔

そうですね。これは素晴らしい洞察だと思います。社会的使命を持つ企業はビジネスを成長させることができ、社会的使命を果たしていない会社は社会的使命を果たす方向にシフトするべきということですか?

Okay. Well, this is a wonderful insight, and then do you mean company with social mission as an opportunity to grow their business and then this non-social company should shift to the social direction in this pandemic.

オードリー・タン

その通りです。パンデミック下で例えば、私たちは多くの会社がテレワーキングに適応を求められたのを見ました。しかし、テレワーキングは単なるテクノロジーではありません。

Well, in the pandemic, for example, we see that many companies are forced to adopt teleworking, but teleworking is not just a neutral technology.

テレワーキングは人々を結び付け、大切な人と一緒に過ごす時間を増やし、多様で柔軟な働き方を可能にしました。

It also connects people more intimately and it allows people to spend more time with the people they care in their locality and also makes for a more diverse and inclusive workforce.

もちろんブロードバンドがあればですが。そうでなければ恩恵に預かることはできません。

If of course you have broadband as human rights. Otherwise, it excludes people also.

新しいCOVID戦略には明るい面があります。かつてはテレワークのような社会的により柔軟な施策を受け入れられなかった人々が、受け入れることを余儀なくされています。感染ゼロが5か月間続いている台湾のように、パンデミックが収束した後でも同様です。

So, any new COVID strategies and has this light side of people who previously were unable to accept a more socially flexible arrangement like telework are often forced to accept it, but even after the pandemic goes away like in Taiwan it’s been five months with no local cases.

石井さんもご存知の通り、10年前や15年前はネットワークの品質が良くなくテレワークはまるで実用的でありませんでした。それと比較して、人々は既にテレワーキングが良いものであるということを知っている。そのため、私達はテレワーキングが適した状況であればテレワークを使うでしょう。

Still we use telework whenever appropriate because people have already had a good experience with teleworking as compared to maybe 10 or you know 15 years ago when teleworking was not very practical and the connection quality doesn’t work at all.

オードリー・タン

最近は鮮明な画像と音声でお互いを見ながら会話することができますね。

これにより、今ではテレワーキングは一般的になりました。

But nowadays, you know, you can see or hear me just fine. I can hear you just fine and this makes teleworking a modern reality.

社会的目標にすべきということではないのですが、結果については評価する必要があります。共同作業を変え、組織を変化させる方法論は、ある種のテクノロジーといえるでしょう。テレワーキングは社会的変革なのです。

So, it doesn’t have to be social purpose but we do have to evaluate the social or more pro-social consequences of the ways that we have changed in working together and organizational changes are also a kind of technology right. Teleworking is a social Innovation.

What did you mix with QR order this song you just Telemundo in a group pandemic can you tell him to stop do you go to in tasty

(石井注釈)

オードリーさんはテクノロジーそのものが社会に浸透したところではなく、パンデミックによって人間そのものの価値観が変わったところに着目し、長期的な視野に立ってコメントされています。

自己顕示欲優先のビジネスではなく、本当の意味で人類にとって緊急性の高い課題に取り組むべきだということにみんな気づき始めたのです。

日本のIT業界ではこのパンデミックがDX(デジタル・トランスフォーメーション)推進のチャンスとなっていると理解されていますが、オードリーさんはこれを社会的変革と呼んでいます。またテレワークがグローバルスタンダードになった後の、人々のライフスタイルの変化、

その先にあるより幸せな未来社会といったものに関しても彼女は考えているでしょう。

またレナード・コーエンと言うアーティストさんの言葉を引用した点も注目したいです。詩の表現は、しばしば人間の生活に関する心理を短い一言でまとめられています。事象を抽象化し、一般的な心理を短く表現する点は、ある意味数学の定理探しに近いです。

未曾有の危機、パンデミックが起きたときに、あらゆる事象にチャンスがあるはずと裏側を考えることは、非常に大切なことだと思いました。

不謹慎な例えではありますが、例えば日本の大地震の後には国民の結束が高まるという現象も起きます。私自身石巻の震災ボランティアでは、素晴らしい方々が一生懸命協力して問題解決しているのを見ました。

オードリーさんは、今回のパンデミックと言う事象を、10年100年といった前後の大きなスパンで物事を分析しています。その時点での技術と人間社会が、事象の前後でどのように変化したかという所を、高い視点で分析している様に思いました。

