organic growthとglobal expansion

最近demo dayが立て続けにあって(来週もdemo dayがあるのだが)まとめておこうと思った話し。

Organic Growth

よくこちらでPitchを聞いてると、user acquisitionがMoMでxx%とかdownload数がWoWでxx%という話しが出た後に必ず”organic growthだ”、という一言がつ付く。いつ頃からこの単語が使われ出したかは分からないが、少なくともevernoteのdealをやった2008年にはCEOのPhil Libinがこの単語を使っていたので、結構前からある概念だと思う。

organicを辞書で引くと”有機的な”とか”有機栽培、有機飼育の”という意味が出てくるが、startupの世界では”自然(発生的)に=naturally”という意味合いで捉えた方がしっくり来る。

まあ要は、野菜で言うところの化学肥料を与えて人工的に大きくさせた物ではなく、自然のまま育った野菜といった意味合いと同じで、巷に溢れるboost marketingの手法や金をかけずに”勝手に”ユーザー数やdownload数が増えているという状況を指す。

もちろんご承知の通り”勝手に”という所にはきちんと理由があって、昔から良く使われているword of mouth(最近だとviral)という作用が働いている。今はfacebook, twitter, lineのようなsocial media/communicationツールが発達していて簡単に情報を伝搬できる状況ではあるが、根本はマーケティングの教科書にも良く出てくる、”willingness to recommend (to your friends)”をしっかり作れているかどうかで、このorganic growthが実現できるかどうかが決まってくる。

当たり前の話しだけど、きちんとworkするproductがあって、更に使ってもらえたユーザーを満足させはじめて実現できるもの。leanにMVPを作ってクローズドに提供し、ユーザーの意見を反映させながらproduct market fitの仮説検証を繰り返す。その上で満足行くproduct(MVP)ができれば今度はオープンβ→商用launch→他プラットフォーム展開→他地域展開というような拡大を行っていく。

かなり愚直に向かい合って最高のuser experienceを提供する為にproductに磨き上げていく作業。特にbootstrapやseed stageでは、少ないリソースで知恵と技術を絞り出していく極めて辛い道のりなのだが、ここ数年accelerator programに出てくるstartupはこの辺の努力をあまりしてないような印象がある。

doping

既に長くaccelerator progarmをやっていると卒業生で大きな成功を手に入れたstartupも出ている。最近のbatch参加企業はそういった卒業生ネットワークを使って最初からそれら巨大user baseやpage viewを利用して、demo dayの為に数字を”造っている”startupが非常に目に付く。自分はこれはdopingだと思っている。

恐らく卒業生側も、accelerator側からちょっと助けてやってくれというお願いもあるんだと思うけど、APIで繋がってくるだけなのでネガティブな作用がなければ別にいいと思っているのだと思う。またbatch参加startup側も簡単にAPIで繋いで数ヶ月分の数字を造る上では非常に役に立つ存在にだと思っている。

スピードが重要なファクターである事は否定しないが、一方で本当にproductのmarket fitがあるかどうか確認するには、それらサービスの影響を排除して考える必要があり、こちらとしては面倒な作業が増えるだけなのでできれば素の状態で勝負してほしいところ。本当の意味でproductが磨かれていない状況で変にtractionを手に入れてしまって間違ったまま進んでしまった後の悲劇が大きそう。一方で時間はかかれど、きちんと造った物はきちんと評価される。

global expansionもorganicが基本

以前投資先の日本展開を手伝った際の成功例と失敗例。

まずは失敗例から。米国でlaunchから1年足らずで1000万以上のdownload数を達成していた写真系のアプリを提供するstarupの日本展開を手伝ったが大失敗だった。全くユーザーの認知も上がらずdownloadもされずじまい。

この会社のfounderはいわゆるgrowth hackerとして多数の実績があり、その会社は彼のプロジェクトの1つだった。実際短期間でdownloadが1千万を超えさせる手法はすばらしいの一言なのだが、恐らくuserの声を置いてきぼりにしていたのだと思う。また同時平行で複数プロジェクトを動かしており、フルコミットしない状況で数字だけ追いかけていた可能性が高い。

今思い返してみるとアメリカで1000万もD/Lされているにも関わらず日本での認知度はいまいちだった。日本人ユーザーの割合もほとんどなかった。自分自身への反省も含まれるが、boost upされた数字ばかりに目が行ききちんとproduct market fitを精査していなかった結果招いた失敗だった。

次に成功例。もちろんevernote。

evernoteと最初に会ったのはまだβテスト中で、ユーザー数も60万に行くかいないかという状況。そこから半年後に投資をし、更に1年経った2010年初旬あたりのプロダクトがiOSからAndroidと拡大されていく中で、ユーザー数が200万人そこそこの時、まだ正式ローンチは米国と他の英語圏の国のみでローカライズは一切していない状況に関わらず、既に日本人ユーザーが存在し、登録ユーザー数ベースで5位、DAUベースで3位という状況だった。

その当時、日本発の優良なアプリが少ない時代ということもあったため、コアなユーザーは海外のアプリもチェックしていて、その中でevernoteを使い始めたαブロガーのようなinfluener達が各々blogで使い方を含め紹介をし始めた。そのブログを読んだadvanced userが使いはじめ、自分の周りに伝搬していってくれた。

そして更にはCEOのPhilは当時3ヶ月に1度程日本に来ていたのだが、来日の際は必ずuser meet-upを実施し、それら”evernote lover”達と直接話しをする機会を儲けていた。この辺は以前のpost(英語)にも書いたが、コアなユーザーにしたら、自分がよく使うアプリを提供する会社の社長が来て、改良すべき点や欲しい機能についてきちんと話しを聞いてくれて、最終的に機能提供を約束してくれるのでよりevernote love度が増していったことも、viral loopを形成する上で非常に大きな役割を果たした。

結局2010年の4月に日本オフィスの開設と日本語ローカライズ版の発表を実施し、本格的に日本進出を始めた。その後の快進撃は皆さんご承知の通り。実のところいまだにevernoteは広告やmarketingにほとんどcostをかけてない。partner主導で宣伝する事はあってもevernoteとしてpromotionを実施する事は皆無と言っていいと思う。(他の会社は普通promotion目的で配ってるけど、evernoteはTシャツすら販売してるしね。)

結局の所、organic growthを実現させるためのviral loop又はwillingness to recommendを形成するには、productを磨き込む以外ないのだと思う。ユーザーの声を聞きsimpleに且つ真摯に応えて行く事以外、ショートカットはないし、広告やboost marketingは一時的にユーザーを増やしたり、userのtouch pointを拡大する事はあっも、”user”を”lover”に変え献身的・継続的に使ってもらう事にはならないと思う。

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Daisuke Minamide(南出 大介)
deep dive into the basis

a Venture Capitalist based in the Bay Area. ex Marketer, BD, and Engineer. Love gadgets and technologies.