Coinを1ヶ月使ってみて

coinが来てちょうど1ヶ月が経ったので、使用感など。

coinって?

そもそもcoinとは何ぞやという話しだが、簡単に言ってしまえば、coinはクレジットカードを集約するデバイスである。これ一枚でクレジットカードやデビットカード、会員カードやギフトカードなどが1枚にまとめられる優れもの。これまで財布に何枚ものカードを入れておく必要があったが、これ1枚あれば全て解決という触れ込みで2013年11月に発表し、crowdfundingで資金調達した際は、$50,000の希望金額にたった40分で到達した。

アメリカのcredit card事情

熱狂的にbackerを集めたcoinだがその背景には当然、保有するカード枚数に頭を悩ますユーザーが多数いたということに尽きるだろう。もちろんまだapple pay等の新しいpaymentソリューションが出ていなかった事も起因しているとは思う。

2014年時点で、アメリカ人の平均的なクレジットカードの保有枚数は全体で2.6枚、カードを持っている人に限ると3.7枚程保有している。

source: gallup

これに銀行のATMカードやdebitカード、各種会員カードなどあわせると相当な数のカードが財布を占領している事になる。更に以前のpostでも述べたが、様々なイベントや季節の挨拶などでプリペイドカード/ギフトカードが多数使われており、これも財布の厚みを増す要因となっている。

Coinの申込からの紆余曲折

crowdfundingにおけるあまりの人気の高さにcoin側が提供する枚数を増やし、搭載する機能も発表時点より追加するとのアナウンスがあった。恐らくこれが失敗の元だったと思うのだが、当初の予定では最初のバッチが2014年の夏、次のバッチが2014年の秋ということになっていた。backer向けのupdateは定期的に来ていたが、夏が近づいてきてもshippingの案内は全くこなかった。8月22日になってやっと最初の商用のバッチは2015年の春にずれ込むという案内が流れた。(選ばれたbackerの中でβ版(サンフランシスコ周辺だけ使えるもの)を配布すると言う案内もあり、それは2014年の秋に配送されるということになっていた。)

恐らくこれに怒ったbacker達が数多くいたのだろう。次の日の8月23日には、謝罪のメールとβ版の枚数を増やし、地域もサンフランシスコ限定からnationwideに拡大するというメールがきた。不透明なβ版の選定方法も、registerした先着順の希望者に配布すると言う形になった。社内のドタバタ振りが見て取れるようだが、その謝罪メールの中にやはりproductionに対する見込みが甘かった事が触れられていた。アプリ等は早々にできており、事前にダウンロードさせていた事を見るとやはりハードウェアの製造が遅れの原因となっていたようだ。このあたりは今後、IoT系でハードウェアを絡めてサービスを考えているstartupにも共通してくると思うが、パッケージングや製造は全くソフトウェア開発で持っている技術/スキルセットと異なるので、経験の無いstartupの多くがここで苦労する事になるだろう。

これ以降、coin側からの連絡は2015年の6月初旬にもうすぐshippingするという案内が来るまで何もなかった。当初の見込みから実に1年遅れての配送となった。

実物を手にしてみて

登録から1年半経ってようやくcoinの実物とお目見えできた。

内容物はcoin本体とカードリーダー(squareのようなスマホのイヤホンジャックにさしてカードの磁気を読み取るデバイス)と、簡単なインストラクションの紙が1枚のみ。

箱を開けてからがちょっと大変だった。カードを追加するにはリーダーをスマホに挿してカードを読み取るだけの簡単な操作なのだが、なかなかカードを読み込んでくれない。カードの方向を変えてみたり、swipeするスピードを変えてみたりと数十回と試してやっと読み込んでくれた。どうやら勢い良くスパッとカードをswipeしないと読み取らないようだ。2枚目以降は2−3回のトライで登録できた。リーダーを使わずに直接カード番号を入力する方法もあるようだが、まだ試していない。

カードを登録したら、次はcoin本体とのsync。スマホとcoinの間はbluetoothで連携するのだが、こちらはスムーズに行えた。最初にスマホとカードをbluetooth経由でリンクさせる方法は忘れてしまったが、恐らくそんなに難しくはなかったと思う。ただ、自分は日常的にそういったリンクを様々なデバイスで行っているので、これが全くの素人や高齢者だとすると、1人で全てできるかどうかは不明だ。

coinを使ってみた

全て登録が終わったので、早速使ってみた。但し使えないところがあったらという不安もあったので、財布のラインナップはcoinの他によく使うクレジットカードとATMカードを入れておき、普段あまり使う機会の無い日本のクレジットカードやその他のカードを除いたので、枚数的には7枚のカードが4枚と約半分になった。

最初はガソリンスタンド。近所のvaleroで使ったが、きちんと動いた。ベトナムの事務所に書類を送るためfedexでも利用したがこちらも問題なかった。philz coffeeやred rock cafeなどの仕事で使っているcafeでは全て使えたが、一部雑貨屋などの商店等で使えない事があった。これまでトライした場所の90%程度は使えるかなという印象。個人商店のような小さいretailだと使えない可能性が高い。

そしてまだ試していないのが対面で支払いをしないレストランなど。テーブルチェックだと、一度クレジットカードを預かってレジでカードを読み取ることになり、bluetoothの距離が届かなくなると多分ロックがかかるはずなのでまだ試していない。

また気になった点としては、coinのロックを外す際にボタンを押すのだが、このボタンがすぐに壊れそうな気がしている。クレジットカードと同等の薄さを実現しているため、ボタンを押すたびにその周辺がべこっと凹んで、そのうちそのまま穴があきそうな感じがする。

関連して気になったのが、耐用年数としては2年程度とcoin側は言っているが、壊れた際の交換やそれこそ2年が経過したcoinはどうするのか(無償で交換してくれるのかなど)の話しが探したけど出てこない。新規で買うと$100するものだけに、それが2年周期で買い替えとなるとちょっとしんどい話しになりそう。

1ヶ月使ってみて

結局のところ、1部使えないところがあったりテーブルチェックのレストランとかだと不安があり、必ずオリジナルのカードを保持しないと心配と言う部分を払拭できない。本末顛倒もいいところだが、coin一枚で事足りるという世界はまだまだこないようだ。

coinに関するレビューを書いているre/codeの記事も、同じようにまだまだといった内容だった。しかも今年の10月以降アメリカでは多くの店舗でICチップを読み取れるレジ/カードリーダーにreplaceされるが、残念ながらICをduplicateできるソリューションは今のところ見つかっておらず、coinカードそのものが使えなくなる可能性もあるという。全てが使えなくなるという事ではないが、対応できないとなると厳しい状況になるだろう。更にはNFCを利用できる環境も整いつつあり、apple payやgoogle walletなどmobile orientedなペイメントソリューションもでてきており競合環境も含めposition的には難しいところにたたされていると言える。

おまけ

この1ヶ月の間、日本に行ったので試してみたが、当たり前ではあるけど日本では一切使えなかった。日本のカードはきちんとcoinに読み込む事はできているのだが、レジ/カードリーダー側でNGとなるようだ。

<追記(2017.04.24)>

その後の顛末についてはここで。この手のデバイス、難しいね。

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Daisuke Minamide(南出 大介)
deep dive into the basis

a Venture Capitalist based in the Bay Area. ex Marketer, BD, and Engineer. Love gadgets and technologies.