彼女が言及した公共の利益より重要になっているという点にも着目したいです。公益性は元来あらゆるビジネスに重要でした。今回のパンデミック、つまりグローバルなネガティブイベントが起こったことにより、よりそれが注目され、ソーシャルミッションを持った企業がより社会から支持を得やすくなった事は、ポジティブな現象だと思います。

目先の金儲けビジネスが淘汰され、より本質的に社会を良くするビジネスが成長しやすくなったとするならば、人間社会が進化したとも言えるでしょう。

ロバスト(耐性のある)社会よりレジリエント(回復が速い)社会の方がより万能

石井大輔

まさにその通りですね。私はオードリーさんの基調講演をいくつか拝見しましたが、社会やビジネスはロバスト(困難や障害に対する耐性)が大切だと繰り返し言っておられますね。

Okay, great. I checked several your keynote speech, and then your mission several times you were mentioning about being robust is important in this society and business.

新型コロナウイルスの環境下で、古いビジネスはよりロバストになる必要があり、例えば、先進的なレストランのオーナーは、ビルの10階に(客席は設置せず)調理場だけを置いて、Uber Eats経由だけで販売しています。

So, in the covid-19, old business needs to be more robust, for example, some of the restaurant owners opening the only the kitchen in the 10th floor on the building and then doing the using the sales channel on the “Uber Eats”.

この種のスモールビジネスは、大資本のビジネスよりもロバストといえます。

This kind of, you know, small expense business is a more robust than big expense business.

オードリーさんは、この種のビジネスがよりロバストになっていくことについてどうお考えですか?

So, what do you think about this kind of business more robust?

オードリー・タン

コロナ前からロバストさが必要なことを予期して準備してきたのなら、当然ロバストな状態です。しかし、もしあなたが予期していなかったとしたら、とても早く革新を行って新たな状況に適応する方法に切り替えたとしても、この新たなコロナの状況でダメージを受けるでしょう。準備してきた人達ほどロバストではありません。

Yeah. Definitely! if you anticipated this need and already worked this way, of course you are robust but even if you do not anticipate and take a hit when the new coronavirus king, then if you can very quickly innovate and pivot to a way that works with the new situation then you’re maybe not as robust as others,

しかし、我々はレジリエント(早く回復できる)です。私はレジリエンスが、特に日本や台湾のような島国にとって共通の価値だと考えています。なぜなら、私達は地震や台風のような災害が制御不能であり、管理できないものであり、自然災害は周期的にやってくることを理解しているからです。

but you are resilient and I think resilience is a shared value to especially around like island countries such as Japan and Taiwan because we understand some like disasters like earthquake or a typhoon that simply cannot be managed management doesn’t work, and the term against the such a natural disaster,

しかし私達は、被害を最小化するだけでなく、津波や地震が過ぎ去った後の状況を社会全体で立て直すことが出来ます。

but we can be resilient in a sense of not only minimizing the damage but also goes around the post tsunami the post-earthquake situations as a whole society.

ロバストさは一個人や組織についてのものですが、レジリエンスは社会全体が持つ文化の一部だと考えています。これらは、非常に緊密に連携しています。

So, while robust is more about a single individual or organization, I think resilience is part of the culture as the entire society these two work very closely together.

石井大輔

その通りですね。これは非常に貴重な洞察です。どうもありがとうございました。

Yes. Yeah. This is a very valuable insight on the advice. Thank you very much.

(石井注釈)

ここでオードリーさんはロバスト(耐性が強い)とレジリエント(回復力が速い)の違いについて述べています。

彼女が指摘するように、耐性を作るのは大事ですが、同時に不完全とも言えます。何もかもに対して事前準備しようとする事は理論上不可能であり、非効率だからです。

耐性づくりは日本でもよくやる手法です。

私の地元倉敷市では3年前に水害がおきました。もう二度と水害が起きないようにしっかり護岸工事を行いました。これは耐性を作る手法です。この際、耐性のみを整え、彼女が指摘するレジリエント(回復力を速さ)を促進する仕組みと文化作りの見直しを怠ってないでしょうか。

これは日本のカルチャーだと思います。何事にも時入念に準備することは、非常に良いわが国の美徳です。他方でネガティブイベントが起こった後の、跳ね返し回復力を最大化することに注力した方が、より柔軟であらゆる災害・疫病・テロその他に対抗できそうです。例えば、国家の迅速な意思決定の仕組み、緊急立法や財政サポートの整備、リアルタイムに国民ニーズを汲み取るデータ基盤の整備などです。経営においても、危機に対して入念過ぎるくらい準備するより、危機が起こった場合の行動マニュアルやサポーターネットワーク、財務的に言うなら銀行との緊急融資の合意などがより有効でしょう。

ここには彼女の天才プログラマーとしての思考回路が関連していそうです。デザインシンキングやアジャイル開発のように、アウトプットが完全でないことを前提として素早く動く。そして一旦不完全なところのデータが取れたら、それに対してどう迅速に修復していくか考える。そのスピードを最大化することのWeb開発に近い手法を、災害・疫病に対する国家戦略にも生かしていると思われます。

この考えを拡張し、プログラマの考え方・効率的なプロジェクトの進め方を、全然プログラムに関係ないところでも生かそうと仮説を立てることは大事だと思います。

極論、八百屋の経営や高校生の受験勉強、両親との人間関係づくりなど、あらゆる”プロジェクト”と呼べるものに、オードリーさんの様な目線でプログラマーシンキング(考え方・手法・仕組み)を適用してみると、効果があると思います。

新型コロナウイルスを通じて再認識された”地球と共存するライフスタイルの重要性”

石井大輔

私の2番目の質問は、私と妻が2020年4月に新型コロナウイルスに感染し、3週間入院した経験についてです。

My second question about myself or I and my wife got covid-19 and we’re in the hospital for three weeks in April.

当時それは私達にとって大変な逆境でした。しかし、現在はどういうわけか、新型コロナウイルスに罹患して良かったと感じています。なぜなら私はスタートアップ起業家で、新型コロナウイルスのおかげで私はずっと強く、大胆で賢明な人間になれたと思います。

That was a huge setback for us, but now strangely we feel somehow thankful for COIVD, because I am a startup founder, COVID made me much stronger bolder and smarter person.

例えば生物学では、ウイルスは生物の進化にとって必要なものとされています。

So, for example, in biology, virus is somehow necessary for creature’s evolutions.

新型コロナウイルスも同様に、人や社会がより良く、そして強く変化するための機会として活用できるのではないかと私は考えています。

So, in my opinion, how can we leverage COVID as an opportunity to become a better person or stronger person or better society or stronger society?

オードリー・タン

新型コロナウイルス闘病から回復されて何よりです。そして私も、石井さんと同意見です。新型コロナウイルス前まで大気汚染や水質汚染が蔓延していた場所で、澄んだ空を見ることができ、きれいな水を見ることができました。新型コロナウイルスが契機となり、持続可能な方法で生活することが可能であることが示されました。

Yeah, first of all, congratulations on your recovery, and also, I think COVID shows that it is actually possible to live in a way that is sustainable in many places where there’s a lot of air pollution a lot of water pollution and so on. Because of COVID, people have seen a clear sky for the first time, people have seen the clean water for the first time because those structural issues around the environment were simply neglected and especially for younger people maybe for their entire life.

これまで人々は綺麗な水や澄んだ空を知りませんでしたが、新型コロナウイルスの影響で本来の自然の姿を知りました。知ってしまった以上、今更知らなかったことには出来ません。もう後戻りすることはできないのです。

They have seen the water and the air and the environment as they kind of damaged vision, but with the COVID comes the opportunity to see the natural habitat again as likely as it is. You can’t unsee it. You can’t go back.

テレワークや「Uber Eats」の利用で環境負荷を減らせることが知れ渡れば、今後も継続的に環境負荷を減らしていくことが可能です。新型コロナウイルスが去った後も健全で回復力のある持続可能な形で回復していくためには、社会にとって必要なことなのです。

Right once people understand that it is actually possible through teleworking and through actually “Uber Eats” as you mentioned it is possible to reduce our overall footprint on the environment less(?) much more sustainably and I think that is also a much needed way for the society to feel better even after COVID and be recovered in a resilient and sustainable fashion.

(石井注釈)

彼女がここで指摘しているのは、やたらに経済活動の発展に重きを置き、人間が過剰に活動してしまうと、地球にダメージを与えているという事実かと思います。それが新型コロナウイルスの経済減速で証明され、長期的視野に立ちベストな地球と人類の共存関係を考えると、むしろ人類の活動を減速し、リモートワークに代表されるような(半ば強制的に始まったが結果として)地球にダメージを与えないライススタイルにシフトすべきという事かと思います。

そしてこれは2020年の今は新型コロナウイルスのパニックで、人類はそこからの回復に集中していますが、2025年の視点に立って長期的に考えると、現在我々がいる2020年は、空が澄み渡り人間は工夫して新しい生活様式を発明した、という見方になるでしょう。

この”地球にやさしい人類の生活様式”と言うものはもはや不可逆であり、これが長期的に世界規模で見ると人類のスタンダード=未来の人類社会になる事を予見されていると思います。

翻ってみれば地球温暖化抑止の活動家であるスウェーデンのグレタ=トゥーンベリさんの提唱していた、石油燃料消費のない世界と言うのは、新型コロナウイルスで飛行機が飛ばなくなり、車も走らなくなり、あっという間に実現してしまいました。皆さんも意外とあっけなく目標達成してしまったと気づいたのではないでしょうか。

https://en.wikipedia.org/wiki/Greta_Thunberg

地球温暖化に対するソリューションは、我々は根本的なものは非常に難しいと思いこんでいました。

地球規模で化学品を飛行機で撒いてマクロ的に天候変化させたり、大規模に植樹したり、という大きなプロジェクトや基礎研究はたしかに進んでいました。これらはマクロすぎて実施のめどは正直付いていませんでした。

さすがにすべて飛行機と自動車を止める事は無理かもしれません。

ただ国連・世界経済会議規模で各国が協力し、稼働飛行機や自動車の数を3分の1まで減らすのはどうでしょうか。もちろんすべての人がリモートワーク生活を続けるとは限りません。

ただ私が新卒で働いていたオフライン企業・伊藤忠商事の様に、営業が飛行機に乗りまくる会社ですら、リモートワークベースにして飛行機を止めると場合により生産性は高まると思います。海外出張が不可能と割り切れば、相手ともアポが取りやすくなり、お互いそのベースであれば対面せずとも数十億円の新規プロジェクトを受注できる可能性もゼロではありません。

人間の活動が各地域で完結するように社会を再設計し、化石燃料を燃やす移動を良い意味で適正に保ち、現在の3分の1に減らすような政策を考えるチャンスだと思います。

イーロン・マスクのような起業家が火星植民地化を目指している理由は、彼のTwitterにも表れています。例えば金星は、昔生物が住めるような温度の低い惑星だった学説もあります。

確かに今は地球上で生物と人類が繁栄しているかもしれません。

もし万一良い地球が住めない規模の高温の惑星なってしまったらどうすればいいのか?

人類の将来100–1,000年先年の繁栄を考えたときに、対策は打つべきであり、イーロン・マスクは考えていると思います。オードリーさんがここで提案したのは非常に大事な示唆だと思います。人間の活動を、新型コロナウイルス時の様に我慢することで、

地球と人類がより長期で仲良くできる様に、人類側が進化しなければならない、

彼女に提案されたと思います。

https://en.wikipedia.org/wiki/Elon_Musk

多様な言語に触れることで多様な価値観を尊重できる社会に

石井大輔

ありがとうございます 次の質問は台湾の女性起業家からです。彼女によると、オードリーさんは台湾の多様性と自由の象徴的存在だそうです。一方、日本は台湾と異なり、千年以上にわたる単一民族国家です。また、細部にまで気を配る文化も持っていて、この文化がトヨタの非常に効率的な自動車製造システムを生み出しました。しかし、多様性の欠如は日本の成長やイノベーションの阻害要因にもなっています。

Yes. Yeah, thank you very much. Next question is from my Taiwanese female startup founder. She said you’re representing Taiwanese multiple freedom as icon, which is great. And then, Japan is a single ethnic country over a thousand years. And then this kind of paying attention to the details culture created a Toyota’s very efficient car manufacturing system etc. which is great. But sometimes this lacks of diversity broke Japan from growth or Innovations.

パンデミック下のグローバルビジネスでは、多様性は非常に重要です。単一民族国家の日本はどのように多様性を獲得できるのでしょうか。また、単一民族の考え方と多様性のバランスはどうなっているのでしょうか?

So, under pandemic and the global business competition diverse is very very important. So how can Japan implement the essence of diversity into our single ethnic country?

What is the right balance between you know a single way of thinking or diversity and then how can we learn from Taiwan regarding diversity?

オードリー・タン

多様性は、民族だけで決まるわけではありません。台湾の場合、民族構成についてはかなり均一性が高いですが、文化構成は多様性に富んでいます。

Year. I think diversity is not just about ethnicity.

In Taiwan, of course, our ethnic composition is fairly uniform, but our cultural composition is very diverse, right even for people who identify as ethnic Han.

台湾語には閩南語、客家語、北京語(國語)があり、訛りも様々です。

There are the Taiwanese Hokkien language (臺灣閩南語), Taiwanese Hakka language (客家語) with at least six different sub languages, and also of course Mandarin (國語) but also spoken in different ways.

訳注:https://en.wikipedia.org/wiki/Languages_of_Taiwan

台湾には少なくとも3種類の言語があり、それに加えて先住民族の言語や手話も国語として認められています。

So, that’s at least three different languages and onto the national languages act recognizes the indigenous languages and also the sign language as the national language.

そのため、台湾の中央感染症指揮センターがライブストリーム上で行う記者会見では、たくさんの手話が使用されています。

So, in our live stream, central epidemic command center, press conferences. You actually see people sign

a lot and learned about sign language vocabularies and so on.

これは、私が複数の民族グループに属しているからというだけではないと思います。例えば、AI関係ではPythonを良く使っていますが、だからと言ってJavaScriptやRustやGoなどの言語を学ぶのを止めるわけではないのと同じです。多くの言語に精通していれば、同じ問題に対してオブジェクト指向や関数型プログラミングや宣言型プログラミングなど様々なアプローチが出来るようになります。1つの言語しか知らない場合と比べると、確実に良いプログラミングが出来るでしょう。この例が示すように、異なる文化を理解しようとする態度を持っていることは、民族的な多様性よりも重要なことです。

So, first of all, I don’t think it’s only because I’m ethnically belonging to some group of people. It would prevent me from learning new cultures and new languages, just like maybe you work in AI so your native language is probably python, but it doesn’t stops you from learning say JavaScript or Rust or Go or some other languages you learn, the more transcultural you will be able to see the same problem from the object-oriented fashion from a functional fashion from declarative fashion and so on, and that makes you a better programmer definitely than if you only know one language, and so I think this transcultural attitude is more important than ethnic diversity.

オードリー・タン

民族の多様性や社会的一体感はもちろんとても良いことです。しかし、インターセクショナリティ(交差性)を踏まえた異文化理解がなければ、人間が持つ多面性のうちの一面しか見えてきません。だから私は、民族の多様性よりもインターセクショナリティの方が重要だと考えています。

Ethnic diversity and inclusion is of course very good, but without the transcultural idea of intersectionality, it is simply just one dimension of a multidimensional human being right and so I think intersectionality is more important than ethnic diversity.

石井大輔

素晴らしい考えだと思います。ありがとうございました。

Okay, that’s great. Thank you very much.

(インターセクショナリティとは)

差別について考える時「人種や宗教、国籍、性的指向、性自認、階級、障害など、ひとりひとりの持つ属性や、それによる差別の構造は多層的で”交差”している」という考え方だ。

https://bit.ly/3eaV7Qg

(石井注釈)

私は欧米とアジアで5年働いた経験があり、良い意味でも悪い意味でも海外かぶれです。今回のこの質問はアメリカやイギリスといった多民族国家では異なる意見が出やすいのでイノベーションが起きやすく、それと比べ日本が考え方の多様性に欠けるので、根本的に大きなインパクトを与える様なアイデアが出にくいと昔から思っていました。その多様さに欠ける特徴が今回の新型コロナウイルスの混乱でネガティブな結果を一部で産んだ様にも見えました。

オードリーさんの答えは、単一国家日本であってもどんな組織であっても、インターセクショナルティー(交差性)、つまり様々な人々の異なる属性からくる差別や特権を理解する枠組を、各人が理解することが重要であると示してくれました。インターセクショナリティで扱われるアイデンティティの代表的なものは、性別、身体的特徴、人種、社会階層、セクシャリティ、能力、障害の有無などがあります。

https://bit.ly/3oKZNS0

彼女が指摘したのは多言語の大切さでした。彼女はJavascriptやGoLangといったプログラミング言語(=つまり背後の思想)の違いを多く覚えることによって、プログラマーとしての多面的な考え方ができるというアナロジーを使いました。

私の経験では欧米とアジアで働いた経験を通じて、日本語・英語・イタリア語を話し、その他の初歩レベルを含めると7ヶ国語話すことができます。

私も日本語では細やかな気遣いができるようになります。英語だと論理的になります。イタリア語だとおおらかに冗談交じりに話す様になります。この多数の思考法がインプットされている事は、確かに私の強みになっています。それは、日本人の問題でも、アメリカ人的に論理的に解決したり、イタリア人的にロマンチックに解決したりすることができるからです。

日本は標準語と関西弁などもほぼ違いがありません。基本的には日本人は日本語で物事を考えています。そこには敬語が沢山登場し、空気を読んで相手を敬う文化が組み込まれています。もちろんいい意味で。英語教育の重要性は昔から叫ばれており、私自身も痛感し、友人にも勧めているますが、この日本という環境においては英語を勉強してもほぼ使う場がありません。

インターセクショナルティーは自分と違う立場(言語・性別・収入・学歴)に対して、本気でその人の気持ちになり、尊重してから自分の意見を述べる取組、とも言い換えられると思います。違いを客観的に認識しながら、物事を決めつけず幅広にコミニケーションを取る事の大事さを、オードリーさん説いています。

例えば、私は45歳の男性で会社の代表です。ですので最近の若い20歳くらいの方に関してコメントするときに、本当に今の20歳の人の気持ちになれているかというと、そうではないと思います。同様に保育園が足りない問題について、私がコメントを述べるときに、本当に女性保育士で、現場で大変なご苦労なさっている方の気持ちになれているかというと、そうではないと思います。

オードリーさんが私に伝えたかったのは、確かにアメリカやイギリスのように多国籍で、根本的に国民の種類がたくさんあると言う状況では、いろんな議論ができるのは確かだが、たとえ日本であっても、インターセクショナリティのコンセプトから多面的に物事を考え、相手の気持ちを尊重する練習はできるのではないか、という事かと思います。

先程の例では、私が20歳の学生のような考え方や気持ちを芯から尊重したり、女性保育士さん考え方を勉強したら、それは45歳の会社代表としての私の仕事をよりよくするチャンスだと思います。

良く飲みの席で笑い話になる、東京文化と関西文化の違いも、からかい半分の笑い話で終えるのではなく、東京人が関西のお笑いのエッセンスを学んだり、関西人に江戸っ子気質を学んだりして、お互いの文化と考えを尊重し、双方を理解しさらに議論を発展させる優しい社会になれたとするなら、それは社会の進化だと思います。

LGBTQや障がい者の話もしかり。よく24時間テレビが悪い意味で議論の対象になるのは、真の意味で障がい者の気持ちを尊重して作られていないからです。ここにもインターセクショナリティーの欠如があるでしょう。

わが国日本には、どんぐりの背比べと言う諺があるように、お互いの小さな違いを過剰に気にする文化はあると思います。オードリーさんの言葉を噛み締めて、私なりに解釈すると、

例えば自分と対極の考え方の人がいたとして、合意できないにしてもその人を尊重するような態度を取れるような、大人な社会が作れたとしたら、日本の将来の発展を推進する原動力になると思います。

ソーシャルメディアやマスメディアが小さな違いについて論じる事や、

少し考えが合わない人を攻撃をするような文化は、日本の成長を阻害すると思います。

自分と全く違う考えを尊重し、上手に議論発展する術は、例えばユダヤ人文化のデビルズ・アドボケイトがあります。これは多人数で意思決定する際に、全員の意見が完全に一致した場合、反対意見の検証が終わってない事を理由に、その意見を決定しないという仕組みです。

異なる意見が議論を昇華させ、よりよいクオリティの意思決定ができるという事実を仕組み化した良い例だと思います。

Part 2へ続く

(Part 1 / Part 2 / Part 3)

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